マーズの遵法精神


20代目スレ 2007/12/05(水)

 【工場前】
マーズ「だいじなことなぁんて~、じぶぅんで見つけぇるよー、きょぉっしつの窓かぁら~」
カズマ「いよっ」
マーズ「うぇ、なんでいんの」
カズマ「ああ、ここの工場に、部品の卸しだ。お前は?」
マーズ「監査だよ、監査。年末迫ってて忙しーんだから、監査法人に雇われてんの」
カズマ「それよりどうだ、久しぶりなんだし、メシでも」
マーズ「あのね、おれ、味覚ねーからさー」
カズマ「ちょっと待てよ。なんでないんだ。ちゃんと付けてやったろ!?」
マーズ「あと、嗅覚もないよ。メモリ容量食っちゃうから、外しちゃった」
カズマ「あのなあ、お前」
マーズ「ほら、あれだよ。あえて五感を断つことによって、小宇宙を高めてんだよ。
 シホミおばちゃんもやってんじゃん」
カズマ「シホミ姉はそんなことやってねえよ!」
マーズ「うっそ、マジで! ウソだい、やってるよ。
 絶対やってないって、いーきれんの!?」
カズマ「絶対やってねえとは言い切れねえけども!
 どっちにしろ、お前に小宇宙なんかないからな! なれてせいぜい鋼鉄聖闘士だからな!」
マーズ「鋼鉄聖闘士バカにすんじゃねーよ!
 謝れ! 子狐座ランドクロスの大地さんに謝れ!」
カズマ「でも、お前蟹座のマニゴルドさんとか好きだろ?」
マーズ「蟹座のマニゴルドさんは好きだけれども!
 ちゅーか、いー歳して、いつまでも少年マンガ読んでんじゃねーよ! 恥ずかしーよ!」

カズマ「とにかく、お前、ここはやめとけ」
マーズ「は? なにいってんの」
カズマ「お前じゃ、荷が重いっていってんの」
マーズ「ざけんじゃねーよ! こいつぁ、おれのシノギだ!
 口出しすんじゃねー!」


 【工場内】
タカヤ「あれ、君は」
マーズ「おにーさん。なにしてんの」
タカヤ「バイトだよ。君は?」
マーズ「監査だよ。企業が作成した財務諸表がちゃんとしてんのかどーか、調べんの。
 株主さんが株買うとき、損益とかキャッシュフローの状態を目安にすんだけど、
 これが企業の自己申告だったりすると不安でしょ?
 だから、第三者的な立場から太鼓判押すひつよーがあんの」
タカヤ「前から思ってたんだけど、君の本業はいったいなんなんだい?」
マーズ「んー、いっちゃん近いのは、中小企業診断士っちゅーのじゃないのかな。
 経営改善とか節税方法とか、経営にかかわることの相談に乗るんだ。
 ちっちゃい会社だと企画部なんかないから、新しいショーバイを提案したりもするよ。
 よーするに、法知識で武装した何でも屋みたいなもん」
タカヤ「子供なのに、なんだか難しいことやってるんだな」
マーズ「おれロボだしなー、パソコンとかにそんなセリフ吐かないでしょー?
 それより、それ、なにやってんの」
タカヤ「ああ、古い冷蔵庫とか電子レンジとかを修理してるんだよ」
マーズ「なんでそんなことしてんの?
 それに、なによこの古い家電製品の山。
 この会社って、大手の下請けで部品作ってるだけのはずなんだけど」
タカヤ「そうだけど、近所のひとからいらない家電製品を引き取って、修理販売もしてるんだ」
マーズ「えぁっ!?」
タカヤ「リサイクルにもなるしさ、ここの社長は立派なひとだよ。
 おれもこの仕事は気に入っててさ、機械の勉強とか、してみようと」
マーズ「えぇ~と、あのね」
タカヤ「どうしたんだい?」
マーズ「おれ、この会社を告発する」
タカヤ「そんな、なんで!?」
マーズ「家電製品を引き取ってるっていったよね。
 自分以外が出したゴミを保管するっていうのは、無償でも業務として見なされんの。
 そうすると行政からの許可が必要なんだけど、この会社はそんなもの持ってない。
 それにね、仕分けされた廃棄物がたまったら、一定期間内に処分しなくちゃなんないの。
 通常の廃棄物で90日以内、特殊な廃棄物で180日。
 部品の汚れ具合とか見ると、それも守ってないみたいだし。
 廃棄物処理法とか、自治体の条例に違反してんだよ」
タカヤ「でも、社長には悪意なんかないんだ。むしろ善意で」
マーズ「そんでもっ、法律違反は法律違反なんだよ!
 おれは監査でここに来てるんだ。
 企業がまっとーなアキナイしてるのを保証するのが仕事なんだ。
 違法行為をしてる会社の株を、株主さんたちに買わせるわけにはいかねーんだ!」
タカヤ「君は、結局おカネのことしか考えないのか」
マーズ「カネってゆーのはね、平等なんだ。
 大人でも子供でも年寄りでもロボでも、10円は10円だし、100円は100円なんだ。
 その価値を保証してるのは、信用なんだ。
 だからね、人間のほーも、カネを裏切ったらいけねーんだよ!」
タカヤ「もういい。俺は、この会社が間違ってるとは思わない」
マーズ「間違っちゃ、いないよ。ただ、法律に違反してるってゆーだけで」


