七夕とカラクリ時計

31代目スレ 2010/7/7

 【フランス オークション会場】
ディーラー「ローマ法王アレクサンドル6世ゆかりの品ともいわれる
 この『アルタイルの時計』はその華麗なフォルムや純金の大鷲像をあしらった
 豪華さが伝説の時計職人マゼラッティの最高傑作とも評される逸品です。
 しかし、それだけがこの時計を伝説たらしめているわけではありません。
 なんとこの時計、作られてから一度も動いたことがないのです。
 さあ、この伝説の時計、誰の手に入るのでしょうか。
 まずは500万ユーロから」

徒鼻羅「600万ユーロ」
ハザリア「1000万ユーロ」
徒鼻羅「なっ!?」

 カーン!
ディーラー「ありませんか、ありませんか?
 はい、そちらの紳士に!」
ハザリア「フハハハ、当然だ」

 【ドゴール空港】
マリ「オークション会場にハザリアが現れたって?」
キャリコ「それで、1000万ユーロも出して動かない時計を落札したっていうんですよ」
マリ「あいつ、そんなカネどこから工面してきたんだ」
キャリコ「問題はその時計、ギャングのハニワ一家が狙ってるってことなんですよ」
マリ「あいつは! どうしてそう妙なことに首を突っ込むかな!」

 【パリ ダウンタウン】
ハザリア「これでいいのだろう?」
鉄獣ガルゴラス「ありがとう、ムッシュー」
ハザリア「俺の仕事はこれまでだ。失礼させてもらうぞ」
鉄獣ガルゴラス「あっ、待って」

 ドカーン!
ハザリア「なんだっ!?」
鉄獣ガルゴラス「ハニワ一家よ!」
ハザリア「なんだ、聞いとらんぞ!」

 【パリ市警】
キャリコ「ダウンタウンで爆発事故?」
魔愚羅「ああ、おそらくハニワ一家の仕業だろう」
キャリコ「ハザリア・カイツという子供が現場にいなかっただろうか」
魔愚羅「残念だが役には立てないよキャリコ、私はいまやただの事務屋だ」
キャリコ「そうか、君ほどの人間が残念だな」

マリ「キャリコさん、あのひとは?」
キャリコ「情報部時代に、ちょっとね」
マリ「へえ」
キャリコ「じゃあ魔愚羅、ハニワ一家の情報は?」
魔愚羅「ああ、最近、『アルタイルの時計』を狙ってるって噂だな」
キャリコ「ありがとう、魔愚羅」

 【裏通り レストラン】
ハザリア「裏ルートで売っ払えば2000万ユーロになる、ただそれだけの時計ではなかったのか」
鉄獣ガルゴラス「ごめんなさい。まさか、ヤツらがあそこまで強硬手段に出てくるなんて」
ハザリア「なにか事情がありそうだな」
鉄獣ガルゴラス「ええ、実は」
ハザリア「興味がないな。地球人同士のくだらぬいさかいだ」
鉄獣ガルゴラス「あ、待って」

 【酒場】
キャリコ「ハニワ一家の徒鼻羅だな」
徒鼻羅「なんだよ、オッサン」

 ジャキッ
マリ「キャリコさん!」
キャリコ「ハザリア・カイツという男を知っているはずだ。
 どこにいる?」
徒鼻羅「なんだよオッサン、あんたも『アルタイルの時計』を狙ってるってのか?」
キャリコ「動かない時計になんて興味はない。
 それより、我が国の要人の話だ」
マリ「要人って、あいつが?」
徒鼻羅「へっ、あいつだったら、消えたよ。『アルタイルの時計』と一緒にな」
キャリコ「なら、探し出してもらおう」
徒鼻羅「ギブ・アンド・テイクって言葉、知ってるか、オッサン」

 ジャキッ ジャキッ ジャキッ
徒鼻羅「ホールド・アップだ。いうこと聞いてもらうぜ、オッサン」
キャリコ「フフ、私も舐められたものだ」
徒鼻羅「なんだと!」
キャリコ「まあいい。乗ってあげようじゃないですか。それで坊が見つかるというのならね」
徒鼻羅「チッ、なんだこのオッサン」

 【裏通りのアパート】
ハザリア「ギャングがこの時計を狙っているだ?」
鉄獣ガルゴラス「ええ、そう。おそらく、さっきの爆発もヤツらが」
ハザリア「迷惑な話だ」
鉄獣ガルゴラス「でも、この時計は、この時計だけはヤツらに渡すわけには」
ハザリア「貴様も同様迷惑な女だな」
鉄獣ガルゴラス「ごめんなさい。あなたに迷惑をかけるつもりは」
ハザリア「迷惑ならすでにかけらている。あとは俺の指示に従ってもらおうか」
鉄獣ガルゴラス「ええ」

 【パリ市警】
徒鼻羅「匿名のタレコミだと?」
キャリコ「ええ、パリ市警に連絡がありました。
 ハザリア・カイツはダウンタウンのアパートに身を潜めていると」
徒鼻羅「信用できるのか? そんな話が」
キャリコ「お互い手がかりのない身です。乗っかるしかないんじゃないですか?」
徒鼻羅「チッ、偉そうに」
マリ「なんでもいいよ、とにかくあいつを探そう」

