31代目スレ 2010/4/2
マーズ「ゼラド坂本? ちぇっ、べらぼーめ!
ありゃーな、おれがこの世で一番ニガテなニンゲンだよ!
あんなニコニコプニプニして、
自分勝手で脳天気で人たらしで、オトコにもオンナにも好かれて、
あれほど腹の立つニンゲンは、どこにもいなかったよ!」
【京都 寺田屋】
ヴィレアム「ゼラド!」
ゼラド「わあ! ヴィレアムくん、裸ん坊でどうしたの!?」
ヴィレアム「格好なんて問題じゃない、早く逃げるんだ!」
ゼラド「逃げるって、なんで?」
ヴィレアム「伏見奉行所にここを見つかった!」
ゼラド「フシミ? ブギョウ? なにいってるの?」
ヴィレアム「早く逃げるんだ!」
役人「御用改めである!」
ゼフィア「ちぇぇぇぇぇいっ!」
ザシュッ ザシュッ
ヴィレアム「ゼフィア半次郎先輩!」
ゼフィア「ヴィレアム慎太郎、すぐに薩摩藩邸に逃げるのだ!」
ゼラド「ハンジロー? シンタロー? ふたりとも、なにいってるのぉ?」
ヴィレアム「さ、逃げるんだ!」
ゼラド「ヴィレアムくん、服着てよぉ!」
【薩摩藩邸】
スレイチェル「危ないところであったでごわスマッシュ」
ヴィレアム「西郷スレイチェル先輩、匿っていただき、感謝もこの上ありません」
ゼラド「スレイチェル先輩まで、いったいなにがどうなってるの?」
ヴィレアム「ゼラド坂本こそ、いったいなにをいっているんだ。
手傷でも負って混乱してるのか?」
ゼラド「ゼラド坂本ぉ~?」
スレイチェル「親指を少し切っているようだな、ここで休んでいくがよい」
【朝】
ゼラド「どうしよう、なんかわたし、坂本竜馬になっちゃってるみたい。
う~ん、どうしたら元に戻れるのかなあ?」
ガラッ
ヴィレアム「ゼラド、傷の具合はどうだ」
ゼラド「ヴィレアムくん、教えて?
いったいいま、どういうことになってるの?」
ヴィレアム「ゼラド、記憶に混乱でもあるのか?
どうもこうも、幕府がフランスと手を結んで薩摩を討とうとしてるもんだから、
一触即発の状態だよ」
ゼラド「そっか、じゃあ次は薩長同盟だね!」
ヴィレアム「薩長同盟?」
ゼラド「え、なに?」
ヴィレアム「なにバカなこといってるんだゼラド!
薩摩と長州が手を結ぶはずないじゃないか!」
ゼラド「えぇ~! だって」
ヴィレアム「いいか、禁門の変の後、幕府は長州征伐の命令を出した!
このとき成長連合軍の総司令官だったのが西郷スレイチェル先輩なんだぞ!」
ゼラド「でも、話し合えば」
ヴィレアム「またバカなことを。
西郷スレイチェル先輩は禁門の変での参謀格だった家老3人の命と引き替えに長州を服従させたんだぞ!」
ゼラド「それは、戦争にならないようにって」
ヴィレアム「サムライにとっては戦いの機会も与えられずに負けだけ寄こされたのは屈辱じゃないか!」
ゼラド「そういうものなの?」
ヴィレアム「とにかく、長州と薩摩が手を組むなんてあり得ない!」
ゼラド「う~ん、歴史の教科書にはそこまで載ってなかったよ。
でも、やんなきゃなんない感じだし」
【座敷】
スレイチェル「長州と手を組む? それは無理であろうごわスマッシュ」
ゼラド「そのスマッシュには誰も突っ込まないんですか?」
スレイチェル「長州者は幕府よりなにより薩摩を恨んでおるからな」
ゼラド「あ、スマッシュやめた」
ゼフィア「我が藩が協力を要請したとしても、長州側が納得すまい」
ミスティリカ「そんなことよりゼフィア半次郎先輩、丁半賭博に行きましょうよ」
ゼフィア「行かぬ。賭博など2度とやらぬ」
ミスティリカ「もう~! いっそ脱藩しましょうよぉ~!
