むみょうけん・さんだんづき
「―――すまないが、これで終わりにさせてもらう」
新選組の天才剣士・
沖田総司が操る、必殺の“魔剣”。
突きに特化した『平正眼』の構えから、限りなく継ぎ目のない三連続の動作で放たれる神速の連撃。
呼吸一回につき、一回の動作という前提を越え、一度の呼吸からほぼ同時に三回の
動作が実行される。
技の構造等は特別な秘密も何も存在しない、単純明快な技だが、それら理を理解しても実戦で現実化できた者は
沖田のみ。
ベルリッヒンゲンの心臓の急速な再生速度もこの魔剣の前には及ばず、過たず神速の三連突きにより砕かれることとなった。
隼人や柩たちと行動を共にして以降の死闘において、沖田はこの技を以て異能や魔技と渡り合うと共に――
彼ら強敵達との経験を次なる闘いに活かすことで、その剣技の冴えをますます高めていった。
格上の武人殺しに執念を燃やしたベルリッヒンゲンとの戦いからは、技巧に勝る相手の
武器を封じるという発想を得、
自らに対する憧憬の念から後述する《四段突き》に開眼した藤堂との一騎打ちからは、今の限界を超えて彼の
“速さ”を再現するというように。
《村正》という魔の武装とは異なる切り札、
沖田総司の“人”としての強さを象徴する技といえる。
無明剣《四段突き》
「なぜ不可能だと思うのです?僕は常に沖田総司だけを見つめてきた。
その僕に、あなたと同じ技程度、できないはずがない」
「そして―――」
「目指すならば、超えるべきだ」
二巻で沖田の前に立ちはだかった、新選組もう一人の天才・
藤堂平助が会得した《三段突き》を超える魔剣。
まったく同じ『平正眼』の構えから、一度目は同じく三段突きを
合わせることで魔剣を封じ、そして沖田が驚愕する間もない二度目の交錯。
繰り出される刺突の連撃は、沖田の精確無比な三連撃を打ち消すのみならず、残る一撃で手負いの沖田に深手を負わせていた。
沖田が実現させた、一呼吸に三度の突きという不条理じみた剣技を、藤堂は天賦の才と血の滲む研鑽と、そして唯一無二の憧れを超えたいという一念で上書きしてみせた。
そんな、自らが覚醒させてしまった藤堂平助という新たなる怪物を前に、沖田も畏怖と一体の称賛の念を送らずにはいられなかった。
そして―――藤堂が敗れた後。その技は想いと共に、引き継がれることとなり……
最終更新:2021年12月19日 18:13