マーズと労働法


21代目スレ 2007/12/21(金)

ミナト「兄貴! 今日は」
トウキ「ああ、給料日だな!」
デスブラック獣人デスヘル「はいよ、お疲れ」
トウキ「え・・・・・・?」

 【マーズの事務所】
マーズ「彼女ってゆーのはね、できないひとには、ほんっとできないもんなの。
 ちゅーか、まじ、ひくぐらい」
ミナト「誰がそんなこと相談に来るかぁっ!?」
マーズ「あー、よかった。
 おれロボだから人間の命令には絶対ふくじゅーだけど、できねーことはできねーかんね」

トウキ「三日間肉体労働して、給料がこれだけってありかよ!
 時給にしたら500円いかねえぞ!」
マーズ「あー、そりゃ、やられたね。ごしゅーしょーさま」
ミナト「求人広告じゃ、日給1万円て書いてあったのに!」
マーズ「『1万円以上可』ね。いまどき、こんなチラシに騙されちゃダメだよ」
トウキ「こういうのって、法律違反じゃねえのか!?」
マーズ「最低賃金のこと? このへんだと、時給700円ちょいだっけ。
 まー、たしか違法なんだけど、2万円以下の罰金で済んじゃう、軽ぅ~い罪だもん」
トウキ「2万円て!」
マーズ「あー、最近50万に引き上げられたんだっけかな」
ミナト「じゃ、それを」
マーズ「あー、あのね、罰金ってゆーのはお国が取るモンなの。個人に入るもんじゃねーの。
 どっちにしろ、最低賃金なんて目安みたいなもんなんだから、
 モラルとか気にしないひとなら、もー、ばんばん違反するって」
トウキ「それでも限度ってもんがあるだろう!」
マーズ「時給500円なんて、かぁいいもんじゃない。
 きょーび、ギャグでもなんでもなく時給300円で働いてくださる外国からのお客さんが、たっくさんいるもん。
 ほら、駅前の飲み屋さんなんかにさ。
 あのひとたちはコミュニティで生活してて日常生活でおカネかかんないから、
 けっこー貯金してお国に帰るみたいだよ?」
トウキ「そういえば、外国人が多かったような」
ミナト「でも、俺たちはここに暮らしてるんだよ!
 あんな給料じゃやってけねぇんだ!」
トウキ「そうだ! ホワイトクリスマスに向けて、クリハへのプレゼント費用稼いでたのに!」
ミナト「ホワイトクリスマスに向けて、写真集やDVDをしこたま買い込もうと思ってたのに!」
マーズ「レギュレイトおばーちゃーん!
 このひとたち、兄弟でホワイトクリスマスの意味がジャッカン異なってるよー!」


