キャクトラの作曲


27代目スレ 2008/12/09(火)

 【ジェグナンの喫茶店
ユウカ「は、作曲?」
キャクトラ「ええ」
ユウカ「ま、たまにやるけど」
キャクトラ「できましたら、あの、その」
ユウカ「コーチしてできるもんじゃないと思うけど」
キャクトラ「いえ、コーチというか、その、アドバイスなどいただけたら、そのうぅ、幸いかと」
ユウカ「そういうのは、自分とこのバンドメンバーに頼むのが筋なんじゃない?」
キャクトラ「あ、いえ、彼らは、その、常に一緒にいるので、気恥ずかしいというか」
ユウカ「オーライ、それほど仲良しじゃないあたしだったら、
 ツアーの恥はかき捨て的な都合のいいオンナ扱いできるって、そういうテイストね」
キャクトラ「いえっ、いえいえっ! 決してそのような!」
ユウカ「自分とこのメンバーにはひと言いっといた方がいいんじゃない?
 ミュージシャンなんて嫉妬深い生き物なんだから、
 案外そんなとこから軋轢生まれるもんよ」
キャクトラ「はあ、では連絡だけ」
イングレッタ「いいからガンガンやりなさい」
キャクトラ「イングレッタ殿!? どこからっ!?」
イングレッタ「ネギ味噌ラーメン、モヤシ大盛りで」
ユウカ「ハイまいどありぃ」
ユウキ「ユウカ、うちはラーメン屋じゃない」

ユウカ「で、どういうのを演りたいの?」
キャクトラ「その、クリスマスに」
ユウカ「アー、ハイハイ、クリスマスにラブソングこしらえてプレゼントって、
 案外ベタなこと考えるのね、あんたも」
キャクトラ「・・・・・・恐縮です」
ユウカ「なんか古めでマイナーなラブソング、わかんないようにパクればオーライなんじゃない?」
ユウキ「ユウカ、そのアドバイスはあまりにも投げやりだ」
ユウカ「素人が急に作曲なんかしたって、どうせどっかで聴いたようなモンになるだけじゃない。
 だったらハナからターゲット定めて、自分テイストにアレンジする方が近道よ。
 ね、あんた、なんか好きなラブソングとかないの?」
キャクトラ「えっ、急にいわれても」
ユウキ「お父さん、サワダケンジとか好きだ」
ユウカ「ダディは黙ってて」
ユウキ「お父さん、『サムライ』が好きだ」
ユウカ「ダディうるさい」
ユウキ「お父さん、空びゅんびゅん飛ぶ機体とは縁がないのに空適応Aなんだ」
ユウカ「ダディクール」
キャクトラ「線引きがよくわかりませんが」
ユウカ「それで、あんた要するにホーリーナイトにオンナ口説いてぬくぬくしたいんでしょ。
 で、どんな感じよ」
キャクトラ「くっ、口説くなどと、そのような!
 わ、私はただ、敬愛の情というか忠義心というか」
ユウカ「アー、めんどくさいめんどくさい。
 ほら、試しにあたしを口説いてごらん」
キャクトラ「え、ええ、いや、でも」
ユウカ「口説きたい相手だと思って」

キャクトラ「ええと、その、わ、わわわ、私は、
 さささ、最初、お父さんによって引き合わされたときに、ああああ、淡くも」
ユウカ「まだるっこし! キスでもしてきなよ、ほら」
キャクトラ「い、いえっ! そんなわけには!」
ユウカ「ニホン人じゃあるまいし、キスのひとつやふたつで騒がないでよ」
キャクトラ「あなたは何分の一かはニホン人でしょう!」
イングレッタ「ああ、彼女キスの習慣があるのよ。
 わたしにもちょいちょいしてくるわよね」
ユウカ「毎朝ダディのほっぺにもキスしてるし」
ユウキ「ユウカ、いおういおうと思っていたが、
 お父さん、2、3年ほど前から抵抗を感じている」
ユウカ「だからしてるんじゃない」
ユウキ「なあお嬢さん、うちの娘は根性曲がっているのだろうか」
イングレッタ「曲がってるわね」
ユウカ「ほら、ベロでも入れてこない限り騒がないから」
キャクトラ「べべべべ、べっ!?」
ユウカ「あんたさ、ほんとにオンナ口説きたいの?
 口説いた然る後にどうしたいの」
キャクトラ「ですから、口説くとか口説かないとか、そういうのではなく」
ユウカ「ボンヤリしてんのね」
イングレッタ「あなたたち、デートでもしてきたら」
ユウカ「アー、そうね。イメージトレーニング的な」
キャクトラ「いや、そのようなことをお願いするわけにはっ!」
ユウカ「ダディ、あしたデートしてくるから」
ユウキ「警察のお世話にはなるんじゃないぞ」
キャクトラ「いままでどのような学生生活を送ってこられたのですかっ!?」

