邪魔大王国幻想記

31代目スレ 2010/2/14

 【奈良県 ホケノ山古墳】
マリ「なんでこんな時期にこんなところに来るんだよ」
ハザリア「貴様には古代へのロマンというものがないのか」
キャリコ「古墳発掘ツアーがあるんですよね」
マリ「なにも奈良くんだりまで来なくていいじゃないか」
ハザリア「邪魔大王国論争は知っておるな?」
マリ「ああ、邪魔大王国が九州にあったとか関西にあったとかいう論争だろ」
ハザリア「魏志倭人伝における記述によると、
 邪魔大王国は朝鮮半島から水路で十日、陸路で1ヶ月の距離にあるといわれておる。
 しかし、この記述どおりに進むと、沖縄の海の上に出てしまうのが困りものだ」
マリ「だったら、沖縄にあったんじゃないのか、邪魔大王国」
ハザリア「沖縄では、魏志倭人伝内の記述どおりの規模の王国を作ることは不可能だ。
 それに、古墳もなければろくな出土品もない。
 沖縄説は、珍説奇説のたぐいだな」
マリ「いつもながら、お前は地球の歴史に詳しすぎて気味悪いな」
ハザリア「地球の歴史の気味悪さは魅力的である」
マリ「奈良に来てるってことは、お前は畿内説なのか?」
ハザリア「貴様は、つくづくロマンを理解せんやつだな」
マリ「なんだよ、気味が悪いな」
ハザリア「わからないものをいじくりたおすから面白いのだろうが!
 九州にあるだの、畿内にあるだの、真実などはどうでもいい!」
マリ「なんで男っていうのは、そういうムダなことが好きなんだろうな」
キャリコ「マリ嬢、男とはそういうもものなんです」
マリ「そんな論争してないでさ、邪魔大王国の人間に直に聞けば終わるんじゃないのか?」
ハザリア「どうして女はそう、即物的なのだろうな」
キャリコ「邪魔大王国は邪魔大王国で、
 自分たちは日本全土を支配していたと主張して聞かないんですよ」
ハザリア「邪魔大王国は基本的に文字を持たない文明だったからな。
 わずかに残っている資料も信憑性が低いと来た。
 第3者の手による発掘が必要なわけだ」
マリ「なにもこんな日にさ」
ハザリア「なんだ、やけに日付を気にするな」
マリ「知るか、もう」

 【発掘現場】
ハニワ幻人馬頭羅「バルマーの皆さんですね。
 アンザイ教授からは聞いています。どうぞどうぞ」
ハザリア「ウム、くるしゅうない」
マリ「バルマーでひとくくりにされたくないな」

 カツーン カツーン
ミスティリカ「さあ、掘りなさいよ! 手を、顔を、泥まみれにして土を掘ればいいじゃない!
 そのあとわたしのこともほじくりまわせばいいじゃない!」
ゼフィア「うぅ・・・・・・っ」

ハザリア「なにをしておるか、筋肉ダルマに陵辱眼鏡」
ミスティリカ「あら、ご両人。いつも仲睦まじいこと」
マリ「ご両人とかいうな!」
ゼフィア「いつまでもパチンコばかりしていてはいけないと思い、土をいじろうと」
ハザリア「だったら農業でもやればよいではないか。
 考古学など、世界一非生産的なことに手を出すな」
マリ「あ、非生産的だって知ってたんだ」
ミスティリカ「ゼフィア先輩に農業なんて生産的な行為が似合うはずないじゃない!」
ゼフィア「うぅ・・・・・・っ」
マリ「ゼフィア先輩! じわじわと洗脳されてる場合じゃありませんよ!
 風紀を守ってたあのころを思い出しましょうよ!」
ミスティリカ「そうはさせないわ。
 せっかく阿磨疎さんに頼んで、遺跡の発掘なんてしょうもない作業の手配をしてもらったのに」
マリ「おかしいよ! なんであなたはKの敵キャラとばっかり仲良しなんだよ!
 ダンナーベースのひととかと交流しようよ!」
ミスティリカ「ダンナーベースにお父さんの仲良しさん、いなんですもの!」
マリ「阿磨疎さんと交流築くよりラクだと思うけどなあ」

