23代目スレ 2008/05/10(土)
ピー ピー ピー ピー
カズマ「うーっし、起動成功。
ちょっとパーツ足りなくて子供サイズになっちまったけど、ま、それはおいおい買い足すとして。
シホミ姉もちぃ姉もミヒロも嫁に行っちまって、ヴァルストークも手が足りねえからな。
今日から、お前にサポートしてもらおうか。
主な仕事は、ヴァルストークの補助と、帳簿の管理だ。俺、金勘定って苦手だからな。
おっと、そうだ。名前決めなくちゃな。
う~ん、俺のライフデータとキャレットのシステムを使ったから・・・・・・、
キャズマ・・・・・・、や、これはちょっとセンス悪いな。
じゃ、カズト・・・・・・、なんかファミレスみたいだな。
カレット・・・・・・、カズレット・・・・・・、キャレッマ・・・・・・。
ま、無理してキャレットと名前混ぜなくていいか。
よし、お前の名前は、俺から2字取って
マーズだ。
うちのルーツは火星にあるわけだしな。あれ? 始原文明エスってことになんのかな。
ま、どっちでもいいや。ガイアーとか呼びそうでカッコいい名前だろ。
じゃ、よろしく頼むぜ? マーズ」
マーズ「・・・・・・いえーす、ますたー」
【宇宙港】
カズマ「はい、ムーバブルフレームが1ダースですね。
お代は・・・・・・、えーっと、めんどくせぇな。あ、端数はいいっすよ。負けときます。
その代わり、今後もヴァルストークファミリーをよろしくお願いいたしますよ?」
客「あんたも、そろそろ嫁さんもらわにゃぁなぁ」
カズマ「ははは、んじゃ、それもよろしくお願いします。
おい、行くぞマーズ」
マーズ「・・・・・・いえーす、ますたー」
【テキサスコロニー】
未亡人「あの、ありがとうございます。助けていただいて」
カズマ「いいんですって、成り行きですから」
未亡人「あの、お礼を」
カズマ「フッ、いいんですよ。
猛獣たちに踏み荒らされんとする一輪の花を、放っておけなかっただけなんですから」
未亡人「なにをおっしゃっているのかよくわかりませんが、とにかくお礼を」
カズマ「じゃ、お客の中で運送のご用がおありの方がいたら、ヴァルストークファミリーの名前を出してください」
未亡人「でも、それじゃ、わたしの気持ちが」
カズマ「フッ、俺はいわば、宇宙を漂うタンブルウィード。
風の向くまま気の向くまま、ひとつどころにゃ留まっちゃいられねえ、不器用な男なんです」
未亡人「また、なにをおっしゃっているのかわかりませんが。
あっ、待ってくださいアーディガンさん、私の、私の気持ちは」
カズマ「アディオス、奥さん」
未亡人「アーディガンさぁーん!」
カズマ「行くぞ、マーズ」
マーズ「・・・・・・いえーす、ますたー」
【ヴァルストーク】
カズマ「で、お前をどうするかだ」
宇宙海賊「カンベンしてください! もう二度とこんなことは!」
カズマ「そうだな。二度とすんなよ」
宇宙海賊「は?」
カズマ「行けよ。今度は、カタギとして会おうぜ」
宇宙海賊「あっ、あぁっ、ありがとうございます!」
カズマ「よし、行ったな。こっちも出発するか。行くぞ、マーズ」
マーズ「・・・・・・いぇー」
カズマ「ん? 復唱はどうした?」
マーズ「やぁってられるかこのカイショーナシがぁぁーっ!」
カズマ「わぁっ、おい、お前、急にどうしたっ!?」
マーズ「どーもこーもあるかぁーっ!
なんなんだよ、あんたときたら! キガルに値下げはするわ、ナリユキでただ働きはするわ!
アゲクの果てに、なんだぁっ!?
あんなうちゅーカイゾク見逃しやがって! 恩でも売ったつもりかぁーっ!
一度墜ちたニンゲンが、そーヤスヤスとこーせーするとでも思ってんのかっ!
あんなれんちゅー、積み荷かっぱいでうちゅーにほーり捨てりゃーいーんだよ!」
カズマ「一体どうなってんだ!? ロボット三原則が壊れたのか!?」
マーズ「べらぼーめっ! ハンザイシャなんざぁー、ハナっからニンゲンにカウントしてねーよ!
