「一度だけ何をしても許される権利……ですか?」
「ああ。これが、俺がリングに贈るクリスマスプレゼントだ」
一度だけ何をしても許される権利。もちろん、なんでもかんでも許されるという訳では無く、良識の範囲内で犯罪に当たらない行為のみが該当する。
「君が望むことならなんでもする。まあ、俺が出来ることで、可能な範囲でな」
「そうですか……わかりました。トレーナーさん、その権利の使い方を少し考えさせて下さい」
「ああ。じっくり考えて決めてくれ。なんせ一度きりだからな」
トレーナーにそう言われて、フラワリングタイムは思案のために部室を後にする。
一度だけ何をしても許される権利。普通であれば、なにか悪い事を行うのにちょうど良い権利だ。普段できないあんなことやこんなことを行っても許されるというのが安牌だ。
「何をしても許される……」
だがそれは逆に、フラワリングタイムには難しい問題になっていた。なんせ嘉言善行の優等生ウマ娘。なにか悪いことをするというのは思い付かないでいた。
「うーん……あっ、カラレスさん」
「おや、フラりんさん」
ぱったり出会ったのは、同じくチームカオスに所属しているカラレスミラージュ。彼女もフラワリングタイムと同じ優等生であるが、裏に何かを抱えているウマ娘だ。
「すみません、少し相談に乗ってもらっても良いですか?」
「相談ですか?私でよければ喜んで」
「ありがとうございます!」
こうして二人は、図書館の1スペースを借りて相談会を行う事になった。フラワリングタイムはカラレスミラージュに、一度だけどんな事をしても許される事を話した。
「ただ、どんな事をすれば良いのか分からなくて……」
「ふむ、なるほど……つまり、フラりんさん自身には「何が何でも叶えたい願い」が現状では存在しない、ってことですよね?」
「そうなりますね…私としては現状でもだいぶ満足していると言いますか…」
それもそのはず、一度挫折を経てから学園に戻ってきた彼女は、現状レースを走れているというだけでも満足な生活を送れているのだ。そんな訳で、願いが決まらずにいた。
「じゃあ例えば肉体の頑強化とか、あるいは脚の速さの向上とか願ってみます?」
「なるほど…レースに関して願ってみるのも良いかもしれませんね」
でもそれって……と、フラワリングタイムは続ける。
「それって願って叶えて貰うことじゃなくて、私が頑張るべき事だと思います」
なるほど、と相槌を打つカラレスミラージュ。彼女は一息ついてからこう放った。
「そうなると、やっぱりフラりんが好きなトレーナーさん絡みで考えますか」
「す、すすす好きな!?」
顔を赤くして思わず立ち上がるフラワリングタイム。そんな彼女を落ち着かせるように、カラレスミラージュは優しく笑いかけた。
「ふふふ。その反応も初心で良いですね。トレーナーさんが願いを聞いてくれる以上、彼に関しての願いならスムーズに叶えられると思いますよ」
「それはそうですね。トレーナーさんに関する願い事ですか……」
「例えば、トレーナーさんとクリスマスデートを誘ってみるとか」
「ででで……デートですか!?それはあまりにも直球と言いますか……」
「お願いなんだから良いと思いますよー。まあ、それが恥ずかしいなら別のアプローチもありますが」
「それでお願いします……」
では、とカラレスミラージュは一息入れる。
「トレーナーさんって、クリスマスも多忙ですよね。ですから、クリスマス間近だけど休めてないトレーナーさんのために、フラりんさんがトレーナーさんの仕事を肩代わりする…というのはどうでしょう」
「それは名案ですね!私がトレーナーさんをお手伝いして、トレーナーさんに楽をして貰うってことですね」
「そういうことです!まあ、お願いにしては献身的すぎて勿体ないと思われるかもしれませんが……」
「それでも大丈夫です!いつもお世話になってますし、たまには楽をして欲しいですからね」
「ふふふ、そうですか。……お手伝いをして、楽になったトレーナーさんは独り占めにできますね」
「へ?……そうですね……ですが……私はそんな……」
もじもじとまごつくフラワリングタイムに、カラレスミラージュはたたみかける。
「大切な人、なんでしょう。お願いついでに、一緒に過ごすのも良いと思いますよ」
「は、はい……!」
お願いついでに、二人の仲が進展したら面白いなあと考えるカラレスミラージュ。というよりは、彼女が望むべき形に持ち込んでいると言っても過言では無いだろう。
「ご助力ありがとうございます、カラレスさん!」
「いえいえ。頑張って下さいね」
「はいっ!」
