真実の果てに ◆ew5bR2RQj.
薄暗い森の中に忽然と存在する広場で、月光に照らされる男が一人。
名は城戸真司、彼の顔色は蒼白に染まっていた。
名は城戸真司、彼の顔色は蒼白に染まっていた。
「なんだよ、これ……うっ」
彼の足元に転がっているのは、首の無い女の死体。
込上げてくる吐瀉物を、口元を抑えることで押し留める。
血塗れで首の無い惨殺死体、吐き気を催すのも無理は無いだろう。
込上げてくる吐瀉物を、口元を抑えることで押し留める。
血塗れで首の無い惨殺死体、吐き気を催すのも無理は無いだろう。
「一体、誰がこんなことを……」
「やっぱりライダーは倒さないと駄目だ、倒さないと……」
自らに言い聞かせるように復唱する真司、その表情から余裕は伺えない。
「とりあえずこの娘をなんとかしてあげなきゃ、このままじゃ可哀想だ」
彼は少女の死体に手を伸ばしながら、そう言った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。
死体に手を伸ばす真司を、劉鳳は真・絶影の背中から観察していた。
死体に手を伸ばす真司を、劉鳳は真・絶影の背中から観察していた。
「……あの人間は殺されたのですか」
真・絶影のもう一人の搭乗者、翠星石が搾り出すように呟く。
彼女は死体を見ること自体が初めてなため、受ける衝撃も大きかった。
彼女は死体を見ること自体が初めてなため、受ける衝撃も大きかった。
「……ああ、そうだ」
一方、劉鳳は死体を見るのは初めてではない。
ロストグラウンドは治安が悪く、そこを取り締まるHOLYに所属する彼は何度か死体を見ている。
だが何の感慨も無いわけではない、むしろこの中で一番感情が揺れ動いていた。
ロストグラウンドは治安が悪く、そこを取り締まるHOLYに所属する彼は何度か死体を見ている。
だが何の感慨も無いわけではない、むしろこの中で一番感情が揺れ動いていた。
「これを持って、しばらくどこかに隠れていろ」
自らのデイパックを翠星石に押し付けながら言う劉鳳。
「や、藪から棒になんなんですか、お前は!?」
翠星石の反応も当然のものであるが、彼がそれを気に留めることはない。
「これから俺はあの男を見定めなければならない、断罪するべきか否か」
彼の視線が鋭さを増し、呼応するかのように真・絶影が猛る。
そこから自らに拒否権が無いことを、翠星石は理解した。
そこから自らに拒否権が無いことを、翠星石は理解した。
「……分かったです、お前はそういう奴ですからね」
憎まれ口を叩きながらも、デイパックを受け取る翠星石。
彼女は能力の性質上、人間の本質を見抜くことに長けている。
だからこそ出会ってから数時間の劉鳳でも、その本質を理解できるのだ。
彼女は能力の性質上、人間の本質を見抜くことに長けている。
だからこそ出会ってから数時間の劉鳳でも、その本質を理解できるのだ。
その後劉鳳は真・絶影を広場から離れた位置に着陸させ、無駄の無い動きで降りてゆく。
そして翠星石が降りると同時に、真・絶影を分解。
粒子になったそれを再び再構成し、拘束着によって真の力を封印する第一形態へと戻す。
そして翠星石が降りると同時に、真・絶影を分解。
粒子になったそれを再び再構成し、拘束着によって真の力を封印する第一形態へと戻す。
「すぐに戻ってくる、だから絶対にここを離れるな」
そう言い放ち、足を踏み出す劉鳳。
その姿はやはり強引、他者が横槍を挟む余地など存在しない。
その姿はやはり強引、他者が横槍を挟む余地など存在しない。
(また、俺は何も出来なかった……)
最初に赤毛の少女が殺された時、彼はただ見ていることしか出来なかった。
そして今回もまた一人、犠牲者を出してしまった。
だが今回は違う、仇かもしれない男がすぐそこにいるのだ。
こんなことをしても、殺された少女が戻ってこないのは分かっている。
それでもこれ以上の被害を食い止めることは出来るのだ。
そして今回もまた一人、犠牲者を出してしまった。
だが今回は違う、仇かもしれない男がすぐそこにいるのだ。
こんなことをしても、殺された少女が戻ってこないのは分かっている。
それでもこれ以上の被害を食い止めることは出来るのだ。
せめてもの弔いを、その思いを胸に抱き
劉鳳は、広場に入る。
劉鳳は、広場に入る。
「そこの男、なにをしている」
目の前で死体を持ち上げる男、城戸真司に声をかける。
その声を聞き、真司はゆっくりと顔を上げた。
その声を聞き、真司はゆっくりと顔を上げた。
――――ここで劉鳳は、絶影を発現させておくべきではなかった。
何故なら真司から見れば、異形の姿を持つ絶影はモンスターにしか見えないのだから。
「お前……」
何故なら真司から見れば、異形の姿を持つ絶影はモンスターにしか見えないのだから。
「お前……」
モンスターを従えている人間は、真司の中でライダーに直結する。
他のライダーは彼にとって倒すべき対象なのだ、たとえ本心がそれを否定していたとしても。
他のライダーは彼にとって倒すべき対象なのだ、たとえ本心がそれを否定していたとしても。
「変身!」
カードデッキを足元の水溜りに翳したあと、腰に現れたバックルに差し込む。
すると真司は一瞬のうちに、仮面ライダー龍騎へと変身した。
普段の彼であれば相手に確認くらいは取っただろうが、直前の思考が祟って冷静な判断力を失っている。
むしろ唐突に現れたこの男が、先ほどの少女を殺した犯人ではないかとすら思っていた。
すると真司は一瞬のうちに、仮面ライダー龍騎へと変身した。
普段の彼であれば相手に確認くらいは取っただろうが、直前の思考が祟って冷静な判断力を失っている。
むしろ唐突に現れたこの男が、先ほどの少女を殺した犯人ではないかとすら思っていた。
「ぶっ倒してやる!」
真司はバックルに収納されているカードを取り出し、左腕に装備された召喚機に装填。
夜空から剣が現れ彼の手に納まり、そのまま突進を開始した。
夜空から剣が現れ彼の手に納まり、そのまま突進を開始した。
「毒虫が」
その姿を捉えた劉鳳は、歯軋りをしながら腕を伸ばす。
すると待機させていた絶影の首から、二本の触鞭が進行する。
すると待機させていた絶影の首から、二本の触鞭が進行する。
(こいつで間違いない、こいつがあの少女を殺したんだ!)
