概要

フィリアの戦いとは、ザールック1484年、リグライナ帝国と、ヴィッツ国の間で起きた戦いである。


戦闘に至るまでの背景

鉄の鎧兵を背景に、次々と周辺諸国を支配下としたリグライナ帝国。
その帝国とまともに戦えるのは、もはや魔導国家と呼ばれたヴィッツ国のみとなっていた。
しかし、この大国は、周辺諸国からの救援要請を常に黙殺し、見捨てられた諸国からは「威厳を保っている様に見えて、その実内心では帝国を相手に震えているのでは」という風聞も立っていた。
だが、リグライナ帝国の本格侵攻はついにヴィッツ国にも矛先が向けられ、この眠れる大国がついに動き出した。


過去の遺産

リグライナ帝国が鉄の鎧兵を発掘したのと同様に、ヴィッツ国もまた魔導器を発掘していた。
これは、魔力を蓄積して法術隊に与えることができるもので、この道具により実質上法術部隊は、法術攻撃を途切れることなく使い続けることができた。

鉄の鎧兵は機械であり、痛みを感じることはない、しかし行動が不可能になるほど破壊すればいい点では生身の兵士とはかわらず、法術隊の間断ない攻撃により、完全に破壊すればいいとの自信がヴィッツ国にはあった。
なお、魔導器に関しては、その役割がカオスフォースと類似している点から、同じ古代文明ノヴァが生み出した可能性が高い。もしそうであれば、ノヴァが生み出した鉄の鎧兵魔導器が、敵味方に別れて戦うという事態が生じたこととなる。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

リグライナ帝国軍
軍勢
ヴィッツ国軍
総兵力86000 兵力 総兵力70000
キリカ 総指揮 ロルストーン
軍師
主要参戦者

キリカ

ボード

ミシティア

ファルケン

ルーティー

ロルストーン

封牙舞

封牙刹那

アイン

エレス

デイ


戦闘経緯

リグライナ帝国は、ボードが先陣として騎馬部隊を突撃させる。
帝国の将でありながら自らの武で戦うことを信条とし、鉄の鎧兵を嫌っていたボードらしく、自ら先陣に出ての突撃であったが、そんな彼でも命令には逆らえず、その周囲に鉄の鎧兵は配置されていた。

しかし、魔導器によって増幅され、間断なく攻撃を仕掛けることが可能となったヴィッツ国軍の攻撃法術がボード軍の進軍を食い止める。
もともと、魔法国家と呼ばれ、法術使いの質も量も他国を凌駕していたヴィッツ国にとって、魔導器は最高の相性であった。
前線は押し戻され、接近して法術部隊を壊滅させるべく突撃したボードも、届くことなく戦死した。

それから三日、両軍のにらみ合いが続いていた。
魔導器を擁したヴィッツ国軍の戦意は天を付く勢いで、逆に緒戦に敗れたリグライナ帝国軍は防衛に徹した。
しかし、ヴィッツ国も自ら攻勢に出ることは躊躇っていた。相手の強大な軍事力を考えれば、ここで早計に攻撃を仕掛けてもどのような反撃が待ち受けているか判らないだけに、各陣に密偵を放っての情報収集に徹し、相手の出方を伺いながら、自分たちから仕掛けたいという矛盾した緊張感に包まれて、両軍の将軍が軍議を重ねていた。

結局、先に痺れを切らしたのはヴィッツ国軍であった。
リグライナ帝国軍が再布陣した高地に向かって出陣するが、これに対してキリカもすかさず陣形を整えると、鉄の鎧兵を最前線に配備する。
魔導器を得たヴィッツ国の魔導部隊は確かに強力であった。しかし、彼らにも弱点がない訳ではない。魔導師本人は、接近さえ許してしまえば、肉弾戦は歩兵より劣る。
キリカはそこに目をつけ、鉄の鎧兵を一斉に下り坂を駆け下ろさせると、体内にセットされたタイマーで自爆させていく。
鉄の塊と化した鎧兵が雨の様に降り注ぎ、これにより混乱した前線に、ルーティーを中心とした騎馬部隊を突撃させ、法術使いを次々と槍で射抜いていく。

だが、ヴィッツ国軍は、後方で魔道部隊を再編制させ、帝国軍を誘い込み、一気に反撃にうつる。
ヴィッツ国軍が扇状に敷いた魔道部隊からの攻撃により、帝国軍は撃退されていくが、ここさえ突破できれば勝利できると、無謀なる突撃を繰り返す。

混戦の中、客将としてヴィッツ国軍として参戦していたクロスビルだったが、リーダーのアインミシティアとの戦いの果てに戦死、そのミシティアも直後に全身に矢を受けて落命、戦いは泥沼の戦局を迎えていた。

このままヴィッツ国軍が、半狂乱となって突撃を繰り返す帝国軍を撃退するかと思われたが、密かに戦場を迂回したルーティー部隊が魔導器にたどり着き、直接攻撃を仕掛ける。
偶然後退していた封牙舞が防衛するが、双臥の教徒で編成されたルーティー部隊は、信徒たちが火薬を懐に仕込んで、次々と魔導器に向かって特攻を仕掛けるという狂気の攻撃により、ついに魔導器を破壊する。