こうして、フラワリングタイムの願いは、トレーナーの仕事を手伝うということになった。そして願わくば、自由になったクリスマスに、デートにお誘いするという事になった。デートに誘うなんて恥ずかしくて出来るかは分からないが、せっかくの機会なので勇気を振り絞ろうと頑張るフラワリングタイムなのであった。
「トレーナーさん。約束通り、今日から私がお手伝いしますね」
「ああ……仕事を手伝ってくれるのは嬉しいけど……本当にそれで良いのか?」
「大丈夫です。私がやりたくてやる事なので、トレーナーさんは気にしないでくださいね」
「わかった。それじゃあ、遠慮なく君の手を借りることにするよ。よろしくな」
「はいっ!」
それから、フラワリングタイムは献身的にトレーナーの業務の手伝いを行った。彼女の手際の良さはトレーナーも驚く程であり、驚異的なスピードで仕事が片付いて行った。その結果、今年中に片付けておきたい仕事は全て完遂し、スッキリとした調子で来年を迎えられる事になった。
「リング、本当にありがとう。お陰で今年はのんびり出来そうだ」
「いえいえ!役に立てて良かったです!……それで、ですね……トレーナーさん……」
「ん?どうしたんだ?」
「あの……クリスマスなんですけど……一緒に過ごせたら良いな〜……なんて……」
「リング……ああ。もちろん良いよ。君が作ってくれた休日だからな。君のために使わせてもらうよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
こうして、フラワリングタイムはクリスマスデートを取り付ける事に成功した。そのことをカラレスミラージュにも報告すると、それはそれは嬉しそうな顔でニマニマ笑っていたという。
クリスマスデート当日。二人は学園の門の前で待ち合わせをして、それから街にデートに繰り出す事になっていた。時間通りトレーナーがやってくると、先に待っていたフラワリングタイムが嬉しそうに声をかける。
「トレーナーさん!」
「おす。待たせちゃって悪いな。それじゃあ行こうか」
「はいっ!」
二人で並んで歩く。クリスマスということもあり、街は多くの人で賑わっていた。トレーナーは彼女とはぐれないように気をつけながら、口を開いた。
「君とこうして街を歩くのも久しぶりだな」
「そうですね。お互いそこそこに忙しかったですから」
「だなー。そういう意味では、君の願いに助けられた感じがするよ」
「えへへ……二人でお仕事片付けましたもんね!今日は思いっきり羽を伸ばしますよー!」
「ああ。そうしてくれ。俺も楽にするぞー!」
二人はデートらしくショッピングを済ませ、買い物袋を抱えたままレストランに入る事にした。クリスマスなので混雑していたが、トレーナーが事前に予約していたため、すぐに入ることが出来た。
「トレーナーさん、こんなオシャレなお店知ってたんですね」
「君と出かける事になってから調べたんだ。ここはデザートが美味しいらしいぞ」
「そうなんですね!それは楽しみです!」
運ばれてくる料理はどれも一流で、二人は舌鼓を何度も打ち鳴らした。意外と食いしん坊なフラワリングタイムは、早いペースで料理を平らげて行った。それを見て、トレーナーも微笑ましそうに笑った。
「こちらデセールになります」
最後に運ばれてきたデザートは、こじんまりとしたスフレパンケーキ。デザートを楽しみにしていた彼女は嬉しそうにそれを一口頬張る。
「美味しい……!」
トレーナーも一口。すると、ふんわりとした優しいくちどけのスフレケーキが、舌の上でとろけていく。なんとも言えない甘い味が、先程までの料理で温まった舌を優しく包み込んでいる。
「ほんとだ。美味いなこれ」
「ですよね!うーん、幸せ〜」
「俺も幸せだよ。リング」
「えへへ……それは良かったです!」
二人は料理を存分に楽しんでから、再び夜の街に繰り出す事になった。とはいえ、門限もあるので寄り道したりはせず、まっすぐ学園に戻る事にしたのだった。
「今日はありがとうございました!」
「こちらこそ、楽しいクリスマスをありがとう」
「いえいえ!楽しかったのならなによりです!」
フラワリングタイムは、嬉しさをそのままに寮へと戻ろうとした。それから少し思いとどまって、トレーナーの元へと戻ってきた。
「本当に……ありがとうございました。これからも……よろしくお願いしますね!」
「ああ。これからもよろしく」
トレーナーに見送られて、今度こそ寮へ向かうフラワリングタイム。彼女のクリスマスの思い出は、今後も彼女を力強く支えてくれるだろう。
こうして、どんな事でも一度だけ許して貰える権利の話はおしまい。最高のクリスマスプレゼントを貰ったフラワリングタイムの寝顔は、とても幸せそうであったとか。
