『何か秘策があるんだな?』
『まあね……あとは僕の決心の問題といったところだが。
いよいよとなれば、最後のカードを切る覚悟は持っているよ』
――互いの持てる力を出し尽くし、EA内の諍いを食い止めた
零示と
忍。
そんな二人を始末するために現れた
佐伯に対し……遂に零示は最大の手札を切る。
このゲームを悪意に塗れさせたtype-cや大国の策謀……それさえぶっ飛ばせるとっておきを。
「これがオレたちのッ───勝ちをもぎ取る切り札だァッッ!」
――解き放つ。オレの人生最悪の傍迷惑野郎に託された、この現実を笑い飛ばす最高の冗談を。
「リアライズ!」
佐伯が殺傷兵器と化した火砲を放つも……その死の閃光は零示に届く前に霧散した。
だが、忍と佐伯の視線は、彼が物質化したモノへと釘付けにされていた。
それは―――EAに存在するアームズのどれでもなく。
人間、だった。
「は───ははは、本当にやっちまったなァ……藤堂綾鷹ァ!!」
そう、仮想の壁をブチ抜いて現実に出現したのは、Igel社長……藤堂綾鷹の姿に他ならなかった。
その姿は生身の血肉でありながら、同時に電子の情報。
一人の人間でありながら、仮想世界を掌握する電王──今の奴は、そんな存在へと再誕を果たしている。
「しゃ……社長、だとぉ!? 馬鹿なッ……死んだはずだ!殺したはずだァッ!」
《万物は情報化できる。それが仮想情報を物質化するリアライズシステムに触れて私が至った結論でね》
そんな雑魚など目に入らないというように、藤堂は零示と忍へと語りかける。
その表情、その声音は生身であった頃と変わらない。
《では、それが生命ならばどうだろうか?私はそれさえも特別ではないと思っていた》
《生命とは四種類の塩基配列により結合された遺伝情報のパターン……つまりそれは数式と同じだ。ならば物質化も当然可能》
《となると……》
「ちょ───ちょっと待っていただけませんか」
滔々と語る社長の弁舌を、忍が遮る。目を白黒させていた。
そりゃあそうだろう。片棒を担いだオレだって、いざ目の当たりにすればかなり驚いちゃいるのだから。
「その、社長……あなたは一体……今、突然何もない所から出現したように見えたのですが。まるで────」
「そうさ。オレがたった今、このクソ社長をリアライズさせたんだからよ。仮想情報から物質へとな」
零示が受け取り、端末を介して彼の脳内に保存された大容量の圧縮プログラム。
それは社長の全存在……肉体、精神、記憶の全てを複製したデータを再現するものだった。
そして、送られたそのデータに添付されていた意思は、“このデータをEAの限定空間内でリアライズしてくれ”──というものだった。
そう、これはつまり───
「藤堂綾鷹は、仮想と現実の壁を突破した史上最初の人類になった──そういうこった」
二次元世界へ行きたがる、その手の妄想こじらせた奴の夢がこれで叶う……かどうかは、現状まだ不明なれど。
「少なくとも、このElectro Armsの中じゃあな」
電脳仮想世界の情報に直接その手で触れ、掌握できる。
EAからType-Cウィルスプログラムだけを切り離して、無効化するのも自由自在だ。
《どうだい?まるでゲームみたいな出鱈目だろう?
目には目を、リアライズの悪用には悪用を───ってね》
心の底から誇らしげに、電脳世界の住人と成った綾鷹はそう言ってのけるのだった。
- どうだい?まるでゲームみたいな出鱈目だろう→光の奴隷 -- 名無しさん (2020-06-28 10:54:39)
- ↑漫画みたいな出鱈目でいいんじゃないの(テキトー -- 名無しさん (2020-06-28 10:57:43)
- ゲームは基本的に設定されたレベル上限を超えて覚醒したりはしないから、光の奴隷のトンチキは「ゲームみたいな出鱈目」ではないわな。むしろ、ゲームのルールに則って勝ち筋を固めているはずが突然全部ひっくり返してくるルール外存在、て感じ。 -- 名無しさん (2020-06-28 13:20:39)
- RTA見てるとバグだのなんだの活かした出鱈目ばかりだぜ。 -- 名無しさん (2020-06-28 14:50:42)
- バグスター化した新檀黎斗みたいな状態なんだよなぁ -- 名無しさん (2020-06-29 00:26:19)
- ↑それより4年ぐらい早かったのが何気に凄い -- 名無しさん (2020-06-29 14:13:35)
- ↑3 公式が想定していない方法とか使ってるしバグも含めた何でもありだもんな。しかもバグ利用したとしても難易度高いのを1回もミスる事なく成功させてるRTA走者は間違いなく光をキメてるわ。しかも休憩なしの数時間プレイやそれを達成するために何度も練習する等の途方もない労力がいる。 -- 名無しさん (2020-07-01 01:42:07)
最終更新:2021年11月17日 16:13