ある朝の事だった。
「おっはよー!エノラ!」
「ん、おはよう、カラレス。」
今日も私、エノラはカラレスと登校している。
「今日もいい日になるといいね!」
「そうだね……変わらない、いい日。」
最近の…フラワリングタイムさんとの死闘の果てに、やっと名前を覚える条件を把握出来た。
それは……
「狭窄するまで走らないと、覚えられないなんてね……」
孤独病の症状の一つである視野狭窄。それを引き起こせるまで走り抜くこと。それが条件らしい。
「今日も…並走頼もうかな…」
「いいね。ゴール板は私!」
朝日は、2人をさんざんと照らしていた。
「…………?」
暗い。最初の感想はこれだ。
「薄気味悪い………」
宛もなく暗闇を歩く。
少しすると、光が微かに見えた。
光に向かって走ると、見慣れた顔がいた。
「あなたは……」
見慣れた顔だ。確かに私はこの顔を知っている。
「……だ、れ…?」
ズキン
「っ…!」
「あなたは……だれ…なの……?」
頭痛が鳴り響く中の問は、決して応えられることはなかった。
「えにょらー、おひへよ〜…」
目が開かれる。
私はカラレスのほっぺをぐにぐにしていたようだ。
慌てて飛び退く。
「ごめん、痛くなかった?」
「全然大丈夫!むしろ優しかったかな。」
怪我がないみたいで取りあえず安心する。
しかし、私の中では先程見た夢が渦巻いていた。
「ねぇ、カラレス?」
「どしたの?」
「……いや、フラワーさんとはいつ会える?」
「フラワーさん…フラワリングタイムさんか、基本放課後はグラウンドにいるはずだよ。」
「ありがとう…」
フラワリングタイム。私がこの学園に来て2人目の記憶。
1度彼女に会わなくては、と謎の使命感が私を満たしていた。
「こんにちは、フラワーさん。」
「こんにちは、エノラさん。」
放課後、花壇で花の世話をしていたフラワーと会いら話をする事になった。
「今日も並走をしたいんだけど、空いている人はいない?」
「今日ですと……ラピッドホライゾンさんですかね?」
「ラピッド……」
「こんにちは、フラワーさん。」
「こんにちは、エノラさん。」
放課後、花壇で花の世話をしていたフラワーと会いら話をする事になった。
「今日も並走をしたいんだけど、空いている人はいない?」
「今日ですと……ラピッドホライゾンさんですかね?」
「ラピッド……」
「こんにちは、エノラさん!今日はよろしくね〜!」
「よろしく…」
明朗快活、それを地で行くようなウマ娘だった。
「それじゃ、コース行こうか!」
「はい。」
今回は事前に集中力を高めておく。視野狭窄に入りやすいように。
「それじゃあ、よーい」
ピン、と空間が張り詰める。
「ドン!!」
ピーーー!!
実験を含めたレースが、今始まった。
「よろしく…」
明朗快活、それを地で行くようなウマ娘だった。
「それじゃ、コース行こうか!」
「はい。」
今回は事前に集中力を高めておく。視野狭窄に入りやすいように。
「それじゃあ、よーい」
ピン、と空間が張り詰める。
「ドン!!」
ピーーー!!
実験を含めたレースが、今始まった。
ラピッドは先行、エノラは差しの位置につく。
「エノラちゃんはいつもの差し…このまま行ければ…!」
一方のエノラは、200メートル時点で既に、モザイクが発生していた。
「うぅうう…!」
ラピッドは2バ体程先にいる。先行にしては後ろすぎる位置だ。
「たあぁのしいいぃ!!」
「なっ、こんなペース配分で……っ!」
ラピッドはわざと滅茶苦茶な走りをしていた。それはエノラを惑わせるためだ。
残り1000メートル。
「うおおおおおオオアアアアア!!!」
エノラの鬼気迫る走りがラピッドに迫る。だが
「ヒュウ!怖いねぇ!そんなに怖いと、来るものも離れてく、ぞっ!!」
ラピッドが仕掛けた。彼女の走りはあっという間にエノラを置いてけぼりにした。
(こ、こんなに…実力差、が……ぐうっ…!)