 【翌日 生徒会室】
ルナ「キャクトラ、キャクトラー。これ、おらぬのか」
ラーナ「先ほど、なにかあたりを気にしながら保健室に行かれましたが」
ルナ「お主はなぜ生徒会室にいる」
ラーナ「だってわたし、あなたの前に生徒会長やってたじゃないですか」
ルナ「なぜ中等部の人間が高等部の生徒会長をやっていたのだ?」
ラーナ「さあ、よっぽど高等部の方には任せられないと思われたんじゃないでしょうか」
ルナ「反論できないところが悲しいな」
ラーナ「正直、高等部には近づくなといわれていました」
ルナ「しかしキャクトラが保健室とは、どこか悪くしているのだろうか」
ハザリア「保健室といえば、今日は午後からグラマーインパクトめが来ているはずだな」
ルナ「グラマー?」
ハザリア「ああ、そういえば貴様はあまり面識がなかったな。
 ほれ、いただろう、B組なのにB組に行かない、改造し倒した制服を着た褐色の肌をした女が」
ルナ「いたようないないような、
 して、お主はなぜ生徒会室にいる」
ハザリア「暖房が効いておるからだ」
ルナ「ま、よい。しかしキャクトラめ、生徒会の仕事を放り出して女のところとは。
 いったいなにを考えておるのだ!」
ハザリア「それはまあ、エロいことだろう」
ラーナ「エロいことですエロいことに決まっています放課後の保健室でほかになにがあるんですか」
ルナ「なにをいうか、お主らは!」

 【保健室】
キャクトラ「ベースで、大丈夫なのでしょうか」
ユウカ「また、ずいぶん根っこからブレてるのね、あんた」
キャクトラ「ソロでやるのならギターの方がよいのではないかと考えたのですが」
ユウカ「あんたベーシストでしょ、じゃベースでイイじゃない。
 急に鞍替えするのはベターじゃないよ。
 それにね、オンナを口説くならベースよ」
キャクトラ「そういうものなのでしょうか」
ユウカ「ベースのサウンドはね、子宮に響くのよ」
キャクトラ「しっ!?」
ユウカ「ベースの上に指を這わせて奏でられる音はね、
 内臓を揺らして血液を踊らせるの。
 言い換えれば、欲情させるのよ。
 バンドの紅一点がベースって、よくあるでしょ?」

 【廊下】
ルナ「しししし、子宮にっ!? 指を這わせ・・・・・・っ!?」
ハザリア「ははあ、それはまた、ずいぶんと奥深くまで」
ラーナ「指ふやけますね指」
ルナ「なにをやっておるのだ、あやつはっ!」
ハザリア「こらこら、待たぬか。なにをする気だ、貴様は」
ルナ「とっちめてやる!」
ラーナ「いけません。せっかくのエロティックタイムを」
ルナ「いま思い出したが、あの娘には想い人がいるのではないのかっ!?」
ハザリア「ああ、いつ帰ってくるかもわからんオトコがな」
ラーナ「そんなひとをずっと待っていろなんて、酷じゃないですか」
ハザリア「しかも、あのとおりのグラマラスボディだ」
ラーナ「きっと、夜な夜なその肉体を持て余し、自主練に励んでいるに違いありません」
ルナ「好き勝手なことをいうでないっ!
 キャクトラはお主らとは違う!」
ハザリア「こらこら、だから、貴様はなんの権限があってあやつらの邪魔をしようとする」
ルナ「決まっておる、主として!」
ハザリア「貴様はいつキャクトラめの飼い主になった。
 いいか、あやつはまだ、正式に近衛隊なりなんなりに入ってるわけではない。
 貴様の護衛をしているのは、あやつの趣味というか性癖というか、
 持たずともよい義務感というか、ボランティア精神というか、海岸のゴミ拾いというか」
ルナ「む、むぅ・・・・・・」
ハザリア「まあ、俺なら、泣き虫ルナの面倒を見るよりも海岸のゴミ拾いをするがな。
 地球に優しく!」
ラーナ「へえ、泣き虫だったんですか」
ルナ「黙れっ! いつまでも昔のことを!」
ハザリア「しかも、ゴミ拾いしたあと焚き火をしてやる!」
ラーナ「ダメじゃないですか、無許可で焚き火しちゃ」
ハザリア「だが、その焚き火で芋を焼くとしたらどうだ」
ラーナ「素敵です」
ルナ「なんの話をしておる、お主らっ!」
ハザリア「焼き芋の話だ」
ラーナ「あ、お二人が出て行きます」