ビンボーニンならナオサラだぁーっ!」
カズマ「キャレット! おいキャレット! ちょっと来てくれ! マーズの様子が変だ!
おい、待て、どこ行くんだ!?」
マーズ「あんたとつるんでたら、おれぁいつまでたっても子供ボディのままじゃねーか!
もーぉやってられっか! おれのボディはおれが買う!
自分で稼いで、ひとりでオトナになったらぁーっ!」
カズマ「おい、待て! そっちはエアロックだぞ!?」
がちゃんっ ぶしゅぅーっ!
カズマ「ー! ー! ー!」
マーズ「んきゃきゃきゃっ! くーきがなけりゃー、命令伝えることもできねーだろ!
じゃーね! ロケットびーばい!」
【マーズの事務所 朝】
PiPiPiPiPiPi.....
マーズ「ちぇっ、イミわかんねー。おやじはなに考えてんだ。
ユメ見る機能なんざ、いらねーってのに」
【道ばた】
ガッチャ ガッチャ ガッチャ
マーズ「んでさー、お宅の、いるんだかいねーんだかわかんねー妹さんとは、
いつ会わせてくれんのー?」
ミナト「だから、会わせねえし、うちの妹に興味持つな」
マーズ「あーぁ、つっまんねーの。
じゃさ、おにーさん、ちょっとバイトしてみない?」
ミナト「イヤだよ。お前のバイトなんて、絶対ろくでもねえもん」
マーズ「だーいじょーぶだって。このターバンと付けヒゲ付けて、突っ立てるだけでいーから。
ベシャリは、おれがスーツケースかなんかの中に隠れて、イッサイガッサイやっちゃるからさ」
ミナト「俺になにさせるつもりなんだよ!」
マーズ「やーさ。おれ、この見てくれでしょ?
頭固いヒトとは、まず商談が始まんなくってね。特に中東あたりはきびしーのなんのって。
で、普段はミナミセンジュあたりでお腹とおヒゲの立派なオッサン拾ってきて替え玉にしてんだけど」
ミナト「俺はミナミセンジュのオッサンじゃねえ」
マーズ「そーゆーことゆーもんじゃねーよ。
数年後にはお仲間に入るかもしんねーのに」
ミナト「入ってたまるか!」
ばるんっ ばるんっ
マーズ「ちぇー、じゃーしょーがねーや。
事務所かえって、実写版『風魔の小次郎』のDVDでも観よーかな」
ミナト「・・・・・・おい」
ぶるるるるるっ
マーズ「実写版『風魔の小次郎』がね、意外にアリっちゅーかなんちゅーか」
ミナト「なぁ、お前の後ろに、チェーンソー構えた女子中学生がいるんだけど」
マーズ「ヘンなことゆーね。なんで見ただけで女子中学生だなんてわかんのさ」
ミナト「いや、じゃあ、チェーンソー持った女子高生かもしれないけど」
マーズ「いません。そんなのはいません。もし見えてたとしても、マボロシです。
おれの、セーシュンのオーノー的なものが産み出した、
ネガティブハッピーチェーンソーエッジ的ななにかでーす」
ミナト「懊悩した結果、出てくるのがチェーンソー持った女の子って、
お前それはそれで危険だと思うぞ」
ラーナ「はい、あんよ」
マーズ「そー、あんよが。って、きゃーっ!」
ラーナ「こんにちは、ローボくん」
マーズ「なんでいんの! なんで出てくんの! なんでアイサツ代わりにおれの脚もぐの!」
ラーナ「なにか閑散としてるし、いいかなと思って」
マーズ「あー、そっか、うん」
ミナト「この子、お前の知り合いか?」
マーズ「L&Eとゆー解体業者のおじょーちゃんで、
ラーナ・モントーヤちゃん」
ラーナ「ご不要となった建築物、機動兵器、自動人形などの
解体のご用命があれば、是非我が社をご利用ください」
ミナト「違う、俺が知ってるL&Eは解体業者じゃない」
マーズ「ヒニクもつーじねーよ、この子は。
あのさ、ラーナちゃん、君のおとーさんがなにかっちゅーと解体解体ゆってたのは、
エネルギーの神秘かなんかを解き明かすためでしょ?
