ロワイヨブルの演説は、正教新暦1715年頃、グロワス13世によって行われた演説。
演説は、シュトロワ旧市からガイユール公領の首府リーユへ向かう行幸の途上、ガイユール公領の玄関口であるロワイヨブルの城外宿営地で発生した兵の騒乱を収束させるために行われた。
演説は、シュトロワ旧市からガイユール公領の首府リーユへ向かう行幸の途上、ガイユール公領の玄関口であるロワイヨブルの城外宿営地で発生した兵の騒乱を収束させるために行われた。
初出:33話
背景
兵の騒乱の発生
演説の舞台となったのは、国王一行の護衛部隊内で発生した武装衝突の現場である。
国王の護衛は、ルロワ王家の軍である近衛軍(青い制服)と、サンテネリ国軍の中核部隊である黒針鼠(スール・ノワ、黒い制服)の兵士たちによって構成されていた。
騒乱は、ロワイヨブルの酒場で些細な口論から始まったが、収束せず、両部隊の兵士たちが銃を握りしめて城下でにらみ合う事態に発展した。兵士たちは、略奪ではなく、自分たちの部隊の「名誉」や「誇り」が汚されたという感情によって突き動かされていた。
国王の護衛は、ルロワ王家の軍である近衛軍(青い制服)と、サンテネリ国軍の中核部隊である黒針鼠(スール・ノワ、黒い制服)の兵士たちによって構成されていた。
騒乱は、ロワイヨブルの酒場で些細な口論から始まったが、収束せず、両部隊の兵士たちが銃を握りしめて城下でにらみ合う事態に発展した。兵士たちは、略奪ではなく、自分たちの部隊の「名誉」や「誇り」が汚されたという感情によって突き動かされていた。
国王の対応
国王グロワス13世は、軍務卿デルロワズ公ジャンに騒乱の報せを受けると、すぐに現場に向かうことを決断した。
さらに、この暴動を改革を推し進める好機と捉え、あえてガイユール公ザヴィエを呼び出し、兵士たちの実情を「見学」させた。これは、王が目指す軍の統合の方向性とその背景にある課題を、政権の主要メンバーに認識させる意図があった。
さらに、この暴動を改革を推し進める好機と捉え、あえてガイユール公ザヴィエを呼び出し、兵士たちの実情を「見学」させた。これは、王が目指す軍の統合の方向性とその背景にある課題を、政権の主要メンバーに認識させる意図があった。
演説の内容と特徴
グロワス13世は、代表の士官たちに話すだけでは意味がないと考え、あえて両陣営の兵士たちに直接語りかけることを選んだ。
演説は、両部隊のアイデンティティと忠誠の対象を問い直すことに焦点を当てていた。
演説は、両部隊のアイデンティティと忠誠の対象を問い直すことに焦点を当てていた。
歴史的意義
ロワイヨブルの演説は、サンテネリ国王グロワス13世が、軍制改革と国内統合という自身の政治的ビジョンを公的な場で具体的に示した重要な機会となった。
- 軍の統合への道筋: デルロワズ公家やバロワ家といった有力貴族家が私的に保有していた軍事力を、名実ともに「サンテネリの軍」として国家に帰属させるための思想的な基盤を提供した。
- 王権の再定義: 国王は、王権の超越性を誇示する代わりに、自らを国家(サンテネリの土地と人)の「王冠」(象徴)であると再定義し、臣下や国民に対する責任と「奉仕」の姿勢を強調した。
- 個人的意義: 国王グロワス13世は、この演説で自らの軍事的統率力を明確に示し、部下たち(デルロワズ公など)に彼の意図を納得させた。また、現場を目の当たりにしたガイユール公は、この騒乱が王の献身によって収まったことを認め、王に対する信頼を深めた。演説後、国王は軍務卿ジャンに対し、バロワ家への優遇(義父の元帥任命、バロワ家の侯爵昇叙)という形で、軍と王権の結びつきをさらに強める措置を講じた。
演説全文
私は近衛軍の諸君に言う!私は諸君のことなど何一つ知らない!