ゼフィア「お前達も、発掘団のバイトか?」
ハザリア「見損なうな。このハザリア・カイツ
 考古学などという非生産的な行為でカネをもらおうなどと考えておらぬ!」
キャリコ「わざわざ参加費用を払って発掘ツアーに来たんですよ」
ゼフィア「うぅ・・・・・・っ、俺はもう、カネに汚れてしまったのか!」
ミスティリカ「あははははっ! 悩めばいいのよ、苦しめばいいのよ!
 そして堕落の果てにわたしを陵辱したらいいじゃない!」
マリ「もう完全に悪役のセリフだからな!」

ハニワ幻人馬頭羅「さあ、発掘ツアーの皆さんの場所はここですよ」
ハザリア「フハハハ! さあて、掘るぞ!」
キャリコ「わぁーい、あはははは!」
マリ「まったく、男っていうのはどうしてこう、無駄なことが好きなんだろうな」
ミスティリカ「あらダテさん、やけに不機嫌なんですのね?」
マリ「べっ、べつに! そんなことないよ!」

 カツーン カツーン

ハザリア「フム?」
キャリコ「どうしたんです?」
ハザリア「なにか出てきたぞ」
キャリコ「これは・・・・・・!」

 【旅館】
マリ「それ、持って来ちゃってよかったのか?」
ハザリア「いいわけないだろう」
マリ「じゃ、持ってきちゃダメじゃないか!」
ハザリア「貴様はなにが出たのか理解できんのか!」
マリ「なにって、銅鏡だろ。教科書とかに写真載ってるよ!」
ハザリア「ただの銅鏡ではない。画文帯神獣鏡だ!」
マリ「ガモン、なんだって?」
ハザリア「古代中国において権力の象徴とされていた鏡だ」
キャリコ「えらいことですよ。これじゃ、邪魔大王国論争が終わっちゃいますよ」
マリ「そんな決定的なものなのか?」
ハザリア「邪魔大王国論争最大の論点は女王ヒミカの墓の在処だ。
 邪魔大王国が存在したのは3世紀の後半、
 ニホンの古墳時代が始まったのは4世紀であり、基本的に時期が合わない。
 しかし、ここホケノ山は箸墓古墳を始めとする古墳群の中で最古のものだ」
キャリコ「大きさでいえば、
 箸墓古墳は魏志倭人伝に出てくるヒミカの墓とだいたいおんなじくらいですからね」
マリ「わかんないな。だったらその箸墓とかいうとこを掘ればいいじゃないか。
 なんで微妙に離れたホケノ山なんて掘ってるんだ?」
ハザリア「箸墓は宮内庁の管轄で、おいそれと発掘調査が出来んのだ。
 おかげで正確な年代が特定出来んままになっておる」
マリ「学問て、めんどくさいな」
ハザリア「そこで、箸墓古墳から近いホケノ山を掘ってある程度年代を絞り込もうという話になっておったのだ。
 畿内説の弱点は、年代を特定出来る出土品がないということだったからな」
マリ「それが、出てきちゃったと」
ハザリア「今まで、畿内において銅鏡は4世紀以降の古墳からしか出土していなかった。
 そこらへんが九州説の付け入る隙となっておるのだ。
 ただし、九州にある前方後円墳は、いずれも畿内にあるものよりも年代が新しく規模が小さい。
 邪魔大王国論争が長く続いている理由だ。
 しかし、画文帯神獣鏡はほかの土器との関連で3世紀後半のものと特定出来る」
マリ「えぇっと、つまり、その鏡を提出すれば、邪魔大王国論争は終わるっていうことか?」
ハザリア「終わられてたまるか!」
マリ「なんでだよ! 終わらせろよ!」
ハザリア「謎は謎のまま止めておくのが美しいのではないか!
 こんな鏡など、とんだ興醒めだ!
 割る! 割ってやる!」
マリ「わぁーっ! やめろ、考古学的遺産を!」
ハザリア「止めるな! 俺が解説してやるまで価値もわからなかったくせに!」
ミスティリカ「でも、おかしいんじゃないですか?」
マリ「わぁっ! びっくりした、なんでいるんだ」
ミスティリカ「ゼフィア先輩とおなじ部屋を取ったら、スミで縮こまっちゃったから出てきたの」
マリ「このひと、どうしたらゼフィア先輩諦めるんだろう」
ハザリア「して陵辱眼鏡、妙とはなんだ」
ミスティリカ「だって、発掘ツアーの皆さんが掘る場所は、
 すでに専門の調査団が散々掘り返したあとなんですもの。
 出てきても、せいぜい土器のカケラ程度のはずよ。
 なんで今さら、画文帯神獣鏡なんてデカブツが出てきちゃったのかしら」
ハザリア「フム、なるほどな」

