21代目スレ 2007/12/20(木)
【
バルマー寮】
キャリコ「宅の息子なんですがね、そろそろ筆下ろしをしようと思うんですよ」
ルナ「はぁ、書き初めにはまだ少し早いと思うが。
これ、キャクトラ、これ、
なんだかわからんが、お前のお父上が来て筆を下ろしたいといっているのだ。
筆を持って参れ」
キャリコ「姫様、姫様、聞きようによっちゃ誘惑になるようなこといっちゃいけませんよ。
宅のせがれが筆をブラブラさせて来ちゃったらどうするんですが。
お父さん、さすがにそれは涙目ですよ」
ルナ「はぁ、ではなにが必要なのだ。半紙か、墨汁か」
キャリコ「毛筆から離れてくれませんか」
ルナ「では、硬筆か」
キャリコ「姫様、ねえ、天然ですか?
それとも高度な言葉責めですか?」
ルナ「ええい、わけのわからぬことを。いいたいことはハッキリいわぬか!」
キャリコ「つまりですね、宅の息子に、女の子を教えてあげる必要があるのですよ」
ルナ「なにを! なぜキャクトラにそんな必要が!」
キャリコ「え~、『アケガラス』という落語がありまして。
息子がそれなりの年齢になったら、近所の遊び人のあんちゃんにお金渡して、
遊廓に連れてかせるということは、ニホンではわりと普通に行われてきた風習でして」
ルナ「お前の家がニホンの風習に沿う必要はいっさいないだろう!」
キャリコ「あのですね、姫様。
護衛の仕事というのは、単純に腕が立つだけではダメなのですよ。
ときには敵対勢力の女殺し屋を抱き込んだり、
ときにはパーティ等でお姉ちゃん口説くフリして情報を引き出したり、
ときにはお姉ちゃんなんかいないかのようにキャバクラ行ったり、
キャバクラなんて行ってないよという素振りでケータイ2つ3つ使い分けたり」
ルナ「だんだん職務と関係なくなってはいないか?」
キャリコ「イヤイヤ、全部仕事ですとも。
それが証拠に、私はあらゆるお姉ちゃんとの接触を全部妻に報告してますから。
すげえ、ぶん殴られますけど」
ルナ「スペクトラも大変だな」
キャリコ「でも、そのあとに手厚く手当してくれるんですよ」
ルナ「お前のとこの夫婦関係は少々歪んでいると思う」
キャリコ「姫様、男の人生とはね、深夜2時にハシゴするキャバクラなんですよ。
2時ですよ2時。次行く店は絶対ろくでもないですよ。けれどやっぱり私という人間をここで終わりにするわけには」
キャクトラ「お父さん! いったい姫様になにをいっているんだ!
申し訳ありません、姫様! 父は、決して悪気があるわけでは!
さっ、お父さん、外へ!」
【外】
キャクトラ「お父さん、姫様の前であまり恥ずかしいことをいわないでくれ」
キャリコ「ははは、キャクトラ。相手がお父さんだからってあまりにも素で喋ってると、
キャラ壊れてるんじゃないかと思われちゃうぞ」
キャクトラ「壊れてるのはお父さんの人格じゃないか!」
キャリコ「よしよし、息子よ、待っていろ。
お父さん、いいトルコ風呂知ってるから」
キャクトラ「お父さん! トルコの人に怒られるから!」
キャリコ「おっと、トルコ風呂の意味するところがわかるのか。
お前も、なかなか地球文化を学んでいるんだな。
感心感心、お父さんがいい子いい子してあげよう
キャクトラ「やめてくれ」
キャリコ「まさか、すでに通い詰めているのではないだろうね?
お父さん、さすがにそれはちょっと複雑な気分だ」
キャクトラ「そんなところに行くわけないだろう!」
キャリコ「なんだい? 宅の息子は、プロはいやだというのかい?
