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NAV1, NAV2は、VORや
ILSの電波を受信して、航法のための情報を表示する計器です。2台あるので、組み合わせて使う方法もありますが、基本的な使い方であれば1台で十分です。NAV1は
コンパスと一体化しているタイプで、より直感的に理解しやすい表示形式(HSI)となっています。
概要
- ADFが、自機から見た標識局の「方向」を指す方位磁針的な計器であるのに対して、VORは、航空図に描かれた航路のような「特定の方角から標識局へ向かうコース」もしくは「標識局から特定の方角へ向かうコース」を指し示すシステムであると言えます。「特定の方角(コース)」は、パイロットが任意に設定することができます。コースは標識局を中心に真っ直ぐに伸びる直線的なものになります。
任意に設定したコースと機体の位置関係が表示される。R-xxxはVORから見た方位(ラジアル)
計器の説明
- コースセレクタ(OBS)は、VOR局へ向かう(もしくはVOR局から離れていく)コースを、方位001~360間で指定することができます(『7』/『8』キーで操作)。先端の矢印を指定したいコース(方位)に合わせます。
- TO-FROM指示器は、OBSで指定されたコースの方角を基準として、自機がVOR局へ向かう側の空域にいるのか(TO▲)、VOR局から離れていく側の空域にいるのか(FR▼)を示しています。コースを飛行中に、表示がTOからFROMへ切り替わるのを見て、VOR局の上空を通過したことを確認できます。
- CDIは、OBSで指定されたコースと機体の、左右の位置関係を視覚的に表現しています。コースの方角を基準として、CDIの針が右(左)にいれば、機体はコースよりも左(右)側にいます(中央にいればオンコース)。針が中央から1目盛り離れると、機体は指定されたコースより2度ずれたコース上にいます(=5目盛り離れたら10度の偏差。針が振り切れたらそれ以上の偏差)。VOR局の真上付近では、針の動きが敏感になりますが、惑わされずに目標の針路(方位)を維持して飛行します。
- DMEには、自機とVOR局との直線距離(マイル, NM)が表示されます。直線距離なので、VOR局の真上では水平距離の誤差が最大になります(距離≒対地高度。1NMは約6,076ftなので、30,000ftで飛行していれば約5NM DME)。距離が表示されるのは、DMEをサポートするVOR局を選択した場合のみです。
- 基本的に、コースは自分が飛行したい針路と同じ方向に指定します。逆方向に指定すると、計器が直感に反した表示や動作をするので、混乱や誤った判断の元になります(TO-FROM指示器の表示とCDI(NAV2)の針の動きが反転する)。
VOR局のある方角を調べる
- ADFのように標識局の方向を知りたい場合、OBSを回転させて、TO-FROM指示器がTO▲かつCDIの針が中央に来るコースが、自機から見たVOR局の方位とみなすことができます。
- 下図は、フィールド『AOMORI』, 開始位置『MISAWA_RW10』で飛行開始、『L』キーを1回押してSTATION FOR NAV 1選択表示で『6』キーを押して『AOMORI』を選択、そして『7』or『8』キーを押し(続け)て指針を回転させてTO側でオンコースさせた状態です。結果、コース(方位)273に選択したVOR局があることが分かります。
- 上と同じ設定をNAV2で行うと下図のようになります(STATION FOR NAV 2で選局)。NAV1と違い、コンパスカードを回転させて、真上を指している矢印にコースを合わせます。
指定したコースに合流する
- OBSで指定したコースを飛行したい(けれども機体はコースから離れている)場合、まずはそのコースへ合流(インターセプト)する必要があります。コースへの合流に適した進入角度は、飛行速度やVOR局との距離などによって変わってきます。局に近い地点で合流するときほど浅い角度で進入しないと、CDIの針が動き出してから旋回を始めても間に合わなくなります。逆に局から十分離れた地点なら、コースと直角に進入しても余裕を持って合流できます。
コースを変更する
TO-FROMでのコース変更
- VOR局を通過する前後(TOからFROMへ切り替わるタイミング)でコースを変更したいとき、よく使われるのは、ルートをショートカットするようにしてFROM側のコースをインターセプトする方法です。旋回を開始する前に、計器にはあらかじめFROM側のコースを指定しておきます。旋回を開始するタイミングは、コース変更角度と旋回半径(飛行速度やバンク角)に応じて決めます。VOR局付近のDME表示は水平誤差が大きいので、レーダーも参照するとよいでしょう(VOR局も地上オブジェクトの1つとしてレーダーに表示されます)。コース変更後もCDIの針の動きが安定する距離まで(むやみにCDIの針は追わずに)方位を維持して飛行します。
- あまり使うことはないかもしれませんが、鋭角にコースを変更したい場合は、TO側のコースを維持したままVOR局を通過後、反転してFROM側のコースをインターセプトする方法もあります。
別のVORコースへの変更
- 下図のように、あるVOR局のコースを飛行している途中で、別のVOR局のコースへ飛行経路を変更することもあります。NAV1を使用して現在のVORコースを飛行中なら、次のVORコースはNAV2に設定しておきます。両方のCDIの針が中心にあるとき、機体はそれぞれのコースが交差する地点にいます。
- コース変更する目的以外にも、自機の現在位置を確認するために、上記の方法を利用することができます。
複数のVOR局をたどる
- 長距離飛行を行う場合、下図のように複数のVOR局を結んだコースをたどり目的地へ向かいます。直近のVOR局に近づいたら、次のVOR局を選択して新しいコースを設定・インターセプトします。次のVOR局までは遠くてまだ受信できない場合は、直近のVOR局のFROM側のコースを、次のVOR局が選択可能になるまで飛行します。詳細は飛行計画の水平経路を参照。
最終更新:2016年01月09日 13:48