 【工場前】
カズマ「だから、やめとけっていったんだ」
マーズ「あんただったら、ヘラヘラ見過ごすんだろーね」
カズマ「誰が損してるわけじゃないしな。
 俺はトレイラーであって、警官でも裁判官でもないんだ」
マーズ「おれは、ダメだよ。ロボだもん。融通きかねーんだ、そのへん」
カズマ「お前さ、やっぱり嗅覚を取っ払っちゃったのは失敗だよ」
マーズ「なにをいってんのさ、突然」
カズマ「お前の頭ン中に入ってるそれは、なんだ? データベースだろ」
マーズ「あー、そーゆーこと」

 【社長室】
マーズ「つまりだね、古物商の許可取って、『うちはリサイクルもやってます』って看板掲げればいーんだよ。
 けーさつ行って、必要書類と手数料払えば、前科モンでない限り許可降りるから。
 すでにある在庫物についてだけど、これは『以前から近所のひとが勝手に放置してった』って言い張りゃいーんだ。
 かなりギリギリな手だけど、行政なんて動きが鈍いからじゅーぶんやり過ごせるよ。これで」
マサキ(冥)「許可など取るものかっ!」
マーズ「ふぇっ、なにいってんの!?」
マサキ(冥)「ご近所の老いぼれどもに請われて、仕方なしに家電製品を修理してやることが、俺の原点だった。
 運良く勤め先で工場をひとつ任されて、
 こうして小さいながらも会社を経営するようになっても初心を忘れてはならんと考えていた」
マーズ「そんなに前からやってたんなら、許可くらい取っといてよ、もー!」
マサキ(冥)「ご近所の老いぼれどもに責任を押しつけてまで、法から逃れようとは思わん」
マーズ「なんでさ! あんただって、アキンドだろ。
 アキンドだったら、目の前の利益をフイにするよーな真似!」
マサキ(冥)「小僧、商売とは、それだけではないのだと含蓄ある言葉を吐いてやらんこともない」
マーズ「なんだよ、それ。なんなんだよっ、コンチクショーっ!」

 【工場前】
カズマ「会ってかないのか? あの少年」
マーズ「分の悪い賭けは、どっちでもいーんだよ」
カズマ「フフッ」
マーズ「カッコつけた笑い方してんじゃねーよ! あんたいつまで邪気眼なんだよ!」
カズマ「俺も、こういうふうに見えてたのかなぁって」
マーズ「勘違いしてんじゃねーよ!
 おれが動いたのは、あんたのためでもおにーさんのためでもねー!
 おれがアキンドでい続けるためだ! アキンドは、出せる儲けを一文だって逃さねー!
 それがアキンドのプライドだからだ、職業意識ってやつだからだ!
 だっことかおんぶとか、そんなんなくてもへーきだもん!」
カズマ「おい、どこ行くんだ?」
マーズ「鼻ぁ、買いに行くんだ」

マーズ「ひとーりじゃ、なーいさ、くじけそーぉなとーきはー、ぜったぁーいむてきー」

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最終更新:2009年10月17日 14:41
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