突如として、エノラに頭痛が走る。
「がああ、アア!!」
「おや?大丈夫かな?」
「何が異常な事が起こっている!エノラちゃんを止めてぇ!!」 カラレスは、そう叫ぶしかなかった。 なぜなら彼女はエノラの中に見てしまったからだ。 (あれ程の『虚無』……私以外にも…) エノラの中に潜む、恐怖ともいえる『虚無』は、まるでカラレスの鏡写しのようだったからだ。 「オッケー!」 ラピッドは速度を落としてエノラと並び、左手を掴んだ。 「帰ってきて、エノラ。まだ早いよ。」 「ぐるるううっ……!」 エノラの獣じみた悲鳴を横目に、ラピッドは左手を思いっきり引っ張ってお姫様抱っこをした。
「ふんっ!」 「んな無茶な!?」 カラレスの叫びが間抜けに響いた。
そのままコースを1周し、無事カラレスの元にエノラが送り届けられた。
「エノラちゃん!大丈夫!?」
肩で息をしているエノラが、カラレスの肩を掴んだ。
「はあっ、はあっ、カラレス…!」
「ど、どうしたの?」
向けられてきたエノラの瞳は、底知れぬ恐怖に満ちていた。
「わたし、あなたのこと忘れたくたい!忘れたくたいないのにぃ!」
「な、なになに!?」
突然の独白に混乱していたカラレスは、次の一言で現実に引き戻される。
「いやだよ!わたし空っぽになりたくないの!!」
「からっ、ぽ。」
激しく動揺しているエノラは、まるで幼児のようにカラレスに縋り着いた。
「わたしと仲がいいひとみんな忘れるの嫌なの!あなたみたいな空っぽはいや!」
「………」
「ハリボテなんてまっぴらなの!こんな病気なりたくなかった!」
「……それでも」
「あなたもそうでしょ!?空っぽでハリボテな自分なんて「それでも!!」っ!?」
カラレスの叫びによって、エノラの独白が中断された。
「ハリボテだってなんだったって、それが私、カラレスミラージュだって!」
「…で、でも…」
「それが私だって受け入れて、前に進む!これがどれだけ大変か分かってる!?」
「………」
「貴方の『虚無』なんて、私が埋めてあげる。どんなハリボテでも、体積はあるでしょ?」
カラレスの声は、エノラを落ち着かせる事に成功し、気絶したエノラは保健室に運ばれた。
「何が異常な事が起こっている!エノラちゃんを止めてぇ!!」 カラレスは、そう叫ぶしかなかった。 なぜなら彼女はエノラの中に見てしまったからだ。 (あれ程の『虚無』……私以外にも…) エノラの中に潜む、恐怖ともいえる『虚無』は、まるでカラレスの鏡写しのようだったからだ。 「オッケー!」 ラピッドは速度を落としてエノラと並び、左手を掴んだ。 「帰ってきて、エノラ。まだ早いよ。」 「ぐるるううっ……!」 エノラの獣じみた悲鳴を横目に、ラピッドは左手を思いっきり引っ張ってお姫様抱っこをした。
「ふんっ!」 「んな無茶な!?」 カラレスの叫びが間抜けに響いた。
そのままコースを1周し、無事カラレスの元にエノラが送り届けられた。
「エノラちゃん!大丈夫!?」
肩で息をしているエノラが、カラレスの肩を掴んだ。
「はあっ、はあっ、カラレス…!」
「ど、どうしたの?」
向けられてきたエノラの瞳は、底知れぬ恐怖に満ちていた。
「わたし、あなたのこと忘れたくたい!忘れたくたいないのにぃ!」
「な、なになに!?」
突然の独白に混乱していたカラレスは、次の一言で現実に引き戻される。
「いやだよ!わたし空っぽになりたくないの!!」