声を掛けた直後には、既に剣を構えていたのだ。
おそらく少女の命も、このようにして不意を打って散らせたのだ。
おそらく少女の命も、このようにして不意を打って散らせたのだ。
「故に断罪するッ!」
剣と鞭が何度も衝突し、火花を散らす。
防ぎきれないものもあるが、真司は止まらない。
劉鳳も防がれるたびに鈍痛が襲うが、決して攻撃を止めない。
そこに乗せられているのは、燃え滾るような敵愾心。
完全な誤解から生まれた、勘違いの敵愾心だ。
防ぎきれないものもあるが、真司は止まらない。
劉鳳も防がれるたびに鈍痛が襲うが、決して攻撃を止めない。
そこに乗せられているのは、燃え滾るような敵愾心。
完全な誤解から生まれた、勘違いの敵愾心だ。
劉鳳は真司を少女の仇だと思っている、しかし彼は少女の仇ではない。
真司は劉鳳をライダーだと思っている、しかし彼はライダーではない。
真司は劉鳳をライダーだと思っている、しかし彼はライダーではない。
誤解は複雑に絡み合い、双方を死闘への誘う。
意味の無い、空虚な死闘へと。
意味の無い、空虚な死闘へと。
――――GUARD VENT――――
真司が新たに装填したのは、両腕を覆うように装着された盾。
これで劉鳳は、側面からの突破が困難となった。
これで劉鳳は、側面からの突破が困難となった。
「ならば! 正面から切り開く!」
絶影は二本の触鞭を束ね、真司へと直進させる。
自らを切り刻まんと迫るそれを、真司は勢いよく薙ぎ払う――――が。
寸前で上下に分離され、失敗に終わると共に体勢を崩す。
そして隙を見せた真司の体を、容赦なく切り裂いた。
自らを切り刻まんと迫るそれを、真司は勢いよく薙ぎ払う――――が。
寸前で上下に分離され、失敗に終わると共に体勢を崩す。
そして隙を見せた真司の体を、容赦なく切り裂いた。
「ぐあぁっ……くっ……うおおおおぉ!」
腹部の鋭い痛みを堪えつつ、剣を構え飛翔する真司。
ダメージは決して小さくないが、彼は屈するわけにはいかなかった。
ダメージは決して小さくないが、彼は屈するわけにはいかなかった。
「ちぃっ!」
防御に失敗した絶影は斬撃を直に受け、劉鳳は苦悶の表情を浮かべる。
しかし彼に休んでいる暇は無い、すぐそこに真司は迫っているのだから。
しかし彼に休んでいる暇は無い、すぐそこに真司は迫っているのだから。
「ふんッ!」
振り下ろされた剣を、触鞭を交差させて受け止める。
力は完全に均衡、一進一退の攻防が展開されていた。
力は完全に均衡、一進一退の攻防が展開されていた。
「なんで……変身しないんだよ!」
柄を強く握り締め、押し出すように問う真司。
絶影の――劉鳳の足が地面にめり込み、一歩後退させられる。
絶影の――劉鳳の足が地面にめり込み、一歩後退させられる。
「何を訳の分からぬことを……言っている!」
真司を押し返すため、大地を強く踏み締める劉鳳。
真司の疑問に対する答えは単純明快、劉鳳はライダーではないからだ。
二人が僅かでも意思疎通が出来ていれば、すぐにこの答えを導き出せたであろう。
剣と触鞭は十数秒間の押し合いを続け、やがて完全に静止する。
真司の疑問に対する答えは単純明快、劉鳳はライダーではないからだ。
二人が僅かでも意思疎通が出来ていれば、すぐにこの答えを導き出せたであろう。
剣と触鞭は十数秒間の押し合いを続け、やがて完全に静止する。
「うわぁっ!」
勝利したのは劉鳳、弾き飛ばされたのは真司であった。
このまま押し合っても埒が明かないと判断した劉鳳は、触鞭を一本だけ防御から攻撃に転じさせる。
二本で互角だったものに一本で敵うはずもなく、押し合い自体は彼の敗北に終わった。
しかし押し切られるよりも速く触鞭で切り裂き、結果的に勝者は劉鳳となったのだ。
このまま押し合っても埒が明かないと判断した劉鳳は、触鞭を一本だけ防御から攻撃に転じさせる。
二本で互角だったものに一本で敵うはずもなく、押し合い自体は彼の敗北に終わった。
しかし押し切られるよりも速く触鞭で切り裂き、結果的に勝者は劉鳳となったのだ。
「くそっ! なら次はこれだ!」
剣を弾き飛ばされた真司は、三枚目のカードを装填する。
「次は何が来る!」
絶影を付近まで回収し、真司に対し警戒線を張る。
次々と武器や防具が現れるあの能力、次の一手が全く読めないのだ。
故に警戒、何が来ても対応できるように真司から目を離さない。
次々と武器や防具が現れるあの能力、次の一手が全く読めないのだ。
故に警戒、何が来ても対応できるように真司から目を離さない。
「なんだ、あれは!?」
ここで劉鳳は、大きな判断ミスを犯していた。
それは、カードデッキが呼べるのは武器だけでは無いということだ。
それは、カードデッキが呼べるのは武器だけでは無いということだ。
「ウオオオオオォォォォォ!!」
全身を紅蓮色に染めた巨大な龍が、夜空に咆哮を轟かせながら迫ってくる。
龍騎の契約モンスター、ドラグレッター。
アドベントにより使役されるそれは、同種の中でも上位に君臨する攻撃力を持っていた。
龍騎の契約モンスター、ドラグレッター。
アドベントにより使役されるそれは、同種の中でも上位に君臨する攻撃力を持っていた。
「くっ……絶影!」
鋭い眼光、研ぎ澄まされた牙、荒れ狂う爪。
これらが一斉に劉鳳に向けられ、蹂躙せんと襲い掛かる。
生身で挑むのは自殺行為、ならば残された手段は一つしかない。
これらが一斉に劉鳳に向けられ、蹂躙せんと襲い掛かる。
生身で挑むのは自殺行為、ならば残された手段は一つしかない。
絶影を囮にし、この場を凌ぐことだ。
巨大な口に銜えられ、絶影の身体に亀裂が走る。
そのままドラグレッターは夜空へと駆け上がり、ある一点を境目に急降下。
その勢いのまま絶影を解放し、地面へと叩き落した。
そのままドラグレッターは夜空へと駆け上がり、ある一点を境目に急降下。
その勢いのまま絶影を解放し、地面へと叩き落した。
「ぐっ……貴様……」
全身に鋭い痛みが走り、苦悶の表情を浮かべる劉鳳。
絶影が受けたダメージは、微量であるが使用者にも還元される。
だが上空から叩き落され還元されるダメージは、微量とはいえ生半可では済まない。
全身を苛む激痛を受け、彼はもがき苦しんでいた。
絶影が受けたダメージは、微量であるが使用者にも還元される。
だが上空から叩き落され還元されるダメージは、微量とはいえ生半可では済まない。
全身を苛む激痛を受け、彼はもがき苦しんでいた。
「っしゃぁ! このまま押し切ってやる!」
その一方で、真司は歓喜に打ちひしがれながら一枚のカードを取り出す。
それは龍の紋章が描かれた最終兵器、ファイナルベント。
使用すれば確実に相手を仕留めることのできる代物。
真司は左腕の召喚機にそれを押し当て、ふと静止した。
それは龍の紋章が描かれた最終兵器、ファイナルベント。
使用すれば確実に相手を仕留めることのできる代物。
真司は左腕の召喚機にそれを押し当て、ふと静止した。
(これで……いいのかよ?)