このひとと一緒にいたらゼフィア先輩がどんどんマトモになっちゃいますよぉ~!」
スレイチェル「スレイチェルを指差すなである」
ヴィレアム「でも先輩、幕府とフランスが」
スレイチェル「それはわかっているのであるが」
ゼラド「薩摩だって幕府と戦うつもりなんでしょう?」
スレイチェル「たしかにそうだが」
ゼラド「だったら、味方は多い方がいいじゃないですか」
スレイチェル「こちらがよくても、長州が承知すまい。
マリ小五郎はまだ話の分かる人物だというが、
高杉ハザリアは、一種の怪人だと聞く」
ゼラド「マリちゃんとハザリアくんだったら、わたしが説得しますよ!」
スレイチェル「出来るのであるか?」
ヴィレアム「ゼラド坂本は、江戸の御前試合でマリ小五郎と面識がありますから」
ゼラド「まっかせといてください!」
【長州】
ハザリア「三千世界の鴉を殺し~、主と朝寝がしてみたい~♪」
マリ「京都じゃずいぶん芸者にモテてたそうじゃないか」
ハザリア「ん、まあ、その、な」
マリ「べつにいいんだけどな、わたしは」
ハザリア「フ、フハハハ! 貴様がどうしても、というのなら芸者と手を切ってやらんでもない!」
マリ「だから、べつにいいって」
ハザリア「いや、べつにいいって貴様」
マリ「半ベソかいたってダメだ」
ハザリア「俺を見捨てんでくれぇっ!」
マリ「うるさいよ、ひっつくな」
ガラッ
ゼラド「こんにちは!」
マリ「あ」
ハザリア「あ」
バッ
ハザリア「べっ、べつになにもしておらんぞ!」
マリ「よ、よせよ、なんかしてたみたいじゃないか」
ゼラド「なんか、悪いときに来ちゃったみたいだね」
ヴィレアム「こいつらはいつもこんなんだから気にするな」
ハザリア「なにをぅ! 薩奸と手を組むというのか!」
マリ「うるさいよ、いきなり大きな声を出すな」
ハザリア「たわけ! 我々は薩摩の陰謀により京政界を追われ!
蛤御門の変でも、何人殺されたかわからん!
この上薩摩と手を組むとなれば、我々は長州志士に恨み殺されるわ!」
ゼラド「でも、いま幕府に攻撃されたら、長州は」
マリ「滅ぶだろうなあ」
ハザリア「ぐむむ」
ゼラド「だったら!」
マリ「でもなあ」
ハザリア「第一、あの西郷スレイチェルという人物は信用が置けん!」
マリ「まあなあ」
ハザリア「あんな性別も不詳な八方美人な人間を、薩摩はなぜ重用しておるのか!」
ゼラド「でも薩摩は、いま幕府からの長州征伐に反対してるんだよ?」
ハザリア「そういうケツの軽さがどうも信用出来ん!」
ゼラド「もう、いつまでもそんなこといってると、長州はどうなるの!」
ハザリア「う~む」
マリ「まあ、ゼラド坂本がそこまでいうなら、話くらい聞いたっていいよ」
【下関】
ハザリア「遅い!」
マリ「西郷スレイチェルは本当に来るのか?」
ゼラド「もうすぐ、来ると思うけど」
ガラッ
ゼラド「ヴィレアムくん!」
ヴィレアム「すまない! 西郷スレイチェルは連れてこられなかった!」
ハザリア「なんだとぉ!?」
ヴィレアム「下関に着く直前に、大久保ミスティリカからすぐに京に来いという指令が出て」
ゼラド「ていうかミスティリカさん大久保利通だったの!?」
ハザリア「京と下関なら、すぐそばではないか!」
マリ「ちょっと顔出すくらいのことは出来なかったのか?」
ヴィレアム「それが、ほんと直前になって西郷スレイチェル先輩が心変わりして」
ハザリア「だから西郷スレイチェルは信用出来んといったのだ!」
マリ「これじゃ、長州が大恥をかいたことになるぞ!」
ヴィレアム「ほんと済まない! かくなる上は俺が腹を切って侘びを入れる!」
ゼラド「わぁ~! 待って待ってヴィレアムくん! そんなことしないで!」
ヴィレアム「しかし、これじゃ申し訳が」
ゼラド「わたしが京に行ってスレイチェル先輩を説得してくるよ!」
【京都】
ゼラド「せんぱーい!」
スレイチェル「来たか」