いいかい、キャクトラ。
頭脳と下半身を駆使して美濃一国を乗っ取ったことで有名な斎藤道三も、
国盗りレジェンドを始めるにあたりプロの方に御指南願ったというね」
キャクトラ「お父さん、よその国の偉人をおとしめるようなことは」
キャリコ「おとしめるなんてとんでもない。
ニホンという国は、もともと性的にだいぶはっちゃけていたんだ。
おサムライが禁欲的だった時期なんて、歴史上のほんの一瞬きりなんだぞ」
キャクトラ「お父さん、ゾンボルトさんちの近所でそういうことは」
キャリコ「イヤイヤ、ゾンボルトさんだって、あれでなかなかのもんだぞ。
お父さん、こないだ飲み屋でククルっていうお姉ちゃんから」
キャクトラ「お父さん! その曲がり角を曲がっちゃダメだ! ゾンボルトさんちが!」
キャリコ「よしよし、息子よ。急く気持ちはわかるが、少し落ち着け。
お父さん、お前にいいお嫁さん見つけてあげるからな!」
キャクトラ「お父さん、いいから家に帰ってくれ」
【バランガ家】
キャリコ「というわけでゼラドちゃん、うちにお嫁に来ない?」
ゼラド「え~っと」
キャクトラ「お父さん! しょっぱなから、なんてとこに来るんだ!」
キャリコ「え~、だって、お父さん、ゼラドちゃんみたいな娘欲しい」
キャクトラ「こちらには、こちらのしがらみというものが!」
キャリコ「ゼラドちゃんみたいな子に老後の面倒見て欲しい」
キャクトラ「お父さん! いきなり老後のことを切り出す人があるか!」
ゼラド「キャクトラくん、お父さん相手にはものすごい自然体で喋るんだね」
キャリコ「ねえ、ゼラドちゃん、どうだい。
宅のキャクトラはほらこの通り顔はいいし、性格は人畜無害だし、
家事万能だし、将来だって安定してるよ。
そしてもれなくおじさんとスペクトラが付いてくるよ」
ゼラド「え~、でも、わたしにはお兄ちゃんが」
キャリコ「ああ、大丈夫大丈夫。おじさんも、近々クォヴレーと同居するつもりだったから。
なっ、キャクトラ、小舅が付いてきてもいいよな?」
キャクトラ「お父さん、重要なところを小舅のひと言で」
ゼラド「キャリコさんは、どうしてたまにお兄ちゃんと同居したがるの」
キャリコ「だって、ほら、なぁ、考えてもみようよ、息子よ。
家に帰ったら、スペクトラとゼラドちゃんとクォヴレーが裸エプロンで迎えてくれるんだぞ。
うわぁ、帰宅がすごい楽しみじゃないか!」
キャクトラ「お父さん、なぜ裸エプロンなんだ」
ゼラド「お兄ちゃんの裸エプロンかぁ、そういうのも」
キャクトラ「とにかく! ここはダメだから!」
【レシタール家】
レイナ「イヤ」
キャクトラ「イヤです」
キャリコ「あっれぇ~、おかしいな。お父さん、ちゃんと調べてるんだぞ?
お前たいていの相手には丁寧に話すのに、
このお嬢さんに対してはタメ口な上に呼び捨てで、破格のフランクっぷりじゃないか」
キャクトラ「敬意を払う必要がないと判断しているだけです」
レイナ「いってくれるじゃない。
近所に来たついでにここも寄っとこうかみたいなノリでうちの玄関に来たくせに」
キャクトラ「実際その通りなのだから仕方がない」
キャリコ「う~ん、ウチの子がこんなに刺々しくなるなんて珍しいんだけどなぁ。
ひょっとして、あれかい? 愛情の裏返しとか、そういう」
レイナ「キャクトラ! あんたのお父さん、学生時代国語とか数学の成績悪かったでしょう!」
キャクトラ「お父さんに学生時代があったかどうかは知らないが。
申し訳ない。たまの休暇でちょっとはしゃいでいるだけなんだ」
キャリコ「ん~、違うぞキャクトラ。お父さん、バリバリ勤務時間中だ」
キャクトラ「なにをやっているんだ、お父さん!」
キャリコ「そうかそうか、ウチの子は、あれだ、今流行りの、ツンデレとかなんとか、そういう」
ルアフ「ムリして若者言葉使ってるんじゃない、このウザロン毛ーっ!」
キャリコ「おぉっと、先の霊帝陛下じゃありませんか。
こんな時間からご在宅とは珍しい。よく家に上げてもらえましたね」
ルアフ「なにいってるんだお前は! 僕は、あれだぞ、亭主関白なことではご近所でも有名なんだぞ!」
キャリコ「なぜ2秒でわかる見栄をはりますか、あなたは」
ルアフ「うちの娘になにしに来た!」
キャリコ「いやね、宅の息子が頭脳と下半身を駆使して美濃一国を乗っ取ろうと」
ルアフ「出てけーっ!!」
【道ばた】
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
キャリコ「お父さん、ちゃぁんと調べてるんだぞ。
なんだかわかんないけど、お前、このお嬢さんとも仲良しだろう。
ん~、いいじゃないか、ちっこくて可愛くて!
