ルウォーダの挑戦


30代目スレ 2009/10/09(金)

その日彼女はやってきた。

午後の昼下がり、ぼつぼつ下校するものも絶えた頃。
校門で相棒のキャクトラを待っていたヴィレアム・イェーガーはかばんを落とし、
同じく近くで無言だったレラがなぜか口笛を吹き、
ゼラド・シュヴァイツァーとアイミ・ダグラスはそれぞれへたり込んだ。
まとうは名門お嬢様学校聖ミカエル女学院のセーラー服、校章からみるに三年、
身長は165センチ程度、優美な体つきにも関わらず豊満な胸、
紫がかった銀髪が長く腰まで伸びている。
色白のかんばせに、やさしい切れ長の瞳。色は紫。
後にみなが語ったところでは究極完全至高美少女としか言いよう
のない美貌をもつ少女は、なよやかな足取りでゼオラに近づいた。
「忙しいところ、ごめんなさい。
 もしよかったら、ゼフィア・ゾンボルトという方がどこにいるか
教えていただけませんか?」
「ゼフィア先輩ですか?」
 ゼラドはあわてて立ち上がるとぱたぱたと埃を払った。「この時間ですと、
たぶん風紀委員会室にいると思いますけど」
「ありがとうございます。その風紀委員会室って、私が入ってもいいのでしょうか?」
「え、あ、どうだろ、アイミ」
「それこそゼフィア先輩にきけば…って風紀委員室か。
 携帯で呼び出し……だめだ、あの人校内だと電源切ってる」
「じゃ、私、ひとっぱしり行ってくるよ!」
 親切なのはゼラドの美徳だ。走り出す後姿に、少女が声をかけた。
「あのう、よかったら、この手紙を渡していただけますか?」
「あ、はい、手紙ですね!もっていきます!」
 ヴィレアム・イェーガーは持ち上げたかばんを再びをおっことした。
「なにそれ手紙って校門に女の子が来て手紙って」
 手紙という言葉にヴィレアムはゲシュタルト崩壊を起こしかけた。
「そう、そこにいちゃいけない存在よ、彼女は」
「若いかあさん!いつからそこに!」
「時空のゆがみ…に良く似た存在を追いかけてきたのよ」
「ちょっとまった。校門で武器取り出すのはやめようよ若いかあさん!」




 ゼフィア・ゾンボルトは眉間に皴を寄せていた。もっともいつものことである。
「それで、その人今校門でまってるんですけど」
「承知した。手紙、ご苦労だったなゼラド」
「なんかいいにおいしますねえ。なんですかこの香り」
「伽羅と…五箇所ににおいがついてるな。
 伽羅、伽羅、真南蛮、佐曾羅、寸聞多羅」
「きゃーらーきゃーらーまなばんさそらーすもんたらーって、お経ですか先輩」
「あのな。香道でいう香木のことだ。
 五つあって、初め二つが同じにおい、他が全部違う。
 これは源氏香でいうところの『葵』!
 しかも六国五味のうち甘さだけがない」
「あの、先輩、日本語でお願いします」
「……これは俺への挑戦状と見た!」
 ゼラドは盛大にずっこけた。
 いくらゼラドだって、女の子が香りつきの手紙を出すのに挑戦状とは思わない。
「……せめて開けて読んであげましょうよ」
「うむ。ゼフィア・ゾンボルト様、筆跡も見事だな。
 なになに。
 是非一目お会いしたく、筆をとりました。
 どうかおめもじ許していただきたく、お願いいたしあげます。かしこ」
 ゼフィアの眼に水が吹き零れてきたのを見てゼラドは声を上げた。
「あ、あの先輩っっっっ?どうしたんですか泣いたりして!」
「いや……このところ、まともな人間とかまともな手紙なんぞ見た覚えがなくてな、
俺に関わりあいたい奴で人の心が判る人間もいるのかと思ったらなんか泣けてきて…」
「……いろいろな出会いがあるのはいいことだと思いますよ?」
「悪縁ならいっそないほうがマシだ!」魂の叫びである。
「よし、この好敵手に会いにいこう、ゼラド。校門だったな」
「だから好敵手じゃなくて女性ですってば!」
「武道の道に男女なし。正々堂々と立ち会うまで」
「あーもー先輩ってばー!」

