少女と獣

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少女と獣  ◆U1w5FvVRgk



 犬にじゃれられる乙女と、それを陶酔状態で写真に収める少女。
 バトルロワイアルの会場と言えど、これほど珍妙な出会いを果たしたものは他に居ないだろう。
 幸いにも乙女――真紅の一撃で少女――竜宮レナは正気に戻り、会話をするには至った。
 元々聡明な二人故に一度落ち着いてしまえば理解は早い。
 その後の情報交換はすんなりと行われた。若干の問題は発生したが。

「ねえ、レナ。貴方、ちゃんと聞いてるの?」
「うん、聞いてるよ~翠星石ちゃんに蒼星石ちゃんか。かぁいいんだろうなぁ~」
「…………」

 一言で表そう。現在の竜宮レナの顔はだらしない。
 真紅と出合った時に戻ったとも言える。
 始めはまともだった。
 自分は殺し合いをするつもりはなく、友達を探して脱出するのが目的だという事。
 もし真紅も殺し合いに乗っていないなら協力してほしい事など、自分の意思を明確に伝えていた。
 真紅としても目的はレナとさして変わらないので、同行を断る理由は無かった。
 次は真紅が話し出したのだが、問題は真紅の姉妹の話になった際に起きる。

 一人目、危険性の高い水銀燈の話をしたとき、レナはまだ真面目な顔付きだった。
 二人目、仲間である翠星石の話をしたときは目が輝きだした。
 三人目、翠星石の双子の妹である蒼星石の話になったときは頬が緩んでいた。

 必要な事とはいえ、レナにその手の話をするのは不味かったようだ。
 聞き終えた後は、すっかりまだ見ぬかぁいいものの虜と化してしまった。
 レナの緩みきった顔を見れば、こんな時に不謹慎だと怒る者も居るだろうが、
 真紅は溜め息を一つ吐くだけだった。
 殺し合いの最中に能天気な顔を晒すレナに対しての呆れはある。
 それでも、真紅はレナを侮りはしない。
 根拠としては、異常事態に巻き込まれながら冷静である点が挙げられる。
 真紅はアリスゲームを経験しているので、殺し合いにそれほど動揺は無かった。
 何しろ数百年の間を姉妹同士で争ってきたのだから年期が違う。
 だが、見たところレナはただの人間だ。
 普通は殺し合いに参加などさせられれば、錯乱してもおかしくはない。
 それなのにレナは冷静であるばかりか、自分の趣味について考える余裕まである。
 少なくともこの点を真紅は評価していた。今のところはこれだけとも言えたが。

「はぅ~」

 さすがにいつまでもこんな状態では困る。
 つい先ほど、同様の状態となったレナを真紅は元に戻した。
 ならば今度もそうするまでと、真紅は上体を右に捻る。
 すると、ツインテールにしてある髪の片方が宙に揺れて、月明かりを反射した金髪が力強くしなる。
 いくら至近距離とはいえ、真紅はこの髪で自身の倍以上の大きさがあるレナを一度ぶっ飛ばしている。
 それと寸分違わない鋭い一撃が、無防備なレナの横っ面に打ち付けられた。
 パァン、という小気味良い音が鳴った。
 今度はレナの身が宙を舞うことはなく、首だけが真横に曲がった。

「はぅ!?」
「目は覚めた? それなら話の続きをしたいんだけど」
「う、うん。分かった」

 ようやく正気に戻ったのか、レナは左頬を擦りながら頷く。
 真紅はレナを見つめながら髪に触れている。
 まただらしない顔になったら叩く、とアピールしているようにも見えた。

「といっても、後はそれほど話すことも無いから移動しましょう」
「うん……」

 どことなくしょんぼりとした様子で、レナは傍らに突き立つ剣を持つ。
 柄の部分に拳を保護する為の護拳がある、一般的にはサーベルに分類される剣だ。
 柄は金色で、剣身は真紅のドレスと同じく真っ赤に染められている。
 色合いだけなら悪趣味だが、どこか禍々しい威圧感が感じられた。
 重厚な外見を見れば小柄な真紅はもちろん、平均的な成人男性ですら持てるかどうかの重量はあるだろう。
 しかし、レナはそれを軽々と持ち上げていた。それも片手で。
 真紅はレナをただの人間と判断した。
 だが、あの剣を携えているところを目にすればその判断が揺らいでしまう。

「よくそんなものを平然と持てるわね」
「ちょっと重たいけど、いつも斧とか鉈を持ってるから平気だよ」

 レナはあっさりと言うが、内容の方はあっさりと聞き逃せないものだ。
 当然だ。レナのような女の子が、どうしたら常日頃から斧や鉈を持つ生活を送るのか。
 少なくとも簡単に想像できるものではないだろう。

