マーズの企業買収

19代目スレ 2007/09/26

ゼラド「え~っ、竜巻亭がなくなる!? なんでぇっ!?」
アーク「ああ、あれだろ。税金対策だとかなんとかいう」
スレイチェル「いや、それがどうも本当になくなるようなのだ。
 経緯については、スレイチェルにもなにがなにやら」
ゼラド「だって、ここのとこずっと大繁盛してたじゃないですか」

 ガラッ
マーズ「あー、それがゲーインだよ。
 企業の市場価値が上がっちゃったもんだから、企業買収のターゲットになっちゃったんだよ。
 だってしょーでしょ? 魅力的な商品は、誰だっておカネさえあれば欲しいって思うもん。
 えーっと、こーゆーの、なんてゆーんだっけ? ジンセーバンジサイオーガウマ?」
ゼラド「それ、ふつーいいことあったときに使う言葉だよ?」

マーズ「買い手はイスルギフード。現在世界ベスト2の、大手外食チェーン店だよ。
 すでに持株比率は40%に達してて、さらに敵対的TOBを仕掛ける動きがあるから、
 あー、もー、どーしょーもないね」
アーク「なにひとつとして聞いたことのない言葉だぜ!」
マーズ「・・・えーっと、おにーさん、どっかで見たよーな顔だけど。
 まさか、最上じゅーこーのシャチョーさんのぉ、甥っ子さんとかじゃ、ないよねぇー?」
アーク「甥っ子だけど?」
マーズ「・・・・・・ちょっと待ってて」
 LuLuLuLu
マーズ「・・・あー、ヨシアキさん? こないだ聞いちゃったったゆってた、れーのインサイダーさー、
 うん、どーもマジみたいだよ。うん、なんかねー、そーぞーを絶する感じのどーしょーもなさだよ。
 あー、じゃーさー、うん、おれも一枚噛むから。オモチャ部門はおれにちょーだいよね!
 やきゅーチーム? それはもー、あきらめよーよ・・・・・・」

マーズ「えっと、敵対的TOBとゆーのはTakeOverBidの略でだね」
アーク「なんの電話だぁーっ!?」
マーズ「株式の公開買い付けのことだよ。
 株主の皆さんに買い付け価格をお知らせして、株式の買い取りを提案すんのね。
 株主から直で株を買っちゃうわけだから、経営者の意向に反した買い取りができるんだよ」
アーク「こっちを向けぇっ! ヨシアキさんて誰だぁっ!?」
ゼラド「えぇっと、ごめん。ぜんぜんわかんない」
マーズ「たとえば、たとえばだよ?
 最上川じゅーこーとゆー架空の会社があるとするでしょ?
 でもって、とあるあいくるしいロボが、そこのオモチャ部門が欲しーなーって思うでしょ?
 でもでも、市場に売りに出てる株をいくら買い占めたって、議決権には届かないんだよね。
 たいてーどこの会社でも、種類株式とゆって議決権が付いてる株は経営陣ががっちり握ってるからね。
 誰だって、せっかく苦労して興した会社、持ってかれたくないもん。
 でも、欲しーもんはどーしても欲しーでしょ?
 そこでだよ、親族経営に反対してるタナカ専務と、反社長派のサイトー常務と、
 御曹司のセクハラに怯える従業員持株会のおねーさんたちに声かけて、持ってる株を譲ってもらうの。
 こーすると、経営者が知らないうちに株を買い占めることができるってわけ」
アーク「その詳細なたとえ話はなんだぁっ!? 最上川重工ってどこだぁっ!?」
ゼラド「でも、竜巻亭はトロンベさんのお店だよ?」
マーズ「違うよ。トロンベグループは株式会社だから、株主のもんだよ」
ゼラド「でも、なんで会社が買われると、竜巻亭がなくなっちゃうっていう話になるの?」
マーズ「そりゃー、イスルギフードがこのへんにせーりょくを拡大する上で、
 トロンベグループのブランドイメージが邪魔っけだからだよ。
 レーツェルさんて、食べ物ギョーカイじゃちょっとしたカリスマだし。
 だから、子会社に組み込んだ上でぶっ潰すんだよ。
 他人様の会社潰したら怒られるけど、自分とこの子会社潰すのは勝手だかんね。
 たまにあるんだよ。こーやって競合他社潰す会社って」

