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香港島北部に位置する九龍。
地上も地下も素人が勝手に広げた建屋、地下道が際限なく広がっており、治安はレッドの更に下、’ブラックエリア’と揶揄するものさえいる魔窟が、彼らの庭だった。
火龍たちは燃実に命を救われた礼として、対価を尋ねるも、あっけらかんと(もう元いた自分のねぐらは使えないから)ねぐらに住まわせろと返し、4人での暮らしが始まっていた。
地上も地下も素人が勝手に広げた建屋、地下道が際限なく広がっており、治安はレッドの更に下、’ブラックエリア’と揶揄するものさえいる魔窟が、彼らの庭だった。
火龍たちは燃実に命を救われた礼として、対価を尋ねるも、あっけらかんと(もう元いた自分のねぐらは使えないから)ねぐらに住まわせろと返し、4人での暮らしが始まっていた。
4人での暮らしが始まってしばらくすると、燃実もすっかり馴染み、近所のタバコ屋のショーケースに飾られた煙管を通りすがりに眺めるのを楽しみに日々の稼ぎに出かける。そんな日々が続いていた。
沁みるような寒さの夜、彼らとしては豪勢な食料を携え、燃実は3人に連れられ街から離れたところにある丘に連れられていた。
邪気のないニヤニヤした3人の笑いに戸惑いながら、燃実は美しい街明かりを肴に小さな宴を楽しんでいた。
間もなく、ホンコンの空に大輪の華が咲く。
年明けの花火。
ここは、俺たちしか知らない穴場なのだと彼らは言った。
燃実を加えてちょうど1年になる、その宴は燃実にとってホンコンでの最高の思い出であり、最後の思い出だった。
邪気のないニヤニヤした3人の笑いに戸惑いながら、燃実は美しい街明かりを肴に小さな宴を楽しんでいた。
間もなく、ホンコンの空に大輪の華が咲く。
年明けの花火。
ここは、俺たちしか知らない穴場なのだと彼らは言った。
燃実を加えてちょうど1年になる、その宴は燃実にとってホンコンでの最高の思い出であり、最後の思い出だった。
仲間のひとりは、マフィアに追い立てられて散り散りに逃げた時ついぞ姿を見せなくなった。
もう1人は、対立した浮浪児達との抗争で腿に古釘が刺さって、破傷風であっけなく逝った。
もう1人は、対立した浮浪児達との抗争で腿に古釘が刺さって、破傷風であっけなく逝った。
墓穴を掘りながら、どちらからともなく『2人でこの街を出よう』そんな言葉が突いて出た。
ここで無いどこかへ、2人で。
ここで無いどこかへ、2人で。
それから数日をかけて、各々で出立の準備を整え九龍の地下道で待ち合わせをする。
長く暮らしたこのホンコンでの整理をつけ、いざ新たな一歩を踏み出そうとしたその時。
電灯が吹き消されたロウソクのように消え、それを合図に響いた地鳴りと共に天井が崩れ落ち地下道に居合わせた人間を分け隔てなく飲み込む。
長く暮らしたこのホンコンでの整理をつけ、いざ新たな一歩を踏み出そうとしたその時。
電灯が吹き消されたロウソクのように消え、それを合図に響いた地鳴りと共に天井が崩れ落ち地下道に居合わせた人間を分け隔てなく飲み込む。
ホンコンHEAVENが崩壊した、その日だった。
地響きが収まり、燃実が辺りを見回すと暗闇が広がっていた。
生き埋めにはなんとかならず、目の前の天井が崩れたようだ。
火龍を呼ぶと幸いな事に答えは返ってきた。しかし、二人の間は瓦礫で阻まれ、腕がようやく通る程の穴が開いているのがせいぜいだった。
穴の向こうで傷を負ったのか、声に力がない火龍に燃実が不安を感じていると、背後から巨大な影が現れる。
穴の向こうから聞こえる、燃実の争うような声、それが突然に途切れた事に火龍は傷の痛みも忘れ激昂し、姿も知らぬ襲撃者に罵声を浴びせる。
そいつに手を出してみろ、地獄から這い出てもお前を殺してやる。と。
生き埋めにはなんとかならず、目の前の天井が崩れたようだ。
火龍を呼ぶと幸いな事に答えは返ってきた。しかし、二人の間は瓦礫で阻まれ、腕がようやく通る程の穴が開いているのがせいぜいだった。
穴の向こうで傷を負ったのか、声に力がない火龍に燃実が不安を感じていると、背後から巨大な影が現れる。
穴の向こうから聞こえる、燃実の争うような声、それが突然に途切れた事に火龍は傷の痛みも忘れ激昂し、姿も知らぬ襲撃者に罵声を浴びせる。
そいつに手を出してみろ、地獄から這い出てもお前を殺してやる。と。
襲撃者は火龍に一言、『案ずるな』と返す。その静かさ、重みは火龍を即座に冷静に戻す。そんな厳かな響きだった。
花と名乗ったその男は短く、当人は知らぬが自分は燃実の保護を預かるものであることを語る。
火龍は花に頼み事とともにひとつの包みを託す。
花と名乗ったその男は短く、当人は知らぬが自分は燃実の保護を預かるものであることを語る。
火龍は花に頼み事とともにひとつの包みを託す。
花の足音が遠ざかるのと対照的に、火龍の耳には這いずる炎の音が近づくのが聞こえていた。
燃実が目を覚ますと辺りには焦げた匂いが拡がっている。
傍らには、有無を言わさず自分を気絶させた大男が黙って座っている。
彼に事情を尋ねる前に、燃実の視界には否応なくその景色が目に入ってしまう。
傍らには、有無を言わさず自分を気絶させた大男が黙って座っている。
彼に事情を尋ねる前に、燃実の視界には否応なくその景色が目に入ってしまう。
燻る白煙を朝日が照らす中、焼け野原になった九龍。
そして、昼夜を問わず眩い電光で当たりを照らしていた中心地、ビル群が生気のない墓石に成り果てた様を。
そして、昼夜を問わず眩い電光で当たりを照らしていた中心地、ビル群が生気のない墓石に成り果てた様を。
花に何故自分だけを助け出したのか食ってかかる燃実。
それに対し巌のように佇み、懐から地下で火龍から受けとった包みを燃実の手に握らせる。
それは、あの煙管だった。
それに対し巌のように佇み、懐から地下で火龍から受けとった包みを燃実の手に握らせる。
それは、あの煙管だった。
燃実がタバコ屋のショーケースを気にしているのを知った3人で、2年集めた金で買ったもの。
花は続ける。
この煙管はこの世にふたつと無い逸品。これを頼りに俺はお前を探しに行く。
この煙管はこの世にふたつと無い逸品。これを頼りに俺はお前を探しに行く。
そう、火龍から言伝を預かったと。
しばしの沈黙の後、燃実は花に問う。
『あなたについて行けば強くしてくれるのかと』
『それが、氷条の子倅が求めたこと。』
『あなたについて行けば強くしてくれるのかと』
『それが、氷条の子倅が求めたこと。』
数年後、ホウライ。
懐かれた浮浪児に燃実は名を名乗りながら地面に字を書く。
『らん、しー?』
そう大陸の読みで声に出した子供の口に燃実は立てた指を当てる。
『もえみ。』
『その呼び方は、もうしていい人が決まってるの。』
懐かれた浮浪児に燃実は名を名乗りながら地面に字を書く。
『らん、しー?』
そう大陸の読みで声に出した子供の口に燃実は立てた指を当てる。
『もえみ。』
『その呼び方は、もうしていい人が決まってるの。』
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