「どうして、いつも斧や鉈を持ってるの?」
「かぁいいものを探すのに使うんだ」
「意味が分からないのだわ。貴方の言うかぁいいものを探すのにどうして鉈が必要なの」
「掘り出す為には必要だよ。例えばゴミ捨て場とかから」
「そんなところに何があるというの。ただのゴミでしょ」
「そんなことないよ」

 真紅の言葉を、レナは即座に否定した。
 見れば、その顔付きは先ほどのふざけたものやしょんぼりしたものではなく、真剣なものとなっていた。
 二人の青い瞳がじっと見詰め合う。

「一度壊れて捨てられても、必要としてくれる人が居たら、それはゴミなんかじゃないんだよ」

 そういうレナに真紅は驚きに目を見開き、思わず右腕の付け根の辺りを押さえた。
 以前、真紅は水銀燈との戦いで右腕をもぎ取られたことがある。
 完璧な少女【アリス】を目指すローゼンメイデンにとってパーツの欠損は致命的だ。
 壊れた人形などジャンクでしかない。それが真紅の認識だった。
 当然ながら真紅は悲観に暮れたのだが、真紅のミーディアムである桜田ジュンは言った。
『僕はお前を何かが欠けた人形だなんて思ってない。
 例え足り無いものがあったとしても、それは僕が埋めてみせる』と。
 さっきのレナの発言は、真紅にその時のジュンを思い起こさせた。

「そう……そうね。レナ、貴方は正しいのだわ。そして、とても優しい」
「えへへ、そうかな? かな?」

 照れ臭そうに笑うレナに、真紅は頷いた。
 少なくとも、今のレナは好印象だった。
 これなら同行しても問題ないと真紅も思う。
 されど、問題はまだ残っていた。

「レナ。貴方は私に渡す物があるわ」
「え? 何かな?」
「とぼけないで。カメラよ」

 真紅の要求に、レナの表情が固まった。
 インスタントカメラ。
 レナの支給品の一つであり、真紅の痴態が収められている品。
 あんな写真を現像でもされたら、ローゼンメイデンのプライドは木っ端微塵になってしまう。
 だから、何としても渡してもらいたかったが、

「やだ」

 レナは一言で拒否を示した。
 かぁいいもの命のレナに、譲渡を求めるのが無理である。
 真紅から表情が抜け落ちた。
 無表情となった顔は、夜の雰囲気と相まってかなり怖い。

「渡しなさい」
「やだ」

 真紅が一歩迫ると、レナが一歩下がった。

「渡しなさい」
「やだ」

 繰り返す、繰り返す、繰り返す。

「渡しなさい!」
「やだ!」

 等々怒鳴り声にまで発展した。
 女の機嫌は変わりやすいと言うとはいえ、先ほどまでの和やかな空気はどこにいったのか。
 今や一触触発にまで行きそうだ。

 ピシュン、ピシュン

 二人の耳に聞きなれない音が届いたのはそんな時だった。

 ■  ■  ■

 後藤は飢えていた。
 それは食事としての意味もあったが、もう一つの意味もある。
 戦闘だ。後藤は戦闘にも飢えていた。
 戦いこそが自らの存在意義としている後藤にとって、食事と同様にとても重要なものだ。
 先程のルイズはどうみても餌にしかならないので三木に任せたが、今では間違いだと思っていた。
 支給品を使い思わぬ反撃をしてきたルイズは、後藤が戦ってもいい相手だった。
 もし最後のロケットランチャーが胴体に直撃していれば、勝敗は逆転していたのだから。
 もっとも、後藤が最初から戦っていれば出会い頭の一撃で仕留めていたかもしれないが。
 そのルイズを食した後は街中を徘徊してみたものの、次の餌は一向に見つからない。
 後藤は北に向かって歩いていたのだが、この選択が間違っていた。
 もし後藤が西か南に進んでいれば、今頃は餌にありつけていた。
 西なら斎藤一泉こなた、南の遊園地ならストレイト・クーガー柊かがみに遭遇していただろう。
 その場を動かずに留まっていても、平賀才人がやってきていた。
 これまでは人間など腐るほど居たために、捜索するのに慣れていないのもあるとはいえ運が無い。
 そうこうしているうちに、後藤は街の北辺まで着いてしまった。
 眼前には道路と草原が見える。
 後藤は西を向き、次は東を向くと、頭を捻った。

(この街に何人の人間が滞在しているのかは知らないが、隠れたりしていたら面倒だな。
 それなら、一度外に出てみるか)

