31代目スレ 2010/7/3
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あまり人から指摘されたことはないが、
ミスティリカ・レックスは結構なファザコンである。
毎日、朝が来るたびに「夜な夜な妻を陵辱してしまう自分に人の親たる価値はあるの
か?」と頭を抱える父の姿は愛すべきものであったし、眼鏡曇らせるものであった。
ミスティリカにとって、父、ミスト・レックスは愛すべき人物であったし、その性癖は
愛おしいものであった。
ゆえに、ミスティリカはいつしか少年がセリエAの選手に憧れるように、陵辱に憧れる
ようになったのであった。
ミスティリカにとって理想の男性とは、自分を存分に陵辱したあとに自殺しかねない
自己嫌悪に陥る人物であった。
長じて、ミスティリカは
OG町という街に移り住んだ。
そしてそこで、まさしく理想通りの男性と出会ったのであった。
◆
「先輩、匿ってください!」
ゾンボルト家に併設されている武道場の中だった。
ゼフィア・ゾンボルトはいつも通り稽古着姿で座禅のようなものを組んで精神集中の
真似事をしている真っ最中のようだった。
「レックス、どうした」
「追われてるんです」
「いったい、誰に」
「ミスティリカ!」
件の人物が怒鳴りながら道場に踏み込んでくる。
背は低い。肌の色は褐色で、日に透けると濃い紫色に見える短い髪は、ミドルティーンの
男の子のように見える。しかし、実際の年齢のことを口にするとこっぴどく叱られるという
ことをミスティリカは知っていた。
シェルディア・ルージュ。かつてミスティリカの父、ミストと共に戦い、恋愛感情を持
っていたとされる女性だった。
しかし、父ミストは母アンジェリカを選び、彼女とは結局友人のような関係に落ち着いている。
ミスティリカにしてみれば、これは大いに不満だった。シェルディアは、いまでも父の
ことが好きなのではないか。ならば、想いを遂げればいいではないか。そうすれば、父
ミストはいつも以上の自己嫌悪に囚われるだろう。それを思うと、ミスティリカの眼鏡は
ひどく曇るのであった。
「家に帰るんだよ、ミスティリカ!」
「えぇ~、イヤですよぅ」
「ミストもアンジェリカも心配してるってば!」
「わたしのことなんか気にしないで、お父さんはさっさとシェルディアさんを陵辱したらいいのに」
「なんてことをいうんだ、キミは!」
「わたしに腹違いの弟か妹が出来たら、お母さんたらどんな顔をするかしら!
あぁ、想像するだけで眼鏡曇るわ」
「どうしてキミはそうなんだ!」
「だって、シェルディアさんはお父さんが好きなんでしょう?」
「だから、もうそんなんじゃないってば!」
「またまた、無理しちゃって」
「無理なんかしてない!」
頬を膨らませながら、シェルディアはつかつかとミスティリカに歩み寄った。これ幸い
とばかりに、ミスティリカはゼフィアの腕にしがみついた。
「わたしは、この街でこのひとに陵辱してもらうんですぅ!
