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アラベスク

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アラベスク  ◆.WX8NmkbZ6



 ロロ・ランペルージは座り込んで呼吸を整えた後、背もたれにしていたズーマーデラックスをデイパックにしまった。
 そして立ち上がり、周囲に人目がない事を念入りに確認してから付近の民家に転がり込む。
 地図上に記載されている施設ならともかく、殆ど無作為で選んだ建物で他の参加者と遭遇してしまう確率は低い。
 中に入る姿さえ見られなければ暫しの安全は保障される。
 一応幾つかある部屋を一通り見て誰もいない事、玄関以外の逃走経路を確かめると、ロロはソファに倒れ込んだ。

 怪我は宝玉で治したものの、疲労は大きかった。
 殺し合いが始まってから既に半日近くが経過しており、その間ロロは寝ていない。
 常に緊張を強いられる状況に置かれている上に、第一回放送後に出会ったのは志々雄真実と後藤。
 無抵抗の相手を一方的に殺害する事しか知らないロロは、この二人との接触で大いに神経を擦り減らしてしまった。
 この先もギアスに頼らなければならない点も鑑みれば、ここで休んでおくべきだろう。
 その考えの下、ロロは長時間留まれる居場所を求めた。
 ベッドでなくソファを選んだのは、熟睡して二度目の放送を聞き逃してしまうような失敗を犯さない為だ。

 深く息を吐き、目を閉じる。
 しかし疲れや眠気に反して意識は尖ったままで、眠る事は出来なかった。
 仕方なく、ロロはこの時間を無駄にしないよう思考を巡らす。

 行動目的ははっきりしていた。
 最愛の兄、ルルーシュ・ランページ殺害犯を探し出して殺す。
 限りなく残酷な方法を用いて殺す。
 思考の必要はない。
 問題があるとすればその手段だ。
 ロロが現在持っている武器は蛮刀のみ。
 これは小柄で刀剣の扱いに不慣れなロロには持て余す武器と言えた。
 まして今のロロは片腕を失っている。
 ナイフのような片手で楽に扱える物の方が望ましい。
 何せ敵はルルーシュ殺害犯――ギアスユーザーを殺した相手。
 万全な態勢で臨まなければ返り討ちに遭う可能性すらある。
 早急に何らかの形で別の武器を手に入れるべき、と結論付けた。

 しかしそれよりも考えなければならないのは、ルルーシュの仇を討った後の身の振り方だ。
 それは放送の直後、志々雄真実に会って以降棚上げにしていた問題だった。
 一人で優勝を目指し、参加者を皆殺しにするか。
 志々雄に従い、V.V.に反逆するか。
 二つに一つ、どちらかを選ばなければならない。

 ルルーシュを蘇らせる。
 ナナリー・ランページの存在を消す。
 叶えたい願いがある。
 V.V.に縋るかV.V.の力を奪うか、そのどちらかが出来なければ成せない願い。

 志々雄はV.V.が首輪で参加者達を支配している事を根拠に、V.V.に付け入る隙がある事を示した。
 その指摘の通り、V.V.自身に戦闘能力がない事、嚮団が既に壊滅している事は事実だ。
 しかし考えてみれば、そもそも「嚮団が壊滅しているのに何故V.V.は殺し合いを開催出来たのか」。
 志々雄や後藤のような強力な参加者達を集め、会場や首輪を用意し、放送の為に参加者達の動向をある程度観察する。
 どれもV.V.個人の力では不可能だ。

 殲滅された嚮団はダミーだった?
 それはない。
 ロロ自身も嚮団殲滅に参加し、ギアスユーザーの子供達を殺害している。
 V.V.に協力している者、或いは組織がいる?
 前者よりあり得る話だ。
 しかしどちらにしても、V.V.自身の弱さや嚮団が殲滅されている事はV.V.の隙になり得ない。
 そもそもこんな大それた計画を実行しておきながら、参加者による反抗を想定していないはずがなかった。
 V.V.には志々雄であろうと後藤であろうと御し切れる自信があるからこそ、彼らをこの場に呼び寄せたはずだ。

 それにこの家に入る前に見た光景を思い浮かべると、一層志々雄の計画に現実味を見出せなくなる。
 総合病院方面での爆発と、教会方面の火事。
 当事者にならずに済んでホッとしたところだが、二つとも肝を冷やすには充分な図だった。
 放送前に見た遊園地での爆発よりも更に規模の大きい、病院での爆炎。
 教会の火災、遠目でも視認出来るサイズの巨大な龍の姿には声を失った。
 恐らくどちらも支給品が関わっているのだろうが、今のV.V.にはそれら全てを管理する力がある。
 反抗するだけ無駄なのだ。
 志々雄は確かに実力者で底が知れなかったが、V.V.はその一枚上を行っている。
 行っていなければおかしい。

 一人で優勝を目指すには障害が多い。
 それでもV.V.に対抗しようとするよりは成功の目がある。
 逃げ回り、自分で殺せる範囲の人間を殺しながら強者同士が潰し合うのを待つ。
 情けないスタイルだが、ルルーシュのように策謀に長けている訳でもないロロにはこれ以上の方策は練れなかった。
 不安はあっても他に選択の余地はない。

(携帯……は、ないんだった)

 心細くなり、無意識のうちにポケットに伸ばそうとした手を止める。
 携帯電話で誰かと連絡を取り合う事を期待した訳ではない。
 篠崎咲世子ジェレミア・ゴットバルトの番号は登録してあるが、今は会話したいとは思えない。
 ロロは携帯電話ではなく、携帯電話に取り付けたストラップの方に用があったのだ。

 四つ葉のクローバーの意匠が施された、ハート型のペンダント。
 オルゴールが内蔵されたそれはロロの誕生日――正確にはナナリーの誕生日に、ルルーシュから贈られた品だ。
 自分の誕生日を持たない、暗殺者としての生しか持たなかったロロにとって、初めての誕生日プレゼントだった。
 元がナナリーの物だけあって女性向けのデザインだったが、それはさしたる問題ではなかった。
 兄との絆を示す大切な、掛け替えのない宝物。

 殺し合いに巻き込まれて以降思い出す事のなかったペンダントを意識すると、同時に蓋をしていた記憶が蘇る。
 触れないようにしていた、忘れようとしていた、ここに呼ばれる直前の出来事。

――どうしてお前が持っているんだ!!