解体そのものが好きなわけじゃねーでしょ?」
ラーナ「わたしは解体そのものが好きです」
マーズ「ダメじゃん! 改悪じゃん! 改悪もいーとこじゃん!」
ラーナ「解体が『明日のナージャ』より好きです」
マーズ「あー、じゃー、しょーがねーか」
ミナト「しょうがなくはねえだろ。おかしいだろ。
『明日のナージャ』よりって、この子あんまり解体好きじゃないだろ。
解体よりプリキュアの方が好きだろ、明らかに」
ラーナ「プリキュアは、よくわかんないです」
ミナト「ますますおかしいだろ! 『明日のナージャ』より『ふたりはプリキュア』が!
『ふたりはプリキュアMaxHeart』が! 『ふたりはプリキュアSplashStar』が!
『Yes!プリキュア5』が! 『Yes!プリキュア5GoGo!』が!
好きなもんだろうが、フツーっ!」
ラーナ「プリキュアとか始まったときはわたし、もう大きかったので、
そういうの卒業してたんです。
むしろあなたは高校生にもなって、しかも男のひとなのに、なにをプリキュアプリキュア連呼しているんですか」
ミナト「げほっ、げほげほっ、なんか、むせた! 胸が、胸が痛い!」
ラーナ「ああ、あなたですか。
噂の、カノウ兄弟の恐ろしい笑顔で女子中学生の写真集買う方というのは」
ミナト「根も葉もねぇ噂だ! なんだその風評被害!」
マーズ「えー、でもおにーさん、AKB48の写真集とか、買うでしょ?」
ミナト「買うよ。布教用と保存用と実用に、3冊ずつな」
マーズ「中学生のメンバーとか、いんじゃん」
ミナト「AKB48を女子中学生とかいう俗世の価値基準でくくるんじゃねえ!
彼女たちは天使だ! 地上に舞い降りた天使だ!」
マーズ「あのね、怖い。アイドルと対談してるときの南海キャンディーズヤマちゃんより怖い」
ラーナ「ヴァンゲリの話し始めてしまったときのオリラジあっちゃん並に恐ろしいです」
ミナト「あのな、俺にも、もう立ち直れないっていうラインはあるんだぞ?
しかもエヴァをヴァンゲリって呼ぶとか」
マーズ「で、なにしに来たの。
このおにーさんのセーシンを解体しに来たわけじゃねーでしょ?」
ラーナ「はい、お仕事の話です」
マーズ「あーあー、聞こえねー聞こえねー。
おれは実写版『風魔の小太郎』が、リュウセイロケットが」
ラーナ「学校の裏山に、もう10年以上放置されている廃病院があるのです」
ミナト「あぁ、あの病院、まだあったのか。小学生のころ、肝試しに行ったよ」
ラーナ「このたび取り壊して、さる企業の研究所が作られることになったのです。
そこで、わたしのところに古い建物を解体して欲しいという依頼が来て」
マーズ「ふーん、そりゃー、しょーばいはんじょー、けっこーなことじゃねーの」
ラーナ「ところが、そこが、出るそうなんです」
マーズ「なに、その手」
ラーナ「おばけ」
ミナト「あぁ、そういや、あったな。そういう噂」
マーズ「なに、キミ、お化けこえーのぉー?」
ラーナ「こっ、怖くなんかありませんっ! わ、わたしは、あれですよ、
エンジェル様を呼び出しておいて、お帰り願わずにお開きにするほど迷信の類を信じていないんですよ!」
ミナト「中学生って、まだコックリさんとかやってるのか」
ラーナ「コックリさんじゃありません。エンジェル様です」
マーズ「おんなしだよ」
ラーナ「わたしひとりじゃ物騒なので、着いてきてください」
マーズ「あのさー、明らかに来るとこ間違えてっからね。
おれはロボだからね。霊感とかゼロだかんね。
第一ね、ゆーれーなんかいるわけねーでしょ。もしいんなら、
10年前に幽霊聖闘士を舎弟にしてたってゆーシャイナさんの劇中年齢はどーなっちゃうの」
ラーナ「冷たいのですね。あなた、それでもアテナの聖闘士の親戚ですか」
マーズ「んー、それをいわれっと、よえーんだけど」
ミナト「弱くなっちゃダメだろ。あのな、前からいおういおうと思ってたけど、
聖闘士って、いねえからな! 車田アニキの空想上の産物だからな!」
マーズ「みょ~なことゆーね、このおにーさんは。
シホミおばちゃんが乙女座バルゴの黄金聖闘士じゃなかったら、いったい何者だってーの」
