28代目スレ 2009/03/17(火)
ラッシュ「馬鹿か!姉さんは!
初恋が終わったからって、人間はすべてを捨てることなんて出来ないんだ!
姉さんが何と言おうと姉さんは人間を生む為のスペースを用意して生まれたんだ、それは何故だか分かるか、ええ?
生物がこの地球の進化の歴史の中で学んだ事だよな。
(中略)
それがオレたちだ!けどそういう人間が何故か男と女という二つに分かれて進化した。
しかも単純な雄と雌との関係でもない。
もっと根源的に、陰陽とか、プラスマイナスぐらいはっきりと反発し合う習性をもっている、何故だよ!?
一つで完全無欠に永遠であるものなどこの世の中にはない。
だからこうやってぐちゃぐちゃに生まれてきたんなら、姉さんだってそうだろう!?
自分の反対にあるものと生きて探さなきゃいけないものがあるんだろう!?
ビー・プレートとか新しい恋とかさ!
オーガニックで有機的なものが一生一人でいられるわけはないのに!」
ラキア「あの人は私にとってのビー・プレートだった!」
コンコン ガチャ
ラキ「邪魔するぞ」
ラッシュ「いいところに来た。母さんからもこのわからず屋に言ってくれよ」
ラキ「私としてはラキアが自分で決めたことに反対することはできない。
ラキアの人生はラキアのものだ。
今回のラキアの決定は親としてすごく寂しいがな」
ラキア「・・・母さん」
ラキ「ラキア、お前宛てだ。
マイクル・ゼーバッハ?聞いたことない名前だな。
羨ましいぞ、ラキア。
私がジョシュア以外の男からプレゼントされたことがあるのは嫉妬に駆られた鉄也からの鉛の弾だけだからな」
小包の中に入っていたのは青い宝石をあしらった腕輪と一通の手紙だった。
これが届いてるということは私はもうこの世界にはいないだろう。
良ければこの卑怯な逃亡者の話を聞いて欲しい。
早い段階で私は君の私への想いに気づいていた。
気づいたまま目をそらしていた。
偽りの伯父と姪という甘い関係に溺れていたかったのだ。
私はある事情から40年前の記憶を持たない。
私は天涯孤独の身で二度目の生を受けた。
一度は家族を持ったこともある。しかし、それも自分でダメにしてしまった。
初めて知ったあたたかく甘い関係を捨てることができなかったのだ。
いつまでもこの関係に溺れていたくて君の想いを黙殺したのだ。
それすらも真実の探求の前に捨ててしまった。
いつまでもこの偽りの関係を続けることはできた。
しかし、真実を知りたいと言う欲求を私は抑えることができなかった。
心の奥底で誰かが私に言う。
思考することをやめた人間は存在する価値のない生き物だ、と。
だから、私は行かねばならない。
さよならだ、凍った大陸の可愛い姪よ。
偽物だったとはいえ君と家族でいられて嬉しかった。
君の想いに最後まで逃げることしかできなかった私を許してくれとは言わない。
私の事は忘れてくれるとありがたい。
P.S 同封した腕輪はホワイトデーのお返しだ。
生憎宝石には詳しくないので使われている宝石の名前は知らない。
君に似合うと思って買った。
やっぱり伯父さんは正常な判断のできない狂人だった。
忘れて欲しい相手に形に残る物を贈ってどうする。
でも、腕輪は姉さんに良く似合っていた。
手紙を読み終えた姉さんは泣き崩れた。
オレは姉さんが泣くのを始めてみた気がする。
姉さんは我慢の人だった。
元気になってからの奔放な姉さんの印象が強くて忘れていたけど、
子供の頃ベッドから出ることができなかった頃の姉さんはいつも何かに耐えていた。
許してあげないし忘れてもあげない、腕輪をつけながら姉さんはそう言った。
姉さんは北欧行きを諦めてくれた。
その代わりファービュラリスと共に世界を見て回るのだと言う。
真実なんてものには興味はないけど伯父さんが見ていたものを一人で見て来たいのだと言う。
伯父さんを失ったオレの痛みも姉さんの痛みも完全に癒えることはないだろう。
それでもその痛みを背負ったままオレたちは生きていかなければならない。
そうだろう、伯父さん。
最終更新:2009年10月17日 14:56