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血染め の ■■■

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血染め の ■■■  ◆.WX8NmkbZ6



「そのうち治るわよ」

 惚れ薬。
 トリステイン魔法学院のモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシが、恋人の浮気を抑制する為に作った禁制の品。
 その効果の持続時間について彼女は言った。

「個人差があるから、そうね、一ヶ月後か、それとも一年後か……」


 枢木スザクは山道をひたすら南へ進んでいた。
 目指すのは人がいるであろう市街地。
 最愛の水銀燈を甦らせる為にV.V.に縋り、参加者を皆殺しにすると決めたからだ。
 眼前を睨み、怒りに唇を噛み締める。

 狭間偉出夫
 ルルーシュ・ランペルージ
 この二人は絶対に許さない。
 大切な人を奪ったこの二人だけは。

 しかし憎悪に囚われながらスザクは混乱していた。

 仮面の男、ゼロ。
 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 スザクから大切な人を『二度』奪った、親友だった少年。
 かつてスザクにとって大切だった『彼女』をその手に掛けた――

(『彼女』……?)

 大切な人。
 大切だった人。
 守りたかった人。
 失いたくなかった人。
 その、名前は――

「水、銀燈……?」

 『彼女』は唯一の存在。
 『彼女』の為なら何もかも捨てられる。
 『彼女』がいれば他に何も要らない。
 『水銀燈』さえいれば、生きていれば、微笑んでくれれば、それで。

 でも、水銀燈ではない。
 水銀燈と出会う前に誰かいたはずだ。
 ゼロに奪われた『一度目』があったはず。
 つい先程までは間違いなく覚えていた、大切な人。

――■ー■ェミ■・リ・■リ■ニア

 名前が思い出せない。
 壊れたラジカセのように、音声にノイズが掛かる。
 顔も姿も思い出せない。
 壊れたテレビのように、画像に砂嵐が被さる。

 『彼女』のいきなりの度に、扉を開けられた気がする。
 空から降ってきたお姫様。
 共に日本を憂いた優しい女性。
 ギアスによって意志を歪められ、日本人を虐殺した悲劇の人。
 ゼロに射殺された、夢に見る程に大切な――

(いや、水銀燈より大切な人がいるはずがない)

 惚れ薬による異常な精神状態。
 その執着の対象を失うという大き過ぎるショック。
 ルルーシュと狭間への激しい憎悪。
 それらが積み重なり、スザクは精神と記憶に異常を来していた。
 『彼女』の思い出が溶け、混じり、濁る。
 かつて失った『彼女』への想いが強かったからこそ、薬によって生まれた偽りの濃密な感情と混ざり合ってしまう。
 幻影に上書きされ、塗り潰されてしまう。

 記憶の混乱にスザク自身も気付いていた。
 スザクはそれを、水銀燈を失った悲しみの余り冷静さを欠いたせいだと納得する。
 ルルーシュに殺された『誰か』がいる。
 けれどそれは、忘れてしまう程度の人だったのだろう。
 喪失の悲しみの感覚は確かに残っているけれど、水銀燈のそれには及ばない。
 昔から、初めから、愛しているのは水銀燈一人。
 水銀燈との馴れ初めは不思議と思い出せないけれど、どんなに記憶が定かでなくてもそれだけは揺るぎないのだ。

 そう、狭間によって殺害された、血染めの『水銀燈』――

 情緒不安定なスザクの足取りは覚束ない。
 よろめき、軽い崖状になった高い段差を転がり落ちそうになる。
 それを寸での所で踏み留まるが、ふと崖下の景色が見えた。

 踏み荒らされた地面の中心に、黒と赤。
 見覚えのある学制服と、漆黒の髪。
 そしてその周りに広がる乾いた血の跡。

「え……」

 意図せずして声が漏れる。
 ルルーシュの遺体が無造作に転がっていた。

 スザクは狼狽する。
 ルルーシュは憎い。
 それでも既に死亡した彼をどうするかまでは考えていなかった。
 まさかこんなにも早く目の前に現れるとは思っていなかったのだ。
 斜面を慎重に下って改めて見るが、ルルーシュ本人だった。
 親友だったのだから間違いようがない。
 死亡したのが第一回放送前だけあって死後硬直が始まっている。
 死因は額から頭部を撃ち抜いた弾丸のようだ。

 スザクはデイパックから銃を抜き、銃口をルルーシュの頭部へ向ける。
 『彼女』の命を奪ったニードルガンだ。
 しかしその引き金に掛けた指は震えていた。

 この地で出会った高良みゆきを笑って殺した。
 たまたま遭遇した学制服の少年を襲ってデイパックを奪った。
 水銀燈の為に、スザクは既に正しさを捨てている。
 水銀燈の為なら、それ以外の全てをも捨てて構わないと思っている。
 死体に鞭打つような真似は倫理的に間違っている等と、今更過ぎる偽善だ。
 それでもルルーシュの死体を目にして決意が揺らいでしまった。
 彼の死を悲しまないと、心に強く思ったはずなのに。