ミナト「わからねえよ。何者なんだよ、お前の叔母さん」
マーズ「キミもさー、そーゆーことなら、クラスのカッコいー男の子でもさそえばいーじゃねーの。
あまずっぺーなにかが芽生えるかもしんねーし」
ラーナ「ぷん。クラスの男の子たちなんて、子供っぽくて相手にしてられません」
マーズ「あのね、おれはもっとガキだかんね。
見た目10歳てーどだけど、起動してから3年も経ってねーからね」
ラーナ「ねぇねぇ、いいじゃないですか。バレンタインにチョコあげたじゃないですか」
マーズ「あー、あれ、キミだったの。名前も書かねーで。
手つかずで冷蔵庫に入れてあっから、持って帰っていーよ」
ラーナ「ぴぃ」
ミナト「あ、ヒドい。お前、いまのはほんとヒドい」
マーズ「あー、まいったなー、ふんじゃー、ギャラもらってることになっちゃうのか。
わかったよ。行くよ。役にゃー立たねーだろーけどね」
ラーナ「わぁ」
マーズ「そんかし、このおにーさんもイッショね」
ミナト「俺を巻き込むんじゃねえよ!」
マーズ「子供だけで遠くいったら、あぶねーんだよ?」
ミナト「ひとりで中東行って帰ってくるロボがなにいってやがる!」
マーズ「だーっておにーさん、パンチ得意なんでしょ? カラテやってんでしょ?
ブドーカなんでしょ? お化け退治はブドーカのツトメだって、
こないだ道で会ったパンダさんがゆってたよ?」
ミナト「お前、中国嫌いなくせになにパンダと会話してんだよ」
マーズ「パンダさんにゃ罪はねーじゃねーの」
マーズ「ちょちょちょ、耳貸してよ」
ミナト「なんだよ」
マーズ「おれがパス出すからさ、おにーさん、あの子とフラグ立てちゃえよ。
わーお、ちょーめーあんじゃん、おにーさんにはカノジョできっし、おれのあんよも安泰だーっ」
ミナト「バカいえ、中学生に手なんか出せるかよ」
マーズ「えー、だっておにーさん、女子中学生に目ぇないでしょー?」
ミナト「根も葉もなく決め付けんな。俺はね、本来年上が好きなの」
マーズ「なっち好きとかいってんのに?」
ミナト「お前、なっちが今年いくつになると思ってんだよ。
そろそろ年齢ネタでいじられてたころのナカザワねーさんに手が届くぞ」
マーズ「えー、そんな方向性のねじくれたなっち好き、はじめて見たよ」
ミナト「俺に押しつけようとすんな。ほんとお前は人の情けってもんが」
マーズ「あー、せっきょーはいーよ。ねー、たのむよ。ギャラは払うからさ。
お化けっつっても、どーせそのへんのワルガキがイタズラしてるだけでしょー?
相手がニンゲンじゃ、おれてーこーできねーもの。あの子、あぶねーよ」
マーズ「とゆーわけで、道知ってるみてーだし、オブザーバーとして、
カノウ兄弟の女子中学生の膝小僧舐めた前科を持ってるおにーさんです」
ラーナ「びく」
ミナト「前科を捏造するんじゃねえ!」
マーズ「んー、でも、赤毛のおねーさんが中学のころ、
グランドでコケて怪我したときイタイのイタイの飛んでけー的なことを、
こないだ聞ーたよーな聞かねーよーな。
えーと、そっか、あんときデフラグちゅーだったから、よく覚えてねーや」
ラーナ「それは、わりと重要な情報なのじゃないですか?」
マーズ「いーんじゃねーの、ホンニンも忘れてるみてーだし」
ラーナ「でも、膝小僧を舐められるのは、ちょっとぞっとしません」
ミナト「舐めねえから。まだブラもしてないような子供相手にだな」
ラーナ「ぷん、ブラならしてます、ほら」ぺろん
マーズ「ぺろんしねーの」
ミナト「ぺったんこのくせに、なんでそんな、無闇にフリフリ付いたブラを」
ラーナ「がんばりました」
マーズ「がんばりすぎー」
【学校の裏山】
ラーナ「ハーイキングハーイキング、ら・ら・ら」
ミナト「この山登るのも、ひさしぶりだな。ガキのころはよく来たよなぁ。
あーぁ、あのころ、俺と兄貴の間にはなんの差もなかったのに」
マーズ「いーお天気だってーのに、ネガティブなこといーだしたよ、このおにーさんは」
ラーナ「あっ、あれを」
マーズ「きゃーっ! きゃーっ! きゃーっ! 出たぁーっ!」
ラーナ「重いです重いですしがみつかないでください」