 学園校門。
 物見高い連中が、帰宅した奴までメールや携帯で連絡もらってすっとんできたらしい。
 美少女を一目みたものたちが腰抜かしたのはいいとして、
その場でファンクラブ、親衛隊まで出来たのはすさまじいとしかいいようがない。
 その人だかりの仲を書き分けてやってくるはゼフィア・ゾンボルト、校則違反の白い学ランを翻し、老け顔をさらに苦々しくしてその手には艶光りした木刀がある。
 どうみても一昔前の不良だ。しかも留年クラスの。
「俺にようがあるというのは、貴殿か」
 美少女はゆっくりと微笑んだ。
 桜の花が一斉に咲き誇り蝶が舞う、そんな笑顔であった。
「はい。我が名は……」
 銀の琴奏でるように響く声が優しく響く。その白い手がゆるりと動く。
「我が名はルウォーダ、ルウォーダ・ユミル!
 ゾンボルトを断つ、剣なりっっっ!」
 ひらりとはためくは名門女子校のセーラー服のスカート!
 ちらりと見ゆるは白い股間の布地!水色のボーダー入り!
「う……うぉぉぉっ!」
 思わずゼフィアがのけぞる、その隙をルウォーダは見過ごさなかった。
「隙ありぃぃぃっっっっ!」
「待ちなさいっ!」
 イングレッタが銃で白刃をはじく。「あなたはここにいてはいけない存在。
ましてや、生身の人間に手出しなどっ!」
 スカートから日本刀を出したルウォーダは儚く笑う。
「そう。私はウォーダン・ユミルとククルの怨念から生まれた存在。いうなれば怨霊」
「ちょっとまてなんでその怨霊が俺に仇なすんだ!」
 ゼフィアの当然の疑問は、ルウォーダの残酷な答えを与えられた。
「それは」
 どこからか飛んできた季節外れの桜の花びらよけながら絶世の美少女は言う。

「あなたがゾンボルト家最弱の存在だから」

「うるさい黙れそして聞け俺は確かにそうかもしれんが周りが…
って母さんに負けるほどじゃないぞ俺は!」
「先輩、わりと情けないです、その主張」
 ゼラドの突っ込みにゼフィアは頭を下げた。
「まあ確かに母さんに喧嘩売られるよりましだが。
 そういうことならこのゼフィア・ゾンボルト、容赦はせん!
 正々堂々かかってくるがいい!」
「正気なのあなた?凡人の身で怨霊に対抗するなんて、無理もいいところよ!」
「一々凡人凡人いうな!こい、ルウォーダ!」
 少女は笑う。
 セーラー服の胸元に、白い指かけてずらせば、それより白いブラジャーが見える。
 ゼフィアは盛大に鼻血を吹いてぶったおれた。
「ね?あなたでは、私に勝てないの。
 だから……」
 一々桜が舞う。
「私と、一緒に逝きましょう」
「駄目だ駄目だ駄目だぁあああ!そんな堅物筋肉男と一緒だなんて!」
 いつの間にかきていたミナトがほえた。冷静に突込みがはいる。
「落ち着けカノウ。あれは怨霊だぞ。
 行き先はたぶんあの世だ」
「あんな美女なら地獄におちてもかまわないっっっ!」
 ハザリア・カイツですらあきれるということはある。今がその時だった。
「く……正々堂々というのに卑怯な手を!」
「だって、私、どうしても」
 またしても舞う桜。スタッフの皆様ご苦労さまです。
「あなたと死にたいのだもの」
 漫画でいえば見開きレベルで迫るルウォーダ。
 その時、明るい声がした。
「あ、こんなところにいたんですかー!
 遅いから迎えにきちゃいましたよー!」
 世界、いやおそらく、多重次元最強の対悪霊兵器。
 メイドの姿をしたディストラは明るく笑った。
「あ、おねえちゃん。今ね、ちょっと……」

 ルウォーダの姿は、どこにもなかった。

「…どうかしたんですか?いまここに悪霊がいたんでお掃除しといたんですけど」
 にっこり笑うメイドディストラ。
「……うん、えーと、こんなときどうすればいいのかな」
「笑えばいいんですよ」
「……」

 かくて、怨念から生まれた存在、ルウォーダ・ユミルは葬られた。
 しかし親がうらみを買ってる相手はムラタとかアードラーとか一杯いる。
 ゼフィア・ゾンボルトの災難は、収まりそうにもなかった。

重震のマグナス「そういやお前の親父よ、せっかく斬艦刀破って、ぶっちめようと思ったのに、
 なんかテキトーな剣でビシビシ打ってきてよ。
 正直、ちょっと傷ついたんだぜ、あのとき」
ゼフィア「そんなことを俺にいわれても」
重震のマグナス「ま、昔の話さ。チョコバナナパフェでも食おうぜ」
ゼフィア「重震のマグナス氏、甘いものは控えた方が」

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最終更新:2009年10月17日 14:50
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