お父さん、こういう砂糖菓子系の娘欲しかった!」
キャクトラ「お父さん、欲しかった娘のバリエーションが豊かすぎる」
キャリコ「うん、正直、娘が生まれてくるものだとばっかり思ってた」
キャクトラ「お父さん、いまちょっと、反抗期という言葉が頭をよぎった」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
キャリコ「は? なんですか、お嬢さん。
『だが断る』? はぁ、それはまた、どうして」
キャクトラ「お父さん! レラ殿のいうことがわかるの!」
キャリコ「キャクトラ、お父さん、なんだってできるんだぞ?
できないのは、お母さん怒らせないことくらいだ」
キャクトラ「お父さん、それはできなきゃダメだ」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
キャリコ「なになに、
『お前とわたしはベースとドラム。それ以上でもそれ以下でもねえ。
色恋とかそういうのはやめようぜ。音が濁る。
わたしたちの関係はそうじゃねえ、もっと音楽的なもののはずだ。そのはずだろ』
なるほどなるほど」
キャクトラ「お父さん、異様に男前に訳す必要はどこにあるんだ」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
キャリコ「『じゃ、次のギグ、期待してるZE!』」
レラ「・・・・・・!」
キャクトラ「レラ殿も、なぜ男前に親指を立てているのですか!」
【学校】
レタス「よろしくてよ」
キャリコ「はっはっは、ほらご覧、ほらご覧!
スペクトラ、私たちの息子は、やっぱりモテるんだぞぉ!」
レタス「これは、本当にあなたのお父様でして?」
キャクトラ「はい。どうしようもない現実です」
キャリコ「ほらほら、見てご覧。
このきめ細かい肌! ゴージャスな髪質!
お前のフェティッシュにぴったり一致してるだろう」
キャクトラ「お父さん、勝手におかしなフェチにしないでくれ」
レタス「勘違いしないでくださいませ。
なんの条件もなく承諾するつもりはありませんことよ」パラパラ
キャリコ「ほっほぅ、カードですか」
レタス「地球に来る折、お母様にいわれておりますの。
引きの弱い男とだけは付き合うなと」
キャリコ「ふふふ、望むところですとも。
職務上、カジノに潜入することは少なくありませんからね。
さ、キャクトラ。『カジノ・ロワイヤル』を10回観たキャリコの息子だということを見せつけてあげなさい」
キャクトラ「お父さんが『カジノ・ロワイヤル』10回観てても、どうしようもないと思う」
レタス「『カジノ・ロワイヤル』を100回観たところで、実際のギャンブルが強くなるというものではないでしょう。
ラスト手前の再現は簡単ですが」パラパラ・・・・・・パラ
キャリコ「見事なパーフェクトシャッフルで」
レタス「一枚、引いてくださいませ。そのカードを当てられたら、私の勝ち。
当てられなければ、そうですね、食事くらいは付き合って差し上げてもよろしくってよ」
キャクトラ「はぁ、では、これで」
レタス「ではカードを山に戻して、再びシャッフル。そして」
キャクトラ「ハートの6?」
レタス「あなたの引いたカードは、これではなくて?」
キャクトラ「いえ」
レタス「本当に、そうでして?」
ズッ・・・ズズッ・・・・・・
キャクトラ「なっ! カードの上で、ハートが動く!?」
レタス「ハートの8」
キャクトラ「はっ、はぁ、その通りで」
レタス「これは、カードがあなたを選ばなかったということでしてよ。
お引き取りあそばせ?」
【校外】
キャリコ「ダメじゃないか、キャクトラぁ。
あのお嬢さんが使った『パーフェクトシャッフル』っていうのは、
8回繰り返すことで最初とまったくおなじ並びに戻す切り方なんだ。
お父さん、ちゃんとパスを出してあげたのに」
キャクトラ「わからないよ、そんなもの」
キャリコ「無作為にカードを落としたように見せて、実は思い通りのカードを引かせるあのテクニックも、
『リトルフォース』といって、カードマジックの初歩の初歩じゃないか」
キャクトラ「マジック? では、カードの絵柄が動いたのも」
キャリコ「あれは『ムービングポイント』といって、もう、何十年も前からあるトリックだよ。
裏から細い糸が通してあって、模様を動かすんだ。
この季節だと、ちょっと大きめのスーパーでも売ってるぞ」
キャクトラ「でも、カードの文字まで変わったのは、一体」
キャリコ「お前がビックリしてる間に、隠し持っていたカードとすり替えただけだよ。
キャクトラ、ものごとというのは、一瞬ですべてが起こるわけではないんだ。
きちんと手順があるものなのだよ?