マーズ「えーっとね、結論からゆーと、一文も取れないと思うよ」
ミナト「そんなのありかよ!」
マーズ「こーゆーケースの場合、まず労働基準監督局に行くもんなんだよ。
 まっとーな企業だったら労働基準監督局の調査食らうなんて大ダメージだもん。
 でも、まっとーじゃない企業の場合、まー、虫に刺されたよーなもん。
 おにーさんたちの場合、あっとー的に後者でしょー?」
トウキ「だって、違法なんだろ? 警察とか、裁判とか」
マーズ「んっと、キホン的に刑事裁判とゆーものを誤解してんじゃないかな?
 お上が犯罪者を捕まえるのは、『AがBを騙した』からじゃないのね。
 『Aが国の定めた法律に違反し、秩序を乱した』からなの。
 人間対人間の遺恨とゆーのは民事の領域になるから。
 知ってるでしょ? 警察は民事に不介入!
 被害者は証人としてしか法廷に立てねーの。
 相手がてきとーなウソでっち上げても、反論の機会はナシ。
 傍聴席で変に騒いだら、つまみ出されるよ」
ミナト「じゃ、民事裁判ていうのか? それで」
マーズ「裁判とゆーのはねー、大変なおカネと時間がかかるんもんだよ?
 おにーさんたちの場合、請求額は10万円いかない少額訴訟でしょ?
 そうすっと、弁護士費用はなんとか安く抑えることはできるけど。
 まず内容証明送んなくちゃ。こんとき相手の住所がわかってないと、そもそも裁判起こせないかんね。
 あと、証人呼ぶとしたら日当払ったげなくっちゃだし、
 『Aが悪さしました』ってことを法的に証明しなくっちゃだから、警察行って調書やなんかコピーさせてもらわなきゃだけど、、
 このコピー代ってのが、なぜか一枚あたりのコンビニの何倍も料金がかかんのね。
 で、量がとんでもないから、結局何万円かかかっちゃう。
 合計すると、どーしたって赤字になっちゃうよ」
トウキ「そういうの、裁判に勝ったら相手に請求できるんだろ?」
マーズ「まー、原則的にはね。でも、まず払ってくんないと思うよ。
 法律バラエティ番組じゃないんだから、慰謝料なんてちゃんと払ってるのは全体の40%くらいだって。
 だいたい、このへんだと懲罰的慰謝料ってのは認められてねーから、そんなに高いカネは請求できねーの。
 それに話聞いてると、たぶん相手は確信的なあれだから。
 商売にミソ付いたら、ちゃっちゃと稼いだカネ闇銀行にブチ込んで、会社を倒産させちゃうだろーね。
 そうなったら、アウツ・・・・・・! 強制執行もイミねーよ。
 生存権てのは憲法で認められてるもんだし、
 地球のこのへんじゃ懲罰的慰謝料ってのは認められてねーから、あんまムチャな額は請求できねーの。
 カネ持ってない相手からムリに請求すると、逆に恐喝罪問われたりしちゃうから気を付けてね」
ミナト「八方ふさがりじゃねえか!」
マーズ「はっぽーふさがりだね。
 ケチな詐欺に遭っちゃったらね、泣き寝入りするしかねーのがゲンジツなの。
 犬に噛まれたと思って、ちゃっちゃと次のバイト探したほーがいーよ」


ミナト「兄貴ぃ~! 俺、もうどん引きだよぉ! こいつの吐く言葉ひとつひとつにどん引きだよぉ!
 なにより、もう現実にドン引きだよ。
 家帰ってゲームしてようよぉ~」
トウキ「落ち着けミナト。ダメな結論に達するな。きちんと現実と向き合うんだ」
ミナト「だってよぉ! 非現実しか残ってねえっていうのが、俺の現実くさいんだよぉ!」
トウキ「そんなことは、えーと」
ミナト「えーとってなんだよ!? ウソでもいいから綺麗事吐けよ!」
マーズ「あー、相談料無料なのは最初の1時間だけだかんね。
 もーあと10分すると、料金が発生しちゃうよ。
 あのね、おれだって年の瀬でいそがしーの。見てよ、このチケットの山。
 狼と香辛料の匂いがするおねーさんが、ありんすありんすいーながらゴリ押ししてくっから買っちゃったけど、
 モノがモノだけに、売り時逃したらただの紙切れなんだよね」
ミナト「これだよ! こいつ、見てくれは子供でも頭ン中はミリオン出版だよ! 実話ナックルズだよ!」
マーズ「しっつれーだな。微妙なエロ本になる前の『実話GON』だよ。
 あんなわけわかんねー雑誌が売れるわけねーってゆー理屈はわかるけど、惜しーよね」
ミナト「あいつやっぱわかってねーよ!
 GONはリニューアル後こそ真骨頂なのに!」
マーズ「こわっ!? あれをエロ本として買うニンゲンて実在してたのぉーっ!?」
トウキ「おまえらなんの話してんだ」

マーズ「そんなことよりさー、パンチラ禁止令出てんじゃん?
 おれ、登場してからこっち、常時パンツはいてねーんだよね。
 ねーっ、これって問題かなー。パンツはいたほーがいーのかなー」
トウキ「いや、お前ロボだから、べつにパンツはいてなくていいだろ」
ミナト「そのメカメカしい4本足で、どうやってパンツはくんだよ」
マーズ「なんだよ、もー! そんなにゆーなら、パンツ買ってよ!」
トウキ「なぜ俺たちがお前にパンツを」
ミナト「兄貴、なぜ『たち』を付ける」