 どちらかといえば、後藤は室内や森などの密集した地形での戦闘が得意だ。
 広い場所での戦闘は三木の方が適している。
 とはいえ、餌が見つからねばどのみち意味がない。
 遮蔽物の無い場所なら餌を見つけるのも難しくはない。
 後藤が僅かに屈むと、足の皮膚や肉が圧縮されて硬質化していく。
 足先も二つに分かれてウサギの足のような形となった。
 変形が終わると後藤はしゃがみ、足のバネの反動を使って駆け出した。
 ピシュン、ピシュン、と独特の風切り音が辺りに響く。
 見る見るうちに速度は上がっていくが、エリアE-10の中程で後藤は止まった。
 いや、止まらざるを得なかった。
 思いがけない肉体の不調によって。

(どういうことだ? 普段ならもっとスピードが出るはずだが)

 いつもの後藤なら、自動車と同等の速度は余裕で出せる。
 しかし、今は精々が時速四十kmに届くがどうかがやっとだった。
 これが後藤に科せられた制限である。
 さすがに常時乗用車並みのスピードで動き回られるのは、他の参加者と差がありすぎると判断されたのだ。

(おかしいと言えば、こっちもか)

 後藤は右腕を刃に変形させて、振るってみる。
 高速の刃が鞭のようにしなり、空気を切り裂いた。
 もし人間が立っていたなら、間違いなく真っ二つになっているだろう。
 一見した限りでは問題ないようにみえるが、後藤は物足りない様子だ。

(やはり遅い。原因は不明だが、俺の体に何かが起こっているようだな)

 攻撃速度の低下。後藤のもう一つの制限だ。
 参加者の大半が普通の人間である以上、人間が認識できない速度で攻撃させるわけにはいかなかった。


 確認を終えると、後藤は右手と足を元に戻した。
 別に腕の速度が落ちても後藤は十分に戦えるが、足の速さが落ちているのはいただけない。
 これでは餌を探すのが遅れるからだ。
 パラサイトとて動けば腹が減る。
 空腹のまま餌を見つけるまで走り続けるのは、後藤としても多少は堪える。
 さて、どうするかと考え出して、ここで後藤はようやく気付いた。
 東に数十メートル先から、こちらを唖然と見つめる二人の少女に。
 片方は茶色の髪に、青と白の二色を基調としたセーラー服を着ている。
 身長は百六十cmほどで、肉付きはそれほど悪くないが、まだまだ発展途上だろう。
 右手には赤い剣を携えていた。
 もう片方は艶やかな金髪に、真紅のゴシックロリータ風のワンピースを纏っている。
 こちらは四十cmほどの大きさしかない。
 二人を一見して、後藤が思ったことは失望と疑問の二つ。
 失望の原因は、茶髪の少女程度の体型では食しても物足りない事に。
 疑問の原因は、金髪の少女に全く食欲が湧かない事に。

(あっちの金髪は……まあいい、確かめればいいだけだ)

 少女たちとの接触を決めた後藤は、少女たちに向けて歩き始めた。
 全ては、金髪の少女が獲物として足りえるのか確認するために。
 そして、もう一人の少女を食らうために。

 ■  ■  ■

「真紅ちゃん。あの人、何だろう?」
「判らないわ。でも、一つ訂正しなさい。あれはおそらく人ではないわ」

 レナの怯えを含んだ声に、真紅ははっきりとした声で返した。
 真紅としても、こちらに近づいてくる男が何者なのか検討が付かない。
 道路を走って表れたかと思ったら、いきなり右腕を刃に変形させたのだ。
 ここから見ても、その刃の鋭さは理解できた。
 それが高速で振るわれたのを見たときは、寒気すら感じた。
 真紅もアリスゲームを通して様々な時代を巡ってきたが、あんな生物は見たことがない。
 外見だけなら間違いなく人。しかし、中身は人に在らず。
 まさに得体の知れない存在だが、それでも真紅には分かることがあった。
 あれが警戒対象であり、このまま近づかせてはいけないということだ。
 真紅はデイパックを背から降ろすと、中から球状の物体を取り出した。

「止まりなさい!」

 凛とした声が響き、男は歩みを止めた。
 真紅としては本当に止まるとは思ってなかったので、少し意外だった。
 男は真紅の声に動じた様子もなく、ただ真紅を見ている。
 まるで観察でもするかのように見つめられ、真紅は不快感を感じた。

「レディをジロジロと見るなんて、失礼な男ね」
「お前は何だ?」

 真紅の言葉に反応せず、男は不躾な質問をしてきた。
 少なくとも、初対面の相手に掛ける言葉ではない。
 真紅は益々不快感を募らせた。
 レナは様子を窺うように両者を見比べている。

「相手に質問する前に、まず名乗るべきよ」
「そうか。俺は後藤と呼ばれている」
「そう。それじゃあ後藤。私が何だとはどういう意味かしら?」
「簡単なことだ。お前は人間なのか?」