ゼラド「えぇっと、つまり、おカネにものいわせて邪魔者を消しちゃうの?」
マーズ「そーだよ」
アーク「くそっ、カネがありゃなにやってもいいとでも思ってるのかよ!?」
マーズ「・・・・・・ねー、おにーさん、稼業継ぐかどーかは勝手だけど、
 オモチャ部門には指一本触んないでよね。
 『カネ持ってりゃなにやってもいい』ってゆーのは、まさに資本主義の原則だよ」
アーク「なんでお前がうちのオモチャ部門の心配するんだよ!?」

マーズ「ねーねー、スレイチェルちゃーん、在庫のトウモロコシ、いらないんなら半額で売ってよ。
 おれ、ちきゅーに優しいバイオマスで動いてるから、トウモロコシとかサトウキビがいっぱいいるんだよ」
スレイチェル「地球よりスレイチェルに優しくして欲しい」
ゼラド「ねえ、なんとかならないの?」
マーズ「なんないんじゃないかなー。イスルギフードのミツハル・イスルギ社長は、
 ミツコ・イスルギとニブハル・ムブハルとゆー、年がら年中腹の探り合いしてるよーな
 捏造カップルの間に生まれた子供だから、もんのすごいやり手だってもっぱらのひょーばんだよ」
アーク「捏造にも程があるだろ! なんだよその、明らかに愛がなさそうな組み合わせは!?
スレイチェル「ミツハルめ・・・、デコのホクロが微妙に青紫色のくせに!」
マーズ「しかもミツハルさんは、いい歳しておばーちゃんからお年玉をもらってるらしーよ」
ゼラド「おばあちゃん子なんだ、ミツハルさん」
アーク「一発キャラのくせに個性豊かだな、ミツハルさん!」

ゼラド「ねえ、株さえあったら会社を買えるんでしょ?
 だったらみんなでお金を出し合って」
マーズ「話になんないと思う。イスルギフードの資本力はケタ違いだもん」
アーク「あれだったら、うちの会社に連絡して」
マーズ「あー、ダメダメ。最上じゅーこーってキャッシュフロー少ないもん。
 キャッシュフローってゆーのは、本来の業務に必要な額以外の、会社がじゆーに使えるおカネのことね。
 本業に専念してるってことだから、メーカーとしては健全なんだけど」
アーク「なんでお前がうちの経営状態に詳しいんだよ!」
マーズ「そりゃー、ふつーに公開されてるからだよ。
 むしろ、なんでおにーさんは知らないの」
ゼラド「そうだ! アルマナさんに頼んで」
マーズ「おそろしーことゆわないでよ。
 よその国家がいち企業に肩入れなんかしたら、あとあとめんどーなことが起こるよ?」
ゼラド「でも・・・、でも・・・」
マーズ「わっかんないなー。なんでそんなに騒ぐの?
 こんなの、単なるマネーゲームだよ? 消費者レベルで困ることなんかないじゃん。
 経営者と店名が変わるだけで、レストラン自体は残るんだもん。
 ゴハンなんて、どこで食べたって一緒でしょー?
 おれ、味覚ってないからよくわかんないけど」
ゼラド「違う! 全然違うよ!
 竜巻亭はね、わたしたちがちっちゃいころからずっと通ってる店なんだよ?
 大事な思い出が、いっぱい詰まってるんだから!」
マーズ「・・・・・・泣いてるの?」
ゼラド「・・・うっ・・・・・・お願い」
マーズ「・・・・・・お願いは、ずるいよ。
 おれ、ロボだもん。ニンゲンの命令には絶対服従なんだよ。もー」

マーズ「ムダだと思うけどねー、ムダだと思うけどねー。
 もーちょっとせまいギョーカイなら独占禁止法使えるけど、
 食べ物会社なんてツクダニにするほどあんだから。
 ねーっ、いまのうちにあきらめよーよ。
 スレイチェルちゃんたちだって、べつに負債抱えて倒産するわけじゃないんだからさー。
 おれだって、ミツハルさんみたいな大物のおばあちゃん子にケンカ売りたくないよ」
スレイチェル「くそ、ミツハルめ。デコのホクロは実はホクロではなく、
 なかなか治らないニキビなのではないかと女性社員に陰口を叩かれてるくせに」
ゼラド「ミツハルさん、なんか気の毒な人だ!」
アーク「ミツハルさんの弱みを握るっていうのはどうだ!?」
マーズ「おにーさん、あんま口聞かないでくれる? なんか、ぼー線かぶってるし。
 ミツハルさんはおりこーさんだから、すぐわかるよーなルール破りはしないよ。
 弱みっていったら、学生時代付き合ってたチアリーダーの彼女と別れた原因が、
 おかーさんのことを『ママ』って呼んでることが発覚したからだってくらいで」
アーク「ミツハルさん、チアリーダーと付き合ってたのかよ!?
 負けた! なんかわかんねえけど負けた!」