かつて散っていったライダー達の最期が、脳内で再生される。
とどめを刺すには今が絶好の状態、モンスター相手であればこの機会を逃す術はない。
しかし今、戦っているのはモンスターではなく人間。
ファイナルベントを使用すれば、その相手の命は潰えることになる。
散っていったライダー達と同じように。
とどめを刺すには今が絶好の状態、モンスター相手であればこの機会を逃す術はない。
しかし今、戦っているのはモンスターではなく人間。
ファイナルベントを使用すれば、その相手の命は潰えることになる。
散っていったライダー達と同じように。
「わあああぁぁぁぁぁぁっ!」
目を瞑り、雄叫びをあげる真司。
カードを持ち上げる動作はあまりにも緩慢、劉鳳に絶影を再構築させる隙を与えるほどに。
カードを持ち上げる動作はあまりにも緩慢、劉鳳に絶影を再構築させる隙を与えるほどに。
「柔らかなる拳、烈迅!」
再構築された絶影の触鞭が、真司の懐に潜り込む。
気付いた時にはもう遅い、彼は両腕を絡め取られ拘束されてしまう
モンスターは消滅すれば二度と復活しないが、アルターは使用者が力尽きぬ限り何度も再生する。
ここに来て、彼が劉鳳をライダーだと誤解している事実が影響を及ぼした。
気付いた時にはもう遅い、彼は両腕を絡め取られ拘束されてしまう
モンスターは消滅すれば二度と復活しないが、アルターは使用者が力尽きぬ限り何度も再生する。
ここに来て、彼が劉鳳をライダーだと誤解している事実が影響を及ぼした。
「くそ! 離せよ! この!」
必死に抵抗するが、絶影の拘束が解けることはない。
真司は顔から下を触鞭に締め付けられ、宙に押し上げられた。
真司は顔から下を触鞭に締め付けられ、宙に押し上げられた。
「ようやく観念したようだな、この社会不適応者が」
「誰が社会不適応者だよ! 人を見下しやがって!」
「貴様以外に誰がいる、耳障りだ、黙っていろ」
「なんだよ、さっきから偉そうに……」
「誰が社会不適応者だよ! 人を見下しやがって!」
「貴様以外に誰がいる、耳障りだ、黙っていろ」
「なんだよ、さっきから偉そうに……」
言い合いを続ける劉鳳と真司、その内容は不毛と言っていいだろう。
劉鳳は顔を歪めながら真司を見上げ、口を開く。
劉鳳は顔を歪めながら真司を見上げ、口を開く。
「貴様に確認したいことがある、そこにいる少女を――――」
魅音の死体を指差し、発せられる言葉。
もしこの言葉が最後まで紡がれていたならば、ここで二人の勝負は終わっただろう。
しかし言葉は紡がれなかった。
もしこの言葉が最後まで紡がれていたならば、ここで二人の勝負は終わっただろう。
しかし言葉は紡がれなかった。
白鳥のように舞う、第三者の乱入によって。
「な……にぃ!?」
純白のマントを翼のように広げ、空から降下してくる乱入者。
名をファムと言い、龍騎と同等の力を得た仮面ライダーの一人だ。
ファムは右手の細長いサーベルを用いて、劉鳳の背を切り裂いた。
名をファムと言い、龍騎と同等の力を得た仮面ライダーの一人だ。
ファムは右手の細長いサーベルを用いて、劉鳳の背を切り裂いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
仮面ライダーファムの動向を語るには、まず正体から明かさねばならない。
その正体は篠崎流の三十七代目を継いだメイド――――篠崎咲世子。
彼女は支給されたファムのデッキを使用するため、鏡かそれに準ずる物を探していた。
しばらく森の中を駆け回り、やがて不法投棄されたであろう家具の山を発見。
その中から割れた鏡を見つけ出し、付属していた説明書通りの動作を行う。
すると彼女の体は白を基準とした騎士の仮面と鎧に包まれ、仮面ライダーファムとなった。
最初はその変化や身体能力の上昇に戸惑っていたものの、先天的な才能からすぐに順応。
むしろこれはルルーシュ探索に役立つと判断し、すぐに行動に移していたのだ。
その正体は篠崎流の三十七代目を継いだメイド――――篠崎咲世子。
彼女は支給されたファムのデッキを使用するため、鏡かそれに準ずる物を探していた。
しばらく森の中を駆け回り、やがて不法投棄されたであろう家具の山を発見。
その中から割れた鏡を見つけ出し、付属していた説明書通りの動作を行う。
すると彼女の体は白を基準とした騎士の仮面と鎧に包まれ、仮面ライダーファムとなった。
最初はその変化や身体能力の上昇に戸惑っていたものの、先天的な才能からすぐに順応。
むしろこれはルルーシュ探索に役立つと判断し、すぐに行動に移していたのだ。
そんな時に出会ったのが、緑髪の男が奇妙な生物を従えて誰かを拘束する場面。
拘束されているのは自らと同種の力を持つ、仮面ライダー龍騎であった。
救援に向かうべきか否か、それを思案する咲世子。
仮面ライダーに変身している状態だと、中の人間が誰か分からない。
もしあれがルルーシュだった場合、救援に入らねば取り返しのつかない事態になる。
仮に龍騎がルルーシュではないとしても、大きな貸しを作ることができる。
緑髪の男は自分に気付いていないため、ファムのデッキの戦闘能力を試すにも絶好の機会。
拘束されているのは自らと同種の力を持つ、仮面ライダー龍騎であった。
救援に向かうべきか否か、それを思案する咲世子。
仮面ライダーに変身している状態だと、中の人間が誰か分からない。
もしあれがルルーシュだった場合、救援に入らねば取り返しのつかない事態になる。
仮に龍騎がルルーシュではないとしても、大きな貸しを作ることができる。
緑髪の男は自分に気付いていないため、ファムのデッキの戦闘能力を試すにも絶好の機会。
攻め込むなら、今しかない。
そう思い、緑髪の男――――劉鳳の背中をサーベルで切り裂いた。
そう思い、緑髪の男――――劉鳳の背中をサーベルで切り裂いた。
絶影の触鞭が緩まったため。龍騎の拘束は解かれる。
(後は協力して、あの男を倒せば……)
劉鳳に与えた傷は致命傷には達していなかったが、背中の傷からの出血は激しい。
龍騎と連携して戦えば、確実に勝利を掴むことはできるだろう。
龍騎と連携して戦えば、確実に勝利を掴むことはできるだろう。
「次から次へと……まとめて断罪する!」
高速を以って進行する触鞭
しかし直線的過ぎるが故に、咲世子が回避するには容易い。
舞うように跳躍し、触鞭が地面を通過するのを見下ろす。
このまま反撃に移り、今度こそ仕留めてみせよう。
しかし直線的過ぎるが故に、咲世子が回避するには容易い。
舞うように跳躍し、触鞭が地面を通過するのを見下ろす。
このまま反撃に移り、今度こそ仕留めてみせよう。
――――そう思っていた時に、彼女は予想外の光景を目撃する。
「くらえッ!」
助けたはずの龍騎が、何故か自分に拳を向けていたのだ。
呆気に取られた彼女は腹に拳を受け、地上へと落下してしまう。
呆気に取られた彼女は腹に拳を受け、地上へと落下してしまう。
「っ……つぅっ……」
土煙が巻き上がり、純白の鎧が土色に汚れていく。
彼女は龍騎が攻撃してきた理由を思案しようとするが、劉鳳はその時間を与えない。
起き上がった瞬間には、彼女の身体を触鞭が刻み込む。
追撃を受けた彼女は、悲鳴を上げながら再度地面に倒れこんだ。
彼女は龍騎が攻撃してきた理由を思案しようとするが、劉鳳はその時間を与えない。
起き上がった瞬間には、彼女の身体を触鞭が刻み込む。
追撃を受けた彼女は、悲鳴を上げながら再度地面に倒れこんだ。
(まずい!)
彼女は直感で理解する。
今すぐ体を起こさなければ、また龍騎に攻撃される。
蠢く痛みを堪えて強引に立ち上がり、周囲の確認もせず背後に飛び下がる咲世子。
だが龍騎が攻撃対象に選んだのは、アルター使いの劉鳳であった。
今すぐ体を起こさなければ、また龍騎に攻撃される。
蠢く痛みを堪えて強引に立ち上がり、周囲の確認もせず背後に飛び下がる咲世子。
だが龍騎が攻撃対象に選んだのは、アルター使いの劉鳳であった。
「この毒虫が!」
「人を見下すなって言ってんだろ!」
「人を見下すなって言ってんだろ!」
拳と触鞭が空中で衝突し、大気を震わせる。
お互いに一歩も譲らないせめぎ合い、展開される拮抗。
そして数秒後に双方は弾け飛び、引き分けと言う形で幕を閉じる。
これにより劉鳳、真司、咲世子の位置関係は、綺麗な正三角形を結べる形となった。
お互いに一歩も譲らないせめぎ合い、展開される拮抗。
そして数秒後に双方は弾け飛び、引き分けと言う形で幕を閉じる。
これにより劉鳳、真司、咲世子の位置関係は、綺麗な正三角形を結べる形となった。
(どうやら……判断を間違えたようですね)
恩を仇で返すという諺があるが、まさにこの事だろう。
危険な所を助けてやったのに、そのお礼が拳とは笑えない。
少なくとも龍騎の正体が、ルルーシュでないのは分かった。
劉鳳に弁明するのも今更不可能だろう、一度攻撃を仕掛けた相手を許すはずがない。
同等の戦闘能力を持つ龍騎に、未知なる存在の絶影。
その二体と同時に相手にするのに、徒手空拳ではあまりに心もとない。
故に彼女は、武器を取り出す。
危険な所を助けてやったのに、そのお礼が拳とは笑えない。
少なくとも龍騎の正体が、ルルーシュでないのは分かった。
劉鳳に弁明するのも今更不可能だろう、一度攻撃を仕掛けた相手を許すはずがない。
同等の戦闘能力を持つ龍騎に、未知なる存在の絶影。
その二体と同時に相手にするのに、徒手空拳ではあまりに心もとない。
故に彼女は、武器を取り出す。
――――SWORD VENT――――
握り締めたサーベルの柄の翼を展開し、一枚のカードを装填。
そして現れたのは、彼女の身長ほどもある巨大な薙刀。
彼女はそれを空中で数度回転させ、対峙する二人に突きつけた。
そして現れたのは、彼女の身長ほどもある巨大な薙刀。
彼女はそれを空中で数度回転させ、対峙する二人に突きつけた。
(こいつらはアルター使いなのか……?)
