三巻壱ノ章、太平洋上に浮かぶ所属不明の船舶――ユニオン号において、
万次郎はこれまでの
柩と
隼人、そして彼ら二人を取り巻く状況についての報告を龍馬に行っていた。
グラバー商会に潜む秘密結社《同志会》の
追っ手に加え、
伊東が国内に引き込んだ同族殺し・
フェレイラの参戦、同時に彼が連れていた柩に瓜二つの血族の少女……
二人の行く手に立ちはだかる“敵”が増大している事と、それら別個の勢力が共闘するような事態が訪れる可能性に懸念を示す万次郎。
だが、当の龍馬はそれら“敵”の思惑や動きをさして重大事とは考えてはおらず……
むしろ己の打ち筋次第で“危機”を“好機”へと変えることもできるだろうと、不敵な表情で勝負の盤面を見据えていた。
…この後の展開を考えると、目的達成の為なら、恐ろしく冷たい合理性で他者を翻弄する龍馬の手法を現した言葉とも言える。
本編より
「そもそも敵がどうこうゆう話なんぞ、ワシにはてんで興味はないちや。敵ばゆうんは、
詰まるところ皆ことごとく己の影法師よ。つまり、己が動くことで生じる因果が生み出しよるものにすぎん」
どこまでも不敵な微笑を漂わせたまま、龍馬がうそぶく。
「万象、敵も己も駒の一つとして平らかに見下ろすことが肝要ぜよ。さすれば、
己に仇なす者の動きすら、己の目的に利するよう使ってやるのも可能になろう。
そん意味じゃ、ワシの“敵”ゆうもんはこの世のどこにもおらんのかもしれん」
龍馬の語る言葉は、それを聞く万次郎にとっては理解しがたいものだった。
己次第で、敵すらも敵ではなくなる――そんな横紙破りな兵法など、古今聞いたこともない。
- うーんこの糞眼鏡感 -- 名無しさん (2021-12-21 20:45:57)
- 糞眼鏡いつのまに土佐かぶれになったのかと思ったら坂本だった -- 名無しさん (2021-12-22 08:21:26)
最終更新:2021年12月22日 08:21