アディオスOG町


22代目スレ 2008/02/17(日)

ゼラド「え、レイナ留年するんだ」
レイナ「留学!」
ゼラド「えぇと、留学っていうと、何年生になるの」
レイナ「ちょっとなにいってるの。しっかりしてよ!
 留学! イギリス行くの!」
ゼラド「じゃあ、学校通いにくいね」
レイナ「通わないから! 向こうの学校行くの!」
ゼラド「何週間くらい?」
レイナ「どんだけ短期留学なのよ!」
ゼラド「えっ、じゃ、レイナ、引っ越しちゃうの!?」
レイナ「なんでそんなに理解するのに時間かかるのよ」
ゼラド「そんなのやだぁ~!」
レイナ「やだっていわれてもねえ、あのオッサンがいつの間にか段取り整えちゃってるから。
 なぜかベイカー街に下宿まで用意しちゃって」
ゼラド「よし! ルアフ先生んとこ行って反対しよう!」
レイナ「ちょっと待ってよ。反対しないでよ」
ゼラド「だって、レイナだってヤでしょう?」
レイナ「べつに、イヤじゃないわよ。向こうで報道の勉強させてくれるっていうし」
ゼラド「だって、だってぇ~」
レイナ「あのさゼラド、あたしたちずっとこの町で育ってたけど、
 いつまでもそのまんまってわけにはいかないでしょう?
 卒業したら、みんなバラバラになるだろうし。
 ちょっとだけ、お別れが早くなっただけよ」
ゼラド「そんな分別のあるこというレイナ、やだぁ~!」
レイナ「あんた、いままであたしのこと分別のない子だと思ってたの?」


 【カラオケボックス】
トウキ「えぇ~、それでは、レイナ・レシタールの門出を祝ってぇ、カンパーイ!」

ハザリア「貴様がおらんと、舞台袖が寂しくなるな」
レイナ「それは、べつにあたしじゃなくてもいいんじゃない?」
ハザリア「餞別だ。持っていけ。
 イギリスに行くならシェイクスピアくらい読んでおけ。
 ヤツらはムダにシェイクスピアに絡めたジョークとか放ってくるぞ」
レイナ「ありがと。受け取っておく」

スレイチェル「スレイチェルからはこれだ。
 『帯をギュッとね!』全巻と、『モンキーターン』全巻と、『とめはねっ!』刊行分だ」
レイナ「予想外の河合克敏コレクション、ありがとうございます」
マキネ「あたしからはこれね。『らんま1/2』全巻」
レイナ「ありがと。なんでサンデーで攻めてくるのかはわからないけど」
マキネ「サンデーって、昔暗かったらしいよ?」
レイナ「それは意外な情報だけど、いまいう必要はないよね?」
スレイチェル「最後だからいっておく。スレイチェルは、『らんま1/2』を愛している」
レイナ「はいはい、わかりました。あなたはそういうひとです」

ミナト「あのさ、お前知らなかったかもしれないけど、俺、昔お前のこと好きだったんだぜ?」
レイナ「あぁ~、おそろしく初期の話ね」
ミナト「気付いてたのかよ。性格わるぅ」
レイナ「そういやあんた、『俺の恋人はこの刀さ』とかスカしたこといってたけど、あれ、なんだったの」
ミナト「マイブームだったんだ」
レイナ「当時から若干痛い子ではあったのね」
ミナト「向こうじゃさ、上手いことやれよな」
レイナ「あんたもね、ちょっとは更正しなさいね」
ミナト「道を踏み外してるみたいなこというなよ」
レイナ「外してるわよ。気付きなさいよ」

ユウカ「はいこれ、ロンドンのマズいメシ屋と、クソマズいメシ屋と、
 マズいとかなんとか通り越して、生きてることの素晴らしさを教えてくれるメシ屋のマップ」
レイナ「美味しいとこ紹介しようって気はないの」
ユウカ「スシバーは、コリアンよりチャイニーズがやってるとこのほうが、いくらかマシだから」
レイナ「期待すんなってことね」
ユウカ「あとこれ、ベース。あんた手デカいから、ベースが合ってると思う」
レイナ「ありがと。あんたも、友達作んなさい」
ユウカ「がんばってる」
レイナ「がんばり方を修正しろっていってるの」