 後藤の言葉に、真紅は得心が行った。
 確かに初めてローゼンメイデンを目にすれば、大抵の者は驚く。
 それだけ真紅たちは精巧に出来ているということだ。
 この男もその例だと思い、真紅はいつもどおりに名乗った。

「私はローゼンメイデン第五ドールの真紅。要するに人形よ」
「人形……人間の作った玩具か」
「っ! 取り消しなさい!!」

 後藤の発言に、真紅は再び大声を出した。
 ただし、今度は怒気が大量に込められていたが。
 真紅たちローゼンメイデンは一様に高いプライドを持つ。
 それは自分たちが特別な人形であるという自負と誇りを持つからだ。
 その誇りを、後藤は無神経にも傷付けた。

「私は真紅。究極の少女アリスとなるためにお父様がお作りになったローゼンメイデン!
 決して玩具なんかじゃないわ!」
「それがどうした。誰が作ろうが、どんな目的があろうが、人形は人間の玩具だ」

 激昂する真紅に対し、後藤はどこまでも冷ややかだ。
 まるで機械のように、答えや淀みに変化はない。
 それが何にも勝る侮辱となり、真紅の怒りを増幅させていく。

「いい加減に」
「真紅ちゃん、ちょっと待って」

 更に怒声を発しそうになった真紅に、背後のレナから静止の声が掛かる。
 真紅は無言でレナを睨み付けた。止めるな、と目が語っていた。
 そんな真紅に、レナは諭すように話す。

「レディはそんな大声を出さないんじゃないかな? かな?」

 穏やかに告げるレナに、真紅は憮然とした表情となり顔を逸らした。
 多少なりとも頭が冷えたのだろう。
 その隙を突いて、レナは後藤に話しかけた。
 表情は打って変わり真剣そのものだ。

「後藤さん。私も貴方の言葉に納得できません。言いたいこともある。
 けど、その前に聞きたいことがあります」
「何だ」
「貴方は殺し合いをするんですか」

 単刀直入だった。
 質問というより、確認の意味合いが強い。
 レナにしろ真紅にしろ、後藤は殺し合いに乗っていると確信していたのだから。

「俺に殺し合いをするつもりはない」

 後藤は躊躇せずに即答した。
 意外な返答にレナはもちろん、怒りを露にしていた真紅ですら驚く。
 いや、後藤の話にはまだ続きがあるようだ。

「だが」
「だが?」
「腹は減っている」

 空腹。生物としては当たり前の現象だが、後藤の言葉は何故か聞く者に悪寒を感じさせた。
 女の感とでも言えばいいのか、レナはこれ以上話すのを躊躇する。
 まるで禁忌を犯そうとしている心持ちだった。
 一度、深く息を吸い込む。それである程度落ち着くと、意を決して言葉を口にした。

「後藤さんは……何を食べるんですか?」

「人間だ」

 答えると同時に後藤の口が釣りあがり、レナをその場に硬直させた。
 まるで肉食動物に出会った草食動物。
 狩るものと狩られるものの立場が、ここに出来上がってしまう。
 後藤の笑みは、同時に会話の終了と戦いの開始を宣告する合図となった。
 後藤の右腕が伸び、一瞬で鎌の形に変化する。
 刃はそのまま振り上げられ、レナに向かって振り下ろされた。
 通常なら認識できない速度の攻撃だが、制限のおかげでレナは目の端で腕が振るわれるのを捉えた。
 でも、そこまでだ。
 初動が見えても、体はピクリとも動かなかった。
 恐怖という原初の感情が、レナをその場に縛り付けていた。
 サタンサーベルを盾とすればまだ助かったかもしれないが、もう遅い。
 自分の命を刈り取る刃が迫るのを認識して――ドサリ、とレナの体は後ろに倒れた。

「何とか、間に合ったのだわ」

 自分の胸元にしがみついた真紅の声を、レナは星空を眺めながら耳にした。
 彼女が自分を押し倒したと理解して、そちらに目線を向けた。
 見れば後藤が振り抜いた刃を引き戻し、自分たちに振り下ろそうとしている。
 しかし、動きは真紅の方が早い。
 後藤が追撃をする前に、右手に握っていた物を放り投げていた。
 黒い玉が空中を、後藤に向かって一直線に飛んでいく。
 爆弾。そんな単語が咄嗟に思い浮かんだ。
 後藤もその可能性に気付いたのか右腕を振り下ろすのを中断し、すかさず左腕を胴体の前にかざす。
 左腕は瞬時に薄く伸びて盾状となり、ほぼ同時に黒い玉が後藤の眼前で炸裂した。

 ■  ■  ■

(煙幕か……)

 後藤の周囲には大量の煙が立ちこめていた。
 投げつけられた物体を見た瞬間、後藤の脳裏にはルイズに撃たれたロケットランチャーのイメージが浮かんだ。
 もし爆発物で、内臓にダメージを受ければ致命傷になりかねない。
 故に攻撃を中断して、左腕での防御を優先したのだ。
 結果は杞憂に終わったが。