最初に変身した能力は、カズマやクーガーが有する融合装着型に近い。
だが龍を召喚した能力は、どう見ても劉鳳自身が操る自立稼動型のものだ。
ファムもおそらく同じような芸当が可能なのだろう。
複数の能力を擁するアルターは有れど、複数のタイプに属するアルターは見たことがない。
やはりこれはアルターではなく、別世界の技術なのだろう。
だが龍を召喚した能力は、どう見ても劉鳳自身が操る自立稼動型のものだ。
ファムもおそらく同じような芸当が可能なのだろう。
複数の能力を擁するアルターは有れど、複数のタイプに属するアルターは見たことがない。
やはりこれはアルターではなく、別世界の技術なのだろう。
(だがそれでも、俺は負けるわけにはいかない!)
未知の能力が相手だろうと、敵が二人になろうと。
彼は立ち止まるわけにはいかない、立ち止まっている暇もないのだ。
彼は立ち止まるわけにはいかない、立ち止まっている暇もないのだ。
「もう温存などしてる場合ではない! 真の姿を解き放て、絶影!」
劉鳳の言葉と共に、絶影が淡い光に包まれる。
それはどんどん輝きと大きさを増し、それに併せて絶影自身も巨大化していく。
拘束服に包まれた両腕は解放され、劉鳳の半身ほどの大きさを持つ尾が姿を現す。
これが絶影の力を全て解放した形態、真・絶影。
その姿は、対峙する二者に畏怖の感情を抱かせた。
それはどんどん輝きと大きさを増し、それに併せて絶影自身も巨大化していく。
拘束服に包まれた両腕は解放され、劉鳳の半身ほどの大きさを持つ尾が姿を現す。
これが絶影の力を全て解放した形態、真・絶影。
その姿は、対峙する二者に畏怖の感情を抱かせた。
(またライダーかよ……一人でも精一杯だっていうのに)
視界の中に君臨する二人の敵を見据え、心中で呟く真司。
彼が咲世子を攻撃した理由は、彼女が仮面ライダーファムだったから、の一言に尽きる。
彼にとって全てのライダーは敵であり、対峙する二人もその例に漏れない。
が、今の彼は満身創痍な上に疲労も大きく、二人を倒すのは困難だろう。
しかし彼には、この状況からの逆転を可能とする最後の切り札がある。
それはサバイブと名付けられ、使用すれば戦闘能力は格段に上昇。
ドラグレッターも進化し、消費した武器すらも元通りになる。
この絶体絶命の状況下で使わない理由など存在しない。
真司は迷わず腰のベルトに手を伸ばす――――
彼が咲世子を攻撃した理由は、彼女が仮面ライダーファムだったから、の一言に尽きる。
彼にとって全てのライダーは敵であり、対峙する二人もその例に漏れない。
が、今の彼は満身創痍な上に疲労も大きく、二人を倒すのは困難だろう。
しかし彼には、この状況からの逆転を可能とする最後の切り札がある。
それはサバイブと名付けられ、使用すれば戦闘能力は格段に上昇。
ドラグレッターも進化し、消費した武器すらも元通りになる。
この絶体絶命の状況下で使わない理由など存在しない。
真司は迷わず腰のベルトに手を伸ばす――――
「あれ?」
――――が、目的のカードを掴むことはなかった。
(無い! サバイブが無い!)
切り札の喪失という事態に、真司は動揺を隠すことのできない。
そして発生した隙は、残りの二人に動く切欠を与える。
そして発生した隙は、残りの二人に動く切欠を与える。
「消えてなくなれ!」
最初に動いたのは、劉鳳の使役する真・絶影。
一瞬で真司の正面に移動し、巨大な尾を振り回す。
刹那の出来事の抗う術は無く、跳ね飛ばされる真司。
一瞬で真司の正面に移動し、巨大な尾を振り回す。
刹那の出来事の抗う術は無く、跳ね飛ばされる真司。
それから一秒後、真・絶影が影に覆われる。
真・絶影は無機質な瞳で空を仰ぐと、そこには飛来する咲世子の姿があった。
真・絶影は無機質な瞳で空を仰ぐと、そこには飛来する咲世子の姿があった。
「柔らかなる拳、烈迅!」
「なッ!?」
「なッ!?」
咲世子が飛来した目的は、真司を薙刀で切り払うためであった。
だが今は違う、今の目的は何故か目の前にいる真・絶影の触鞭を防ぐことだ。
だが今は違う、今の目的は何故か目の前にいる真・絶影の触鞭を防ぐことだ。
薙刀を大きく振り回し、触鞭を弾く。
反撃に転じようとした瞬間、背後に何者かの気配が忍び寄る。
正体を確認しようと振り向いた時、背中に鋭い衝撃が走った。
反撃に転じようとした瞬間、背後に何者かの気配が忍び寄る。
正体を確認しようと振り向いた時、背中に鋭い衝撃が走った。
「あああぁぁぁっ!!」
受身も満足に取れず、地面に叩きつけられる咲世子。
全身を痛覚が支配する中、彼女は気配の正体を見た。
全身を痛覚が支配する中、彼女は気配の正体を見た。
それは上半身が人間、下半身が蛇の化物。
直前まで正面にいたはずの、真・絶影。
直前まで正面にいたはずの、真・絶影。
「は、速すぎる……」
僅か数秒で音も立てず、正面から背後に移動する俊敏性。
その速度は、ライダーの力を得た咲世子でさえも追随を許さない。
その速度は、ライダーの力を得た咲世子でさえも追随を許さない。
「この俺の、絶影の裁きを受けろ!」
空中で待機していた真・絶影が、残像を従えて急降下を開始。
咄嗟に薙刀を構えようとするが、真・絶影は既に咲世子の頭上まで迫っている
巨大な尾が鎌首をもたげ、振り落とされる、が。
咄嗟に薙刀を構えようとするが、真・絶影は既に咲世子の頭上まで迫っている
巨大な尾が鎌首をもたげ、振り落とされる、が。
寸前に火炎弾が真・絶影を貫き、攻撃が届くことはなかった。
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
灼熱の炎にも勝る熱が劉鳳を包み、その苦痛が悲鳴として現れる。
実際に火炎弾を被弾したわけではないが、真・絶影が受けたダメージは劉鳳が受けたも同然なのだ。
実際に火炎弾を被弾したわけではないが、真・絶影が受けたダメージは劉鳳が受けたも同然なのだ。
「俺を忘れてもらっちゃ困るんだよなぁ」
火炎弾を放ったのは、先ほど吹き飛ばされた真司。
否、彼の使役する紅蓮の無双龍、ドラグレッターであった。
否、彼の使役する紅蓮の無双龍、ドラグレッターであった。
真司が使用したのは、ストライクベント。
龍の頭部を模した手甲を右腕に装着し、攻撃対象に突きを入れる。
すると上空のドラグレッターが、高熱の火炎弾を吐き出す技だ。
龍の頭部を模した手甲を右腕に装着し、攻撃対象に突きを入れる。
すると上空のドラグレッターが、高熱の火炎弾を吐き出す技だ。
「ぐうっ……これが貴様の炎か……だが――――」
炎は劉鳳を両脚、胴体、両腕、顔面を焼き尽くし、彼を苦痛の世界へと引きずり込む。
「俺は立ち止まるわけにはいかない! この場で舞い散れ!」
だが彼は膝を折らない、全身を焦がす炎をそのままに真・絶影を進行させる。
熱くないのか――――当然熱い。
しかしそれ以上に、彼の心に滾る炎の方が何倍も熱かったのだ。
熱くないのか――――当然熱い。
