「……選ばれたことに誇りを持ち、世にはびこる悪を殲滅することが……」
長々と続く統括官の演説が構内に響く。
それを聞く数百人の男達。
彼らは全て仮面ライダーと呼ばれる正義のヒーローである。
かくいう俺もその中の一人だ。
それを聞く数百人の男達。
彼らは全て仮面ライダーと呼ばれる正義のヒーローである。
かくいう俺もその中の一人だ。
しかし、整列する男達の表情はどこか冴えない。
一昔前なら、仮面ライダーといえば選ばれた人間だけがなれる花形であった。
次々と現れる怪人どもから街を守る無敵のヒーローであった。
一昔前なら、仮面ライダーといえば選ばれた人間だけがなれる花形であった。
次々と現れる怪人どもから街を守る無敵のヒーローであった。
しかし、ここ1年ほどで仮面ライダーの数は過去歴代の人数はおろか、数千人を数える事となる。
なぜそれほどの人数が必要なのか。
なぜそれほどの人数が必要なのか。
それは…。
ファンファンファンファンファン!!
統括官の演説が終わらぬ間に、館内に警報音が鳴り響いた。
『出動命令!出動命令!中央区南部の大型商業施設リオンにて、敵襲!
101新隊から105新隊までの計500余名は、現地に急行!敵を殲滅せよ!』
101新隊から105新隊までの計500余名は、現地に急行!敵を殲滅せよ!』
館内がどよめきで揺れる。
「静粛に!早速君達の出番が来たのだ!狼狽えるでない!
各自奮闘し、戦果を挙げるように!では出動!!」
各自奮闘し、戦果を挙げるように!では出動!!」
統括官の号令と共に、先程任命されたばかりの新人ライダー達が戦闘服を身に纏い、納車室へ向かう。
俺も早く行かないと。
足早に向かう俺の横に見慣れた男が横並びで走る。
俺も早く行かないと。
足早に向かう俺の横に見慣れた男が横並びで走る。
「あ~いきなり出動かあ。まあ遅かれ早かれ迎える瞬間だけどな。」
同僚の友人の声にふと俺は考え込んだ。
(俺は生きて帰れるだろうか…)
ここに徴兵された時点で覚悟は出来ていたつもりだったがやはりいざとなると足がすくむ。
(いかんいかん。こんなことではそれこそ死んでしまうぞ。)
そう自分に言い聞かせ、脳裏をよぎる不安にかぶりを振って俺はヘルメットを被った。
俺が基地を出る頃には、既に殆どのライダーは出動していた。
話が途中になったが、なぜこんなに大勢のライダーが生まれたのか。
かつて、歴史に名を残すライダー達は次々と現れる怪人たちをたった一人で殲滅していた。
仮に1人のライダーが倒されても、また新しいライダーが現れ同じようにたった1人で奮闘していた。
かつて、歴史に名を残すライダー達は次々と現れる怪人たちをたった一人で殲滅していた。
仮に1人のライダーが倒されても、また新しいライダーが現れ同じようにたった1人で奮闘していた。
この状況に苦慮していた敵軍は、数多の怪人を生み出す中極秘に研究を重ねていた。
“仮面ライダーの能力を大幅に上回る怪人を開発するーーー”
要は数量作戦から精鋭作戦へと方針転換したのである。
これが後に『三ヶ年計画』と呼ばれることになる歴史のターニングポイントとなった。
これが後に『三ヶ年計画』と呼ばれることになる歴史のターニングポイントとなった。
逆にそのような計画を知る由もない防衛隊は慢心していた。
新しい戦力の開発には取りかからず、マイナーチェンジを繰り返すのみであった。
新しい戦力の開発には取りかからず、マイナーチェンジを繰り返すのみであった。
そして今からおよそ1年ほど前、1体の怪人が俺たちの街に姿を現した。
それは何と、仮面ライダーと同じ人間タイプ。しかも、見た目にはおよそ中学生か高校生にしか見えないような少女の体を擁していた。
しかしベースは人間ではない。いわゆるアンドロイドであった。
それは何と、仮面ライダーと同じ人間タイプ。しかも、見た目にはおよそ中学生か高校生にしか見えないような少女の体を擁していた。
しかしベースは人間ではない。いわゆるアンドロイドであった。
その怪人は、愛くるしいその姿からは想像もつかない力を擁していた。
それまで1年半に渡り仮面ライダーの地位を保ち続け、31体の怪人を倒してきた歴戦の雄は、民衆の面前でその少女の前に指一つ触れることなく少女の片手1本で滅多打ちにされ血まみれにされた挙句、命乞いをする間も無く身体中を手刀で穴だらけにされ、そして掌から放出された光熱波動によって焼却された。
その間僅か数分であった。
それ以後、数々の仮面ライダーが生まれては彼女の前に消されていった。