 【デパート】
マーズ「まったくもー、信じらんないよ」
ミナト「黒のビキニパンツって、お前子供のくせになんてパンツはいてんだ」
マーズ「後足はプリキュアパンツだよ」
トウキ「どっちにしろセンス最悪だよ!」
マーズ「そっちこそ! 下着売り場に着くやいなや、
 おれにそーだんもせずにブリーフ買おうとして! しかも白いやつ!
 忘れたとはいわせねーよ!」
トウキ「忘れてないけど、お前子供なんだから、ブリーフでいいだろ」
マーズ「ゼラドちゃんちの銀ピカおにーさんとかぶんじゃん!」
トウキ「クォヴレーさんがブリーフ派ってことを確定情報のように扱うな」
ミナト「俺もブリーフ派だ。むしろブーメランパンツ派だ」
トウキ「なぜお前も下着の趣味をカミングアウトする」
ミナト「兄貴もブリーフ派だぜ。しかも、たまに異様に派手なのはいて、ひかれてるぜ」
トウキ「バラすなよ! あとひかれてねえよ!」
ミナト「ひかれてんだよ!
 兄貴のパンツの柄について相談持ちかけられたときの弟の気持ちがわかんのかぁっ!?」
マーズ「えー、なにこのブリーフ率の高さ。
 あー、でも、やっべー、ヘタこいたー。
 ギャラもらっちゃったよ。これじゃ、働かなくっちゃじゃん」
トウキ「え、なんだこいつ、ロボのくせにこの不器用さ」
ミナト「なんとかしてくれんのか!?」
マーズ「住人がドン引きするほどの非道な手段と、
 まー合法っちゃ合法だけど違法っちゃ違法ってゆーグレイな手段があるけど、
 どっちがいーい?」
トウキ「どっちもこっちもあるか! 1択だよ、1択!」
ミナト「ドン引きとかじゃねえからな! もう、嫌悪感だからな!
 お前、次やったらほんと消されるぞ!」
マーズ「おっけー、おっけー、
 ほんじゃー、いっちょ、パンツ2枚分、プロフェッショナルの腕ってやつを」パシンパシンッ
ミナト「いっとくけど、そのパンツ引っ張ってパシンパシンする動作、カッコよくねえからな」
マーズ「まっずまずにしてやんよ」
トウキ「ほどほどなのかよ」


 【繁華街】
マーズ「外国人が多いってゆってたよね」
トウキ「ああ、ちょうどあそこに」

マーズ「ポコポコ、パコパコ、カモチャン、ペケペケポコポコ」
フィリピーナ「オー、パクペケ、カモ、プクペケポコ」
マーズ「ポコポコ、カモ、プクプクプク」

トウキ「・・・・・・なんか喋ってる」
ミナト「フィリピンの言葉はポコポコいってるようにしか聞こえねえぜ」
マーズ「えーっと、明日から二丁目で働けるのはどっちかだって」
トウキ「なんの交渉してたんだ、お前!」
ミナト「ひょっとして、そこにいるお姉さんはお姉さんじゃないのか!?」
マーズ「じょーだんだよ、じょーだん。
 ちゃんと話は付いたから」