ヴィレアム「えっと」
レイナ「ハーイ、あたしがいなくなったら、あんたもずいぶんやりやすくなるんじゃない?」
ヴィレアム「そんなの、お前がいてもいなくても変わらないさ」
レイナ「ちょっとは寂しい?」
ヴィレアム「そりゃな」
レイナ「でもさ、これからこういうこと、何度も起こるでしょう?
 大学行ったらみんな学部でバラバラになるだろうし、卒業したら、もっと」
ヴィレアム「でもさ、高校出てからでも遅くはないんじゃないのか?」
レイナ「そりゃね。ちょっとは考えたけど。
 このままこの町にいても、埒があかないっていうか」
ヴィレアム「ラチって」
レイナ「あのさ、あたし」
ゼラド「レイナぁ~!」
レイナ「わっ! ゼラド!?」
ゼラド「ヤだよぉ、やっぱヤだよぉ、レイナぁ~!」
レイナ「はいはい、泣かないの。あたしだって寂しいわよ。
 ほら、ヴィレアム、なにやってるの。デュエットくらいしてやんなさいよ」
ヴィレアム「あ、ああ・・・・・・?」

 【空港】
レイナ「バカね、あたし、結局最後まで、うまいことできなかった。
 でも、あれでよかったのかもね。あいつにとっても、あの子にとっても。
 だから、あたしは」
ルアフ「用意はいいかい?」
レイナ「うん。荷物っていっても、なぜか結果的にマンガばっかりになっちゃったけど」
ルアフ「じゃあデッパツしようか! 霧と陰謀とミステリーの都、ロンドンへ!」
レイナ「アディオス、OG町。たぶん、あたしの青春だった」


 雑然としたオフィスの中で、今日も電話のベルが鳴り響く。
 徹夜明けの頭を押さえながら、あたしは書類をかきわけて受話器を発掘した。
 通話は数十秒で終わった。つまらない、内容のない会話だった。それでも誌面という
ものはそうした、つまらない、内容のない会話の積み重ねが作るものだ。
「レシタールくん、アードラーさんの原稿はどうなっている」
「あ、はい、これから」
 今日もデスクは怒鳴り声を飛ばす。オフィスが全室禁煙になってから、声が1オクタ
ーブ高くなったようだ。
「なんとか、入稿には間に合わせます」
「終電までにな。タクシーチケットは出せんぞ」
「善処します」
 聞こえないように舌打ちをして、あたしは手鏡を開いた。濃い隈の上にファンデーシ
ョンを塗りたくる。最近、少し肌がくすんできた。
「ああ、そうだレシタールくん。先日の、君の企画、通ったから」
「本当ですか!?」
 図らずも、声が弾んだ。
 デスクがヘタクソなウィンクをする。やられた。

 学校を卒業して、何年経っただろうか。あたしは雑誌編集者になっていた。
 仕事は、毎日が忙しい。やりがいと虚しさが半々、といった具合だ。わりと平均的な
スコアだろう。
 時間と、領収書と、文字数に追われる毎日。オフィスに行けばデスクの怒鳴り声が待
っている。それでも、企画が通ったと伝えられれば心が弾む。
 何度か恋愛をして、何度か失恋をした。破局の原因は、ま、だいたいあたしの忙しさ
だった。未練はない。ひとつひとつの恋愛が、いまのあたしという人間を作っている。
 バカバカしいほど平凡な人生だ。いや、編集者としては、平均よりも恵まれているの
かも知れない。
 たまに、ふと思い出すことがある。あたしが少女時代を過ごした、あの町のことだ。
 宇宙人や超能力者やロボットが普通に歩いていた。バカバカしいほどデタラメでメチ
ャクチャな町だった。
 あれは、本当に現実にあったことなのだろうかと思うことがある。そういえば、あの町
はいったいどこの国にあったのだろう。
 青春時代のまぶしさを、時間が飾り立てているだけなのかもしれない。
「なんだ、あたしって、けっこう夢見がちな少女だったのね」
 アディオス。そう呟いたときの、胸の痛みだけは鮮烈に覚えている。
 あれは、あたしの初恋だった。


