26代目 2008/08/15(金)
【練習スタジオ】
ヴィレアム「う~ん、どうしよう」
キャクトラ「どうした友よ、まだ新曲のことで悩んでいるのか」
ヴィレアム「いや、新曲だったら、昨日あのあと家で仕上げてきた」
キャクトラ「おや、それは、夏休み明けに提出するようにいわれていた、進路希望調査表ではないか」
ヴィレアム「ああ、お前、もうこれ書いたか?」
キャクトラ「私は高校を卒業後、
バルマーに戻って近衛隊の正式な訓練を受けることになっているから、
そのとおりに書いておいた」
ヴィレアム「そっか。いいよなぁ、お前は。人生のレールが敷かれてて」
キャクトラ「友よ、言葉に刺があるぞ」
ヴィレアム「俺は、どうしよう」
キャクトラ「ああ、なるほど。たしかに友は、中の上というか上の下というか、
たいていのことはできるが、突出したものがないというか特色がないというか、
下手に無能なわけではないからムダなプライドが高くて、
入社後三ヶ月以内に『俺はこんな職場で埋もれる器じゃない』
などと言い出して辞表を叩きつけるものの、そのまま順調にワーキングプアへの道を突き進みそうなところがある。
それで迷っているのだな?」
ヴィレアム「お前がそんなだから、俺の言葉にも刺が混ざるんだよ」
キャクトラ「黙っていれば大学までエスカレーターで行けるのだから、
経済学部や社会学部といった無難なところを書いておけばいいのではないか?」
ヴィレアム「そういうのもなぁ、平凡すぎるっていうか」
キャクトラ「では、士官学校にでも行くか」
ヴィレアム「それも悪くないけどさぁ、ゼラドは士官学校なんか入るタイプじゃないしなぁ」
キャクトラ「そういう進路の決め方はよくないと、うちの父がいっていた」
ヴィレアム「お前のお父さんって、あれでけっこういいお父さんなんだよなぁ」
ガタン
ヴィレアム「ん? どうした、レラ。そんなとこに突っ立って」
キャクトラ「いらっしゃいましたね。それでは練習を始めましょうか」
レラ「・・・・・・・・・・・・っ!」
バタンッ
ヴィレアム「あっ、おい、レラ?」
キャクトラ「行ってしまわれた」
ヴィレアム「どうしたんだ? あいつ」
キャクトラ「友よ、これを!」
ヴィレアム「進路希望調査表じゃないか」
キャクトラ「レラ殿は、音大に進むつもりだったらしい」
ヴィレアム「あいつ、どれだけ音楽に真剣なんだよ」
キャクトラ「友のおたんちんっ!」
バシッ
ヴィレアム「おたんちんなんて、初めていわれたぞ!?」
キャクトラ「友にはレラ殿のお気持ちがわからないのか!?」
ヴィレアム「うん、いまさらなんだけど、9割方わからない」
キャクトラ「レラ殿がどれだけひたむきにバンドに取り組んでいるのか、知らないというのか!?」
ヴィレアム「いや、それは知ってるけど。知ってる上でちょっと引いてるけど」
キャクトラ「レラ殿は、レラ殿は! 大学に行っても音楽を続けるおつもりなのだ!
いや、大学でますます本格的に音楽の勉強をするおつもりなのだ!
しかし、我々はどうだ。音楽方面に進む気など、まったくなかったではないか!」
ヴィレアム「なんだよ、俺たちも音大行こうなんて言い出すつもりじゃないだろうな」
キャクトラ「あ、いや、私は近衛隊の訓練が」
ヴィレアム「ほら見ろ。そりゃ、俺だって音楽は嫌いじゃないし、
このバンドにだってそれなりに愛着持ってるよ。
でもさ、ずっと続けてくのなんて、現実問題ムリじゃないか」
キャクトラ「しかし、レラ殿のお気持ちは」
ヴィレアム「レラだってさ、音大なんか行ったっていいことないよ。
音大っていうのは、あれだろ、体育大学の音楽版みたいなとこだろ?」
キャクトラ「友よ、いいたいことはわかるが、大変頭が悪そうな例え方だ」
ヴィレアム「うるさいな。いいか?