ヴィレアム「来たか、じゃありませんよ、どうして急に心変わりを!?」
スレイチェル「いや、その、友が大久保ミスティリカに誘われて丁半賭博に行ってしまい、
スレイチェルはそれを止めねばならなくて」
ヴィレアム「なに、天下の人斬りゼフィア半次郎が賭博にはまってるんですか!」
ゼラド「早く更生させてくださいよ!」
スレイチェル「いや、スレイチェルも頑張ってるのであるが」
ゼラド「そんなことより薩長同盟ですよ!」
スレイチェル「うぅむ」
ゼラド「先輩、賛成してくれるっていったじゃないですかぁ!」
スレイチェル「薩摩は大藩なだけあって、内部にも色々と」
ゼラド「もう、埒があかないよ! こうなったら大久保さんのところに話を着けに行く!」
【賭場】
ゼフィア「丁」
ミスティリカ「うふふっ、じゃぁ、わたしは半」
ヴィレアム「丁半賭博をやってる場合ですかーっ!」
ゼラド「ゼフィア先輩、賭け事はやめてください!」
ゼフィア「うぅ・・・・・・っ!」
ゼラド「賭け事がしたいから薩長同盟すっぽかすって、前代未聞ですよ」
ゼフィア「面目ない」
ゼラド「サムライが一度いったことを引っ込めてどうするんですか!」
ゼフィア「しかし」
ミスティリカ「でもぉ、よく考えてみたら長州なんてもう落ち目じゃないですかぁ?
そんなのに味方して、薩摩になんか得あるんですか?」
ゼラド「だから、そういうんじゃなくて、日本の未来のためにぃ!」
ミスティリカ「でもそれって、根本的な解決にはなりませんよね」
ヴィレアム「だから、薩摩だって表だって幕府と対決するわけにはいかないだろ?
長州はもうそこらへんどうでもよくなってるし、奇兵隊の士気はメチャクチャ高い。
それに、アメリカはいま南北戦争が終わって鉄砲が有り余ってるんだ。
だから、うちの海援隊で鉄砲を安く仕入れて、薩摩に卸す。
薩摩は自由に交易できない長州に武器を供給するっていう形で」
ミスティリカ「でもそれって、根本的に薩摩は利用されてるだけですよね?」
ヴィレアム「くぅっ!」
マーズ「ひっひっひ、丁」
ヴィレアム「なにを笑う!」
マーズ「そんな討論なんざーしたってムダだってんだよー」
ゼラド「マーズくん」
ヴィレアム「まずい、ゼラド、逃げろ!」
ゼラド「えっ、どうしたの?」
ヴィレアム「あいつはマーズ弥太郎!
土佐上士の部下で、ゼラドを捕まえようとしてる!」
ゼラド「えぇっ!?」
マーズ「あーあー、そーいやそーだっけ。
ま、どっちでもいーや。
ここぁー賭場だ。そんな空気の読めてねーこたぁーしねーよ」
ヴィレアム「じゃあ、なんの用だっていうんだ」
マーズ「主義思想の討論なんざー、するだけムダだってこと。
どーせデグチはねーんだからよー」
ゼラド「じゃあ、どうしたらいいんだろ」
マーズ「簡単さ。身分制度もホウカイしてるこの現代、
ニンゲンが動くなぁー、ゼニだよ、ゼニ」
ゼフィア「武士が金銭で動くというのか、お主!」
マーズ「サムライふぜーがうるせーよ。ヒトキリは黙ってな」
ミスティリカ「でも、幕府にしても薩摩にしても、仕切ってるのはサムライですよ?」
マーズ「ヤクニンの間違いだろ。
なー、薩摩は今年、コメが不作で困ってるだろーが」
ミスティリカ「たしかにそうですけれど」
マーズ「いっぽー、長州はコメドコロだ。
どーよ、協力のミカエリに長州が薩摩にコメを渡すっちゅーのは」
ゼフィア「うぅむ」
ミスティリカ「たしかにそれなら、薩摩も助かるし、長州も顔が立ちますね」
【長州藩邸】
ゼラド「どうだった?」
マリ「どうって」
ハザリア「どうもこうもない!」
ゼラド「えぇっ! まだ同盟組めてないのぉ?」
ヴィレアム「あれから10日以上は経ってるじゃないか!」
ハザリア「薩摩藩邸に行っても、毎日贅沢な馳走が出てくるだけだ!」
マリ「同盟の話なんて、まったく出てこなくて」
ゼラド「なんでこっちから切り出さないの!」
ハザリア「冗談ではない!