「ああ。これが、俺がリングに贈るクリスマスプレゼントだ」
一度だけ何をしても許される権利。もちろん、なんでもかんでも許されるという訳では無く、良識の範囲内で犯罪に当たらない行為のみが該当する。
「君が望むことならなんでもする。まあ、俺が出来ることで、可能な範囲でな」
「そうですか……わかりました。トレーナーさん、その権利の使い方を少し考えさせて下さい」
「ああ。じっくり考えて決めてくれ。なんせ一度きりだからな」
トレーナーにそう言われて、フラワリングタイムは思案のために部室を後にする。
一度だけ何をしても許される権利。普通であれば、なにか悪い事を行うのにちょうど良い権利だ。普段できないあんなことやこんなことを行っても許されるというのが安牌だ。
「何をしても許される……」
だがそれは逆に、フラワリングタイムには難しい問題になっていた。なんせ嘉言善行の優等生ウマ娘。なにか悪いことをするというのは思い付かないでいた。
「うーん……あっ、カラレスさん」
「おや、フラりんさん」
ぱったり出会ったのは、同じくチームカオスに所属しているカラレスミラージュ。彼女もフラワリングタイムと同じ優等生であるが、裏に何かを抱えているウマ娘だ。
「すみません、少し相談に乗ってもらっても良いですか?」
「相談ですか?私でよければ喜んで」
「ありがとうございます!」
こうして二人は、図書館の1スペースを借りて相談会を行う事になった。フラワリングタイムはカラレスミラージュに、一度だけどんな事をしても許される事を話した。
「ただ、どんな事をすれば良いのか分からなくて……」
「ふむ、なるほど……つまり、フラりんさん自身には「何が何でも叶えたい願い」が現状では存在しない、ってことですよね?」
「そうなりますね…私としては現状でもだいぶ満足していると言いますか…」
それもそのはず、一度挫折を経てから学園に戻ってきた彼女は、現状レースを走れているというだけでも満足な生活を送れているのだ。そんな訳で、願いが決まらずにいた。
「じゃあ例えば肉体の頑強化とか、あるいは脚の速さの向上とか願ってみます?」
「なるほど…レースに関して願ってみるのも良いかもしれませんね」
でもそれって……と、フラワリングタイムは続ける。
「それって願って叶えて貰うことじゃなくて、私が頑張るべき事だと思います」
なるほど、と相槌を打つカラレスミラージュ。彼女は一息ついてからこう放った。
「そうなると、やっぱりフラりんが好きなトレーナーさん絡みで考えますか」
「す、すすす好きな!?」
顔を赤くして思わず立ち上がるフラワリングタイム。そんな彼女を落ち着かせるように、カラレスミラージュは優しく笑いかけた。
「ふふふ。その反応も初心で良いですね。トレーナーさんが願いを聞いてくれる以上、彼に関しての願いならスムーズに叶えられると思いますよ」
「それはそうですね。トレーナーさんに関する願い事ですか……」
「例えば、トレーナーさんとクリスマスデートを誘ってみるとか」
「ででで……デートですか!?それはあまりにも直球と言いますか……」
「お願いなんだから良いと思いますよー。まあ、それが恥ずかしいなら別のアプローチもありますが」
「それでお願いします……」
では、とカラレスミラージュは一息入れる。
「トレーナーさんって、クリスマスも多忙ですよね。ですから、クリスマス間近だけど休めてないトレーナーさんのために、フラりんさんがトレーナーさんの仕事を肩代わりする…というのはどうでしょう」
「それは名案ですね!私がトレーナーさんをお手伝いして、トレーナーさんに楽をして貰うってことですね」
「そういうことです!まあ、お願いにしては献身的すぎて勿体ないと思われるかもしれませんが……」
「それでも大丈夫です!いつもお世話になってますし、たまには楽をして欲しいですからね」
「ふふふ、そうですか。……お手伝いをして、楽になったトレーナーさんは独り占めにできますね」
「へ?……そうですね……ですが……私はそんな……」
もじもじとまごつくフラワリングタイムに、カラレスミラージュはたたみかける。
「大切な人、なんでしょう。お願いついでに、一緒に過ごすのも良いと思いますよ」
「は、はい……!」
お願いついでに、二人の仲が進展したら面白いなあと考えるカラレスミラージュ。というよりは、彼女が望むべき形に持ち込んでいると言っても過言では無いだろう。
「ご助力ありがとうございます、カラレスさん!」
「いえいえ。頑張って下さいね」
「はいっ!」