そういう学校行く人間ていうのは、それこそ甲子園の名門校にいる野球部員みたいに、
ちっちゃいころから音楽漬けって生活送ってるもんだろ?
レラは、ここ1年でようやく1小節息継ぎしないで歌えるようになった程度じゃないか。
まず通用しないし、それ以前に入試に受かるわけないじゃないか」
キャクトラ「しかし、レラ殿にはビットドラム奏法が」
ヴィレアム「入試で求められるのって、そういう変則技じゃなくて基本技だと思うぞ」
キャクトラ「なんなのだ、友は! 否定的なことばかりいって!」
ヴィレアム「あのさぁ、たまに心配になるんだけど、お前、レラのこと好きってわけじゃないんだよな?」
キャクトラ「汚れたことをいうな!
我々の間に結ばれた絆は、例えるならばワカメで編まれたしめ縄にも似たワカメタル的なものであり!」
ヴィレアム「例えなくていいよ、わかりづらくなるだけだから。
俺だって、レラのことは友達だと思ってるよ。
でもさ、ずっと一緒にバンドやるなんて、ムリじゃないか」
キャクトラ「それはそうだが」
ヴィレアム「お前あいつを幼児みたいに扱うけどさ、俺たちと同い年なんだぞ?
ちゃんと、自分で考えられるさ」
【
ジェグナンの喫茶店】
ユウカ「バンドがモメてメンバーチェンジなんて、よくある話じゃない」
キャクトラ「そう、さばさばと結論を出されても困ります」
ユウカ「あたしだって、イギリスにいたころ全部で5つくらいのバンドに所属してた。
最終的には、どこでも殴り合いになって、特にフレンドシップ築くこともなくケンカ別れしたけど」
キャクトラ「しかしあのバンドは、いまのメンバーが完璧なのであり」
ユウカ「ライク・ア・ローリングストーンズ。
このひとことで世界は変わる、ひとは変わる。でも、もっともピュアな部分は案外そのまんま」
キャクトラ「わかったようなわからないようなことをいわないでください」
ユウカ「この譜面だけど」
キャクトラ「ええ、今度の新曲なんです」
ユウカ「テクは、ま、ハイレベルじゃない。
でも、こういうの嫌いじゃない。
元の作曲者が、油断するとスキャットマン・ジョンをパクろうとするのを、
最低ふたり以上で横からつねったり小突いたりしながら、
無理矢理メタルの様式に押し込めようとした結果、不思議なケミストリーが起こった感じ」
キャクトラ「なぜ、作曲過程のことをそこまで正確に!?」
ユウカ「たとえ話だったんだけど、リアルなの、これ」
キャクトラ「あと、気を抜くと、せいぜいEAST END×YURI時代の
ヌルい和製ラップを挟み込もうとするのです」
ユウカ「それはちょっと、シンキングタイム必要かもね」
キャクトラ「たしかにそこは、前々から矯正を試みているのですが」
ユウカ「でもこういうミラクル、ほかのメンツじゃ、ちょっと作れないと思う」
キャクトラ「ええ、また、来ます」
パタン
ユウカ「ね、ダディ。彼はよくバンドの相談しに来るけど、
一度たりともライブ見に来てくれといわないのは、どういう了見なのかしら」
ユウキ「それはなユウカ、お前、一定の距離を保たれているんだ」
ユウカ「ダディのアホ」
ユウキ「不良娘め」
【公園】
キィ・・・・・・ キィ・・・・・・ キィ・・・・・・
レラ「・・・・・・」
???「生きてる実感なんか、持ったことがなかった。
息が苦しければ、まだ死んでいない。それだけだった。
でも、あのとき、あの音楽に出会った。
なにもかもが新鮮で、なにもかもが驚きだった。
自分の中には、こんなにも音が詰まっていたのか。
自分の中には、こんなにも言葉が隠れていたのか。
自分の口から、これほど声が迸るものだったのか。
いまや、音楽は自分の血と肉と骨だ。
音楽のない人生なんか考えられない。
だから音楽の中で生きていこうと思った。
でも、そんなふうに考えていたのは自分ひとりだけだった。
ひとりだけで先走って、バカみたいだ」
レラ「・・・・・・、・・・・・・!」