薩摩は公然と朝廷に仕え幕府と対談する立場だが、
長州は天下に孤立し、幕府の討伐を待つばかりの身だ!
この上薩摩に憐れみを請うような真似が出来るか!」
ゼラド「そんなこといってる場合じゃないでしょ!」
マリ「残念だけど、サムライには体面てものがあるんだよ」
ゼラド「もういい! わたしが話を着けてくる!」
【薩摩藩邸】
スレイチェル「考えてみたら、薩摩は長州を助けてやろうという立場ではないか。
向こうから助けを求めてくるのが筋というものではないか?」
ゼラド「なんでそう、いうことがコロコロ変わるんですかスレイチェル先輩!」
ミスティリカ「だって、西郷スレイチェル先輩はそういうひとですもの」
ゼラド「いま日本は大変なときなんですよ!
薩摩とか長州とかいってる場合じゃないですよ!
こんなことやってるうちに、欧米はどんどん日本を攻めてきますよ!
それでいいんですか!」
スレイチェル「それは、よくはないが」
ゼラド「じゃあ、結んでくれるんですね、薩長同盟!」
スレイチェル「う、うむ・・・・・・」
【京都 近江屋】
ゼラド「ふぅ、これで一安心。ええと、あとはなにしたらいいのかな」
フィオル「逃げるんだ」
ゼラド「うわぁっ! フィオルさん、なんでここに!」
ヴィレアム「お前は、ここのところ評判の医師、南方フィオルじゃないか。
どうしてここに」
フィオル「この先、君は大政奉還を発案する。
しかし、それは土佐の怒りを買うことになるんだ」
ゼラド「えぇっ、どうして?」
フィオル「この局面にあっても、土佐藩主山内容堂は倒幕か佐幕かで揺れている。
大政奉還とは、これを容堂からの建白書として将軍に突き付け、
将軍が拒否したところで薩摩、長州、土佐3藩が大挙して倒幕に走るという作戦だった。
つまり、一浪人の身でありながら、君は藩主をまんまと利用したことになる。
それで怒りを買われ、君は暗殺されることになるんだ!」
ゼラド「えぇっ! わたし、故郷に殺されちゃうの?」
フィオル「それだけじゃない。薩摩も長州も、せっかく集めた軍力を台無しにさせられる。
大政奉還以降、君が生きていて得をする勢力はどこにもないんだ!」
ゼラド「さみしいなあ、そういうの」
フィオル「さあ、逃げるんだ!」
ヴィレアム「待て、ゼラドをどこに連れてくんだ!」
フィオル「彼女は異邦人だ。あとは、この世界本来の住人によって行われるべきことだ」
ヴィレアム「待て、ゼラドを、ゼラドを返せーっ!」
【
OG学園】
ルアフ「というわけで、大政奉還は成功したわけさ。
いやぁ、あのときは僕も、剣林弾雨の中をかいくぐって」
ゼラド「ふんふん」
ヴィレアム「どうしたんだゼラド? そんなに幕末好きだったっけ?」
ゼラド「みんな、一生懸命戦ったんだよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――
ゼラド:坂本竜馬
幕末の快男児。最近の研究ではトーマス・グラバーの傀儡だったともいわれている。
ヴィレアム:中岡慎太郎
陸援隊の隊長。竜馬と一緒に暗殺される。
スレイチェル:西郷隆盛
西郷さん。ごわスマッシュとかいってたかどうかは謎。
ゼフィア:中村半次郎
通称人斬り半次郎。西南戦争で死亡。
ミスティリカ:大久保利通
維新三傑。後に初代内務卿となる。
マリ:桂小五郎
維新三傑。西郷挙兵の報を聞きつつ死亡。
ハザリア:高杉晋作
奇兵隊隊長。労咳で死ぬ。
マーズ:岩崎弥太郎
後の三菱財閥の総帥。
最終更新:2010年12月23日 13:51