こうして、フラワリングタイムの願いは、トレーナーの仕事を手伝うということになった。そして願わくば、自由になったクリスマスに、デートにお誘いするという事になった。デートに誘うなんて恥ずかしくて出来るかは分からないが、せっかくの機会なので勇気を振り絞ろうと頑張るフラワリングタイムなのであった。
「トレーナーさん。約束通り、今日から私がお手伝いしますね」
「ああ……仕事を手伝ってくれるのは嬉しいけど……本当にそれで良いのか?」
「大丈夫です。私がやりたくてやる事なので、トレーナーさんは気にしないでくださいね」
「わかった。それじゃあ、遠慮なく君の手を借りることにするよ。よろしくな」
「はいっ!」
それから、フラワリングタイムは献身的にトレーナーの業務の手伝いを行った。彼女の手際の良さはトレーナーも驚く程であり、驚異的なスピードで仕事が片付いて行った。その結果、今年中に片付けておきたい仕事は全て完遂し、スッキリとした調子で来年を迎えられる事になった。
「リング、本当にありがとう。お陰で今年はのんびり出来そうだ」
「いえいえ!役に立てて良かったです!……それで、ですね……トレーナーさん……」
「ん?どうしたんだ?」
「あの……クリスマスなんですけど……一緒に過ごせたら良いな〜……なんて……」
「リング……ああ。もちろん良いよ。君が作ってくれた休日だからな。君のために使わせてもらうよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
こうして、フラワリングタイムはクリスマスデートを取り付ける事に成功した。そのことをカラレスミラージュにも報告すると、それはそれは嬉しそうな顔でニマニマ笑っていたという。
クリスマスデート当日。二人は学園の門の前で待ち合わせをして、それから街にデートに繰り出す事になっていた。時間通りトレーナーがやってくると、先に待っていたフラワリングタイムが嬉しそうに声をかける。
「トレーナーさん!」
「おす。待たせちゃって悪いな。それじゃあ行こうか」
「はいっ!」
二人で並んで歩く。クリスマスということもあり、街は多くの人で賑わっていた。トレーナーは彼女とはぐれないように気をつけながら、口を開いた。
「君とこうして街を歩くのも久しぶりだな」
「そうですね。お互いそこそこに忙しかったですから」
「だなー。そういう意味では、君の願いに助けられた感じがするよ」
「えへへ……二人でお仕事片付けましたもんね!今日は思いっきり羽を伸ばしますよー!」
「ああ。そうしてくれ。俺も楽にするぞー!」
二人はデートらしくショッピングを済ませ、買い物袋を抱えたままレストランに入る事にした。クリスマスなので混雑していたが、トレーナーが事前に予約していたため、すぐに入ることが出来た。
「トレーナーさん、こんなオシャレなお店知ってたんですね」
「君と出かける事になってから調べたんだ。ここはデザートが美味しいらしいぞ」
「そうなんですね!それは楽しみです!」
運ばれてくる料理はどれも一流で、二人は舌鼓を何度も打ち鳴らした。意外と食いしん坊なフラワリングタイムは、早いペースで料理を平らげて行った。それを見て、トレーナーも微笑ましそうに笑った。
「こちらデセールになります」
最後に運ばれてきたデザートは、こじんまりとしたスフレパンケーキ。デザートを楽しみにしていた彼女は嬉しそうにそれを一口頬張る。
「美味しい……!」
トレーナーも一口。すると、ふんわりとした優しいくちどけのスフレケーキが、舌の上でとろけていく。なんとも言えない甘い味が、先程までの料理で温まった舌を優しく包み込んでいる。
「ほんとだ。美味いなこれ」
「ですよね!うーん、幸せ〜」
「俺も幸せだよ。リング」
「えへへ……それは良かったです!」
二人は料理を存分に楽しんでから、再び夜の街に繰り出す事になった。とはいえ、門限もあるので寄り道したりはせず、まっすぐ学園に戻る事にしたのだった。
「今日はありがとうございました!」
「こちらこそ、楽しいクリスマスをありがとう」
「いえいえ!楽しかったのならなによりです!」
フラワリングタイムは、嬉しさをそのままに寮へと戻ろうとした。それから少し思いとどまって、トレーナーの元へと戻ってきた。
「本当に……ありがとうございました。これからも……よろしくお願いしますね!」
「ああ。これからもよろしく」
トレーナーに見送られて、今度こそ寮へ向かうフラワリングタイム。彼女のクリスマスの思い出は、今後も彼女を力強く支えてくれるだろう。
こうして、どんな事でも一度だけ許して貰える権利の話はおしまい。最高のクリスマスプレゼントを貰ったフラワリングタイムの寝顔は、とても幸せそうであったとか。