アクセル「怒るなよ。わかるんだ。俺はニュータイプだったから、昔な」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
アクセル「聴かせてやればいい、お前の歌を。
見せてやればいい、ニュータイプの修羅場をな」
【ファーストフード店】
キャクトラ「レラ殿は、いったいどこに行かれたのだろうか。
あれ以来、スタジオに顔も出さないで」
ヴィレアム「心配し過ぎだって、頭が冷えたら戻ってくるよ」
ざわ・・・・・・ ざわっ・・・・・・ざわっ・・・・・・
アオラ「おい、聞いたか。例の噂」
ルル「ええ、ヴィレカイザーさんとレミュさんが、対立なさっているそうですわ」
ラン「やっぱり、原因はあれやろうか」
デスピニス「ヴィレカイザーさんがスーパーロボット大戦Zの参戦作品からダブルゼータを外し」
アオラ「そのダブルゼータの版権をレミュさんが自分のものにしようとしたのが原因らしい」
ヴィレアム「・・・・・・広がってる。ファンの輪が、気味悪い感じに広がってる」
キャクトラ「友よ! あんな風評がたっているとは!」
ヴィレアム「友よ、っていわれても、俺にはどうしたらいいのかわからないよ。
俺たちにダブルゼータの版権をどうこうする権限なんかあるわけないのに」
アオラ「まっ、いくらレミュさんといえど、ヴィレカイザーさんに敵うわけないんだけどな」
ラン「ちょい待ち、それは聞き捨てならんやんかぁ?」
デスピニス「あなた方も気付いているはずです。
ここ最近、
ODEの楽曲でレミュさんのボーカルパートが増えてきていることに」
ラン「ヴィレカイザーはんとレミュはんじゃ、声質がだいぶ違うやんかぁ?」
デスピニス「ゴリゴリのワカメタルボイスのヴィレカイザーさんに対し、
レミュさんは少しシャンソンが入ったウィスパーボイスです」
アオラ「なんだって、ヴィレカイザーさんをディスRXるつもりかーっ!」
ルル「もっさりしてるということですのねーっ!」
ラン「そうやなくて、ヴィレカイザーはんは」
アオラ「『はん』じゃなくて『さん』を付けろ、このはんなりフリーターっ!?」
ラン「はんなりフリーターって、それ悪口なん?」
デスピニス「ODE内で音楽性の違いが出てきているということです」
アオラ「でも、ODEはヴィレカイザーさんあってのものだろ!?」
ラン「ほんでも、女の耳に心地いいんは、レミュはんの声やんかぁ?」
アオラ「それはメジャー意識してるんだよ、日和ってるんだよ!」
キャクトラ「友よ、意外と冷静な分析をしてくれつつも、騒ぎが大きくなってきている」
ヴィレアム「こっち見るな。あんなヘンな組み合わせの集団、俺にどうしろっていうんだよ」
キャクトラ「特に、デスピニスさんの存在が危険だ」
カル「あの、お客さま。ほかのお客さまの迷惑になりますので」
ルル「ちょうどよいですわ! バイト中のカルさんに訊いてみましょう!」
アオラ「カル先輩はどっちが勝つと思ってるんですか、
ヴィレカイザーさんだよな!」
ラン「レミュさんやんなぁ?」
カル「え、誰ですか、それ」
デスピニス「知らないといことはないはずです」
アオラ「ヴィレカイザーさんとレミュさんが川で溺れてたら、
どっち助けるんだって訊いてるんだよーっ!」
カル「え、ええと、じゃ、軽そうな方にファミリア行かせて、
重そうな方を俺が助けます」
アオラ「カル先輩に助けてもらうほど2人はヤワじゃないよ!」
ラン「ファミリアて、魔装機神操者気取りなんか自分?」
カル「どうしろと」
フッ
アオラ「うわーっ! 世界が黒ワカメに包まれたぞーっ!」
ルル「ODEお三方によって保たれてきたワカメの均衡が崩れますわーっ!」
デスピニス「それはあたかも、
ワカメとジャガイモと豆腐入りのみそ汁をひっくり返すような騒ぎです」
ラン「ウチ的には、みそ汁にはニンジンを入れたいんやぁーっ!」
ズダダダダダダダダーーーーッ!
