16代目 2007/03/12
「でやぁぁぁぁぁッ!!」
「はぁぁぁぁぁぁッ!!」
初秋の空が朱くなる頃、道場の床に竹刀を振るう影が二つ…時刻は申の刻中半といったところか
「えぇぇいッ!!」
「ふんッ!!」
一つの影が振り下ろした竹刀を、もう一つの影が受け止める。
常人では考えられない速さで打ち、受け、また打ち返す。
「たぁぁッ!!胴ォォォッ!!!」
「うっ、ぐ…」
一進一退の攻防の末、ようやく勝敗が付いたようだ。
「む、すまん。大丈夫か?」
「へーきへーき☆でもな~やっぱ刀で勝てる相手じゃなかったって訳やね~」
男の名は
ゼフィア・ゾンボルト。女の名は
ラン・ドバン。
かつて戦争のあった地球と
バルマーの一番の武将達の子供である。
ゼフィア「ふっ、らしくない負け惜しみはよせ」
ラン「ふふっ、なら今度やるときは鉄球でな☆」
ゼフィア「何故に…?」
ラン「さっきの台詞、全てで勝てるからこそ言える台詞ちゃうのん?」
ゼフィア「…まぁいい、今度な。早く汗を流して帰るぞ。帰宅は出来る限り7時までにすべきだからな」
ラン「あ、なら一緒にお風呂入ろ?」
ゼフィア「(ブフッ)ななななななななな、何を言っているのだお前は!!??」
ラン「ふっふーん、期待通りの反応☆ささ、そうと決まれば早く行こ行こ☆」
ゼフィア「待てオイ、大体何時決まっt」(ズルズル)
男が押し負けたようだ…所変わりここは道場の大風呂。時刻はそろそろ酉の刻といったところか…
ゼフィア「はぁぁ…良い湯だ…それに良い夕焼けだ…明日は快晴に違いない…」
ラン「そやねー☆」
ゼフィア「うおおおおおおおおおおお!!??きゅ、急に話しかけるな!
努力し必死に記憶を修正し平静を保っていたというのに!」
ラン「むー、そこまで言われるといくらあたしでも傷つくわー…」
ゼフィア「む、すまん…」
ラン「ま、気にしてへんけどねー」
窓から射す夕陽が湯面に二人の影を映し出す…二人は静かに地平線に沈み行く太陽を眺めていた。
ラン「そや、背中の流しっこせーへん?」
ゼフィア「なな、何を言っておるか!?年頃の男女が共に風呂に入るというだけで十分風紀を乱s」
ラン「ええから、早くそこにお座り!」
ゼフィア「…ハイ」
また男が負けたようだ…剣技で勝てても発言権は無いに等しいらしい。
ラン「どや?気持ちええ?」
ゼフィア「ん、ああ、力加減が絶妙だな…入れすぎず抜きすぎず。練習したのか?」
ラン「じーちゃんでよ~小さい頃はよく稽古の後に一緒に入ったから…そのときに。」
ゼフィア「バラン殿か…今は大きな道場を開いているそうだな」
ラン「そーみたいね~なんだか大盛況みたいで。元気そうでなによりよ~…と。よし、今度はあたしの番よ☆」
ゼフィア「なっ!!??」
ラン「だって‘流しっこ'言うたやないの。さ、早く!」
ゼフィア「む…」(超赤面)
女は背を向け待った。だが一向に流してくれる様子がない。
ラン「ねぇ、ゼフィア?」
そこで女が見た物は…鼻血を吹いて床に倒れた男の姿だった…
ゼフィア(ん…?なんだか頭が気持ちいいような…暖かい…って風呂に居るんじゃなかったか?早く出ないと…)
ラン「お?目ぇ覚めた?」
ゼフィア「え?あ?ちょま、おおおおおおおおおおおお!!??
な、なんで俺がランに膝枕されてるんだ?何時の間に浴衣?え?あれ?今何処?俺は何時?」
ラン「何言ってるの?アンタが勝手にぶっ倒れたんやん」
ゼフィア「…あ゛」
ラン「なんで鼻血吹いてぶっ倒れたんか、教えてもらおっか?」
ゼフィア「む、それは…えと…うんと…」
ラン「ううん?勝手に解釈してみんなに言いふらすよ~?押し倒そうとしたけど度胸足らずで倒れた、とか」
ゼフィア「ちょまてぃ!わかった、言う!お前の背中が色っぽすぎたんだよ!これで満足か!?」(赤面、そっぽを向く)
ラン「なっ…せ、セクハラや!!」(赤面)
ゼフィア「な、全部何から何まで原因はお前だろう!」
ラン「うるさい、このムッツリスケベ!」
ゼフィア「む、ムッツリ…」
ラン「……」
ゼフィア「……」
ラン「…そんなにウチが色っぽかったのん…?」
ゼフィア「んむ、あ、ああ…」
ラン「次、鉄球使ってやるときにも、一緒にお風呂入る?」
ゼフィア「な、な、何を…」
ラン「イヤなん…?」
ゼフィア「む、お、お前が良いなら別に…」
ラン「あははっ☆やっぱりムッツリスケベや~」
ゼフィア「な、なんだとう!?」
ラン「約束な…?」
ゼフィア「…ん、ああ約束だ。」
ラン「よし、じゃあ帰るか~もう7時20分よ~?」
ゼフィア「むむ、しまったな…風紀委員が規則を守らずして誰が風紀を正すというのだ」
ラン「あははっ、相変わらず固いな~?」
ゼフィア「お前が軽すぎるのだ」
ラン「ま、ええけどね~ゼフィアらしいというか。アイデンティティ?」
ゼフィア「喜ぶべきか否か…微妙だな…」
ラン「ほんなら、また明日学校でな。」
ゼフィア「うむ。薄暗いから気をつけて帰れよ」
ラン「そっちこそ思い出して鼻血を吹いたりしなさんな~」
ゼフィア「よ、余計なお世話だっ!」
ラン「はははっじゃねー☆」
昨日までとは違う、新しい感情が二人に出来た…いや、もしかしたらただ自覚しただけなのかも知れない。
若者は明日を探し、進み、強く、美しく、逞しくなる。 色々な意味で
最終更新:2010年01月18日 03:43