(この煙に乗じて攻めてくるつもりか? それなら・・・・・・嬉しいな)

 後藤にしてみれば、戦う工夫は大歓迎だ。
 一方的な殺戮よりもそちらの方が楽しめる。
 だからといって、黙って攻撃されるつもりもない。
 攻撃される前にこちらから近づくまでと、後藤は足を変形させて走りだした。
 煙りさえ抜けてしまえば、居場所は特定できる。
 更に後藤の脚力をもってすればこんな煙など――

 一分経過。まだ抜けない。

 二分経過。徐々に煙が薄くなっていくがまだ抜けない。

 さすがにおかしいと後藤も思い始める。
 そして三分が経過して煙が消え去った時、後藤は目を見開く。
 地面に無数の足跡が円上に付いていた。
 そう、後藤は同じ場所をぐるぐると回っていたのだ。差し詰め自らの尾を追いかける犬のように。
 これがあの煙の効果だと気づくがすでに遅い。
 いくら四方に目を凝らしても、真紅たちの姿はない。
 後藤は思い違いをしていた。煙幕は攻める為ではなく、逃げる為に使われたのだ。
 戦う工夫をせず、逃げる工夫をした二人に後藤の顔が怒りに歪む。
 とはいえ、思考の一部はまだ冷静だった。
 いくらなんでも、僅か数分でパラサイトの視力から逃れる範囲に逃げたとは考え難い。
 なら、二人はどこにいったのか?
 地に居ないのなら、あとは一つしかない。
 後藤は顔を上方に向けて、改めて四方を見渡す。
 北、居ない。西、居ない。南、居ない。東、見つけた。
 後藤から数百メートル先を二人は飛んでいた。しかも、ホウキに跨って。

 ■  ■  ■

「どうやら、気づかれたようだわ。レナ、急ぎなさい」
「ごめん。これ以上は無理みたい」

 申し訳なさげなレナの声に耳を傾けながら、真紅は前方を見据える。
 遠くからこちらに近づいてくる影があった。言うまでもなく後藤だ。
 かなりの速さで走っているので、このままでは追いつかれることは請け合いだ。
 現在、真紅たちはホウキに乗って飛んでいる。
 字面だけなら突拍子もないものだが、事実だから仕方がない。
 先ほど、真紅の支給品である煙幕弾を使用したあと、二人は一目散に逃走を図っていた。
 どう足掻いても、彼我の実力差にはどうしようもないものがあるからだ。
 とはいえ、数分しか効果のない煙幕弾が効いてる間に逃げきれるとも言い切れない。
 真紅だけなら飛行すればいいが、それではレナを置いてきぼりにしてしまう。
 そこでレナが取り出したのがこのホウキだった。
 名称は単純明快に『空飛ぶホウキ』
 どうみても眉唾物だが、最早このホウキにレナの命運を賭けるしかなかった。
 前に操縦担当のレナが、後ろに見張り担当の真紅が背中合わせに座り、ホウキを発動させた。
 結果は、この通り無事に機能している。
 安心するには早いようだが。

 ピシュン、ピシュン、ピシュン、ピシュン

「逃げるな!」

 風切り音と共に後藤の怒声が轟く。
 真紅たちとの距離はまだ離れているが、そこからでも顔を鬼のようにしているのが容易に想像できた。
 背中で聞くレナはかなりの恐怖を感じているようだ。顔は強ばり、全身に力が入っている。

「レナ。貴方は前だけを見なさい。海まで行けば、さすがにあれも追ってこれないはずだわ」
「う、うん。分かった」

 そんなレナを励ましてはいるものの、真紅もまた緊張していた。
 海面に出ても、後藤が追ってこない保障はない。
 付け加えて追う者と追われる者なら、精神的には追う者の方が有利だ。
 しかも、追われる側は一度追いつかれたらそれまでなのだから尚更だろう。
 両者の距離は段々と縮まっていく。
 三分のハンデなど、後藤にすれば微々たるものらしい。
 されど、真紅とて黙っていない。
 両手を後藤に向けると、手の平から無数の薔薇の花弁が飛び出した。
 桜吹雪ならぬ薔薇吹雪が後藤に迫る。
 しかし、後藤は盾状にした左手をかざすと、勢いを落とさず薔薇吹雪に突っ込んでいった。
 真紅はその姿に呆気に取られるが、その後は愕然と息を飲んだ。
 後藤は花弁が刺さっても、全く意に介していなかった。
 肝心の頭部や腹部は左腕で守り、それ以外に刺さってもまるで利いていないかのように突き進んでいる。
 自分の攻撃が足止めにすらならない事実に、真紅は歯噛みするしかなかった。
 だとしても、花弁を放つのは止めない。
 距離は縮まり続ける。