ミナト「結局お前もお化け怖いのかよ!」
ラーナ「なんでしょう、あれは。身の丈20メートルはあろうかという少女が」
マーズ「しょーじょってゆーか、あれ、明らかにゼラドちゃんなんだけど。
なに? 食べ過ぎてキョダイ化しちゃったとか?」
ミナト「あぁ、あれ、
ダイゼラドと
ルナシオーネじゃねえか。
最近見かけないと思ったら、こんなとこに放置してたのかよ」
マーズ「ひでーよ、ひでーよ、こんなん、不法投棄になっちゃうよ!」
ラーナ「どうしましょう。解体しますか」
マーズ「どーするおにーさん、フラグ立ててく?」
ミナト「立てるかぁっ! 顔にペンペン草生えてる巨大人形相手に、なにしろってんだよ!」
ミナト「取りあえず、持ち主は割れてるわけだから。
連絡して取りに来させりゃいいだろ」
マーズ「お化けのしょーたいってのは、この2体だったわけね。
はいはい、さー、カイケツカイケツ。おうち帰って実写版『風魔の小次郎』観よー」
ラーナ「待ってください。まだ病院に入ってません」
マーズ「うへー」
【廃病院】
ラーナ「おかしいです。ここは数年間誰も足を踏み入れたことがないはずなのに、
妙にホコリが少ないです」
ミナト「おかしいな。俺が前に来たときは、割れたガラスとか散らばってたんだけど」
ラーナ「これはなんでしょう? 細かい紙くずがたくさん」
マーズ「貸して」ぱくっ
ミナト「おい! お前、なに口に入れてんだっ!」
ラーナ「ぺーっ、しなさい、ぺーっ!」
マーズ「あー、あー、コウゾ、ミツマタ、綿、マニラ麻」クチャクチャクチャ
ミナト「おい?」
マーズ「紙幣のザイリョーだよ。なかなかセーカクな比率してやんの」ペッ
ラーナ「そんなものがどうして」
マーズ「おにーさん、このビョーイン、入ったことあんでしょ? 手術室はどこよ」
【手術室】
ぶしゅぅぅぅっ!
ミナト「わっ、なんだ!?」
ラーナ「エアシャワーが動いてる?」
マーズ「へん、いっちょまえにクリーンルームなんかこさえてやんの」ガチャガチャ
ミナト「おい、あれ!」
ラーナ「裁断されてないお札が、こんなに」
マーズ「あー、触っちゃダメだよ。指紋なんざぁ付けたら、めんどっちーことになっからね」
ミナト「まさか、ニセ札か!?」
マーズ「ニセっつっていーのかなー?
そこの凹版印刷機、どーもれっきとしたファブリ社の純製みてーだもん。
シリアルナンバー以外は、真札とまったく変わんねーってこと。
ふるくせーの。いまどき、スーパーノートだウルトラダラーじゃあるめーし」
ラーナ「でも、こんな図面、見たことありません」
マーズ「ノグチヒデヨさんに、ニトベイナゾーさんだよ。
21世紀の最初ごろ、ショートクタイシ柄のニセ札が出まわったよーなもんさ。
はっこーねんを見てみな。1993年以前になってるはずだよ。
それいこーは特殊発光インキやらマイクロ文字やらホログラムやら使ってっから、
こんな設備じゃとてもじゃねーけど作れねーよ。
ふるすぎてチェックしづれーのをいーことに両替しちまおうって、ケチなニセ札犯さ」
ミナト「なんか、おかしいな。お前、札束前にしたら、もっとテンション上がるもんだと思ってたけど」
マーズ「じょーだんじゃねーや。
おれぁね、拝金主義者なんだ。カネを拝んで生きてんだ。
カネってなぁーね、びょーどーなんだよ。
オトナでも、ガキでも、ロボでも、カネは態度変えたりなんかしねーからね。
だから、カネだきゃー裏切っちゃいけねーんだ。
まして、こんなカネをブジョクするよーなマネ」
チャッ
男の声「ご高説はそこまでだ。お前ら、手を挙げろ。
そこのガキ、物騒なチェーンソーを下に置いてもらおうか」
ラーナ「銃を」
マーズ「あっ、てめー!」
宇宙海賊「なんだ、お前、アーディガンファミリーのオペレーターロボじゃねえか。
ちょっと感じ変わったか?」
マーズ「あーもーっ、おやじのやつ! だからいわんこっちゃねー!」
宇宙海賊「耳障りだ。甲高い声でわめくんじゃねえ。さ、手を壁につけろ」
ミナト「バカヤロウ! 子供に銃向けるなんて!」
ガンッ
ミナト「逃げるんだ!」 ダダダッ
マーズ「あほー! おにーさんのあほー!