 第二次東京決戦にて投下されたフレイヤによって、政庁と共にナナリーの姿が消えた。
 消し飛んだ、と言った方が正しい。
 ロロは抜け殻のようになったルルーシュを自室へ連れて行き、丁度そこでジェレミアから連絡が入った。
 このままナナリーの捜索を続ける、といった旨の話だったように思う。
 そんな事をしたって無駄なのに、と半ば呆れながら相槌を打っていた。
 ルルーシュが激昂したのは、その会話の最中の事だ。

――これはナナリーにあげるつもりだったんだよ、ナナリーに!!!

 ロロから携帯を奪い取ったルルーシュの形相は、ロロが初めて向けられるものだった。

――お前なんかがナナリーの代わりになるものか、この偽物がッ!!!!

 床に叩き付けられた携帯と、ペンダント。
 それをロロは呆然と見詰めている事しか出来なかった。

――まだ気付かないのか、俺はお前が嫌いなんだよ。大嫌いなんだよ!!
――何度も殺そうとして、ただ殺し損ねただけだ!!

 信じられなかった。
 敵に対しては情け容赦なくとも、ロロに対してはいつでも優しく聡明だった兄の言動が。声色が。表情が。

――出て行け!!
――二度と目の前に姿を見せるな……!!!

 何故そのやり取りの後でも、ロロはルルーシュの為に行動し続けていられるのか。
 その答えはシンプルで、彼からどんな言葉をぶつけられようと、ロロの思いは変わらないからだ。
 彼が嘘吐きだという事はよく知っている。
 嫌いだというその台詞も嘘に違いない。

 例え嘘でなく、本心だったとしても構わない。
 ルルーシュが本当にロロを嫌っていたとしても、一緒に過ごした一年間の記憶に偽りはないのだ。
 だから、同様に殺し合いに連れて来られた兄を守らなければと。
 打算も他意も下心もなく、一途に一心にそう思えた。
 本当の兄弟として過ごした一年の思い出が、ロロを支えている。
 ナナリーの存在さえ消えれば、あの一年と同じ、本当の兄弟としての生活が訪れる。
 その思いが厳しい殺し合いの中でも戦い続ける勇気を生む。

 ナナリーさえいなくなれば。
 ナナリーさえ。
 ナナリーさえ。
 ナナリーさえ、初めからいなければ。

「ナナリー……ナナリー、ナナリー、ナナリー……」

 ルルーシュも。
 咲世子もシャーリーもジェレミアも。
 ナナリーナナリーナナリーナナリーナナリーナナリーナナリーナナリー。

 ロロは皇族でないどころか、出自すら定かでない嚮団の子供。
 死んでもなお思ってくれるような人は、いない。
 いるとすればルルーシュだが――

――大嫌いなんだよ!!

 ナナリーへの、憎悪とも呼べる嫉妬心が燃え上がる。
 その激しい負の感情がすぐに打ち消されたのは、願いが叶った後の幸福を信じていたからだ。
 ナナリーさえいなくなれば、兄弟二人だけの幸せが待っている。
 ナナリーさえいなくなれば、ロロは偽物ではなくなる。
 ナナリーさえいなくなれば、ロロは本当の弟になれる。

 考えながら床に投げ出したデイパックに手を伸ばし、地図を取る。
 現在位置は教会の西の民家。
 一番近い施設は教会、次いで総合病院。
 どちらも黒煙を上げる危険な場所だ。

 ロロが休憩の後に目指す事にしたのは総合病院だった。
 武器を入手するには、多少の危険を冒してでも他の参加者と接触する必要がある。
 それにあの爆発の後でなら死人が出ているかも知れない――つまりデイパックを回収出来るかも知れない。

 一通り先々の事を決めると、ロロはようやく微睡み始めた。
 幸福な夢を見ながら、ロロは浅い眠りにつく。


【一日目昼/F-9 教会西の民家】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[支給品]宝玉@真・女神転生if…、城戸真司のズーマーデラックス@仮面ライダー龍騎
[状態]左腕欠損、疲労(大)
[思考・行動]
0:休む。休んだ後は総合病院へ向かう。
1:ルルーシュを殺した者を探し出し、拷問した後に殺す。
2:ルルーシュを蘇生した後、V.V.も殺す。
3:ナナリーの存在を消してしまいたい。
4:3の為に殺し合いに乗る。自分で殺せる相手は殺す。
5:竜宮レナは発見次第殺害。
6:ギアスの使用はできるだけ控える。(緊急時は使う)
[備考]
※ルパン勢の情報を入手しました。
※ギアスに何らかの制限が掛けられていることに気付きました。
※ロロのギアスに設けられた制限は、単体にしか効果がないことです。
 ただし死ぬ気で発動すれば、その限りではないかもしれません。
 そして他にも制限が設けられた可能性があります。


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109:遊星よりの物体X ロロ・ランペルージ 127:死せる者達の物語――Everything is crying



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