 うぃーん うぃーん うぃーん
ルアフ「やぁレイナ! 先取りした人生のお味はどうだったぃ? 人間的にひとまわり成長したかい?」
レイナ「は?」
ルアフ「ん~、時間設定をちょっと間違えちゃったかなぁ。
 主観にして10年ちょいってとこかい。あー、でも結婚はしてないねぇ。
 なにやってるんだい、君は。どうせ現実じゃないんだから、もうちょっと好き勝手やってもよかったのに」
レイナ「バーチャル? いままでのは?」
ルアフ「大英博物館に並んでた盗品の中にさぁ、ちょっとしたオーパーツが紛れ込んでたんでね。
 こりゃぁまずいやってことで、僕が回収したんだ。
 で、ついでにちょちょいっと修理して、君に一夜の夢を提供したってわけさ」
レイナ「ひと晩? あれが?」
ルアフ「じゃ、これはもう用済みだね。さ、降りた降りた
 モルダーさんとかキバヤシくんとかに見つかる前に、テムズ川にでも沈めてこよう」
レイナ「なにやってくれてんのよ、あんた!」
ルアフ「なに、心配することはないさ。
 どうせもともと盗品なんだし、返そうにも、元の国は何世紀も前に滅んじゃってるしね」
レイナ「そういうこといってるんじゃなくて!」
ルアフ「だって、せっかくロンドンくんだりまで来たのにトンボ返りじゃ、あまりにもレイナが不憫じゃないか」
レイナ「ちょっと待ってよ。なによトンボ返りって」
ルアフ「いやね、学校側がなかなかガンコでさぁ、契約が残ってるから、当分学校にいろっていうんだよ」
レイナ「そんなの、あたし関係ないじゃない!」
ルアフ「なんてこというんだい、君は! おとーさんと暮らせなくなってもいいのかい!?」
レイナ「暮らしたくない!」
ルアフ「ひどい! 断言した!」
レイナ「だって、あたし、あんな送別会まで開いてもらって! ノコノコと学校行けっていうの!?」
ルアフ「レイナ。人間はね、そういう気まずい思いを積み重ねて大人になっていくんだ」
レイナ「元凶が吐くセリフじゃないわね、それ!」
ルアフ「じゃぁ、しょうがないな。一週間くらい滞在しようか。
 え~と、まずは2日くらいかけて大英博物館をみっちり見学して。
 おっと、ベイカー街221Bは外せないねぇ。
 マズいフィッシュ&チップス食べて、ハロッズで買い物して、
 ね、バッキンガム宮殿て見てみたい? 僕、3割くらいの確率で顔パスできると思うけど」
レイナ「本格的に観光旅行にしないで!」
ルアフ「そして、帰還だ!
 胸焼けせんばかりの騒動とトラブルときらめきが常時てんこ盛りの、OG町へ!」

 【学校 朝】
 ざわ・・・・・・ ざわ・・・・・・
トウキ「あれ?」
ハザリア「なぜいるのだ、貴様」
ミナト「えぇ~、ちょっと待ってくれよ。もの凄い顔合わせづらいんだけどぉ~」
マキネ「帰ってきたんなら、『らんま1/2』返してよ」
ヴィレアム「えぇっと」
ゼラド「レイナぁ~っ!」

レイナ「あぁ、ハイハイ。ただいまOG町。デタラメでメチャクチャな町」

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最終更新:2009年10月17日 14:14
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