 【事務所】
 バサバサバサッ
マーズ「年末に向けての、コンサートとか格闘技のチケット、占めて300万。
 買ってちょ」
デスブラック獣人デスヘル「なんでウチがそがいなもん買わんとならんのじゃボケェッ!」
マーズ「上手いことさばきゃ、350にはなるシノギだよ」
デスブラック獣人デスヘル「そんなん知るか。ウチは忙しいんじゃ。余計な仕事しとる暇」
マーズ「ところでお宅さん、ずいぶん国際色豊かな従業員だけどさ、ビザのほーはどーなってんの」
デスブラック獣人デスヘル「そんなもん、ワシは知らん」
マーズ「知らんじゃねーよ。不法滞在の外国人を使ってた場合、
 不法就労助長罪ってことで、3年以下の懲役か300万以下の罰金だよ。
 雇用者が知ってたかどーか、かかわりなくね」
デスブラック獣人デスヘル「てめぇっ!」
マーズ「まー、入管のメインターゲットはお水屋さんだからさ、
 お宅さんの場合、従業員が駆け込まない限り、まず発覚しないんだろーけど。
 でもさ、ほら、おれは部外者じゃん?」
デスブラック獣人デスヘル「このポンコツがっ! どこがウチのケツモチしてるのか知ってて!」
マーズ「べらぼーめ! 安い脅しかけてんじゃねーよ!
 こちとらぁ起動3時間目から宇宙海賊と渡り合ってんだ!
 暴対法でガンジガラメのイナカヤクザなんざ、いまさらどーだっての!」
デスブラック獣人デスヘル「ぐぅっ」
マーズ「まーおれは分の悪い賭けなんかどっちでもいーんだけど。
 従業員の皆さんは、どーだろーね」


フィリピーナ「オー、強制送還、困リマース!」
フィリピーナ「オー、シャチョサン、オ願イデース」
フィリピーナ「アト、給料上ゲテクダサーイ!」
デスブラック獣人デスヘル「じゃかあしい! やいのやいの騒ぐな!
 どさくさに紛れて賃金の交渉をするな!」
マーズ「あのさ、おれはお宅さんに悪いカンジョーは持ってねーの。
 むしろ、こんなしょっちゅう機動兵器が暴れてるよーな町でシノギやってるなんて立派なもんだよ。
 お給金のほーも、こっちギョーカイじゃ良心的だからさ。
 だから、こんなとこで潰れて欲しくねーの。
 お互い、スマートなビジネスをやろーや。
 さー、簡単な足し算引き算だよ。
 350になるビジネスを取るか、それとも、罰金300と従業員強制送還のマイナス?」
デスブラック獣人デスヘル「クソッ!」バサバサッ!
マーズ「あいあい、お宅さんみたいな業種は、現金払いだから好きよ。
 おれ、基本設計が何億年も前だから、けっこー古風なの。
 電子マネーってのは、どーも風情がなくっていけねーよ」
デスブラック獣人デスヘル「さっさと失せろ!」
マーズ「あー、あとさ、そのチケット、街中なんかで売っちゃダメだよ。
 ダフ屋行為の禁止に関する条例に触れて、5万円以下の罰金または拘留もしくは科料に問われちゃうかんね」
デスブラック獣人デスヘル「この・・・・・・ッ!」
マーズ「んじゃ、ロケットびーばい」


 【歩道】
マーズ「ちうちうたこかい、ほんじゃこれ、時給850円に換算したときの差額ね」
トウキ「あれが、グレーな手段なのか?」
ミナト「お前の中で、どんだけパンツの価値高いんだよ!」
マーズ「なーに? いらねーの? ちゃんとしたお給金が欲しかったんでしょ?」
トウキ「でも、あのフィリピーナの皆さんは、あの給料のまま働き続けるんだろ?」
マーズ「どさくさに紛れて時給50円アップさせてたけどね」
トウキ「俺たちだけ、こんな」
マーズ「向こーは向こー。双方合意の上でのケーヤクなんだから、誰にもクチ出しできねーよ。
 あのひとたちは、どーせお国に帰ってもロクなことないんだから」
トウキ「でもよ!」
マーズ「パンツ2枚分じゃ、こんなとこだよ。
 あのね、カネを稼ぐってのは、ハンパじゃねーのよ。
 じゃー、ロケットびーばい」

ミナト「あの挨拶、気に入ってるのかな」
トウキ「こんなに後味の悪い給料は、初めてだ・・・・・・!」
ミナト「なぁ兄貴ぃ、思うんだけど、俺たち結局、あいつにチケット売りさばく相手紹介しただけなんじゃ」
トウキ「そういうことじゃない。そういうことじゃ」

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最終更新:2009年10月17日 14:41
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