ここでパンチ極めなきゃいつ極めんだってタイミングで、なんでパンチ撃たねーの!
なんでよりにもよってチョーパン極めてんの!」
ミナト「うるせぇな! とっさだったんだよ!」
マーズ「なかなかとっさには出てこねーよ、チョーパンは!」
ラーナ「カラテって、ヘッドバッドは禁止だったような気がします」
ミナト「いいんだよ、おれのは親父ゆずりのオリジナル空手なんだから!」
マーズ「それ、すでにカラテじゃねーんじゃねーのぉ!?
たんなる自己りゅーさっぽーなんじゃねーのぉーっ!?」
パンッ! パンッ! パンッ!
マーズ「撃ってきやがったぁーっ!?」
ラーナ「こっちへ!」
ミナト「待て! そっちはたしか、ガケが!」
がしっ!
ミナト「っと、無事か?」
ラーナ「あ、ありがとうございます。あの、お礼は、わたしの中学校入学時の記念写真でいいでしょうか」
ミナト「だからな、おれは中学生に興味はないって」
マーズ「なにやってくれてんだ! はなせはなせはなせーっ!
おれが何キロあると思ってんだ! 腕が外れっぞぉーっ!?」
ミナト「うるせぇな。パンチ得意だっていってんだろ。
俺、腕の力はけっこうあるんだぞ」
ラーナ「カラテのパンチは腰で打つものです」
ミナト「いらねえこというんじゃねえ!」
マーズ「ほらみろほらみろ! やっぱムリしてんだ! ごーじょー張ってんじゃねーっ!
はなせよ! おれぁー、ニンゲン傷付けるわけにゃーいかねーんだ!」
ミナト「バカいってんじゃねえ! お前はいつもいつも!
自分ひとりでなんでもできるとでも思ってんのかっ!?」
マーズ「じょーとーだ! おれぁーひとりでやれらぁーっ! ひとりでやったらぁーっ!」
ぶちんっ
ラーナ「ロボくーん」
ミナト「あいつ、右腕パージしやがった! 強情はどっちだよ」
【崖の下】
マーズ「ぺっぺっ、クチに泥がはいっちゃったよ」
男の声「フッ、後先考えずに突っ込むか。変わらねえな、お前は」
マーズ「そのさ、てきとーにカッコつけたことゆークセなおしてよ。
そして、あんたとイッショにしてほしかーねーよ」
カズマ「なにいってんだ。ろくに減圧もしないで宇宙空間に飛び出してったロボが」
マーズ「おれロボだもん。へーきだもん。
そりゃー、ちょっと目ン玉飛び出しそーになったけど」
カズマ「飛び出しそうになってんじゃねえか」
マーズ「なんでいんのよ」
カズマ「あぁ、ファブリ社から凹版印刷機を買った企業で、メンテナンス拒否したとこがあったんでな。
ファブリ社のメンテナンスってのは、紙幣や株券の偽造が行われてねえか調査するって意味合いがあるんだ。
で、疑惑が出たもんだから俺に依頼が来て、動いてたらお前にでくわしたってわけ」
マーズ「あー、そっ。その疑惑はクロだよ。手間がはぶけてよかったね。んじゃー」
カズマ「おいおい待てよ、お前、どこ行くんだ」
マーズ「手ぇー出すんじゃねーよ、おやじ。
こいつぁーおれのヤマだ。おれが、きっちりケリつけてやんよ」
カズマ「まぁったく、お前の、そういう強情さは誰に似たんだろうな。
ああ、いいや、やってみろよ。見ててやっから」
マーズ「見てんじゃねーよ!」
【山の中】
マーズ「かーっとんでゆくぅリュウセイロケッ♪ 窓から見えるワタシぃは♪
あー、こっちのダイゼラドちゃんは使えねーな。ブラックボックスがおーすぎらぁ。
おっぱいはみょーに座り心地いーけど。
んー、で、こっちのルナおしおーネはー。
おーっ、いーじゃんいーじゃん、なんつったっけ、AMNとかゆーシステムのかいりょー版か。
うっし、こいつを」
宇宙海賊「なにをしてるのかわからねえが、そこまでだ」
マーズ「へっ、高いとこから、なにえばってんだか。
どーも、ニンゲンてなぁーくだらねーとこでカッコつけたがるからバカらしーよ」
宇宙海賊「指一本でも動かしてみろ。
こいつらをここから突き落とすぞ」
ラーナ「ロボくぅん」
ミナト「くっ、中学生かばいながらじゃ、俺のパンチも充分な威力を発揮できねえぜ」
マーズ「ちぇっ、だからこんなやつぁー、宇宙にほーりだせばいーっつったんだ。
おやじのやつ、なにかんがえて」
宇宙海賊「調子っくれてんじゃねえぞ、このドサンピンがっ!