 五十メートル、四十メートル、三十メートル、ここで真紅は潮の香りを感じた。
 真下に目を移せば、夜と同じ暗い海が見えた。

「真紅ちゃん、海に出たよ!」
「そのまま進みなさい!」

 二十メートル、十五メートル、放たれ続ける花弁に構わず、後藤が鎌状の右腕を降り被る。
 本体に代わり、今度は薙ぎ払われた右腕と真紅たちの距離が縮まり始めた。

 十メートル、放物線を描きながら迫る右腕に幾多の花弁が刺さり、薔薇色と肌色の斑模様としていくが、
 勢いは衰えず、刃の部分に当たった花弁は全てが切られていく。
 五メートル、真紅は花弁を打ち止め、薔薇色の障壁を展開した。
 防ぎ切れるかは完全に賭けだった。

 そして、後藤の右腕と真紅の障壁が衝突し、直後に真紅の視界は歪んだ。

 ■  ■  ■

「消えただと……」

 目の前で起きた現象を、後藤はそのまま呟いた。
 後藤の右手が薙いだ瞬間、ホウキで飛んでいたレナたちは忽然と姿を消してしまった。
 海に落ちたり、超高速で飛び去ったわけではない。
 文字どおり消失したとしか言いようがない、一瞬の出来事だった。
 予想外の事態だが、後藤にも一つだけ判る。
 自分の右腕は少女に届かなかったことだ。
 慣れ親しんだ人間の肉を切り裂く感触を、後藤は味合わなかった。
 忌々しげに一つ舌打ちをすると、踵を返して歩き出す。
 刺さっていた花弁は、歩いている内に落ちていった。
 後藤にしてみれば、レナたちが消えた理由などどうでもいい。
 重要なのは、折角見つけた餌を取り逃がしたという事実だけだ。
 戦闘を行ったこともあり、空腹感は更に増している。
 これでまともな戦いをしていればまだマシだったが、相手が逃げるだけでは全くの無駄骨だ。
 このままでは、ルイズを食べた分のエネルギーを消費しきるのも近いだろう。
 早急に次の餌を探そうとして、後藤は自分が背負っているデイパックに気付いた。
 自らの肉体を変化させて戦う後藤にとって、武器は必要ない。
 故にデイパックの確認はしていなかったのだが、後藤はある事に気付いた。
 これに人間が数日を生き抜くための品々が入っているのなら、食料もあるのではと。
 パラサイトは基本的に寄生した生物しか餌としない。
 これは寄生生物の本能であり、殆どのパラサイトはこの本能に従い行動する。
 しかし、食そうと思えばそれ以外も口にできる。
 基本的に満足感は得られず、空腹を紛らわせるだけだが。
 それでも今の後藤には十分なので、ためらわずにデイパックの中を漁りだした。
 最初に出てきたのは参加者の名前が記された名簿。
 興味も無いのでさっさと戻そうとしたが、泉新一田村玲子の名が後藤の目を留めた。

 泉新一。
 市役所での戦闘に関与し、後藤たちパラサイトに甚大な被害をもたらす一旦となった存在。
 後藤が最優先に狙う獲物でもある。
 この場に居るなら都合が良いので探し出して殺すだけだが、問題はもう一つの名前だ。
 田村玲子。
 後藤を作り出したパラサイトで、既に死亡したはずの存在。
 珍しい名前でもないので同名の別人の可能性は高い。
 だが、もしパラサイトの田村玲子だとしたら、彼女の生存は後藤にとって好ましい。
 生みの親だからではない。後藤は彼女とも戦ってみたかったのだ。
 パラサイト随一の頭脳を誇る玲子なら、自分を十分に満足させてくれると後藤は思っていた。

 二つの獲物との戦いに思いを馳せながら、後藤はデイパック漁りを再開した。
 今度は一個の寸胴鍋が出てくる。
 ずっしりとした重みからは、何かが入っているのを確信させた。
 蓋を取ってみると、中には後藤の目的である食料が入っていた。
 大根、人参、厚揚げ、カリフラワー、タコなどがごった煮となっている煮物だ。
 一見すれば美味しそうに見える――スープがピンク色の点さえ除けば。
 古今東西を探しても、ピンク色の煮物など滅多にお目に掛けれないだろう。
 普通は食べることを躊躇しそうだが、寄生生物である後藤に戸惑いはない。
 食器は無いので素手で鍋に手を突っ込み、熱さを気にせず適当に具を掴む。
 掴んだのはピンク色に色付いた大根。
 ポタリ、ポタリ、と汁が滴るそれを口に運び、しばらく咀嚼すると飲み込んだ。