しかしそれ以上に、彼の心に滾る炎の方が何倍も熱かったのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「砕け散れ!」
眼前に迫る触鞭を紙一重で回避し、すぐさま臨戦態勢を取る真司。
逡巡している暇は無い、敵は背後に迫ってきている。
逡巡している暇は無い、敵は背後に迫ってきている。
「くらいなさい!」
真司の首を刈り取らんと振るわれる薙刀。
それを右腕の手甲で受け止める、だが両者はすぐに戦線を離脱した。
何故なら真・絶影の触鞭が、彼らの身体を刻もうとしていたからだ。
それを右腕の手甲で受け止める、だが両者はすぐに戦線を離脱した。
何故なら真・絶影の触鞭が、彼らの身体を刻もうとしていたからだ。
先刻から展開されているのは、この繰り返しだ。
三者ともに致命傷を負うこともない小競り合い。
実力が拮抗しているからか、単純に人数が多いからか。
理由を挙げていけばきりが無く、そのどれもが正答とは限らない。
理由を枚挙していくなど、まさに不毛な行為だ。
だが展開されている小競り合いは、決して不毛ではない。
少しずつではあるが、確実に勝敗を左右しているのだ。
三者ともに致命傷を負うこともない小競り合い。
実力が拮抗しているからか、単純に人数が多いからか。
理由を挙げていけばきりが無く、そのどれもが正答とは限らない。
理由を枚挙していくなど、まさに不毛な行為だ。
だが展開されている小競り合いは、決して不毛ではない。
少しずつではあるが、確実に勝敗を左右しているのだ。
「ゼェ、ゼェ……うおぉっ!」
真・絶影の速度に対応するには、全速力を以ってしないと到底不可能。
さらに眼前の敵にのみ意識を集中していれば、背後から狙い撃ちにされる。
こうした状況下で戦闘を行えば、短時間でも体力の消費が激しい。
さらに眼前の敵にのみ意識を集中していれば、背後から狙い撃ちにされる。
こうした状況下で戦闘を行えば、短時間でも体力の消費が激しい。
「あぁ……もう、逃げずに戦えよ!」
そして体力の消耗速度は公平ではない。
咲世子は途中から戦闘に乱入したため、他の二人に比べてもまだ余裕がある。
劉鳳も真・絶影の維持には相当の集中力を要するとはいえ、他の二人ほどではない。
だが真司は最初から戦闘に参加していて、なおかつ真・絶影の対応に追われている。
さらに戦闘場が狭すぎるが故に、ドラグレッターは満足に力を発揮できず、
拘束された時にファイナルベントを落としてしまったため、もう残されている札も無い。
咲世子は途中から戦闘に乱入したため、他の二人に比べてもまだ余裕がある。
劉鳳も真・絶影の維持には相当の集中力を要するとはいえ、他の二人ほどではない。
だが真司は最初から戦闘に参加していて、なおかつ真・絶影の対応に追われている。
さらに戦闘場が狭すぎるが故に、ドラグレッターは満足に力を発揮できず、
拘束された時にファイナルベントを落としてしまったため、もう残されている札も無い。
「くそっ……俺ばっかり集中攻撃しやがって!」
咲世子は、先ほどから攻撃対象を真司に絞って猛攻を仕掛けている。
何故なら彼女には劉鳳を攻撃する理由がないからである。
こうした悪条件が重なり、真司の体力は他の二人に比べ消耗が早かった。
何故なら彼女には劉鳳を攻撃する理由がないからである。
こうした悪条件が重なり、真司の体力は他の二人に比べ消耗が早かった。
胴体に迫る巨大な尾を、手甲で弾き飛ばす。
背中を狙った薙刀を、体を捻って躱す。
その瞬間、刃と化した触鞭が顔面を掠めていく。
そして――――
背中を狙った薙刀を、体を捻って躱す。
その瞬間、刃と化した触鞭が顔面を掠めていく。
そして――――
「ぐあああぁぁっ!」
足元に向けられた薙刀が、真司の身体を転倒させた。
ヤバい、彼がそう直感した時には咲世子が薙刀を振り下ろしている。
ヤバい、彼がそう直感した時には咲世子が薙刀を振り下ろしている。
「貴様も消え去れ!」
真・絶影の体当たりを受け、跳ね飛ばされる咲世子。
そのまま何度か地面を撥ね、最後に大木に激突して停止した。
結果として薙刀が真司の身体を貫くことはなく、彼は難を逃れた形となる。
さらに二人の注意が真司を逸れた今、彼に反撃を行う絶好の機会が訪れていた。
そのまま何度か地面を撥ね、最後に大木に激突して停止した。
結果として薙刀が真司の身体を貫くことはなく、彼は難を逃れた形となる。
さらに二人の注意が真司を逸れた今、彼に反撃を行う絶好の機会が訪れていた。
「うおぉぉぉぉ!」
手に装備された手甲を構え、真司は猛進する。
真・絶影の妨害も入ることなく、手甲が咲世子に達しようとした瞬間。
真・絶影の妨害も入ることなく、手甲が咲世子に達しようとした瞬間。
――――GUARD VENT――――
彼女の腕に白鳥の翼を模した盾が装備され、同時に大量の羽が巻き上げられる。
手甲はそのまま盾と接触するが、彼女の身体は蜃気楼のように消失してしまった。
手甲はそのまま盾と接触するが、彼女の身体は蜃気楼のように消失してしまった。
「どこだ!?」
消失した咲世子を探すため真司は周囲を見回すが、大量の羽に視界を塞がれ発見できない。
躍起になって羽を叩き落すが、途切れることなく羽は纏わりつく。
躍起になって羽を叩き落すが、途切れることなく羽は纏わりつく。
「はぁ!」
そうしている間に背後から咲世子に切り裂かれ、彼は地面に伏した。
「あっ……くあぁ……」
完全に不意を突いた一撃。
真司は起き上がることができず、無抵抗のまま激痛に喘いでいる。
今度こそとどめを刺す、彼女がそう決意する、が。
真司は起き上がることができず、無抵抗のまま激痛に喘いでいる。
今度こそとどめを刺す、彼女がそう決意する、が。
「剛なる右拳・伏龍!」
沈黙していた真・絶影が稼動、右脇に装着されたミサイルが発射される。
速度は真・絶影と同等、後部から火を噴きながら推進している。
真司への攻撃を中断した彼女は、薙刀を両手に持ち替えて迎撃。
ミサイルの先端と薙刀の刃先が衝突し、金属音と火花を散らす。
お互いに一歩も譲らんとする気迫、だがすぐに決着は着いた。
速度は真・絶影と同等、後部から火を噴きながら推進している。
真司への攻撃を中断した彼女は、薙刀を両手に持ち替えて迎撃。
ミサイルの先端と薙刀の刃先が衝突し、金属音と火花を散らす。
お互いに一歩も譲らんとする気迫、だがすぐに決着は着いた。
空中を旋回する薙刀、華奢な身体を撃つミサイル。
敗北したのは、咲世子の方であった。
敗北したのは、咲世子の方であった。
咲世子はミサイルの推進力に逆らえず、森林の奥へと吹き飛ばされる。
伏龍は大岩を容易く貫通する威力を持つ、真・絶影の必殺技。
それを受け止めるのは、決して容易くはないのだ。
伏龍は大岩を容易く貫通する威力を持つ、真・絶影の必殺技。
それを受け止めるのは、決して容易くはないのだ。
(また、助けられたのか……?)