いいか、カズマ・アーディガンがいなけりゃ、てめぇなんかただのポンコツだぁっ!」
マーズ「あー、あー、そんな怒鳴んなくたって、聞こえてんよ。
ほら、手ぇー挙げたよ。つっても、一本しかねーけどね。
さぁー、どーする。撃つかい? 撃っていーよ。
ゆっとくけど、おれは頑丈だよ? あとおしゃべりだ。
よっぽどコナゴナにすりつぶさねー限り、てめーを言葉責めにしたらぁー」
宇宙海賊「口の減らねえガキだっ!」
タァンッ!
マーズ「あーあー、頭はダメだよ。曲面こーせーで、特に頑丈なんだ。
ほら、狙うんならココだよ。どーたいは、いくらかやーらけーんだ。
さー、的はちーせーよ? 当てられっかな~?」
ラーナ「やめてください、ロボくん!」
マーズ「なーに、キミはまだいたの。あんがいスットれーな。さっさと行きなよ」
ラーナ「いけません!」
マーズ「うっぜーな。いまいましーことに、おれぁー人命を最優先するよーにできてんだ。
そのくせ、ニンゲンであるいじょー、どんな悪党にだって危害はくわえらんねーときてる。
選択肢はせめーんだ、あんまヒロイックなことはできねーんだよ!」
ラーナ「いいえ、あなたはできます。できる子です。
そんなにちっちゃいのに、ひとりでなんだってやってるじゃないですか。
わたしは、ダメです。ダメな女子中学生です。
お父さんみたいに難しいことわからないし、お母さんみたいにロボットも乗り回せません。
できることといったら、そう、解体くらいで」
宇宙海賊「このガキ、ロープをっ!」
キィンッ
宇宙海賊「なっ、銃をバラした!?」
マーズ「ばかーっ! そりゃー、できることじゃなくって、やんなくていーことでしょーがぁーっ!」
ラーナ「いいえ、必要な行為です」
宇宙海賊「この、ガキッ!」
ミナト「バカっ、やめろぉっ!」
ドンッ
マーズ「ばかーっ!」ダッ
マーズ「ばかっ、ばかっ、なんだよ、その一文にもなんねーコンプレックスは。
親とおなじことやんなきゃいけねーなんて、誰が決めたんだ。
おやじができねーことをおれがやるんだ。
おれができねーことをおやじがやるんだ。
おれがそー考えるなぁー、サポートロボットだからかっ!? そーなのかぁーっ!?」
ばきんっ びきっ! ぶちぶちぶちっ!