「……悪くないな」

 食しても問題がないと確認すると、後藤は頭部を大口に変形させて、そこに煮物を流し込んでいく。
 人間が丸呑みされるときと変わらず、鍋一杯の煮物はまたたく間に後藤の体内に消えていった。
 全てを飲み込むと、後藤は用の無くなった鍋を放り投げる。
 まだ物足りないのか、またデイパックを探ろうとした途端――唐突に南方が明るくなった。
 そちらに目を移せば、闇夜を照らす炎と大量の煙が上がっている。
 一見しただけで、何物かが爆発物を使ったと分かる。
 人間なら恐れるか、興味を持つか、知り合いが巻き込まれていないか心配などするだろう。
 生憎にも、ここに居るのはパラサイトである後藤。
 爆発を見て興味を持ったことは、あそこになら餌になる人間が居るの一点のみ。
 寄生生物は爆心地におもむく。
 餌を求める種としての本能と、戦いを求める個としての本能に従って。



【一日目黎明/E-10 北部】
【後藤@寄生獣
[装備]無し
[支給品]支給品一式、不明支給品0~2(未確認)
[状態]疲労(小)、空腹(中)
[思考・行動]
1:爆心地に向かい、餌を探す
2:強い奴とは戦いたい
3:泉新一を殺す
4:田村玲子が本物なら戦ってみたい

[備考]
参戦時期は市役所戦後。
※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。
※E-10 北部に空の寸胴鍋が落ちています。

【支給品紹介】

【美和子スペシャル】
 亀山薫の妻である亀山美和子が作った料理。
 見た目は完全なゲテモノで味はかなり微妙らしい。

 ■  ■  ■

「どうなってるのかな?」
「分からないけど……とりあえずは、助かったようだわ」

 助かったと言われても、レナはいまいち実感が湧かなかった。
 ホウキに乗って逃げていたら、いきなり別の場所を飛んでいたのだから無理も無い。
 先ほどまで眼前には海しかなかったのに、今は海の先に陸が見える。
 Uターンした覚えもなく、もししていれば後藤に攻撃されているはずだ。
 どうやって現在地に移動したのか、レナには検討が付かない。

「ねえ、レナ。大丈夫そうなら……陸に降りてくれない?」
「え? うん、分かった」

 真紅の申し出は、レナにとってもありがたい。
 当たり前の事だが、ホウキに乗って飛行した経験などレナには無い。
 今は安定して飛んでいるものの、一歩間違えれば墜落する恐れがあるので気が気ではなかった。
 突然とホウキが止まる可能性もある。
 高度はそれほど高くなく、下は海なので落ちても即死はしないだろう。
 だとしても、陸から遠い地点に落ちれば溺死は免れない。
 このまま神経をすり減らしながら飛び続けるよりも、一度は陸に降りた方が賢明だ。
 レナがホウキの柄を少しだけ下げると、空飛ぶホウキは緩やかに降下を始めた。
 このままのペースで降り続ければ海に落ちず、無事に着陸できるだろう。
 ようやく一息付けると、レナの心中に安堵感が広がる。
 そんな時だ。

「レナ……立派なレディになりなさい」
「え?」

 不意に聞こえてきた声に、レナは反射的に振り向いていた。
 目に映ったのは、ホウキから滑り落ちようとしている真紅。
 レナは心臓が一瞬だけ止まった気がした。

「真紅ちゃん!」

 驚くと同時に右手を伸ばす。
 操縦中に危険だが見捨てるわけにはいかない。
 間に合えと願うが、無情にも真紅の体はホウキから落ちた。
 それでも、伸ばされた手は間一髪真紅の左足を掴む。
 冷や汗が噴き出しそうになるんかでレナはホッとして――軽い音が鳴った。

「あ……」

 間の抜けた声がレナの口から漏れた。
 呆然と眼前の光景を凝視する。それしかできなかった。
 そんな彼女を尻目にホウキは粛々と己の役目を果たし、遂に持ち主を陸に辿り着かせる。
 しかし、地面に足が着いた瞬間にレナはつんのめり、綺麗に半回転した。
 地面に叩き付けられ、衝撃が背中を突き抜けても、彼女は反応を示さない。
 数瞬後にはのっそりと起き上がるものの、まだぼうっとしている。
 そのまま右手を目の前まで上げて、自分が握っている物を見た。
 薔薇を模した飾りがあしらわれている靴、滑らかな白い肌と赤いワンピースが目に映り――腹部から先は無かった。
 胸に飾られた緑色のリボンも、端正な顔も、艶やかな金髪も無くなっている。
 当たり前だ。今しがた真紅の体は上下に分かれて、上半身は海中に消えてしまったのだから。

