観測断片02「内戦とヴァレリウス氏族」

内戦は、帝國のあらゆる社会階層に軍事的努力を強いました。
ヴァレリウス一門も例外ではありません。彼らの一門の軍隊(三百年振りに全面動員されました。
彼らの軍は、内戦初期の南方戦役で帝都目指して進撃していたユリウス一門の軍を撃退し、その実力を証明する事になります。
ヴァレリウス一門はそれだけではなく、統治下の領地では部隊を新設して帝國軍に提供しました。この新設された部隊は一門の軍隊とは異なったもので、完全に帝國軍式の編制で作成されて戦場へと投入されました。
連隊のリストを眺めると(戦列)歩兵連隊よりも猟兵連隊の方が多いのが目立ちます。
これはヴァレリウス一門の統治下の領地とその領民の特質が原因です。
山と森に住む住民からは猟兵連隊が生み出され、平原で暮らす牧士からは軽竜騎兵連隊―かつての弓騎兵の末裔―が出現しました。
通常の歩兵部隊と違って、硬い陣形を組まずに緩い隊形で各個に射撃する彼らは、敵にとって悩ましい存在でした。
追跡して撃滅しようにも、横隊から縦隊に移る間に軽装備の彼らはするりと戦場を離脱してしまい、無理な追跡は伏撃を招く事もしばしば。
彼らは長きに渡った内戦で、特に熾烈を極めた北方戦役において勇戦敢闘し、そして少なからぬ犠牲も払いました。
そしてヴァレリウス一門の組織が帝國軍に提供した部隊としては最も有名な医療衛生福祉部隊は忘れてはならぬ存在です。
それらの部隊は元々野戦病院や戦場掃除、果ては軍人墓地等の戦争の栄光とはかけ離れた場所で、軍と軍人を影から支えていました。
帝國軍に存在していた医療衛生部隊は、内戦が進むと上都の葬祭人員と同じように大幅に増強されていった末に人員が足りなくなります。
レイヒルフトが重視した事もあり、帝國軍が求めた人員が余りにも多かったために、それまでの教育体制では足りなくなったのです。
学校が新設されました。市井から大量に人を集めて教育するというのは、一門にとっては帝國創設時の対魔族戦争以来の、つまりほぼ前例のない試みでした。様々な苦労と失敗の末にこの方法は功を奏し、医療部隊をこれまでにない規模で帝國軍へ加える事ができました。またこれは一門にとっても貴重な経験でした。
彼らは野戦救急医療や戦場から離脱した後の治療と福祉等を提供し、帝國軍に取って不可欠の存在となっていったのです。負傷で退役してもサポートを受ける事が出来、戦死した場合は遺族の世話をしてくれる事がわかっていた事は、兵士の士気の維持に役立ちました。
内戦が終結すると、戦闘部隊も医療衛生部隊も共に賞賛されました。新設されていた部隊は大半が解散され、兵士達は故郷へ帰っていきました。しかし一部の兵士達は帝國軍に残り、彼らの経験を伝えていくのでした。
そして歴史を重く見る一門にとって、重要な仕事もそれから始まりました。彼らは帝國軍と協力しつつ、内戦の歴史を編んで行きました。公式戦史の他に様々な情報と資料、口述記録が集められました。
集められた資料は編集され、研究され、帝國の糧となるよう各方面に供されたのでした。

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最終更新:2012年07月03日 23:15