格闘術の鍛錬もいいが、この程度のトリックを見破る柔軟さがないと護衛としては」
キャクトラ「お父さんは、ひょっとして遊んでるフリをしながら、訓練を?」
キャリコ「しかし、おっそろしく婉曲なやり方でお断りの返事を出すお嬢さんだったなぁ。
フフフ、でも、ああいうタイプに限って燃え上がると」
キャクトラ「やっぱり違うんだね、お父さん」
【路上】
~I am an anarchist!
キャリコ「お父さん、新しい子が入るたびに持てる能力の限りを尽くして調べ上げてるんだ。
あそこで路上ライブしてるパンクちゃんも、そうだろう?」
キャクトラ「まあ、そうなんだけど」
キャリコ「い~いお尻してるねえ!
クールな眼差しにグラマラスなボディ。まさに黒船って感じじゃぁないか、なあキャクトラ」
キャクトラ「お父さん、最近ハザリア様が急にグラマーとかなんとか言い始めたのは、まさか」
キャリコ「なぁ、あの子、クラスでちょっと浮いてるだろう」
キャクトラ「浮いているというか、どう扱っていいものか戸惑われてるというか」
キャリコ「休み時間とか、あれだろ、ヘッドフォンでずっと音楽聴いてるみたいな」
キャクトラ「そう聞いてるけど」
キャリコ「昼休みには一人で屋上登ってギター弾いてるみたいな」
キャクトラ「たぶん、そんな感じだと思うけれど」
キャリコ「ちょっぴり不良っぽいけど、ほんとは心の優しい女の子で。
学校の帰り道で子猫にミルクあげてるみたいな」
キャクトラ「それは知らない」
キャリコ「学校からの帰り道、目撃してしまったあの子の意外な一面。
目が合うと、あの子は『きゃっ』と小さな悲鳴を上げて、ほのかに赤らめた顔を伏せるのさ。
そして、小声でおずおずと『見た?』みたいな!
お父さん、そういうシチュエーションへの憧れはハンパない!」
ユウカ「シャウト! シャウト! シャウト!」
ドギャン! ドギャァン! ドギャギャギャギャァーン!
キャクトラ「お父さん、パンク少女、ギターを振りまわして地面に叩きつけ始めた」
キャリコ「あぁ~、ありゃ、ネコ、逃げちゃうな」
キャクトラ「お父さん、あれは、近づきがたいというか、物理的に近づけない」
キャリコ「ねえねえお嬢ちゃん、宅の息子のお嫁さんになんない?」
キャクトラ「お父さん! お父さんはひょっとして、バカな人なのか!?」
ドギャギャギャギャァーン!
キャクトラ「お父さん!」
キャリコ「フフフ、お父さん、ギターでぶん殴られるのは12回目だよ」
キャクトラ「お父さん! なにをしてたらそんな、わりとしょっちゅうギターで殴られるんだ!?」
ユウカ「ー! ー! ー! ー! ー! ー!」
キャクトラ「お父さん、なにか聞いたこともない言葉でまくし立てられてる」
キャリコ「息子よ、まだまだ地球言語の習得が甘いぞ。
お父さんたち、いま、もんの凄いスラングで罵られてる真っ最中だ。
どうだ、ゾクゾクするだろう」
キャクトラ「ゾクゾクはしないよ」
ユウカ「チンケなお姫様にベッタリのロイヤルドッグが、なにいってるの」
キャクトラ「チンケとは、姫様のことかっ!」
ユウカ「ほかに心当たりがあるなら聞きましょうか。
あたしはパンク、そしてアナーキー。
ゆえに体制を否定する。アナーキズムを振りかざす」
キャクトラ「あなたの思想は自由ですが、姫様を巻き込まないでいただきたい!」
ユウカ「ナイトを気取りたいの。サーの称号がそんなに重要なの。
生まれながらに引っこ抜かれて、振ることのできるのは尻尾だけなの。
女王陛下に忠誠を誓った挙げ句、アルカトラズにぶち込まれる。
その程度が関の山」
キャリコ「お嬢ちゃんお嬢ちゃん、『007』と『The Rock』がごっちゃになってますよ。
制作陣はそのつもりだったみたいですけど」
キャクトラ「我々の女王は、そんな方ではありません!」
ユウカ「王室を動かしているのは権威。人格なんか超越してる。
女王陛下はプリンセス・オブ・ウェールズを追い詰めた。