 【ボロアパート】
マリ「ここが?」
キャリコ「ええ、ここに、高笑いをする猫背な男が身を寄せていたという情報が」
徒鼻羅「なんだっていい、時計はどこだ」
マリ「アッ、あれは」

徒鼻羅「金庫?」
キャリコ「この中に時計が?」
徒鼻羅「オイ、オッサン。偉そうなこと行ったんだ、その金庫、開けてもらうぜ」
キャリコ「その銃を下ろしなさい。こんな金庫、たちどころに壊して見せましょう」
マリ「待ってくださいよ!」

キャリコ「マリ嬢?」
徒鼻羅「さっきからなんだ、このメスガキ!」
マリ「あいつが、金庫があるからって普通に時計を隠しておくはずがない!」
徒鼻羅「なんだと?」
マリ「時計はそこだ!」

ハザリア「フン、貴様まで来ていたとはな」
マリ「警察に流れたっていうタレコミは、おそらくおまえの自作自演だろう。
 そうやって、ハニワ一家をおびき寄せたんだな、ハザリア!」
ハザリア「良くできた、と誉めてやろうか」
マリ「誰がお前なんかに!」
ハザリア「しかし、読みが浅いな。さあ徒鼻羅、出してもらおうか」
徒鼻羅「なんだと!?」
ハザリア「貴様は持っているはずだ。
 『アルタイルの時計』と対になる、『ベガの歯車』をな」
徒鼻羅「貴様、どこまで」
鉄獣ガルゴラス「ムッシュ、あなたは」
ハザリア「15世紀の天才建築家であり、発明家であり、宗教家であり、発明家であった天才マゼラッティ。
 しかしその成功傑作と呼ばれた時計は、動かない不良品だとされた。
 なぜ動かなかったのか。
 それは、キーとなるべき歯車がなかったからだ。
 そう、貴様が持っている、『ベガの歯車』がな」
徒鼻羅「貴様、どこまで」
ハザリア「その『アルタイルの時計』を発注したのはバチカン史上最悪と呼ばれた法皇、
 アレクサンドル6世だった。
 この法皇は贈収賄を繰り返し、ついにはイタリアを戦火に放り込むようになった悪党だ。
 その悪党が、なぜ動かない時計などを発注したのか。
 答えは、自分の汚職の証拠を時計の中に隠すためだ」
徒鼻羅「チッ、てめェ、そこまでッ!」
ハザリア「バチカンを脅して権力を得るつもりだったか、ギャング風情が。
 しかし残念だったな、貴様はおれに盾突いた」
徒鼻羅「野郎ども! 撃て! ヤツらを撃て!」

 パンッ! パンッ! パンッ!
魔愚羅「キャリコッ!」
キャリコ「魔愚羅か!」
魔愚羅「全員、撃て! ハニワ一家を一網打尽にしろッ!」
徒鼻羅「オッサン! てめェ、チクショウ!」
キャリコ「あいにくと、おじさん正義のひとでしてね」

 【ドゴール空港】
マリ「お前は! また妙なところで妙な女とつるんでなにやってた!」
ハザリア「むぐぐ」
鉄獣ガルゴラス「やめて、ムッシュは、私のために」
マリ「だいたい、あんたは一体!?」
ハザリア「天才マゼラッティ縁の者。そうではないか?」
鉄獣ガルゴラス「ムッシュ、あなたは」
ハザリア「祖先の遺言を叶えるため、俺を利用した、そうではないか?」
鉄獣ガルゴラス「ごめんなさい。私・・・・・・」
ハザリア「興味がないといったはずだ。
 俺は、地球の薄汚い歴史を知っただけで十分だ」
鉄獣ガルゴラス「メルシィ、メルシィ、ハザリア・カイツ」

 【パリ市警】
魔愚羅「ありがとうキャリコ、君のおかげでハニワ一家を一網打尽に出来た」
キャリコ「フフ、それで魔愚羅、この借り、いつ返してもらえるのですか?」
魔愚羅「えっ?」
キャリコ「君が閑職にまわされたのは、ハニワ一家との密通を疑われてのことだった。
 おそらく、その疑惑は真実だったのでしょう。
 しかしこの逮捕劇で名誉を挽回出来ましたね。
 この働きをタダでやってもらおうというのは、少々ムシが良すぎるんじゃないですか?」
魔愚羅「フフ、君には敵わないよ、キャリコ」
キャリコ「お互い様ですよ、魔愚羅」

 【機内】
マリ「よかったのか、あの時計、タダで渡しちゃって」
ハザリア「構わん。すでに俺の興味は失せておる」
マリ「お前の興味っていうのは、なんだったんだよ」
ハザリア「ベガとアルタイル、織り姫と牽牛は、一年に一度しか会えなかったそうだな」
マリ「相変わらずお前は、地球の文化に詳しくて気持ち悪いな」
ハザリア「500年ぶりに再会させてやってもよいのではないか、そう思っただけだ」
マリ「なんか、気味悪いな、お前がそういうこというの」
ハザリア「俺と貴様はしょっちゅう会っているがな」
マリ「ハ、なにいってるんだお前」
ハザリア「黙れ、黙れよ!」

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最終更新:2010年12月23日 13:58
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