先と今、真司は窮地に陥った所を二度も劉鳳に助けられている。
これは劉鳳が意図的に行っているのだろうか。
これは劉鳳が意図的に行っているのだろうか。
「剛なる左拳・臥龍!」
いや、違う。
劉鳳の目的は真司と咲世子の断罪。
一刻も早く目の前の毒虫を倒すという思いが、効率よりも優先されただけの話だ。
その証拠がたった今、真司に向かって発射された二発目のミサイル。
伏臥する龍は回転しながら地を駆け抜け、無抵抗の真司の身体を跳ね飛ばした。
劉鳳の目的は真司と咲世子の断罪。
一刻も早く目の前の毒虫を倒すという思いが、効率よりも優先されただけの話だ。
その証拠がたった今、真司に向かって発射された二発目のミサイル。
伏臥する龍は回転しながら地を駆け抜け、無抵抗の真司の身体を跳ね飛ばした。
「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
耳を劈く絶叫が彼の口から漏れだし、森林の空気を震撼させる。
肩に盾が装着されていなかったら、ミサイルによる一撃は致命傷に成りえただろう。
真司は装着された両の盾と引き換えに、ようやく一命を取り留めるに収まったのだ。
肩に盾が装着されていなかったら、ミサイルによる一撃は致命傷に成りえただろう。
真司は装着された両の盾と引き換えに、ようやく一命を取り留めるに収まったのだ。
倒れ伏せたまま動けない真司、吹き飛ばされ姿の見えない咲世子。
その中で劉鳳は、大地を両の脚で踏み締めている。
衣服はところどころ焼け焦げ、彼自身も肩で息をしている状態。
それでも彼は、しっかりと立ち続けていた。
その中で劉鳳は、大地を両の脚で踏み締めている。
衣服はところどころ焼け焦げ、彼自身も肩で息をしている状態。
それでも彼は、しっかりと立ち続けていた。
「ハァ……ハァ……貴様らの……負けだ!」
真・絶影を近くに呼び寄せ、劉鳳は前を見据えながら宣言する。
――――その瞬間、無機質で機械的な音声が彼の耳に届いた。
――――その瞬間、無機質で機械的な音声が彼の耳に届いた。
――――FINAL VENT――――
数本の樹木が削り取られたかのように消失し、中心から人影が姿を見せる。
正体は篠崎咲世子、いや仮面ライダーファム。
その姿を劉鳳が視認すると同時に、背後から烈風が吹き荒んだ。
正体は篠崎咲世子、いや仮面ライダーファム。
その姿を劉鳳が視認すると同時に、背後から烈風が吹き荒んだ。
「なんだ……これは!?」
吹き飛ばされるのを寸前のところで押し留まり、背後を確認する劉鳳。
彼の視界に映ったのは、純白の翼を羽ばたかせて烈風を巻き起こす巨大な白鳥、ブランウイング。
彼の視界に映ったのは、純白の翼を羽ばたかせて烈風を巻き起こす巨大な白鳥、ブランウイング。
「こいつはあの龍と同じ存在……だが何かが違う」
前方で薙刀を用いて、飛来する障害物を斬り続ける咲世子の姿を見て叫ぶ。
それもそのはず、彼女が使用したのはファイナルベント。
従来の武器の威力とは段違いの、各ライダーに一枚ずつ与えられた最終兵器だ。
それもそのはず、彼女が使用したのはファイナルベント。
従来の武器の威力とは段違いの、各ライダーに一枚ずつ与えられた最終兵器だ。
「くっ、なんとかこの風を切り抜けなければ……だが、手段が無い」
真・絶影は烈風に煽られ機敏性を活かせず、風除け程度にしか活用できない。
だがその役目が解かれるのも、もはや時間の問題であった。
だがその役目が解かれるのも、もはや時間の問題であった。
(俺は……死ぬのかな)
その一方、薄れてゆく視界の中で真司はふと考える。
彼のいる地点はブランウイングから離れているため、劉鳳ほど強い風には煽られていない。
しかしそれも時間の問題、劉鳳が吹き飛ばされたら烈風は即座に彼に向くだろう。
彼に抵抗の余力のなく、死はすぐそこまで訪れている状態だ。
彼のいる地点はブランウイングから離れているため、劉鳳ほど強い風には煽られていない。
しかしそれも時間の問題、劉鳳が吹き飛ばされたら烈風は即座に彼に向くだろう。
彼に抵抗の余力のなく、死はすぐそこまで訪れている状態だ。
(なんとかしなきゃ……でも、どうやって)
朦朧とする頭を必死に回転させる真司。
そんな彼の視界に、見覚えのある物が映りこんだ。
それは絶影に拘束された時に、手から零れ落ちたファイナルベントのカード。
そんな彼の視界に、見覚えのある物が映りこんだ。
それは絶影に拘束された時に、手から零れ落ちたファイナルベントのカード。
(でも、これを使ったら……)
自分も、加害者になってしまう。
しかしこれ以外の手段はもう彼には残されていない。
しかしこれ以外の手段はもう彼には残されていない。
(俺が死んだら、優衣ちゃんは……)
彼の脳裏に浮かぶのは、神崎優衣の笑顔。
ここで死ぬことは、戦いをやめることに直結する。
もしライダーバトルが終了する前に優衣が誕生日を迎えたら、彼女は消滅してしまうのだ。
ここで死ぬことは、戦いをやめることに直結する。
もしライダーバトルが終了する前に優衣が誕生日を迎えたら、彼女は消滅してしまうのだ。
(俺はどうしたらいいんだよ……)
ライダー達と最期と、神崎優衣の笑顔。
それらが脳内で交互に浮かび上がり、交錯していく。
彼が苦悩している間も、刻々と死は迫ってきている。
それらが脳内で交互に浮かび上がり、交錯していく。
彼が苦悩している間も、刻々と死は迫ってきている。
(俺は……俺は……ッ!)
(俺は――――)
悲鳴を上げる体を持ち上げ、ふらつきながらも立ち上がる真司。
(ライダーを倒す、ライダーは……倒さなきゃいけないんだ!)
そうしないと魅音のような被害者がもっと出てきてしまう。
そう考えた彼は、最後に残されたカードを召喚機に読み込ませた。
そう考えた彼は、最後に残されたカードを召喚機に読み込ませた。
――――FINAL VENT――――
上空へ舞い上がる真司、地上へ下降するドラグレッター。
そうして二つの身体が交差した瞬間、ドラグレッターの口から炎のエネルギーが真司へと照射される。
そして真司は飛び蹴りの体勢をとり、咲世子目掛けて突っ込んだ。
そうして二つの身体が交差した瞬間、ドラグレッターの口から炎のエネルギーが真司へと照射される。
そして真司は飛び蹴りの体勢をとり、咲世子目掛けて突っ込んだ。
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
上空から降り注ぐ彼の姿からは、投擲された槍が連想される。
紅蓮色の軌跡を描くそれが誇るは、圧倒的質量と速度。
全てを撃ち貫く炎の槍と、風の加護を得た薙刀。
二人のライダーの最終兵器が、満月の見守る中で合間見えようとした瞬間。
紅蓮色の軌跡を描くそれが誇るは、圧倒的質量と速度。
全てを撃ち貫く炎の槍と、風の加護を得た薙刀。
二人のライダーの最終兵器が、満月の見守る中で合間見えようとした瞬間。
「え?」
咲世子の姿が、真司の視界から掻き消えた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時間は数分ほど遡り、戦場と化した広場から十数メートルほど離れた地点。
そこに聳え立つ木陰に隠れながら、翠星石は体を震わせていた。
そこに聳え立つ木陰に隠れながら、翠星石は体を震わせていた。
「あああああああんな戦いありえないですぅ!」
薄暗い森林内で十数メートルも離れていれば、内部の様子は殆ど目視できない。
だが森林の上空、それも巨大な龍となれば話は変わってくる。
彼女の両目に映ったのは、巨大な龍が火炎弾を発射する姿だった。
さらに彼女の耳には、火炎弾を受けた劉鳳の悲鳴も届いている。
薄暗い森の中であろうと、音は関係なく届くのだ。
そして一番恐ろしいのは、あれだけ高密度の火炎弾を被弾したにも関わらずまだ劉鳳の声が聞こえることである。
だが森林の上空、それも巨大な龍となれば話は変わってくる。
彼女の両目に映ったのは、巨大な龍が火炎弾を発射する姿だった。
さらに彼女の耳には、火炎弾を受けた劉鳳の悲鳴も届いている。
薄暗い森の中であろうと、音は関係なく届くのだ。
そして一番恐ろしいのは、あれだけ高密度の火炎弾を被弾したにも関わらずまだ劉鳳の声が聞こえることである。
「あんなのを受けたら翠星石は死んでしまうですよ」
自分達を遥かに上回る能力を持つ人間が、ここには何人も存在する。
先ほどの光景は、その事実を彼女にはっきりと認識させたのだ。
