概要
リッドゾーンの戦いとは、
蜉蝣時代の戦乱の中で、
アルファ694年9月、
ベルザフィリス国軍と
アル国軍の間に起きた戦いである。
それまでも、建国以降ギリギリの綱渡りの様な戦いを繰り広げてきた
ルーディアが、自身が指揮官として望む戦いでは、生涯ではじめて完敗を喫することとなる戦いである。
戦闘に至るまでの背景
両軍の戦力
戦闘経緯
ルーディアが対峙していた相手は、
アル国の
独眼竜と呼ばれる
フィッツであった。
暴君
ザグルスは、平民出身というだけで彼の才能を放置していたが、彼こそが
アル国最強の将であった。
フィッツがとった作戦は、わざと負けて相手を引き込み殲滅するというごく初歩の戦法であった。しかしそれを実現させるために擁した努力は並大抵のものではなかった。まず初戦では城の西にある湖に軍勢を密かに移動させ水攻めの準備をするが、これを
ルーディアに看破され、待ち伏せされて撃退される。続いて
ザッツ砦の戦いでも敗戦、撤退しながら陣を敷きなおし、四度戦って全て負けている。
こうして少しずつ
ルーディアを誘い込む
フィッツ。
ルーディアも
ガイヴェルドも優れた将である。相手の誘き出し作戦にかかるほどあさはかではない。それでも「これはもう演技ではない、本当に相手は弱い」と信じ込ませるほど彼は負け続けた。常に全滅の可能性を相手に見せ、次は逃さないと相手に信じ込ませ、実際は最低限の損害で次の陣へと後退する。並の将なら本当に全滅させられる様な戦局から、
フィッツは軍勢を見事に後退させていった。
そしてついにその時が来た。
ルーディア自身が、その策の可能性に気付き、軍勢を撤退させようとしたその瞬間、
フィッツの総攻撃が始まった。
三方向から完全に包囲された
ベルザフィリス国軍、逃げ道を失った軍勢は統率もなくなり、山地を駆け上り
リッドゾーン盆地へと逃げようとするが、待ち伏せしていた弓隊によって一斉射撃を受ける。
ルーディア自身も馬を射抜かれ、崖から落ちて姿を消す。
ベルザフィリス国軍は、一晩で三分の一の兵力を失った。
奇襲・夜襲で大軍を打ち破る事を得意としていた
独眼竜ルーディアが、もう一人の
独眼竜フィッツが謀った夜襲によって敗れた戦いであった。
リッドゾーン盆地に馬ごと落ちた
ルーディアだが、奇跡的に一命を取り留めていた。
彼女はこの地に隠れ住んでいた
レイラという少女に救われ、看護を受けていた。
レイラの親は、
アル国の内政官であったが、暴君
ザグルスに諫言した為処刑され、彼女は追っ手から逃れるためこの地に隠れ住んでいた。
ルーディアは一つの決意を固めると、自らの居場所に
ベルザフィリス国軍本陣の旗を立てた。
敵が先にこの旗を見つければ死を、味方が先に見つければ生を、自らの運をここに賭けたのだ。
そして数刻後、
ルーディアの前に姿を現した軍勢は、
ガイヴェルドが敗残軍をまとめて再編した味方のものであった。
自らの運がまだ尽きていない事を知った
ルーディアは、急ぎ軍勢をまとめると本国へと撤退していく。
ガイヴェルドは、その後追撃してくる
アル国軍を撃退、(
フィッツ自身は無謀な追撃として、参加せずに本国に帰還している)リッドゾーンの戦いにおいて、自身の実力を周囲に見せたが、この目で実際に戦いを見ていない者の間では、いまだ「
ルーディアの指示だったのだろう」と、偉大すぎる国主の影に隠れていた。
戦いの結末
ルーディアは、
カルディスの様に常勝を誇りとするタイプではなく、敗戦から学び、前回の戦いより強くなるタイプの将である。この戦いでも勝ちすぎることの危険を学んだ彼女は、11月9日、諸将の前で今回の敗戦の責任は自らの驕りにあったと自分自身を戦犯者とし、その髪を切ろうとしたが、
グレシアに説得されこの戦いは戦犯者なしとして記録されることとなった。
これよりしばらく
ベルザフィリス国は、攻撃ではなく防衛に徹することとなる。
そんな中、
ルーディアの命の恩人である
レイラと養子
ガイヴェルドが、12月21日に婚儀を行うこととなったのは、
独眼竜のつかの間の安らぎであった。
最終更新:2011年12月11日 20:35