人間面をした吸血鬼など、虫酸が走ります



『何故と仰いましたか? 何故と?』

『見つけた獲物(・・)を狩る理由を、狩人に問うと?』



共通ルート『BLOODY FIGHT』より、縛血者(ブラインド)を喰らう怪物との戦闘に突如乱入してきた、
ドス声通り魔ヒロイン(※公式です)・アリヤが、血族のはぐれ者・トシローとの初邂逅時の発言。
後々物語では判明する事ではあるが、彼女が怪物に対し憎悪や憤怒で武装した者である事、
真の白木の杭としての境地にまだ彼女が至っていない事、
そして少女の憎悪の形過去のトシローの抱いたそれに重なるものであるという事がここでは断片的に示されていると言える。



――縛血者の剛力に振るわれた刃と打ち合った結果、その腕を脱臼させながらも……
少女は小太刀と機械仕掛けの杭射ち(パイルバンカー)を巧みに操り、瞬時に邪魔者である異形を滅ぼしていた

女学生服を着た少女の小柄さ、華奢さに驚きを禁じ得ない。
だが、それこそはあくまで擬態に過ぎぬと、トシローは十分に理解していた。
己を狙う理由を問うた彼に、俊敏な身のこなしと敵の油断を誘う擬装の術を織り交ぜて、
確実に命を狩りに来るのは、嗤いを浮かべた日本の血を引く狩人

「なぜ躱したのです?」

「落胆する必要はない。策としては上々だった……予知できたのは、単なる年の功に過ぎん」

垣間見えた、トシローの在り方を気に入らないと。苛立ちを隠さず少女は語る。

「……躱すなどと。まるで人間のように。不死身の吸血鬼ならば、斬られて傷を受けようが委細構わず潰しに来たらどうですか?
防御などという、脆弱な人間がましい振る舞いなどせずに……」

「先程までの、己の能力をわきまえたように賢しげな闘いぶりも……そうでした」

「それではまるで狩人(わたしたち)ではありませんか。人間(ひと)の振りをして、何を企むのですか───吸血鬼

“もっと血と暴虐に酔い痴れ、本能のままに力を振るえ”――“吸血鬼らしく”
その主張にトシローは、静かな怒りを籠めて反論する。

「ならば問おう。人間である事とは何を示す? 脈動する心臓、温もり持つ血肉、子を成す機能……たったそれだけのものなのか?」

「そのような差異(もの)だけが、人間である事を保証する根拠だと言うのか?」



「……あなたは、己が人間だとでも言いたいのですか?」

「そうだ。俺たちは、縛血者(ブラインド)という名の人間だ。それを忘れた愚か者から、先に命を散らしていく」


嘲笑を隠さない少女に、トシローは告げる。
俺達を怪物と言うのなら、俺には白木の杭(おまえ)もまた怪物(・・)に見えると。

「人間の身でありながら、俺たちと同じ剛力と敏捷を持つ……怪物(・・)よ」

二人の間の殺意がより密度を増してゆく。
そして、少女は自らが如何なる因縁のもとにこの地に現れた存在なのか、その答えを明かす。

「我が師父たる《先代》が殺し損なった生涯唯一の獲物、すなわちあなたを狩り滅ぼしにきた者───鷹匠亜莉矢(アリヤ・タカジョウ)

「避けられん……のだな?」


事実確認の問いに、アリヤは三日月の嗤いを再び浮かべて……


「是非もなく。師父の因縁を抜きにしても、
私はあなたの心臓を抉りたくて仕方がなくなってきました」

「人間面をした吸血鬼など、虫酸が走ります」


よって、ここに互いが何者なのか、何を欲するのか。
それらが十全に明らかとなった今、両者に言葉の入る余地はなくなった。
三度目にして、命を滅ぼす最後の瞬間を迎えようとして───衝撃と轟音が街路に響き渡るのだった




  • ヤンデレラブコメ劇「強烈すぎるよ鷹匠さん」第1話である -- 名無しさん (2020-03-22 21:43:49)
  • まるで狩人だって言うけど、実際三本指という種族面でも討伐数でも類を見ない狩人だったのよね -- 名無しさん (2024-10-31 19:39:47)
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最終更新:2024年10月31日 19:39