潮騒の音が砂浜に響く。両腕を広げれば、全身を吹き抜ける涼しい風。澄み切った夜空には、お月様が輝いて、周りを優しく照らしている。
昼間の海は、時に過酷な姿を見せる。足の裏は焼けちゃいそうになるし、日射しに照らされているとクラクラしちゃう。そんな昼間でも、他の娘たちは声を上げて合同トレーニングに勤しんでいたのを覚えている。
でも、私にとって馴染み深いのは、夜のこの時間。ただ自然が奏でる音に癒されて、時々〝海〟の声を聞く。1人っきり、私だけの空間。私だけの世界。
昼間の海は、時に過酷な姿を見せる。足の裏は焼けちゃいそうになるし、日射しに照らされているとクラクラしちゃう。そんな昼間でも、他の娘たちは声を上げて合同トレーニングに勤しんでいたのを覚えている。
でも、私にとって馴染み深いのは、夜のこの時間。ただ自然が奏でる音に癒されて、時々〝海〟の声を聞く。1人っきり、私だけの空間。私だけの世界。
砂を踏む音が聞こえた。私が立てた音じゃない。振り返ると、困ったような笑顔を浮かべた黒髪の少女。同じチーム、同じ寮の後輩の娘。年下だけど私より背の高い彼女は、少し縮こまった様子で私を見ている。
話を聞いてみたら、1人の時間を邪魔してしまったんじゃないかと。私はふるふると首を振る。〝海の声〟にレッスンしてもらっているわけでもないし。そのことは話さず、大丈夫ということだけ伝えた。途端に綻ぶ顔。私の顔も少し緩む。
話を聞いてみたら、1人の時間を邪魔してしまったんじゃないかと。私はふるふると首を振る。〝海の声〟にレッスンしてもらっているわけでもないし。そのことは話さず、大丈夫ということだけ伝えた。途端に綻ぶ顔。私の顔も少し緩む。
潮風に吹かれながら、色々な話をした。私のおばあちゃんの話、彼女の両親の話。お互い家族が大好きだねって微笑みあった。
前に出るのが好きな私と、後ろに控えるのが好きな彼女。ダート競走の適性が無いと嘆く彼女に、砂浜で走れば慣れるかもなんて冗談を。
髪の色素が薄い私に、黒い髪は熱をよく吸うなんて教えてくれて。昔は伸ばしていたことを伝えてみると、彼女も同じだったようで共感された。心機一転でバッサリいったところまで同じだったと。
前に出るのが好きな私と、後ろに控えるのが好きな彼女。ダート競走の適性が無いと嘆く彼女に、砂浜で走れば慣れるかもなんて冗談を。
髪の色素が薄い私に、黒い髪は熱をよく吸うなんて教えてくれて。昔は伸ばしていたことを伝えてみると、彼女も同じだったようで共感された。心機一転でバッサリいったところまで同じだったと。
ぱたぱたと尻尾を振り、黒い毛に砂を被りながら楽しそうに話を続ける、後輩の娘。少し肌寒くなってきた海風も気にせず、明るい笑顔を浮かべている。
普段はすれ違う程度の仲だったけど、珍しく意気投合して色々なことを知った。思ったより共通点が多くて、些細なことで「分かる」なんて。
だから、ちょっとだけ罪悪感。こんな「いい子」な彼女と、我儘で面倒くさい私が似た者同士なんて思っちゃうところが。
普段はすれ違う程度の仲だったけど、珍しく意気投合して色々なことを知った。思ったより共通点が多くて、些細なことで「分かる」なんて。
だから、ちょっとだけ罪悪感。こんな「いい子」な彼女と、我儘で面倒くさい私が似た者同士なんて思っちゃうところが。
ふと頭上を見上げれば、薄い雲が掛かり始めていた。つられて空を見上げる彼女。琥珀色に似た瞳が揺れ、輝く月を視界に映している。
ふと、気になったことを聞いてみた。どうしてそんなに明るく振る舞えるのかって。彼女が同室の娘相手に向ける感情は知っている。逆にそれを除けば、甲斐甲斐しく友人や先輩の世話を焼く少女であることも。オーバーな振る舞いで空気を和ませる所も度々見てきたし。
だから、聞いてみた。予想通り、そんなことないですなんて謙遜の声。そんなことはないよと、反論の言葉。困ったような顔の彼女は、けれど意を決したように、サンダルを脱いで海へと歩いていく。私もそれに続けば、よく冷えた海水と砂の感触が心地良い。
1人1人、彼女は名前を読み上げ始める。私達を受け入れてくれた少女、決して届かないと思った壁を越えた少女、絶対的な実力で他者を捩じ伏せてきた少女。
その後も、彼女の声は止まることなく。
雨に愛された少女、星の名を冠する少女。そして……海に惹かれた少女。
そこで言葉を切り、一歩進んで振り返る彼女。すっかり暗くなったこの場所で、その表情を伺うことは出来ず。
1人1人、彼女は名前を読み上げ始める。私達を受け入れてくれた少女、決して届かないと思った壁を越えた少女、絶対的な実力で他者を捩じ伏せてきた少女。
その後も、彼女の声は止まることなく。
雨に愛された少女、星の名を冠する少女。そして……海に惹かれた少女。
そこで言葉を切り、一歩進んで振り返る彼女。すっかり暗くなったこの場所で、その表情を伺うことは出来ず。
私はミフネ先輩が思うほど、立派なウマ娘じゃないと思いますから。
同室の娘を心配させるのも、ということで海辺から去った少女。また合宿中や部室でよろしくお願いします、なんて言葉を添えて。
いよいよ強くなってきた潮風に、私は海から出る。
ここへ来た時には思いもしなかった体験に、少しだけ鼓動が早くなるのを感じて。
砂浜まで歩いて、もう一度振り返り、空を見上げる。
いよいよ強くなってきた潮風に、私は海から出る。
ここへ来た時には思いもしなかった体験に、少しだけ鼓動が早くなるのを感じて。
砂浜まで歩いて、もう一度振り返り、空を見上げる。
……〝海〟は私に、何も語ってくれず。
今も月は、雲に隠れたまま。
今も月は、雲に隠れたまま。