イスラム教徒と再婚する。たったそれだけの理由で。
王室のご慈悲なんてその程度のもの」
キャクトラ「姫様を、陛下を、我が祖国を! いくら女性といえども!」
ユウカ「ハートにべつのひとを住まわせておいて、あたしをお嫁に呼ぶのは侮辱ではないの」
キャクトラ「それはっ!」
ユウカ「他人の感情なんて、案外わかりやすいもの。
あんたのハートにおわすのは」
キャクトラ「それ以上はっ、口に出さないでいただきたい!」
ユウカ「オーライ。今から一緒に、これからそいつを、殴りに行きましょう。ギターで」
キャクトラ「名曲に乗せて、物騒なことをいわないでいただきたい!」
ユウカ「チャゲアスはパンクよ。特にチャゲ」
キャクトラ「チャゲ氏のパンク度合いのことを話しているのではない!」
ユウカ「姫君をものにして王室を瓦解させる。
あんたの望みはとてもアナーキー」
キャクトラ「私は、そんなことを望んでなどいない!」
ユウカ「ではなに。まさか、本気で国家に仕えるつもりだとでもいうの。
国家なんて低俗なもの。法と税金、そして暴力。たったそれだけの材料で人間を縛り付ける。
こんなもの、ギャングとなにが違うの」
キャクトラ「我々の親たちは、一度は母星が吹き飛んだ祖国を必死で立て直した。
私はその偉業を尊敬している。その意を継ぎたいと思っている!」
ユウカ「あんたの主張と感情は矛盾してる」
キャクトラ「それはわかっている。わかっているのです!」
ユウカ「あんたのハートはケージに囲われてる。
そのケージ、破壊するのがパンク、そしてアナーキー」
キャクトラ「それでも私は、職務を全うする! そうすることが姫様の」
ユウカ「あ、そう」
キャクトラ「私は、いったいなにを口走って!」
ユウカ「タフなボディに、ソフトなハートを包み隠したあんた。
その振る舞いもパンク。そしてひとつのハピネス」
キャクトラ「あなたは、なにを考えて」
ユウカ「ベースをやるのね」
キャクトラ「なぜそれを」
ユウカ「手のタコを見ればわかる。
オーライ、機会があったら、ギグしましょう」
【バルマー寮】
キャリコ「申し訳ありませんでした姫様ぁっ!」
ルナ「なんだ、失敗したのか」
キャリコ「はっ、宅の息子はとんだデクノボーでございます!
小舅に負け、即答で断られ、カードで断られ、挙げ句の果てにはギターでぶん殴られる始末!」
ルナ「しようがないな。キャクトラめ、案外モテないと見える」
キャリコ「この有様では、とてもではありませんが護衛など務まりません!
かくなる上は、親子三人百鬼帝国に移り住み、百鬼メカに改造される所存!」
ルナ「待て待て待て、早まるな。おかしな所存を持つな」
キャリコ「しかしこのままでは、宅の息子はどこにも奉公先が見つからず、
やがては定職にも就かずに部屋でネットゲームばかりするようになり、
我々の老後の面倒も見るどころか、年金をあてにするように」
ルナ「そう悲観的になることはない。
どこにも奉公先がないというのなら、仕方がない、私が使ってやろうではないか。
ウン、仕方なく、仕方なくだぞ」
キャリコ「へへぇ~! 過分なお言葉をば!」
キャクトラ「お父さん、ひょっとして、お父さんは知っていて」
キャリコ「フフフ、キャクトラ、お父さん、これだけは何度でもいうぞ。
一番老後の面倒見て欲しいのは、ゼラドちゃんだ」
キャクトラ「お父さん! どれだけ老後の心配をしているんだ!」
ルナ「これ、キャクトラ、これ。ここへ」
キャクトラ「はぁ、なんでしょう、姫様」
ルナ「お前のお父上だが、その日接触した女人のことをすべて奥方に報告しているそうだ。
それに倣い、ひとつお前も今日一日接触した女性のことを話して見せよ。
いや、大きな意味はないのだぞ? 主君として、あくまで主君としてだな!」
キャクトラ「えっ、それは」
ルナ「では、疾く話せ。事細かにな」
キャクトラ「お父さん、これも試練なのか・・・・・・!?」
最終更新:2009年10月17日 14:02