先ほどの光景は、その事実を彼女にはっきりと認識させたのだ。
「ここはさっさと逃げるに限るですね」
急に身の危険を彼女は感じ始め、傍に置いてあったデイパックを抱える。
そうして踵を返した時、彼女の右手に握られていた杖が感触を訴えてきた。
そうして踵を返した時、彼女の右手に握られていた杖が感触を訴えてきた。
「真紅……」
心細さからか、翠星石は杖の持ち主の名を呟いてしまう。
そしてふと、真紅がこの場に居たらどうするかを考えた。
そしてふと、真紅がこの場に居たらどうするかを考えた。
「逃げるなんていうのは、まずありえないですね」
自嘲的に微笑む翠星石。
プライドの高い真紅のことだ、逃げるくらいなら死んだ方がマシとでも言うのだろう。
同様の理由でこの場で待機もありえない、となれば残された選択肢は一つしかない。
プライドの高い真紅のことだ、逃げるくらいなら死んだ方がマシとでも言うのだろう。
同様の理由でこの場で待機もありえない、となれば残された選択肢は一つしかない。
「キザ人間を助ける」
姉妹の中で最も面倒見のいい真紅であれば、間違いなくこの選択肢を選ぶのだろう。
だったら杖と一緒に彼女の信念も受け継いだ翠星石が、窮地に陥った劉鳳を助けに行くのも当然の話。
怖くないわけではない、ただ劉鳳を失うことが何故かそれ以上に怖かったのだ。
翠星石は木々に見守られながら森林の中を駆けはじめる。
だったら杖と一緒に彼女の信念も受け継いだ翠星石が、窮地に陥った劉鳳を助けに行くのも当然の話。
怖くないわけではない、ただ劉鳳を失うことが何故かそれ以上に怖かったのだ。
翠星石は木々に見守られながら森林の中を駆けはじめる。
「ま、全くキザ人間はしょうもない奴ですねぇ! 翠星石がいなくちゃなんもできないです」
自らを奮起させるためか、強がりを言い放つ翠星石。
端から見れば痛々しい姿だが、それでいい。
劉鳳を助けに行ったという、その事実が重要なのだ。
小柄な体を必死に動かし、一分、一秒でも早く劉鳳の下へと彼女は走る。
そうして数十秒、彼女は肩で息をしながら広場へと辿り着く。
端から見れば痛々しい姿だが、それでいい。
劉鳳を助けに行ったという、その事実が重要なのだ。
小柄な体を必死に動かし、一分、一秒でも早く劉鳳の下へと彼女は走る。
そうして数十秒、彼女は肩で息をしながら広場へと辿り着く。
「劉鳳!!」
――――そう叫んだ時、彼女は二つの物を見た。
一つは自らの目の前でジャンプし、上空に飛び上がった白い戦士の姿。
そしてもう一つは、脚部に炎を宿らせて自らに迫る赤い戦士の姿だった。
一つは自らの目の前でジャンプし、上空に飛び上がった白い戦士の姿。
そしてもう一つは、脚部に炎を宿らせて自らに迫る赤い戦士の姿だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真司のファイナルベントが失敗に終わった原因は、彼自身の経験にある。
ライダーバトルの参加者は真司を含め、力を手にするまではただの人間であった。
故に咲世子のような、超常の力が無くとも十分な身体能力を持つ者の存在を彼は想定できなかったのだ。
ライダーバトルの参加者は真司を含め、力を手にするまではただの人間であった。
故に咲世子のような、超常の力が無くとも十分な身体能力を持つ者の存在を彼は想定できなかったのだ。
「ハァ……ハァ……そんな……」
真司にも先ほど何があったのか、おおよその事は把握できていた。
ファイナルベントは咲世子に避けられ、たまたま現れた無関係の少女に当たってしまった。
ファイナルベントは咲世子に避けられ、たまたま現れた無関係の少女に当たってしまった。
「……俺は……なんの関係もない女の子を……」
殺してしまった。
間違いなく彼の脚には、少女を蹴り飛ばした感触があった。
その業の深さに嘆き、崩れ落ちようとする真司。
その時、背後から甲高い声が響いた。
間違いなく彼の脚には、少女を蹴り飛ばした感触があった。
その業の深さに嘆き、崩れ落ちようとする真司。
その時、背後から甲高い声が響いた。
「は、はぁ〜、び、びっくりしたですぅ!」
それは彼が殺してしまったはずの、翠星石の声であった。
背後を振り向くと、そこには傷一つない彼女の姿がある。
つまり彼は、翠星石を殺していなかったということだ。
背後を振り向くと、そこには傷一つない彼女の姿がある。
つまり彼は、翠星石を殺していなかったということだ。
「よかった……」
安堵から脱力した真司は、そのまま地べたに座り込む。
翠星石が自分に野次を飛ばしていたが、今はそれすらも心地よい。
そうして数秒が経過した時、彼は奇妙な疑問に気付く。
翠星石が自分に野次を飛ばしていたが、今はそれすらも心地よい。
そうして数秒が経過した時、彼は奇妙な疑問に気付く。
(あれ、でもなにかを蹴ったよな、俺)
確かに彼は、何かを蹴り飛ばす感触を感じていた。
ならばその感触の正体は、何だったのか。
疑問を深めた瞬間、ばたん、と何かが倒れる音がした。
ならばその感触の正体は、何だったのか。
疑問を深めた瞬間、ばたん、と何かが倒れる音がした。
「劉……鳳?」
音の聞こえた方向に、首を向ける真司。
そこで彼は、蹴り飛ばした物の正体にようやく気付いた。
周辺に散らばる焼け焦げた部品、その中は見覚えのある腕や触鞭、そして顔面がある。
そう彼が蹴り飛ばしたのは、真・絶影だったのだ。
そこで彼は、蹴り飛ばした物の正体にようやく気付いた。
周辺に散らばる焼け焦げた部品、その中は見覚えのある腕や触鞭、そして顔面がある。
そう彼が蹴り飛ばしたのは、真・絶影だったのだ。
「劉鳳ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
翠星石は脇目も振らずに劉鳳の下に駆け寄る。
そうして見た彼の体は、あまりにも悲惨な状態だった。
腹部は貫通したかのように穴が空き、そこを中心に全身の至るところへ広がっている火傷。
穴からは夥しい量の血液が溢れ、地面に染みこんでいる。
どう見ても、致命傷だ。
そうして見た彼の体は、あまりにも悲惨な状態だった。
腹部は貫通したかのように穴が空き、そこを中心に全身の至るところへ広がっている火傷。
穴からは夥しい量の血液が溢れ、地面に染みこんでいる。
どう見ても、致命傷だ。
「なんで……なんで、劉鳳を殺したですか!?」
真司に背を向けながら、翠星石は問い掛けてくる。
「そこの人間を殺して、劉鳳を殺して、今度は翠星石も殺すですか? だったら相手になるです!」
翠星石は体を反転させ、言葉を叩きつける。。
だがその中に、身に覚えの無い物が一つ存在した。
だがその中に、身に覚えの無い物が一つ存在した。
「ちょ、そこの女の子を殺したのは俺じゃ無いよ!」
「嘘です! お前の言うことなんか信じられないです!」
「嘘です! お前の言うことなんか信じられないです!」
体を震わせながらも、必死で反論する翠星石。
完全に聞く耳持たずと言った様子であり、真司の言葉を頭ごなしに否定し続ける。
その姿を見て、真司はある疑念に駆られていた。
完全に聞く耳持たずと言った様子であり、真司の言葉を頭ごなしに否定し続ける。
その姿を見て、真司はある疑念に駆られていた。
劉鳳がライダーであるなら、小さな少女を連れ歩くのだろうか。
劉鳳が悪人であるなら、こんなにも好かれるのだろうか、
そもそも劉鳳は、本当にライダーだったのだろうか。
劉鳳が悪人であるなら、こんなにも好かれるのだろうか、
そもそも劉鳳は、本当にライダーだったのだろうか。
「あ……あ……」
ここでようやく真司は気付いた、自らの抱いた勘違いに。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
轟く叫び。
同時にライダーの変身が解け、真司と咲世子の姿が晒される。
同時にライダーの変身が解け、真司と咲世子の姿が晒される。
「ッ!」
自らの姿が晒されるのを嫌ったのか、咲世子は逃げるように森の中に消えていく。
「ごめん! 俺、俺……!」
真司は涙を流しながら、劉鳳の下へ駆け寄る。
劉鳳は辛うじて息をしているものの、致命傷を負った事には変わりない。
劉鳳は辛うじて息をしているものの、致命傷を負った事には変わりない。
「早く起きるです! 死んじゃ嫌です! 劉鳳!!」
傷だらけの劉鳳の体を揺り動かす翠星石。
その必死さあってか、劉鳳の瞼はゆっくりと開かれた。
その必死さあってか、劉鳳の瞼はゆっくりと開かれた。