マーズ「えーっと、トロンベグループの株主構成は、レーツェルさんが20%、
 スレイチェルちゃんほか役員で20%、ミツハルさんが40%、残り20%が個人株主かー。
 ねースレイチェルちゃん、トロンベグループの取締役会の構成はどーなってんの?」
スレイチェル「スレイチェルと父さま、それからゾンボルト夫妻と我が友ゼフィアだが」
マーズ「えーっ! スレイチェルちゃん、友だちいたのぉーっ!?」
スレイチェル「お前はスレイチェルをなんだと思っていたのだ」
ゼラド「スレイチェル先輩とゼフィア先輩は、お父さんたちの代からお友達なんだよ!」
マーズ「ふーん、じゃ、取締役会はジッシツ身内で仕切ってるんだー。
 そしたらあれが・・・、う~ん、でもなー」
ゼラド「なにか手があるの!?」
マーズ「あるっちゃあるけど、うーん、気が進まないってゆーか」
 ガラッ
レーツェル「話は聞かせてもらった!」
スレイチェル「父さま! いままでどこに行っていたのです!?」
レーツェル「取引先のところにな。それよりマーズくん、ちょっとこちらへ」
マーズ「えー、なにー。・・・・・・は、この人が? えー、・・・・・・ふぇっ、マジでぇっ!?
 だってこの肌年齢・・・・・・ふんふん、え、そんなものが・・・・・・うぉ、すげー!
 うん、わかった! 企業買収について異様に詳しいヨシアキさんに電話してみる!」

レーツェル「よし、スレイチェルよ。食事会を開くぞ!
 すぐに我が友たちとミツハルさんを招くのだ!」
スレイチェル「父さま、なにを」
レーツェル「資本力でかなわないなら、カネ以外の武器を使うということだ」
マーズ「あ、ヨシアキさーん? いや、センダミツオの物真似はいーから・・・・・・」
アーク「だから、ヨシアキさんて誰だよ!?」
マーズ「ヨシアキさんは、気のいい台湾人のオッチャンだよ。
 なんでかニホン人みたいな名前だけど」

 食事会当日
ミツハル「やあスレイチェルくん、相変わらずお美しい」
スレイチェル「君は相変わらず、いやにツヤツヤした黒髪がイラッとくる感じだな」
ミツハル「おやおや、これは手厳しい!」
スレイチェル「相変わらずおばあちゃんからお年玉をもらっているのか」
ミツハル「う、受け取っておくとおばあちゃんが喜ぶんだ!」

ゼフィア「我が友の危機と聞いて来たのだが」
マーズ「やー、ゆーほど大ピンチじゃないよ。ねーねー、それよりさー」ペタペタ
ゼフィア「この四本足のロボットは、なぜさっきからぺたぺたと俺に触るのだ?」
ゼラド「ゼフィア先輩、子供に好かれるから」
ゼフィア「子供なのか、このロボットは?」
マーズ「ねーねー、その肌年齢さー」

レーツェル「皆さん、ご静粛に!」
マーズ「おっ、始まった」
レーツェル「宴会の席で恐縮ではありますが、これより臨時の取締役会を開催させていただく!」
ミツハル「おやおや、急にどうしたんです」
レーツェル「議題は、我がトロンベグループがおこなう公募増資について!」
ミツハル「・・・・・・なっ!」

ゼラド「ミツハルさん、顔色が変わってオデコのホクロが微妙に赤紫色になっちゃった!
 なんなの、公募ゾーシって!?」
マーズ「新しく株を発行して、あっちこっちの投資家に買ってもらうんだよ。
 株の全体量を増やしちゃえば、ミツハルさんの持株比率40%って数字はどっか行っちゃうってわけ。
 ほんとはおれ、こーゆー虚業家みたいな真似は好きじゃないんだけどねー。
 メーカーはもの作ってなんぼだもん」