アオラ「このドラムソロは!」
ルル「ご覧になって、あれはーっ!」
レラ「C'est un aquoiboniste
Un faiseur de plaisantristes!」
アオラ「ODE! ドラム! レミュさんだぁーっ!」
ルル「メンバーきってのニュータイプで、ファンネルとビットの区別が付くらしいですわーっ!」
デスピニス「歌うは、シャンソンの『アクワボニスト』ワカメタルアレンジ!」
ラン「そして、レミュさんが馬乗りになっているあれはーっ!?」
アクセル「なんだなっ!」
アオラ「あれはニュータイプ至上主義の豚だぁーっ!」
ルル「以前、一度だけODEのライブに参加していたニュータイプ至上主義の豚が、
どうしてレミュさんに従っていますのーっ!?」
アクセル「これがなっ! なんだなっ! べーオウルフ!」
アオラ「赤ワカメ三段活用ーっ!」
ルル「なんという、公式でのキャラのブレっぷりなんですのーっ!?」
ラン「はっ、待ってんか、みんな!
ニュータイプ至上主義の豚を尻に敷いとるっちゅうことは、
いまだにうっすらウィンキー時代を引きずってるヴィレカイザーさんと決別するっちゅう、
レミュさんなりの意思表示なんやないやろうかぁーっ!」
アオラ「なんだってぇーっ!?」
キャクトラ「友よ、なんだかものすごい深読みをされている」
ヴィレアム「こんなとこでなにやってるんだ、あいつ」
キャクトラ「そういえば、以前アクセル用務員にパフォーマーをお願いしたことがあったな」
アオラ「落ち着くんだみんな! わかってるはずだろ、
この状況を収められるのはひとりしかいない!」スチャッ
ルル「心得ていますわっ!」スチャッ
デスピニス「もちろん」スチャッ
ラン「これしかないんやね」スチャッ
アオラ「キャク様だーっ! キャク様にご光臨していただくんだーっ!」
ルル「サングラスを燃やし待つのですわーっ!」
ゴオォォォォォ
カル「あの、店内でサングラスを燃やすのは」
デスピニス「わかりました。皆さん、喫煙席に移動しましょう」
ラン「灰をこぼさんように注意するんや!」
カル「喫煙席とかそういうことではなく」
ヴィレアム「呼ばれてるぞ、キャク様」
キャクトラ「友よ、私になにができるというのか」
ヴィレアム「お前が出てかないと収まんないだろ、あれ。
いいから行ってこいよ、メイク道具は持ってるんだろ?」
レラ「Qui dit toujours a quoi bon~♪ A quoi bon」
キャクトラ「あっさぁもよっるぅも~♪ こっいぃ~こぉがれて♪」
アオラ「来たぁーっ! おれたちの祈りが通じたんだぁーっ!」
ルル「ODE! ドラム! キャク様ーっ!」
ラン「容姿端麗だが慇懃無礼! サングラスの下にはつぶらな瞳が隠れてると、もっぱらの噂やぁーっ!」
デスピニス「キャク様の出現に対して、レミュさんは・・・・・・」
レラ「Un aquoiboniste♪ Un modeste guitariste♪」
アオラ「無視だぁーっ! ガン無視だぁーっ!