 何度も戦場で衝突し、出世の為にブリタニア皇帝に身柄を引き渡し、彼の記憶を確かめる為にナナリーさえ利用した。
 親友だったのは過去の事で、今は違う。
 しかし彼の事が自然と思い出された。
 二人で駆け回った夏の日。
 目と足が不自由な妹、ナナリーを労る優しい表情。
 瓦礫に満ちた景色の中で祖国への反逆を宣言した声。
 アッシュフォード学園で友人達と楽しげに過ごす姿。

 それにスザクは元々口より先に手が出る子供だったが、神聖ブリタニア帝国の日本侵略によって変わった。
 正確にはそれを端に発した『父殺し』によって変わった。
 過剰なまでに正しさを求め、同時に死に場所を求めるようになった。
――私を好きになりなさい!
 『彼女』との出会いで変化は訪れたものの、それでもスザクの根幹にある正しさへの執着は曲がらなかった。

 だから決意が鈍ってしまう。
 本当にこれでいいのかと疑念が湧き出してしまう。
 だが、引き金から指は離れなかった。

 どんなに感傷に浸ろうと、彼の残虐な一面を忘れはしない。
 一般人をも巻き込む黒の騎士団の戦い。
 スザクを縛るギアス。
 大勢の日本人を『彼女』に殺させた行政特区日本。 
 そして、水銀燈を殺した。

 幾度かあった分岐点。
 ここが最後の分水嶺だった。

 一つ目は、水銀燈との最初の応酬。
 この時の致命的な失敗でスザクは洗脳され、みゆきを殺す事となり、引き返す道を失った。
 二つ目は先程、横たわる水銀燈から逃げ出した時。
 逃げずに向き合っていれば、隷属としてであれ別の道が開けていたかも知れない。
 そして三つ目が、今。
 撃ったその先にいるのは獣であり、鬼だ。
 みゆきや学生服の少年の時とは違い、水銀燈の命令ではなく自分の意志で撃つのだから。

――僕とルルーシュが組んで、出来なかった事なんて無いだろ?

「ぅっ……ぅう……」
 涙を落とさなかった代わりに、嗚咽を漏らした。
 思い出や感情がグルグルとせめぎ合って、目が回る。
 酸欠になった脳が酸素を求めるが、幾ら呼吸しても霞がかった思考はそのままだった。
 目の奥が熱い。
 震える指先の感覚が麻痺していく。
 握った銃に手の汗が滲み、投げ出したくなる。

――スザク、あなたに……会えて……



 そしてスザクは『大切な人』の為に引き金を引いた。



 黒煙を上げて燃え盛る森を横目にスザクは進む。
 目蓋は腫れているものの、足はしっかりと地面を踏み締めている。

 水銀燈の為に他の全てを擲った。
 最早この決意が揺らぐ事はない。
 かつての親友とはっきり決別したスザクに迷いはなかった。

 しかしスザクが時計に目を遣るとその表情がくしゃりと歪む。
 正午間近。
 水銀燈の死を知らせる放送の時間。

「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ…………」

 それだけをうわ言のように繰り返し、耳を塞ぐ。
 想い人の死を他人の口から伝えられる事は、苦痛以外の何物でもなかった。

 本当に大切な人を忘れ、親友を捨て、他人の命を犠牲にする覚悟をし、現実から目を逸らし、人為的に植え付けられた恋慕の情に酔う。
 その姿がまさしく道化である事に、スザクは気付かない。


 気付かずにいられる事が、今のスザクにとって唯一の救い。


【一日目 昼/C-6 南部】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]:ゼロの銃(弾丸を二発消費)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[所持品]:支給品一式×2(食料は一つ多め)、ワルサーP-38(3/9)@ルパン三世、ワルサーP-38の弾薬(11/20)@ルパン三世、
     日輪の鎧@真・女神転生if...、Kフロストヅーラ@真・女神転生if...、確認済み支給品0~2(武器はない)
[状態]:ダメージ(中)、『生きろ』ギアスの効果継続中、惚れ薬の効果継続中、記憶と精神の一部に混乱
[思考・行動]
0:放送なんて聞かない、聞こえない。
1:参加者を全員殺し、水銀燈を生き返らせる。
2:狭間偉出夫は絶対に許さない、見つけ出して殺す。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。
※水銀燈は死亡したと思っています。
※ユーフェミアの事を思い出せなくなっています。


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114:人形劇 枢木スザク 125:How many miles to the police station?



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