「からっ、ぽ。」
激しく動揺しているエノラは、まるで幼児のようにカラレスに縋り着いた。
「わたしと仲がいいひとみんな忘れるの嫌なの!あなたみたいな空っぽはいや!」
「………」
「ハリボテなんてまっぴらなの!こんな病気なりたくなかった!」
「……それでも」
「あなたもそうでしょ!?空っぽでハリボテな自分なんて「それでも!!」っ!?」
カラレスの叫びによって、エノラの独白が中断された。
「ハリボテだってなんだったって、それが私、カラレスミラージュだって!」
「…で、でも…」
「それが私だって受け入れて、前に進む!これがどれだけ大変か分かってる!?」
「………」
「貴方の『虚無』なんて、私が埋めてあげる。どんなハリボテでも、体積はあるでしょ?」
カラレスの声は、エノラを落ち着かせる事に成功し、気絶したエノラは保健室に運ばれた。
「また、暗い…」
いつか見たような暗闇の中に、私はいた。
「確か…こっちだっけ?」
曖昧な記憶を頼りに歩き出す。
「お、光。」
どこかで見たような光だ。
そして記憶の通り、人が立っていた。
「ねぇ、あなたは誰なの?」
そう問いかけ、頬をなぞる。
その時、頭の中に声が響いた。
『それでも!!』
「こ、れは……」
『ハリボテだってなんだったって、それが私、カラレスミラージュだって!』
「カラレス…カラレス、ミラージュ…!」
いきなり、目を光の嵐が襲い、思わず目を瞑る。
「空っぽなんて、酷いこと言ったね。あなたはあなた、私は私。」
喉を撫でている人型が、ふと微笑んだ気がした。
いつか見たような暗闇の中に、私はいた。
「確か…こっちだっけ?」
曖昧な記憶を頼りに歩き出す。
「お、光。」
どこかで見たような光だ。
そして記憶の通り、人が立っていた。
「ねぇ、あなたは誰なの?」
そう問いかけ、頬をなぞる。
その時、頭の中に声が響いた。
『それでも!!』
「こ、れは……」
『ハリボテだってなんだったって、それが私、カラレスミラージュだって!』
「カラレス…カラレス、ミラージュ…!」
いきなり、目を光の嵐が襲い、思わず目を瞑る。
「空っぽなんて、酷いこと言ったね。あなたはあなた、私は私。」
喉を撫でている人型が、ふと微笑んだ気がした。
「えのはちゃーん、もうわはとでしょ〜」
「…………」
目が覚めてからも、無言で頬をもみくちゃにしていた。
「ごめん、あんな酷いこと言っちゃって。」
「大丈夫。それに、新しい1面も見れたしね。」
レースはというと当然中断。カラレスとフラワーがラピッドに謝り倒したので腰が上がらないそうだ。物理的に。
「エノラちゃんだって不安なのは分かってる。だから私たちがいるのよ。」
「うん。みんなで進んでいくしかないもんね。『それでも』って。」
「よし、元気になったらトレーニングだ!」
「そうね。」
「…………」
目が覚めてからも、無言で頬をもみくちゃにしていた。
「ごめん、あんな酷いこと言っちゃって。」
「大丈夫。それに、新しい1面も見れたしね。」
レースはというと当然中断。カラレスとフラワーがラピッドに謝り倒したので腰が上がらないそうだ。物理的に。
「エノラちゃんだって不安なのは分かってる。だから私たちがいるのよ。」
「うん。みんなで進んでいくしかないもんね。『それでも』って。」
「よし、元気になったらトレーニングだ!」
「そうね。」
嗚呼、私の救世主。
いつか、キミになろう
いつか、キミになろう