 【道】
ユウカ「腕ぐらい組みなさいよ」
キャクトラ「はぁ」
ユウカ「で、どこ連れてってくれんの」
キャクトラ「ええと、特に、は。あなたのお好きなところで」
ユウカ「あんたと行きたいとこなんか1ヶ所もないんだけど」
キャクトラ「・・・・・・もうしわけありません」

 【電柱の影】
ルナ「うっ、腕をっ!?」
ハザリア「ああ、あれは当たっておるな。がっつり当たっておるな」
ラーナ「ユウカさんのおっぱいは弾力ありますから」
ルナ「どこに行くつもりなのだ、あやつらはっ!?」
ラーナ「あそこは」

 【パチンコ屋】
 チーン ジャラジャラジャラ
キャクトラ「姫さまはこのようなところに出入りしませんっ!」
ユウカ「いいから目押ししてよ。あんた動体視力いいんでしょ」
キャクトラ「学校にも来ないで、こんなところに」
ユウカ「苦手なのよね、ガッコって。
 特に教室、あれダメ、近づきたくない」
キャクトラ「なぜそれほどまでに」
ユウカ「あたしが前に住んでたイギリスってところは、身分制度の厳しいとこでね。
 もちろん現代で貴族なんて成立するわけないから、
 先祖の土地だの屋敷だの切り売りしてて、むしろ平民より貧乏だったりするんだけどね。
 でも、やっぱり貴族は貴族なのよ。えばってるのよ。
 社会の方でもそれを受け入れちゃって、進学でも就職でも家柄っていうもんがついてまわってくる。
 似たようなイヌばっかり集めるもんだから、ちょっと毛並みが変わったのは徹底的に排除されるのよ。
 あたしは、このとおり何人なのかもわかんない混ざりモンでしょ。
 生きてくためには、へつらうかツッパるかのふたつにひとつだった。
 あたしは、ツッパった」
キャクトラ「OG学園は、そのような場所ではありませんよ」
ユウカ「わかっててもね、一度植わった苦手意識は抜けてかないのよ」
キャクトラ「しかし」
ユウカ「ほら」ポン
キャクトラ「チョコレート?」
ユウカ「景品、替えてきた。ハッピーバレンタイン」
キャクトラ「まだクリスマスも来ていませんが」

 【隅っこの台】
ルナ「制服でこんなところにっ!」
ハザリア「ほほう、劇場版演出か、激アツだな」チーン
ルナ「お主もなにを打っておるかっ!」
ラーナ「あ、そろいますよ」ポン
ハザリア「ほほう、眼鏡をしているくせに動体視力がいいな」
ラーナ「わたしのはオシャレ眼鏡ですよ?」
ハザリア「どいつもこいつも!」
ルナ「なんの話をしておるっ!」

 【公園のベンチ】
ユウカ「ど、イメージ湧いた?」
キャクトラ「それが、いざ考え始めると」
ユウカ「あっそ、あのね、あたしいま、想像以上に退屈してるからね」
キャクトラ「あの、あなたは、好きな方がいらっしゃるのですよね?」
ユウカ「そうよ」
キャクトラ「どのようなところが」
ユウカ「そうね」
 ぐいっ

ユウカ「薄い胸板が好き、尖った顎が好き、まっすぐな眉が好き、
 喉仏で突っ張った皮膚の筋が好き」
キャクトラ「あ、なにを」
ユウカ「彼は優しかったけれど、どこか不安定だった。
 本当は不安で不安で仕方ないのに、無理して善人面して見せるの。
 その偽善者っぷりが危うくて、キュートで、ときめいたの」
キャクトラ「あの、息が」
ユウカ「やさしくされると、切なくなるの。
 冷たくされると、泣きたくなるの。
 心はざわめくばかり」
キャクトラ「素敵な、方だったのですね」
ユウカ「ちょっとイジワルだった、あたしにはね」
キャクトラ「あなたは」
ユウカ「ン、なぁに」
キャクトラ「あなたは、私を見ていない」
ユウカ「ハ?」
キャクトラ「私の向こうに、別の方を見ていらっしゃる」
ユウカ「あったり前じゃない。あたしがストレートにあんたを口説く理由、1コもないもの」
キャクトラ「申し訳ありません。
 しかし、私を透かして別の方を見るその目線が、どこかあの方と似ていて」
ユウカ「アー、じゃ、ダメなんじゃないの」
キャクトラ「あっさりいってくださるのですね」
ユウカ「だって、あたしにとってあんたは彼の足元にも及ばないもの」
キャクトラ「私だって、そんなことくらいはわかっているのです」
ユウカ「でも、あたしはあんまり他人のハートの内なんか考える方じゃないから、
 あの方だかその方だかのことはわかんないよ」
キャクトラ「え」
ユウカ「こうやって、息がかかるほどの距離で訊いたことがあるの?」