ルル「一瞥もくれずに演奏を続行ですわーっ!」
ラン「そしてキャク様、微動だにせんやんかーっ!」
デスピニス「若干ヘコんでいるように見えます」
ヴィレアム(ふんっ、どうだキャクトラめ。いつもいつも俺にダメ出ししやがって。
これで少しは俺の苦労がわかるだろ。
それにしても)
レラ「Qui n'est jamais dens le ton♪ A quoi bon♪」
アクセル「なんだなっ! これがなっ! ベーオウルフっ!」
ヴィレアム(ダメじゃないかレラ! なってない、全然なってないよ!
『なんだな、これがな、ベーオウルフ』って、韻踏み切れてないし!
せっかくニュータイプ至上主義の豚っていう素材がいるのに、まったく活用できてないじゃないか!
ステージはな、ステージはなぁっ、
歌だけ歌ってりゃいいってわけじゃねぇんだぞあのチビニュータイプがぁっ!)
レラ「Qui me dit le regard triste♪」
アオラ「レミュさんがサビに入ってしまったぞぉーっ!」
ルル「ニュータイプ至上主義の豚はウロウロしていますわーっ!」
ラン「このまま歌い上げてしまうんかぁーっ!?」
デスピニス「いえ」
SOUSHITSUせよ! SOUSHITSUせよ! SOUSHITSUせよ!
アオラ「この高らかなお声はぁーっ!」
ルル「きゃーっ! 待っていましたわぁーっ!」
アオラ「ODE! ギター! ボーカル! ヴィレカイザーさん!
ルル「年齢、出身地、好きな戦国武将、そのすべてに関する記憶をSOUSHITSUしている!
ミネラルたっぷりなその所業は、まさにワカメそのものですわぁーっ!」
ラン「このタイミング! まさに煮えたぎる熱湯にワカメをぶち込むかのごとくやぁーっ!」
デスピニス「塩味が効いてるということですね」
ヴィレアム「テトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトン
テトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトンテトラクトゥスグラマトン!」
レラ「Toi je t'aime♪ les autres ce sont♪」
アオラ「ヴィレカイザーさん、いきなり奥義の『1秒間に10回テトラクトゥスグラマトン発言』を繰り出したぁーっ!」
ラン「せやけどレミュさんも一歩も退かずーっ!」
ルル「真っ向からのボーカルバトルですわぁーっ!」
デスピニス「しかし、本来調停役であるはずのキャク様は、
少し離れた場所で手持ちぶさたにベースをいじっているのみ」
アオラ「いったい、誰がこの場を収められるっていうんだぁーっ!」
アクセル「・・・・・・なんだな」
ルル「豚ですわぁーっ! ニュータイプ至上主義の豚が反応していますわぁーっ!」
ラン「両巨頭の間をウロウロしてはるやんかぁーっ!」
デスピニス「迷っているのです。真のボスはどちらか」
アオラ「もう、ニュータイプ至上主義の豚に頼るしかなぁーいっ!」
ルル「頼みましたわニュータイプ至上主義の豚ーっ!」
ラン「困ったときのニュータイプ至上主義の豚頼みやんかぁーっ!」
デスピニス「この、携帯機出身ニュータイプ至上主義の豚」
がしっ
ヴィレアム「覚えてるいるか、あのセノーテでのことを」
アクセル「なんだなっ!?」
ヴィレアム「覚えているか、身を挺してお前を守ったマルティンという男の名を」
アクセル「なっ、なん~!」
ヴィレアム「あのときお前を見送ったティモという少年、
この姿を見たらどう思うだろうなぁっ!」
アクセル「あぁぁぁぁぁ~っ!」
アオラ「なんという、胸をえぐるような言葉責めなんだぁーっ!」
ルル「まるで、スーパーロボット大戦OGクロニクルを熟読しているかのような
言葉の冴えですわーっ!」
ヴィレアム「ちまちま二回行動してんじゃねぇこのウィンキー時代のニュータイプがぁーっ!」
アクセル「あぁぁぁぁぁっ!」
アオラ「ヴィレカイザーさん、ニュータイプ至上主義の豚の首根っこを捕まえたぁーっ!」
ルル「そして御手をーっ!」
ヴィレアム「お前の特殊技能は、これだろうがぁっ!」
スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ
アオラ「疾きこと風の如く!」
ルル「徐かなること林の如く!」
ラン「侵掠すること火の如く!」
デスピニス「叫ぶこと赤ワカメの如し!」
スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ
アクセル「でぃぃぃっや! でぃぃぃっや! でぃぃぃっや! でぃぃぃっや!!」
アオラ「『スパンキン風林火でぃぃぃぃぃっや』だぁーっ!」
ルル「きゃーっ! 今日は100『でぃぃぃぃぃっや』越える勢いですわぁーっ!」
レラ「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・」
ズダダダダダダダダダッ!