ミツハル「バカな、ローカルでチェーン展開しているだけのレストランの株など、
 突然売れるはずがない!」
レーツェル「いや、取引先に銀行、それに我が愛するOG町の皆さんに引受を申し込んでいる。
 人と人との繋がりが、我が店を守るのだ!」
ミツハル「無効だ! こんな宴会の席で開かれた取締役会など、有効なはずがない!」
マーズ「うんにゃ、有効だよ。ほら、役員がぜーいんそろってんじゃん。
 それだったら、いつでもどこでも取締役会がひらけるんだよ? 商法ちゃんと読んでよね」
ミツハル「貴様っ、ヴァルストーク商会の備品!」
マーズ「あいよ。次はおれと商いしよーね!」
ミツハル「このポンコツロボが、黙れ!」
マーズ「むぐっ!」
ミツハル「伏せっ!」
マーズ「ぷぎゃっ」バタンッ

ゼラド「マーズくん!?」
ミツハル「自分がロボットだということを忘れていたのか。
 『ロボット三原則』において、『ロボットは人間の命令に服従しなければならない』は第二条、
 第三条の『ロボットは自分を守らなければならない』よりも優先されるんだ!
 お前は相手が人間でさえあれば、自分で自分を解体しろと命令されても逆らえないんだよ!」
ゼラド「ひどい!」
マーズ「・・・・・・えっへっへ」
ミツハル「なにを笑っている。解体の恐怖で多幸モードに入ったのか?」
マーズ「うんにゃ。なーんか、もーどーでもよくなってきて。
 おれはアキンド相手にスマートなビジネスやってるつもりだったんだけど、違ったみたい。
 ねー、ミツハルさん。おれたちにとって、刃物もてっぽーもちょーのーりょくも、
 売り買いするもんであって、自分で使うもんじゃないでしょー?
 法とカネだけがおれたちの武器だったはずだよ」
ミツハル「笑わせるな。ロボットの分際で、人間扱いでもしてもらいたかったか!?」
マーズ「いーよ、やんなよ。
 でもね、そのシュンカン、あんたはアキンドじゃなくなるんだ。
 ただのおばあちゃん子に成り下がるんだよ」
ミツハル「おばあちゃん子をっ、おばあちゃん子をバカにするなぁっ!
 あんな両親の間に生まれて、おばあちゃん子以外のなにになれというんだ!!」

???「そこまでです、ミツハル」
ミツハル「ママ!?」
ミツコ「ママではありません。ビジネスの場では、ママ上と呼びなさいといったはずです」
ミツハル「無茶な要求だよ、ママ!」
ミツコ「あなたはカネを武器とし、そこのロボは法を盾とした。
 どちらが勝つということはないのですよ。
 よけいな時間を使っている暇があるなら、次のビジネスを考えなさい」
ミツハル「でも、ママ!」
ミツコ「そんなことよりミツハル、あなたのイスルギフードの株、買い占めが始まっていますよ。
 中心にいるのは、あの企業買収について異様に詳しいヨシアキさんだとか」
ミツハル「まさか、あの企業買収について異様に詳しいヨシアキさんが!?
 くそっ、ポイズンビルとパックマン・ディフェンスの同時展開とは、えげつないことしやがって!」
ミツコ「さらに、あなたがおばあちゃんからもらっているお年玉預金は、
 着々とママの焼き肉代に変わっていますわ」
ミツハル「それはママがやめてくれれば!」

ゼラド「これで、竜巻亭は残るんですね!」
レーツェル「ああ、あちこち飛び回った甲斐があった」
マーズ「えーん、えーん!」
ゼラド「よしよし、怖かったのね」
マーズ「違う~。そこのオッチャン、18歳だってゆーじゃないか!」
ゼフィア「・・・・・・なぜ、俺を指差す」
マーズ「どっからどー見ても三十代半ばなのに肌年齢が十代なのは、
 すんごい化粧液使ってるからだってゆったのに。
 おれに卸させてくれるってゆったのに、
 レーツェルさんに担がれたぁ~!」
レーツェル「銭の花は白いが、そのツボミは血よりも赤く、香りはなんか汗臭いのだ」
マーズ「せっかくカッコいーバネ足に付け替えようと思ったのにー!」
スレイチェル「泣くな! あれは強くてワイルドでクールなおじさまでなくては似合わないのだ!」
マーズ「えーん、えーん、レーツェルさんのばかー!」
ゼフィア「・・・・・・泣きたいのは俺だ」

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最終更新:2009年11月14日 11:11
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