「え? 嫌ですけど」
「ばっさりっ!?」
「ばっさりっ!?」
仕方ないじゃん。話を聞いてとりあえず出た答えがこうだったんだから。
曰く、最近増えたチームメイト、ツキノミフネちゃんのトレーニングを手伝って欲しいのだ……というのが彼女のトレーナーの弁だった。
さて、僕は自分の性格を大概捻くれてると思っているが、しかしそれはそれとしてチームメイトのトレーニングを手伝う程度の話であれば受け入れなくもない程度には良識がある。
そのお猪口から溢れんばかりの良識をもって――件のトレーニングはおそらく坂路の日にやるだろうから楽ができるぜいえーいなんて思いつつ――ええまあ予定は空けられますけど練習の内容は? と尋ねたのだけれど。
そのお猪口から溢れんばかりの良識をもって――件のトレーニングはおそらく坂路の日にやるだろうから楽ができるぜいえーいなんて思いつつ――ええまあ予定は空けられますけど練習の内容は? と尋ねたのだけれど。
「だって僕になんのメリットがあるんですか。その『心を折るために5バ身差で勝て』ってのは」
それでこれである。いやほんとにね。併走トレーニングだっていうならまだしも、僕にはあいにく弱いものを虐めて楽しむサディストのケは無いのだ。言っちゃあなんだけど、つまらない上に僕の実にもならないなんてやる意味を感じられない。
「め、メリット……は、確実にある、とは言えないけど……」
「ですか。それじゃあ僕は坂路でアイスを転がす系のトレーニングがあるので――」
「それでも! それでもきっと、あの子はあなたを――」
「ですか。それじゃあ僕は坂路でアイスを転がす系のトレーニングがあるので――」
「それでも! それでもきっと、あの子はあなたを――」
楽しませてくれる、と。ミフネちゃんのトレーナーは言って。
これ以上粘っても角が立つだけだろうし、まあ差を保って逃げる練習……の、練習の練習くらいにはなるかなと自分を納得させて、僕は了承を返したのだった。
これ以上粘っても角が立つだけだろうし、まあ差を保って逃げる練習……の、練習の練習くらいにはなるかなと自分を納得させて、僕は了承を返したのだった。
というわけで確かに了承したんだけどさ。この雰囲気はやだなあ。
「ツキノミフネ……よろしく……」
「僕はバラカドボナール……はぁ、そんなに睨まないでくださいよ。ぼちぼち気楽に行きましょう。ね?」
「僕はバラカドボナール……はぁ、そんなに睨まないでくださいよ。ぼちぼち気楽に行きましょう。ね?」
なんかめっちゃこっち殺すみたいな目で見てくるんだけど。僕何かした? いいやしてない(反語表現)。
まあどうせエスキーさんあたりがいじめたんだろう(偏見)。僕はあそこまでではないので、もう少しゆるっと挑んできてほしいものである。
はあ、と内心でため息をつく。なんか萎えたしサクッと勝ってトレーナーに愚痴って練習休みにしてチーズ買って帰ろう。
そんなことを考えながらスタートに立ち、深く息を吸って同じだけ吐き出す。薄く視界が白けて身体に意識が行き渡り、レース以外の思考が排された。
まあどうせエスキーさんあたりがいじめたんだろう(偏見)。僕はあそこまでではないので、もう少しゆるっと挑んできてほしいものである。
はあ、と内心でため息をつく。なんか萎えたしサクッと勝ってトレーナーに愚痴って練習休みにしてチーズ買って帰ろう。
そんなことを考えながらスタートに立ち、深く息を吸って同じだけ吐き出す。薄く視界が白けて身体に意識が行き渡り、レース以外の思考が排された。
合図とともに、高まりきった集中からいつもの最短スタートで走りだす。こればかりは加減する気も――
──〝⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎〟── Lv0
――――はて、僕の前にあの子がいる。ファル子ちゃんにすらテンでは負けていない僕の前に。本格化すら迎えていないあの子が。
「あ?」
殺s
瞬きをして意識を切り替えた。あの子の速度、呼吸のペースを観察。うん、あの集中力は驚くほど優れている。
が、ダートにはいささか不慣れのようだし、そもそも根本的に僕のほうが速いしレース慣れしている。あっという間にハナを取り返して、あとはペースランだ。結局、途中で開いた分の差を一定に保ったまま僕が先着した。
瞬きをして意識を切り替えた。あの子の速度、呼吸のペースを観察。うん、あの集中力は驚くほど優れている。
が、ダートにはいささか不慣れのようだし、そもそも根本的に僕のほうが速いしレース慣れしている。あっという間にハナを取り返して、あとはペースランだ。結局、途中で開いた分の差を一定に保ったまま僕が先着した。
正直に言って、途中からは消化試合だった。疲労も殆どないから坂路をサボる口実にもならないだろう。チッ。
まあ、後ろを見ないで距離を維持する練習くらいにはなったかな……それに。
まあ、後ろを見ないで距離を維持する練習くらいにはなったかな……それに。
「最初の方はなかなか悪くなかったと思います」
少なくとも、僕にとっては。少しは面白かったし。ま、この子にとってはどうだか知らないけど。
「いい練習になりました。それじゃ」
願わくば今回で折れないでほしいな。僕が悪者みたいになるし。折れないほうが面白いし。
そう考えながら、手をひらひらと振ってその場を去るのだった。
そう考えながら、手をひらひらと振ってその場を去るのだった。
「お疲れ、でもないな。一応5分休んだら坂路3本だ」
「いつも通りで安心しました。まあ、今の僕はちょっとやる気があるので良いですよ」
「体調が悪いみたいだな。今日は休むか」
「おいこら何だとこの。……それはそれとチーズ王国でブフロンヌ・ダルジェンタルを入荷したそうで」
「はいはい分かった分かったトレーニング終わったら買いに行こうなー」
「いつも通りで安心しました。まあ、今の僕はちょっとやる気があるので良いですよ」
「体調が悪いみたいだな。今日は休むか」
「おいこら何だとこの。……それはそれとチーズ王国でブフロンヌ・ダルジェンタルを入荷したそうで」
「はいはい分かった分かったトレーニング終わったら買いに行こうなー」