「劉鳳!」
「……無事だったか、翠星石」
「……無事だったか、翠星石」
劉鳳の吐き出す声は、先刻と比べると余りにもか細い。
もう死期が近いことを、嫌でも悟らされた。
もう死期が近いことを、嫌でも悟らされた。
「ごめん、ごめん! 俺……俺……!」
「……お前は……一つ問おう、本当にあの少女を殺してないのか?」
「……お前は……一つ問おう、本当にあの少女を殺してないのか?」
魅音の死体に目を向けながら、真司に問う劉鳳。
「俺じゃない、俺じゃないよ! 俺が来た時にはもう……」
「……そうか……なら、すまなかった……ごふっ!」
「……そうか……なら、すまなかった……ごふっ!」
劉鳳の口から鮮血が濁流し、口元から零れ落ちる。
ようやく双方の誤解が解かれるが、それはあまりにも遅すぎた。
致命的なまでに、遅すぎたのだ。
ようやく双方の誤解が解かれるが、それはあまりにも遅すぎた。
致命的なまでに、遅すぎたのだ。
「お前……名は何と言う?」
「俺は真司、城戸真司……」
「俺は真司、城戸真司……」
嗚咽交じりの声で、真司は自らの名を告げる。
「そうか、城戸というのか……お前に頼みがある
……この先、翠星石を護ってやってくれないか?」
……この先、翠星石を護ってやってくれないか?」
本来の劉鳳という男は、一度決めたことは他者を頼らず自らの命を賭して実行しただろう。
だが今の彼には、もう賭すための命が無いのだ。
だが今の彼には、もう賭すための命が無いのだ。
「嫌です、死んじゃ嫌です、劉鳳、劉鳳ぉ!」
翠星石は劉鳳を手を握り締め、何度も何度も彼の名を叫ぶ。
真司も涙を流しながらしきりに頷き、また涙を流す。
真司も涙を流しながらしきりに頷き、また涙を流す。
(よかった……)
真司の返事を聞き、劉鳳は笑む。
その表情は死を直面したにしては、あまりにも穏やかだ。
最期に夜空に煌く星達を掴もうと手を伸ばし――――
その表情は死を直面したにしては、あまりにも穏やかだ。
最期に夜空に煌く星達を掴もうと手を伸ばし――――
――――そのまま、地に落ちた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
劉鳳が致命傷を負ったのは、真・絶影が翠星石を庇った時に受けたダメージが還元したからである。
しかしここに一つの疑問が生じる、真・絶影から還元されるダメージが大きすぎる事だ。
その原因は、主催側が課した制限にある。
自立稼動型のアルターである絶影は、使用者が倒れぬ限り何度でも復活する。
仮の姿ですら相当の実力を持つ絶影が何度でも再生可能、という状況を不公平と主催側は判断したのだ。
それ故に絶影には使用者に還元されるダメージの増加、という枷がかけられていた。
しかしここに一つの疑問が生じる、真・絶影から還元されるダメージが大きすぎる事だ。
その原因は、主催側が課した制限にある。
自立稼動型のアルターである絶影は、使用者が倒れぬ限り何度でも復活する。
仮の姿ですら相当の実力を持つ絶影が何度でも再生可能、という状況を不公平と主催側は判断したのだ。
それ故に絶影には使用者に還元されるダメージの増加、という枷がかけられていた。
彼は、それに気付かずに庇ったのだろうか。
答えはノー、気付く機会など戦闘中にいくらでも存在していた。
ならば彼は死を覚悟してなお、翠星石を庇ったのだろうか。
それも違う。
彼は何かを考える前に、気が付いたら体が動いていたのだ。
答えはノー、気付く機会など戦闘中にいくらでも存在していた。
ならば彼は死を覚悟してなお、翠星石を庇ったのだろうか。
それも違う。
彼は何かを考える前に、気が付いたら体が動いていたのだ。
最初に小早川ゆたかの死を防げず、園崎魅音の死も見過ごしてしまった。
だからあれこれ考える前に、体が動いていたのだ。
だからあれこれ考える前に、体が動いていたのだ。
結果として、彼は命を落としてしまった。
心残りがないといえば嘘になるだろう。
だが彼は翠星石を庇ったことを、決して後悔はしていない。
心残りがないといえば嘘になるだろう。
だが彼は翠星石を庇ったことを、決して後悔はしていない。
【劉鳳@スクライド 死亡】
【一日目黎明/B−2 森】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅のステッキ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式 確認済支給品(0〜2)
[状態]健康
[思考・行動]
1:殺し合いから脱出。
2:真紅、蒼星石、クーガー、あすか、かなみとの合流(蒼星石を最優先)、水銀燈は警戒。
3:劉鳳の死に対する深い悲しみ。
4:真司のことは信用していない。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅のステッキ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式 確認済支給品(0〜2)
[状態]健康
[思考・行動]
1:殺し合いから脱出。
2:真紅、蒼星石、クーガー、あすか、かなみとの合流(蒼星石を最優先)、水銀燈は警戒。
3:劉鳳の死に対する深い悲しみ。
4:真司のことは信用していない。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎(二時間変身不可)、確認済み支給品(0〜1)
[状態]ダメージ(大)、疲労(大)
[思考・行動]
1:劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感。
2:翠星石のことは守り抜きたい。
※翠星石、真司共にメイド服の女(咲世子)を危険人物だと思ってます。
[装備]無し
[支給品]支給品一式、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎(二時間変身不可)、確認済み支給品(0〜1)
[状態]ダメージ(大)、疲労(大)
[思考・行動]
1:劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感。
2:翠星石のことは守り抜きたい。
※翠星石、真司共にメイド服の女(咲世子)を危険人物だと思ってます。
【篠崎咲世子@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 双眼鏡@現実、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎(二時間変身不可)、確認済支給品(0〜1)
[状態]ダメージ(中)、疲労(中)
[思考・行動]
1:ルルーシュと合流する。
2:ルルーシュが殺し合いから脱出する方法を探す。
[備考]
※赤髪の少女(シャナ)、茶髪の男(真司)を危険人物だと思ってます。
※どの方向に進んだかは、次の書き手さんにお任せします。
[装備]無し
[支給品]支給品一式 双眼鏡@現実、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎(二時間変身不可)、確認済支給品(0〜1)
[状態]ダメージ(中)、疲労(中)
[思考・行動]
1:ルルーシュと合流する。
2:ルルーシュが殺し合いから脱出する方法を探す。
[備考]
※赤髪の少女(シャナ)、茶髪の男(真司)を危険人物だと思ってます。
※どの方向に進んだかは、次の書き手さんにお任せします。
※劉鳳のデイパック(支給品一式、不明支給品1〜3)は付近の森に放置されています。
※魅音のデイパック(支給品一式、不明支給品1~3)が
シャナに持っていかれたか、その場に残されているかも次の方にお任せします。
※魅音のデイパック(支給品一式、不明支給品1~3)が
シャナに持っていかれたか、その場に残されているかも次の方にお任せします。
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021:走れ、仮面ライダーBLACK! 少女の命が今危ない! | 劉鳳 | GAME OVER |
翠星石 | 078:果てしない炎の中へ(前編) | |
037:バカは考えずにただ行動するだけ | 城戸真司 | |
042:くノ一は見た! | 篠崎咲世子 | 071:元教師とメイドさん |