さて困った。気づいたらバレンタインがもうすぐだというのに私はトレーナーにあげるお菓子を何も用意していない。だからといって何もあげないわけにはいかないし、あげるとしても食べ物のほうがもらった後、楽ではあろう。うーむ、実に困った。デパ地下にでも行って美味しそうなお菓子を探してそれをトレーナーにあげるとしようか。手作りより圧倒的に楽が出来るし。
こうして私は電車に乗り、都心のデパートに向かうことにした。
うーん、こういう時、どういうものをあげたら喜ばれるんだろう?お菓子の意味とかに沿って選ぶべきなのだろうか。そんなことを考えなくとも気持ちがあれば余程のものでもない限り、どんなものでもいいのだろうか。大体定番としてはチョコレートとかクッキーあたりと言えるな。いや、洋菓子に囚われる必要はないのか。別に和菓子に舵を切ってもいいのか。そうしたら大福とか煎餅というのもあるな。でもあまり固くなりすぎてバレンタインらしさというのがなくなってしまうのはアレだな。まあ、渡すときにハッピーバレンタインと日ごろの感謝の気持ち言っておけばいいか。
そんなことを考えながら1時間ほどデパ地下で販売されているお菓子を一通りじっくりと見て回った。
一通り見て回ってみたけど、どれも魅力的で選び難いな。でもどれもいい値段して学生の身ではなかなか買いにくいんだよなぁ。それに何かが足りない。自分が自分のご褒美として買うのなら十分すぎるが、今回はトレーナーにバレンタインであげる用のお菓子だ。うーん、やはり自分で一から作るべきなのかな?他のウマ娘もトレーナーにあげるお菓子は自分で作っているというのはよく耳にするし。どうしたものか。何せ私、料理とか苦手なんだよなぁ~。うーーーーーん、よし決めた!自分で作ろう!やってみなきゃわからないし、意外と出来るかもしれないし!
そうして私はトレーナーにあげるお菓子の材料を買いに行くことにした。そして渡すのはお酒に合う手作りチョコに決めた。
チョコレート...出来たらビターを使いたいけどお酒に合わせるなら甘口なほうがいいのかな?少し調べてみるか。ふむ、お酒の種類によってはビターもアリなのか。トレーナーの好みから考えると、ビターに柑橘の香りを入れた方がよさそう。うんうん、いい感じに決まってきた!
必要な材料を買い、学園に戻り寮のキッチンを借りてレシピを見ながらチョコレートの制作を始めた。
調理用の作業着には着替えたし、いよいよ制作開始だ。まずはミカンの香づけのために皮を細かくするのか。ほーなるほど。次にチョコレートを砕いてそれを温めて溶かす。ふむふむ。その後にさっきのミカンをチョコレートの中に入れてよく混ぜる、と。それでそれで?そうしたらチョコレートを型に流し込むのか。型はキッチンにあるしそれが使えるな。流し込んだらその型を冷蔵庫に入れてチョコレートを冷やし固めるのね。そして最後に冷えたチョコレートを型から出して完成、と。よーし、やってみよう!
最初はちゃんと完成するか不安だったが、なんだかんだ良く仕上がった。
これで完成!おいしくできたか一つ食べてみるか。あーむ。ん~!苦めのチョコの中に確かにミカンの香りがあってそれが口の中に広がっていく!だからといってどちらかが強いわけでもなく、お互いが引き立てあっている!これなら間違いなく喜んでくれる!もう一口だけ食べちゃ......いや、駄目だ!食べたらまた一口ってなってトレーナーの分が無くなってしまう!ステイステイ自分、ステイステイ!
こうしてなんとか自分の欲を抑えた私は透明な袋に入れて作業着のメイド服(クラシックタイプでモブキャップを被っている)のまま、トレーナー室に向かった。
トキ「トレーナーさーん」
トレ「おー、コエテか、って何その格好⁉」
確かにこの格好で来たら驚くよね。
トキ「まぁ、色々あって。はい、ハッピーバレンタイン!トレーナーさんがよく飲むお酒に合わせて作ってみました~」
トレ「おお、ありがとう!これ手作りなの⁉凄いじゃん!」
トレ「おー、コエテか、って何その格好⁉」
確かにこの格好で来たら驚くよね。
トキ「まぁ、色々あって。はい、ハッピーバレンタイン!トレーナーさんがよく飲むお酒に合わせて作ってみました~」
トレ「おお、ありがとう!これ手作りなの⁉凄いじゃん!」
喜んでもらえてよかった。自分で作って正解だ!
トキ「えへへへ。そうだ、一口食べてみてください!」
トレ「そうだね。おー!チョコレートの苦さと中に入っているミカンがよく合うね!お酒が進みそうだ!」
トキ「よかったー喜んでもらえて。そうそうこのメイド服、実は以前深夜テンションで思わず買ったものなんですよ~。でも全然着ていなくて。材質はいいのになんか着ないでいるのはもったいないなーと思って今回これを着てチョコを作ったってわけなんですよ」
トレ「そうだね。おー!チョコレートの苦さと中に入っているミカンがよく合うね!お酒が進みそうだ!」
トキ「よかったー喜んでもらえて。そうそうこのメイド服、実は以前深夜テンションで思わず買ったものなんですよ~。でも全然着ていなくて。材質はいいのになんか着ないでいるのはもったいないなーと思って今回これを着てチョコを作ったってわけなんですよ」
その後も色々談笑しながら一緒にチョコレートを食べた。
トレ「とても美味しかった!いっぱい作ってくれたみたいだからあとで夕食後にお酒と合わせて食べてみるね」
トキ「是非是非。そうだ、一番大事なことを言うのを忘れていました」
トレ「うん?」
トキ「是非是非。そうだ、一番大事なことを言うのを忘れていました」
トレ「うん?」
私は自分の向きを変えてトレーナーに伝えた。
トキ「トレーナーさん、いつもありがとうございます。トレーナーさんがいるからこそ、ここまで成長できたし毎日を楽しく過ごせていると思います。これからまだまだ迷惑とか心配させるかもしれないけど、色々頑張るので今後ともよろしくお願いいたします。」
トレ「こちらこそ、ありがとう。コエテが頑張ってくれているから私自身も成長できていると思うよ。私も頑張るからこれからもよろしくね! コエテ、またこのチョコレート作ってくれる?今日みたいにメイド服着て」
トキ「もちろん作りますよ!何回も何十回も!他に入れて欲しい柑橘だったり作ってほしい味があったら言ってくださいね!」
トレ「こちらこそ、ありがとう。コエテが頑張ってくれているから私自身も成長できていると思うよ。私も頑張るからこれからもよろしくね! コエテ、またこのチョコレート作ってくれる?今日みたいにメイド服着て」
トキ「もちろん作りますよ!何回も何十回も!他に入れて欲しい柑橘だったり作ってほしい味があったら言ってくださいね!」
互い感謝の気持ちを伝えあった私たちはこのチョコレートのミカンのように晴れやかな気持ちになった。