防衛軍は慌てに慌て、即座にプロトタイプの開発に取りかかったが、研究は思うように進まず、その間の被害は甚大なものとなっていった。
その間、防衛軍は時間稼ぎのために多数の若い男を徴兵し、ライダーを生産した。
しかし、選抜に選抜を重ねていた昔に比べ、これ以降のライダーはほとんどが一般人であり、それを繰り返す内ライダーの質は下がる一方であった。
かくいう俺も、御年25歳の普通のサラリーマンであった。
防衛軍は慌てに慌て、即座にプロトタイプの開発に取りかかったが、研究は思うように進まず、その間の被害は甚大なものとなっていった。
その間、防衛軍は時間稼ぎのために多数の若い男を徴兵し、ライダーを生産した。
しかし、選抜に選抜を重ねていた昔に比べ、これ以降のライダーはほとんどが一般人であり、それを繰り返す内ライダーの質は下がる一方であった。
かくいう俺も、御年25歳の普通のサラリーマンであった。
最早、形勢は完全に逆転していた。
そして今から半年程前、敵勢力にも異変が訪れる。
“彼女”(コードネームはイースと言うらしい)がクーデターを起こしたのだ。
余りにも強大になった彼女の力に、敵の幹部は全く敵わなかった。
かくして、彼女1人によって敵軍は壊滅したのである。
“彼女”(コードネームはイースと言うらしい)がクーデターを起こしたのだ。
余りにも強大になった彼女の力に、敵の幹部は全く敵わなかった。
かくして、彼女1人によって敵軍は壊滅したのである。
地球征服という野望があった怪人共と違い、アンドロイドである彼女にはそのような野望や欲望は皆無であった。
彼女の目的はただ一つ、彼女が作られた目的、つまりライダーの殲滅であった。
彼女の目的はただ一つ、彼女が作られた目的、つまりライダーの殲滅であった。
邪魔者を排除した彼女は、自らが君主となり自らのコピーをいくつか生産した。
そして、その優秀な子供達によって、無数のライダー達がまた葬られた。
そして、その優秀な子供達によって、無数のライダー達がまた葬られた。
既に防衛軍の抵抗は無力極まりないものとなっていた。
最早彼らの戦う理由は、自らのプライドの復権と存在意義守ること以外無くなっていた。
最早彼らの戦う理由は、自らのプライドの復権と存在意義守ること以外無くなっていた。
市民の不満も、一般人に危害を加えなくなっていた彼女等よりも、むしろ無意味に徴兵を繰り返す防衛軍に矛先が向き始めていた。
色々と考えを巡らせるうち、俺の身体をなんとも言えない無力感が襲った。
(俺はなんのために命をかけているのだろう)
(俺はなんのために命をかけているのだろう)
死にたくない。無意識の内に俺の車は目的地から遠ざかっていた。
しかし、そんな俺の思いとは裏腹に、俺の目前には厳然たる脅威が道を塞いでいた。
しかし、そんな俺の思いとは裏腹に、俺の目前には厳然たる脅威が道を塞いでいた。
「はーい。どこにお出かけ?ライダーさん♪」
その姿が視界に入ると同時に、俺のバイクのタイヤは大きく破裂し転倒。
俺の身体は地面に強烈に叩きつけられ、やがて彼女の足下へ勢いよくぶつかって止まった。
見上げるとそこには少女と、その少女に暴行され四肢を切断された1人のライダーの姿があった。
俺の身体は地面に強烈に叩きつけられ、やがて彼女の足下へ勢いよくぶつかって止まった。
見上げるとそこには少女と、その少女に暴行され四肢を切断された1人のライダーの姿があった。
ライダーは髪の毛を掴まれ、彼女の眼前で吊るされていた。
微かに残った命を必死で乞うその声で、俺はそれが先程まで話していた同僚だと気が付いた。
それほどまでに男の容姿は崩壊していたのだ。
微かに残った命を必死で乞うその声で、俺はそれが先程まで話していた同僚だと気が付いた。
それほどまでに男の容姿は崩壊していたのだ。
俺の存在に気づいた同僚が俺に助けを求める。
しかし。
しかし。
「も~人に迷惑掛けるなんて駄目な男だなぁ。自分のことは自分でしなさい!」
そう言うと、彼女は髪を掴んでいた右腕を大きく振りかぶり、男の顔面から地面に叩きつけた。
ぎゃっという男の短い悲鳴と同時に男の顔面は地面にめり込み、血飛沫が舞った。
更に右足を振り上げると、彼の後頭部に勢いよく振り降ろした。
更に右足を振り上げると、彼の後頭部に勢いよく振り降ろした。
瞬く間に彼の頭部は、彼女の靴裏と地面に圧迫されて弾けとび、辺り一面に脳味噌の破片が飛散した。
俺は死を覚悟した。