そして諸君に問いたい!皆の中にこれまで私の顔を見知ったものはいたか?話したものはいたか?
いないだろう。顔も知らず会話を交わしたこともない人間に、なぜ諸君は忠誠を誓う?”王の剣”を謳う?私は諸君のことなど知りもしないのに
(陛下のご尊顔を拝すること叶わずとも我らは近衛でございます!)
なるほど。ではなぜ近衛は私を護る?
(陛下はサンテネリ王国の王でいらっしゃいます。陛下をお守りすることはすなわちサンテネリを護ることに他なりません)
私がサンテネリなのではない!サンテネリが私なのだ!諸君、下を向いて地を見てほしい。慣れ親しんだ土だ。隣のものの顔を見よ。慣れ親しんだ顔だ。そして家で待つ親や妻や子を思え。慣れ親しんだ人々だ。それがサンテネリだ
顔も知らぬこの小男がサンテネリなのではない。この男はサンテネリという偉大な巨人の頭に乗った王冠に過ぎない。諸君は王冠を護るという行為を通じてサンテネリを護っている。大地や人を護っている
諸君は栄えある近衛軍だ!その勇名は大陸中に轟き、ひとたび諸君が出征すれば敵は総毛立って震え上がる。その近衛軍たる諸君がすべきことは——もう一度言う。皆が見ているもの。つまり、土地と人を護ることだ。そして、土地と人を護ることが、私を護ることに繋がる。皆が日々慣れ親しんだもののために、その命と勇猛さを使え。その行為によってのみ王冠は護られる。土地も民もない王に何の価値がある?何の価値もない
諸君は王の近衛軍ではない!諸君はサンテネリの近衛軍だ!それを忘れてくれるな
黒針鼠の精鋭諸君にも問いたい!きみたちはデルロワズ公の私兵か?それとも栄えある我がサンテネリ王国軍の中核か?どちらだ!
もし諸君がデルロワズ公の私兵であるのなら、諸君はサンテネリの兵ではない!領地に帰り戦に備えよ。あるいはここで私の首級を上げるがいい!
(陛下!なんということをおおせになられます。我ら一同サンテネリの兵として自覚を強く持っております!)
それはよかった!デルロワズ公はこう言ったな。諸君はサンテネリの兵だ、と。では問うが、サンテネリの兵権は誰の元にある?デルロワズ元帥か?
いいか。ここで明言しておく。サンテネリ王国の兵権は王(私)にある。諸君はデルロワズ公の私兵ではない。栄えあるサンテネリ王国の最精鋭部隊だ。近衛軍と並び、諸君はおよそ大陸全ての国々に畏怖される精強無比の黒針鼠(スール・ノワ)。諸君の司令官は私だ
異論があるものがいるか?いれば構わない。領に帰って反乱の準備をするとよい!
いないか!では今一度諸君に問いたい!諸君の目前に対峙する青い集団は敵か?あの青い集団の司令官は私だ。そして諸君が今異論無く認めたように、諸君の司令官もまた私だ。そこに違いがあるか?私の兵である以上、諸君もまた民と国土を護るために存在する
そして彼らもまた、諸君と同様に民と国土を護る兵士だ。同じ司令官を戴き同じ目的を持つ二つの栄光ある部隊。彼らの間に妬みや恨みがあろうか。嘲弄があるか?我が国最強と名高い二つの部隊に集う勇者たちに、そのような取るに足りぬ弱兵気質などあろうはずがないと私は信じる。諸君らのような光輝に包まれた兵士が持つのは敬意と勇気と誇り。それだけであろうと私は信じる。王グロワス13世は信じる!
栄光ある我が国の護り手諸君。明日も、私と共に護るべき土地を見に行こう。そのために今晩は取りあえず一杯引っかけて眠りにつけ