「う……ぁ……」

 呻くような声が出て、次いで右手が震えだす。
 確かに、確かにレナは落下した真紅を掴んでいた。
 だが、次の瞬間には腹部が開いていき、あっさりと二つに分かれてしまったのだ。
 半分の大きさになった真紅が暗い海に落ちていくのを、レナは見ざるを得なかった。
 レナは聡明な少女だ。現職の刑事が感心するほど、その頭脳は切れる。
 だから、後藤の最後の攻撃が真紅に届いていたのも何となく察しがついた。
 だとしても、それがどうしたというのか。
 助けたと思った相手がこのような姿になってしまった衝撃は、真紅の状態に気付けなかった後悔は、

「あ……あああ……ああああぁぁ」

 彼女にとっては余りにも大きく、ただ嘆きと涙をこぼれさせるしかなかった。


【一日目黎明/E-1 中央部】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
    空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン
[状態] 健康、悲しみ
[思考・行動]
基本思考:元の世界に帰る。
0:???
1:圭一、魅音、詩音、沙都子、悟史と合流する。
2:翠星石と蒼星石も探す。
3:水銀燈、後藤を警戒。

[備考]
※真紅と情報交換をしました。
※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。
 どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。

【支給品紹介】

【煙幕弾】
 魔界にて売られているアイテム。値段は600マッカ。
 ゲームでは使えばボス以外の敵から確実に逃げられる。
 このロワでは数分間煙幕を張り、その間は方向感覚を狂わせる効果があるとした。

【空飛ぶホウキ】
 その名のとおり空を飛ぶホウキ。
 効果はフライングボードと似ているが、こちらの方が高性能である。

 ■  ■  ■

「どうなってるのかな?」
「分からないけど……とりあえずは、助かったようね」

 助かったと断定したのは、先程まであった後藤の威圧感が綺麗さっぱり消え去ったからだ。
 安心したが次に自らの傷口を見て、真紅は諦観の混じった溜め息を吐いた。
 自慢のワンピースは真一文字に切り裂かれ、体は半分以上が切られている。
 風が吹くたびに傷口を通り抜けて冷えた。
 展開した障壁が紙のように破られ、自分の体を刃が通過する感触は案外あっさりとしていた。
 真っ二つにこそされなかったので即死こそしなかったが、どのみちこの傷では長くはないだろう。
 不幸中の幸いは、レナまで届かなかったことか。
 もし切られていれば、今頃は二人とも海の中だったろう。
 もっとも、真紅はこれからそうなりそうだが。

「ねえ、レナ。大丈夫そうなら……陸に降りてくれない?」
「え? うん、分かった」

 レナに陸に降下するように頼むが、真紅はそれまで耐えられそうもない。
 目は霞が掛かり、頭はどこか眠たそうに上下している。
 レナはまだ真紅の状態に気付いていない。
 取り乱されても困るから、真紅も言わない。
 高度が下がっていく中で、真紅はぼんやりと考えていた。
 最後にレナに何か伝えたかったのだ。
 付き合いは数時間にも満たない。
 それでも彼女がとても優しい性格をしているのは知っている。
 自分が停止すれば、レナがとても悲しむのを想像するのも容易い。
 これからも殺し合いを生き抜かねばならないのに、あまり一人の死に捕らわれるのは好ましくない。
 せめて、何か餞別の言葉を言いたかった。
 瞬間的に真紅が思い浮かんだ言葉は一つしかなかった。
 それは、かつてのミーディアムである少女と別れる際に送った言葉だ。
 もう一度使うとは思っていなかったが、友人に送る物としてはこれが相応しいと真紅は思った。

「レナ……立派なレディになりなさい」
「え?」

 そこで、真紅は自分の体が傾いていくのを感じた。
 無念はいくらでもある。
 まだ水銀燈に謝っていない。翠星石や蒼星石のことも心配だ。
 自分を待っている者たちも居る。
 何よりも、最愛の父とまだ再会していない。
 それでも、真紅は襲い掛かる眠気にその身を任せた。
 抗うだけの余力は残されていなかった。

 最後に幻視したのは父の姿ではなく、いつも賑やかだった桜田家の日々。
 最後に聞こえたのはレナの自分を呼ぶ声と、

 パキリ!

 自分の体が泣き分かれる軽い音だった。

 薔薇乙女は少女に言葉を送り、海中に没した。
 せめて、優しい少女が困難に立ち向かえるようにと願いを込めて。
 ボディの半分は沈み、後に残るは残光のように輝く赤い宝石だけ。


【真紅@ローゼンメイデン 死亡】

※真紅の上半身とデイパック(支給品一式、手鏡@現実)はE-1 西部の海中、
 真紅のローザミスティカは海面を漂っています。


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025:二人の秘め事 竜宮レナ 077:命の価値
真紅 GAME OVER
008:私がトーキョーに送ってあげる 後藤 072:Ultimate thing(前編)



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