それまでテコでも動きませんから!」
「そうやって他所様に迷惑をかけるんじゃない!」
「迷惑なんかじゃありませんよねぇ、ね、先輩」
「あ、いや、その」
ゴホッと咳払いしながらも、ゼフィア・ゾンボルトの目線は自分の上腕部の上で押し潰
れているミスティリカの乳房にあることは明らかだった。この人物の、こういう欲望を直
視出来ないところが、ミスティリカはたまらなく好きだった。
「聞き分けのないこといってると、実力行使に移るよ!」
シャルディアがその手に携行用のマドラー・システムを握る。
「ふふん、チビのシェルディアさんに、なにが出来るっていうんですか」
「チビっていうなっ!」
マドラー・システムを手に、シェルディアが突っ込んでくる。
ミスティリカは微笑みを浮かべながら腰に手をまわした。
と、シェルディアとミスティリカの間になにか大きなものがぬっと割って入った。
「その」
ゼフィア・ゾンボルトだった。困ったような顔をしてシェルディアを見下ろしている。
「本人が帰りたくないというものを無理矢理連れて帰ろうというのは」
パチンコ依存症から抜けきれないダメ人間のくせにゼフィア・ゾンボルトがなにかいっている。
「なに? キミは関係ないでしょ、引っ込んでて」
「しかし、本人の意志を無視して」
『CRエヴァンゲリオン 始まりの福音』の導入日をこっそりチェックしているくせに、
ゼフィア・ゾンボルトが知ったふうな口を聞いている。
「キミはまだわからないんだよ! そのコの恐ろしさが!」
「これでも私の後輩です!」
よせばいいのに『CR牙狼-GARO-』に手を出してはスッているくせにゼフィア・ゾンボ
ルトがいっぱしの口を聞く。
「まあ、ゼフィア先輩!」
ミスティリカは腰のポーチからすっとマドラーを引き抜いた。
そして、そのマドラーでもってゼフィアを背後から突いた。
「なっ!」
「うふふ、やめてくださいよね、先輩、そういうの」
「なぜ」
驚愕の表情を顔に貼り付かせながら、ゼフィア・ゾンボルトが崩れ落ちる。
「わたしを理解しようなんてしないでくださいよ。
お互い理解し合った上での陵辱なんて、そんなものただの和姦じゃないですか。
わたしが望むのはね、先輩。
徹底的に、無慈悲で、一方的に、衣服を裂き、タイツをビリビリに破くような、
容赦のない陵辱なんですよ。
下手な理解なんてお呼びじゃないんですよ」
「お前という女は」
「うふふっ」
「ミスティリカ!」
シェルディアが叫ぶ。
「やっぱりキミは危険だよ。野に解き放つわけにはいかない!」
「うふふっ、シェルディアさんになにが出来るっていうんです」
「もはや問答無用だよ! キミを力ずくで連れて帰る!」
「やってごらんなさいよ!」
ミスティリカは笑いながら天を振り仰いだ。
ミスティリカの呼びかけに応え、ル=コボルが降り立った。
「キミは! いい加減ル=コボルと付き合うのはやめなよ!」
「さあル=コボル! いまこそクリスタル・ハートとクリシュナ・ハートの力をひとつにするときよ!」
「よしなって!」
『すべては我が器となる幼女のため!』
ル=コボルから注ぎ込まれるエネルギーがミスティリカの中で激流となって迸った。
「よしなよミスティリカ! キミに扱いきれる力じゃない!」
ミスティリカの全身にある毛細血管が膨張し、弾けて出血する。しかし、それでもミス
ティリカは立ち続けた。苦痛などない。むしろ恍惚があるだけだった。
「ミスティリカ、キミは、どうしてそこまで」
「すべては陵辱のため!」
「ミスティリカ、キミは」
「クリスタル・ハート! クリシュナ・ハート!
名付けて! リョウホウ・リャクシテ・クリハーっ!」
ミスティリカは体内で滞留していた全エネルギーを解放させた。
シェルディアの小さな身体が吹き飛び、衣服がボロボロに弾け飛ぶ。
そして、顔面からまともに落ちた。
「うぅ・・・・・・」
「賭ける想いが違うんですよ。
偽りの綺麗事を吐く貴女と、常に本音で生きているわたしとはね」
「キミは、いったいなにを」
「お父さんに伝えてください。ミスティリカは、この街でとても幸せだって」
「キミは、どこまで」
「想いはただひとつ、陵辱のみ」
ミスティリカはクスクスと笑いながらその場を立ち去った。
すぐにバイトに向かわなければならない。
そう、『CRエヴァンゲリオン 始まりの福音』導入に備えて、ゼフィア・ゾンボルトに
流す軍資金を稼ぎ出さなければならない。
ゼフィア・ゾンボルトは、どこまで墜ちていくのだろうか。
それを思うと、ミスティリカの眼鏡は濃く曇るのであった。
「ああ、わたしって、なんて最低の屑なのかしら」
ミスティリカはにたりと微笑むのであった。
最終更新:2010年12月23日 13:57