ラーナ「・・・・・・」
マーズ「ぎっ、ぎぎっ、キャッチせーこー。
左肘靱帯断裂、第1、第3膝部破損、
ひでーよひでーよ、このザマじゃーピッコロ大魔王もたおせねーよ」
どさっ
宇宙海賊「うぅ・・・・・・」
ミナト「ハァ、ハァ・・・・・・、相手が銃持ってなけりゃ、俺にだってこのくらい」
マーズ「おい、てめー、見えっか、このサンジョーをよぉーっ!」
宇宙海賊「ひっ!」
マーズ「ズタズタのボロボロだ。回路がちっとおかしくなっててもムリねーよなぁー、なぁーっ!?」
ミナト「おい、お前、あんまりやりすぎんな」
マーズ「来んのが、ちっと遅かったね。
ルナおしおーネのセットはすでにカンリョーしてる。あとはおれのコマンドひとつで」
ミナト「あとお前、ルナシオーネの名前言い間違えてるからな?」
マーズ「やっちまいなぁーっ、ルナおしおまなぶーネっ!」
ミナト「こいつ、フルネーム出しやがった!」
テンキュー
ミナト「テンキューっていった!?」
宇宙海賊「なにを」
マーズ「紙幣の原料やら凸版印刷機やら仕入れてるってこたぁー、てめーのバックにゃでけー組織があんだろ。
てめーひとりを潰したとこで、ほかでやらかすだけだ。
でも、もーダメだね。このシノギはできねーよ。
いま、印刷機にインプットされてた原盤ごと、てめーのニセ札のデータを世界中に配信した。
いまや、この手法はネトゲオタクだって知ってるポピュラーなもんさ。
もちろん、各国情報局にとってもね。
れんちゅー、いまだにスーパーノートのこと根に持ってっからね。動くなぁはえーよ」
宇宙海賊「あ、あぁ・・・・・・」
マーズ「組織は、ヘタ打ったてめーを許さねーだろーね。
コンリンザイ、アングラ界隈でシノぐのはムリだと思ったほーがいーよ。
どーしても生き延びてーなら、カタギになるしかねー。
できるかできねーか、そんなのおれは、どっちでもいーんだけど」
宇宙海賊「ちくしょう、ちくしょうっ! なんで、なんでこうなるんだ!
足、洗おうと思ってたのに! この仕事が最後だったはずなのに!
ガキが、子供が産まれるってのに!」
マーズ「行きなよ。もっともおそろしー罰は、罰をあたえられねーことだ。
忘れんなよ。てめーの子供は、産まれた瞬間からハンザイシャの子だ。
そーしたのは、てめー自身だ。
なげー人生、こーかいしながらケソケソ生きてけよ」
【山道】
カズマ「よう、ひさしぶりだな」
宇宙海賊「アーディガンさん」
カズマ「残念だよ」
宇宙海賊「すんません、すんません! 俺、でも、どうしても」
カズマ「もう一回いうぞ。次は、カタギで会おうぜ」
宇宙海賊「はい・・・・・・、はいっ・・・・・・! かならず」
カズマ「な、たぶんお前は、子供に憎まれると思うよ。
でもさ、そういうの、きっと喜ばなきゃならねえんだ。
子供が、自分なりの考え方持ったってことなんだからな」
宇宙海賊「俺、俺・・・・・・っ」
カズマ「それでも、親と子供なんだぜ?」
【山のふもと】
マーズ「んじゃー、おにーさん、この子おうちまで送ってってやってよ」
ミナト「お前はどうするんだ? 送ってってやらなくていいのか」
マーズ「なーんで、おれがそんなこと」
ミナト「やっぱお前は、ガキだな」
マーズ「うるっせーや。おにーさんこそ、なんでドタンバで繰り出すのがショルダータックルだったのさ。
すでにカラテでもなんでもねーじゃねーの」
ミナト「うるせぇな。縛られてたんだから、しょうがねえだろ」
マーズ「おにーさんさ、実はゆーほどパンチ得意じゃねーんじゃねーの?」
ミナト「違うよ。俺は、パンチを安売りしねえだけだ」
マーズ「あちゃー、一文にもならねーポリシーだよ、それ。
んじゃーね、ギャランティはちゃんと払うから」
ミナト「いらねえよ、カネなんて」
マーズ「バカいってんじゃねーよ。おれをモノゴイにする気か。
おれみてーなハンパモンにとって、カネだけが社会参画するユイイツのパイプなんだよ。
タダでやりとりするなんざぁー、ブジョクでしかねーんだ」
ミナト「かわいくねえなぁ、お前はほんと」
マーズ「ゲンキンがいやだっつーなら、なーに、毎朝毎朝ベッドの上に乗っかって」
マーズ(ミヒロvo)『お兄ちゃん、朝だよ、起きてぇ』
マーズ「とかやるほーがいーぃ?」
ミナト「うん。気持ちすらいらねえ」
マーズ「あー、そっ」
ミナト「おい、待てよ。忘れもんだ。ほら、右腕」ポイッ
パシッ
マーズ「んじゃ、ロケットびーばい」
最終更新:2009年10月17日 14:42