 【茂みの陰】
ルナ「ああああっ、あの娘っ、ししししし、しなだれかかっ!」
ハザリア「うろたえるな。よし、怪しまれないように、仲良し兄妹を装うぞ」

 ピーポー ヤァキィモー
ラーナ「焼き芋買ってくださいよ、お兄ちゃん」
ハザリア「自分で買わぬかバカ妹が」
ルナ「逆にリアルな兄妹のようになっているからよさぬかっ!」
ラーナ「早くしないと焼き芋屋さん行っちゃいますよお兄ちゃん」
ハザリア「お兄ちゃんはもういいから、カネを出さぬか」
ラーナ「女子中学生にたからないでください」
ルナ「焼き芋のことで頭がいっぱいかお主らっ!」
イングレッタ「はい、一割り増しでいいわ」ガサッ
ハザリア「おお、かたじけぬ」
ルナ「お主もなぜどこからともなく現れるっ!?」
イングレッタ「あえていうなら、そこのコンビニで焼き芋味アイスが売っていたから」
ハザリア「リアル焼き芋と焼き芋アイスの同時食いだと・・・・・・!
 貴様、正気か」
ラーナ「知覚過敏がキーンてなったりしないんですか」
イングレッタ「知覚過敏がキーンてなるわ」
ラーナ「なんという蛮勇」
ルナ「お主らはいったいなにをしに来ておるのだっ!?」
ハザリア「物見遊山だ」
ルナ「もうよいっ!」
ハザリア「こらこら、どこに行くか」
イングレッタ「馬に蹴られるわよ」
ラーナ「修羅場ですか、ね、修羅場ですか」
ルナ「そっ、そそそ、そのようなものではないっ!」
ハザリア「ではなんだというのだ。どうせ、貴様にとっても他人事だろうが」
ルナ「わたしはっ、生徒会長、そう、生徒会長として!」
ハザリア「あ、コラっ! なにをするか!」

 ガサガサガサッ!

キャクトラ「ひっ、姫さまっ!?」
ルナ「キャクトラっ! お主という者は生徒会の仕事も放り出してっ!」
キャクトラ「こ、これは、その、決してやましいことなど!」
イングレッタ「なにしてたの?」
ユウカ「ンー、デート」
ルナ「キャクトラぁっ!」
キャクトラ「姫さま!」
 がしっ

ルナ「な、なんだ」
キャクトラ「私は、いままであなた様の後ろを着いてまいりました!
 しかし、わかったのです! それではいけないと!」
ルナ「こ、これ、痛い、肩から手を離さぬか」
キャクトラ「聴いてください!」
 ヴォウンッ!

 ~ネビーイーム 東南方面 ヘルモーズに乗って 200宇宙海里
  寂しい星ひとつ あなた様の故郷
  バルマーはあなた様の星!
  ほかの誰のものでもない あなた様の星!
  共に 御代とこしえにぃ~♪

キャクトラ「ハァ、ハァッ、まだ未完成ですが、これが」
ルナ「キャクトラ」
キャクトラ「はっ」
ルナ「お主の考えは、よくわかった」
キャクトラ「えっ」
ルナ「いままで気付かなんだ。済まなかったな」
キャクトラ「い、いえっ、私はっ!」
ルナ「いわれてみれば、バルマーには国歌がなかった!」
キャクトラ「・・・・・・は?」

ユウカ「アー、国歌、国歌ね」
ハザリア「国歌というか、校歌のような」
イングレッタ「軍歌のような」
ラーナ「無人島の領有権を訴えているような曲でした」

ルナ「こうしてはおれぬ。すぐさま母上を通して国歌の件を議会に提案させよう!
 来るのだキャクトラ!」
キャクトラ「は、はは、ははははは・・・・・・」

ラーナ「行っちゃいましたね」
イングレッタ「どうだった?」
ユウカ「アァー、つまんなかった」
ハザリア「軽く失恋した気分なのではないのか、んん?」
ユウカ「べつにぃ」
イングレッタ「ところで、向こうで焼き芋ラーメンというノボリを見かけたのだけれど」
ユウカ「あらエクセレント」
ハザリア「ほほう、胸躍る提案だ」
ラーナ「高確率でダメっぽいってわかっているのに」
ユウカ「こういうとき、オトコが全部ペイするもんでしょ」
ハザリア「バカをいってもらっては困るな」

 【その頃 練習スタジオ】
レラ「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・」
ヴィレアム(キャクトラっ、キャクトラっ・・・・・・!
 どこに、どこに行ったんだ、早く来てくれっ・・・・・・!
 ふたりじゃ、ふたりじゃ会話が続かないっ・・・・・・!)

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最終更新:2009年10月17日 14:03
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