デスピニス「レミュさんが、レミュさんがドラムに専念し始めました!」
ベベベベベベベ
ラン「そしてキャク様もベースに復帰しはったやんかぁーっ!」
アオラ「これぞODE×ニュータイプ至上主義の豚のあるべき姿なんだぁーっ!」
ルル「さすがニュータイプ至上主義の豚、お目が高いですわぁーっ!」
デスピニス「ああ、お母さん、わたし、怒張してしまいそうです」
【小一時間後 公園】
ヴィレアム「ハァ、ハァ、もう追ってこないか」
キャクトラ「まさか、警察を呼ばれるとはな」
ヴィレアム「なにが『まさか』だよ。あれだけ店の中のもの壊してたら、当たり前だ」
キャクトラ「しかし壊したのは友だ」
ヴィレアム「しょうがないだろ、あの場合!」
レラ「・・・・・・ぜひ、・・・・・・ぜひ」
アクセル「いまにも息絶えそうだが、いいのか、この子は」
ヴィレアム「わぁ~、レラぁっ!」
キャクトラ「レラ殿ぉ~っ!」
レラ「・・・・・・ぜひ」
ヴィレアム「ふぅ、蘇生したか。まったく、お前は俺たちがいないとダメなんだから」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
キャクトラ「『その言葉、そっくりそのまま返してやる』と、レラ殿はふくれっ面だ」
ヴィレアム「口が減らないなぁ、お前も」
ヴィレアム「あのさぁ、レラ。
残酷なこというようだけど、俺たちはずっとお前とバンドやってるわけにはいかないんだよ」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
ヴィレアム「でも、さ。お前は音楽続けるべきだと思うよ。
お前は才能あるし、熱意あるもんな。
バンドやるなら、俺たちよりずっと上手いやつ、いくらでもいるんだし」
キャクトラ「しかし、友よ!」
ヴィレアム「お前、バンドやるようになってずいぶん変わったよ。
昔は、生きてても死んでるみたいだったもんな。
たぶんそれ、目標っていうものができたからだろ。
そういうの、いいと思う。
俺もおなじだからな。かなえられるのかどうか微妙な目標追いかけてる。
クォヴレーさんに勝つっていう」
キャクトラ「友よ」
ヴィレアム「キャクトラが妙にレラに懐いてる理由、なんとなくわかったよ。
お前とバンドやってると、テンション上がるんだ。
できないことなんかなにもないって、そういう」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
ヴィレアム「だからさ、ちゃんとしたメンバー見つかるまで、俺たちとバンドやろう」
レラ「・・・・・・、・・・・・・」
キャクトラ「ははぁっ!」
ヴィレアム「どうしたんだよ、顔真っ青にして」
キャクトラ「『いまさらなんだけど、仮にお前がクォヴレーさんに勝てたとして、
クォヴレーさんを殴り倒すような男をゼラドは好きになるのか』
と、レラ殿が素朴な疑問を呈していらっしゃる」
ヴィレアム「お前はなんでそういうことをなぁっ!?」
アクセル「全員、まだ生ワカメだ。これがな」
最終更新:2009年10月17日 14:39