これによって、前線の魔道部隊の法術攻撃にも限界が訪れ、帝国軍が一斉に陣を突破する。
更に、その線上に突如姿を現したのは、カオスフォースと、その力によってかつての伝説の様に空に浮かんだ王都ノヴァであった。

この浮遊都市は、ヴィッツ国兵士に、自分達は、とんでもない力をもつ相手と戦っているのではという恐怖を与え、戦意を喪失させる。
かろうじて維持されていた戦局はこれによって瓦解、ヴィッツ国軍は撤退をはじめ、魔導器も破壊された。

こうして、戦いはリグライナ帝国が、これまでにない大きな被害を受けながら薄氷の勝利を収めた。
味方の損害も大きかったこともあり、このときの追撃戦は帝国軍の憂さ晴らしの場と化し、多くの街が無条件降伏したにも関わらず破壊と略奪の被害にあっている。

町を蹂躙しながら迫り来る帝国軍を食い止める最後の戦場となる場所は、西ケルニア山脈であった。
山脈に最も近いラムザ渓谷に存在するヴィッツ国第三の大都市ラムザにロルストーンをはじめとする諸将が集結していた。

しかし、そこに思いもがけない情報が飛び込むこととなる。


皇帝の死と、帝国内乱

最後の決戦を覚悟していたロルストーンの元に、信じられない伝令が舞い込んだ。
リグライナ帝国皇帝ガルバードを討ち取った、というものである。
当然最初は誰も信じなかった。だが、リグライナ帝国が不自然な動きを見せ、次々と届く続報もそれを裏付けるものとなる。
ガルバードは、決戦に赴く兵士たちを鼓舞するために自ら最前線へと赴くが、そこを不幸にも、味方を撤退させるために戦場に留まっていたヴィッツ国軍の一部隊と遭遇し、討ち取られたという。

しかし、後に判明した事実は異なっていた。
これは、皇帝ガルバードが心酔していた双臥の教祖ラグダーナが引き起こした意図的な事件であった。
ラグダーナの正体は、外見こそ人間であるが、ノヴァが生み出した自己思考型の鉄の鎧兵であった。
彼は、リグライナ帝国に侵略戦争を起こさせ、版図が広がりつつも、まだ統一していない限界点で皇帝を亡き者とすることで、帝国に混乱を起こさせることが目的であった。

その目的は、彼に搭載されていた「自己思考」がはじき出した結論に理由があるそうだが、彼の思考そのものが長年の間に破損していた可能性が高く、真の目的は謎となっている。(長き戦乱を見続けた彼は、戦乱を引き起こすことそのものが人間の性質と思い、それに協力した、という説もある)


大王都ノヴァの戦い

ガルバードの死によって、ラグダーナの思惑通り、次なる戦乱が生まれた。
ラグダーナ自身は、自らカオスフォースを制御して、王都ノヴァに君臨する。ラグダーナのクーデター(彼が鉄の鎧兵ということは知られていない為、帝国では単純にクーデターだと思われていた)を食い止めるかと思われたリグライナ帝国だが、彼の思惑通り、ガルバードの後継者を巡って、長男ルードを擁立するキリカファルケン達と、次男ライアを擁立する一派によって内乱状態になっていた。
更に、帝都に残された双臥、息を吹き返したヴィッツ国軍もこれに加わり、戦局は混乱の極みを迎えていた。

そんな中、クロスビルのメンバーである封牙舞デイエレスは、戦いの元凶となったノヴァの遺産を破壊することを決意、王都ノヴァに潜入(本来そこまでの高度が取れないはずのミラージュレイトを駆って、空中に浮かぶノヴァに乗り込んだというが、これは封牙舞が、風の巫女だったことから、風の精霊を従えていたのではないかと言われている)エレスを失うほどの激しい戦いの末、カオスフォースを破壊した。
これにより、動力を失った鉄の鎧兵は全ての機能を失い無力化、ラグダーナも機能を停止し、双臥の幹部であったルーティーも戦死した。


戦いの結末

鉄の鎧兵を失い、皇帝の死から内乱状態となったリグライナ帝国に、他国への進軍など行う力は残されていなかった。
これにより、自然と帝国の侵略戦争は終わりを遂げるが、それまで一方的に蹂躙されていた周辺諸国の恨みは根強く、攻守逆転して、今度は帝国が各地で被害を受けていた。
しかし、リグライナ帝国のキリカファルケンは、ヴィッツ国のロルストーンとの長い長い机上の戦いの末、ようやく和平を結ぶ。
この両者の間には、仲介役を買って出たクロスビルデイの姿が確認されているが、本人の希望により、公式文章からその名は削られている。
こうして、長年の遺恨は残るものの、形だけでもリグライナ帝国の侵略戦争は終わりを遂げた。


最終更新:2024年08月08日 00:25