 【夜 発掘現場】

 コーン コーン

ハザリア「なるほど、そういうことか」
ハニワ幻人馬頭羅「なにやつ!」
ハザリア「俺だ!」
ハニワ幻人馬頭羅「なに、何故」
ハザリア「すで掘り尽くされていた現場に画文帯神獣鏡を埋めたのか」
マリ「なんでこんなことを」
ハニワ幻人馬頭羅「すべては日本の歴史を、そして邪魔大王国の歴史を明らかにするためだ」
ハザリア「馬鹿め。詳細な近代調査をすれば、この鏡がここから出土したものでないことは明らかになる。
 なにも知らん観光客が掘り当てたとなれば、
 そのセンセーショナルさに少々の矛盾は目をつむられると思ったか?」
ハニワ幻人馬頭羅「お前は、何者なのだ」
ハザリア「貴様の誤算は、この俺がそんじょそこらの地球人よりも地球の歴史に詳しかったことだな」
マリ「でもさ、なんでなんだ?
 そんな大発見があったなら、自分の手柄にすればいいじゃないか。
 なんでこいつに名誉を与えるような真似」
ハニワ幻人馬頭羅「そんなことは、いう必要がないっ!」
ハザリア「フン、貴様、箸墓古墳から盗掘をしたな」
ハニワ幻人馬頭羅「なっ!」
ハザリア「宮内庁管轄の箸墓を勝手に発掘したとなれば、これは学問上のモラルに関わる。
 学者め。探求心に囚われるあまり、モラルを捨てたか」
ハニワ幻人馬頭羅「お前になにがわかる!
 すぐそこに答えがあるというのに、発掘を出来ない研究者の悔しさが!」
ハザリア「知るか! よりにもよってこの俺に、興醒めな真似をさせようとしおって!」
ミスティリカ「そうよ! だったらゼフィア先輩に掘り当てさせてもよさそうなもんじゃない!」
ハニワ幻人馬頭羅「ただのドイツ人に掘り当てさせたからといって、どうなる」
ミスティリカ「ちぇっ、しまった。地球に帰化なんかするんじゃなかった」
ハザリア「ほんともう、アトリームに帰れ」
ミスティリカ「イヤだ、もう、冗談ばっかり」
ハニワ幻人馬頭羅「ハザリア・カイツ! お前も地球のあちこちを掘り返してきた男!
 邪魔大王国論争に終止符を打ちたいとは思わないのか!」
ハザリア「思わんな。謎は謎のままのほうが面白い」
ハニワ幻人馬頭羅「待て! なにをする!」
ハザリア「こんな鏡はこうだ!」

 パリーン


 【朝】
ゼフィア「なにか、朝起きたら発掘調査は中止だといわれた」
ハザリア「取りあえず、貴様の今年の金運が最悪ということはよくわかった」
ゼフィア「うぅっ、いかん、パチンコはやめねば!」
ハザリア「ふはははは! そう思うなら、さっさとやめばよかろう!」
ゼフィア「うぅぅ・・・・・・っ」

マリ「なあ、用が済んだなら、さっさと帰ろうよ」
ハザリア「なんだ、貴様、今回はやめにさっさと帰りたがるな」
マリ「お前は、今日がなんの日なのかわかっていないのか!」
ハザリア「2月14日だろう?」
マリ「もう、知るか!」

ハザリア「なんだ、あやつは」
ミスティリカ「うふふ、アトリームにも2月14日はありましたよ。
 地球より、はるかにドロドロぬちゃぬちゃした2月14日がね」

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最終更新:2010年12月23日 13:43
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