軌道上の衛星から、機構の支配者オルフィレウスは地上の機人達へと一方的に情報を伝達する。
刻鋼式心装永久機関、
四十七基制限則、
《反逆者》、そして
刻鋼人機。
全ては、科学の未来を切り拓くためにオルフィレウスが造り出したものであり……
より速く、より高く、より強く―――
闘争という苛烈な生の活動を通じ、心装永久機関は個々の刻鋼人機から未来科学の技術を
吐き出させ続けてきた事、
機人は皆最強の人間兵器などではなく、初めから
科学文明の為に命を削って奉仕させられていた闘争奴隷に過ぎなかったという真実を。
望まれるは、輝装、影装を掴んだその先……真理という到達点。人間の想像力と可能性の極致。
「そして二つの世紀を跨ぎ、一九六八年現在──遂に、過去において最も真理に肉迫せし者が台頭した。
その者の出現を機に、私は歯車を最終段階へと加速させる」
「創造主が命じる───全ての人機たちよ。現行における、あらゆる任務と対立構造を白紙化。
然る後、候補者の存在する場所を闘技場として、総当たり無差別の闘争を開始せよ。
────最後の一機に至るまで」
そのまま放たれる特殊超音波の広域展開。
「かくて戦場は完成した。もはやかの街において、人機以外の者は悉く昏睡についている」
「さあ、最終にして最大の闘争は開始された。歯車を回せ、真理に至れ。
中立は許されない。逃避は自由だが、猟犬は放たれる。
天秤を中点に保つ為に配置されていた調整役……彼らはあらゆる手段を以て諸君らを誘導し、
互いに相争うよう仕向けるだろう。そして魂なき無名の番犬は、より直接的に間引きを行う」
「協力して彼らを退けるもよし。だがゆめ忘れるなかれ。その胸の機関は、いつでも破壊が可能である事を。
臆病者、劣等生には神罰が下される事だろう────」
「ならば勇を、優を示せ。天に神はいませり。我が鋼鉄の守護星を、心がけて目指すがいい」
地上の人機達の視界に映し出されたものは、オルフィレウスの
守護星たる巨大な永久機関。
文字通り次元の違う相手を前に、しかし選択肢は残されてなどいない。
―――
死にたくなければ闘え。逃げ場など何処にもない。
It takes all the running you can do,to keep in the same place.
今宵、鋼の超人機たちによる最後の死闘がその火蓋を切って落としたのだ。