初出:108話
会堂広場の演説(かいどうひろばのえんぜつ)は、正教新暦1742年7月に、後に大指導者(コントゥール・グロー)となるジュール・レスパンによって行われた演説である。シュトロワ旧市の会堂広場を舞台とし、食糧を求めて集まった民衆(暴徒)に対してなされた。この演説は、サンテネリ共和国(第1共和国)建国における重要な画期の一つと見なされている。
背景
当時の状況
演説が行われた1742年7月は、記録的な大雨がサンテネリ北部を襲い、シュトロワへの流通路が途絶した時期であった。グロワス14世の政府(国民会議)が食料不足の解決を決断できなかったため、旧市において暴動(略奪)が発生した。
暴徒は食糧強奪だけでなく、どさくさに紛れて金品強奪をも目的とする獣欲に駆られた集団であった。王家は暴動から逃れるため、光の宮殿から脱出していた。
暴徒は食糧強奪だけでなく、どさくさに紛れて金品強奪をも目的とする獣欲に駆られた集団であった。王家は暴動から逃れるため、光の宮殿から脱出していた。
演説の動機
レスパンは、この暴動を扇動したわけではないが、発生した火事を「使った」人物である。レスパンの動機は、民衆の獣欲(食糧と金品強奪)に「大義」を与え、彼らの行動を歴史上の「偉大なこと」へと転化させることにあった。
演説の内容と特徴
内容
演説は即興で行われた。レスパンは、群衆に対し、彼らの行動が「盗人」や「強盗」の行為であるかを問いかけつつ、求めるものが「人の光輝を示す偉大な聖杖となるか」を問うた。
これは、民衆の獣欲を、単なる食糧強奪という行動から逸らし、「大義」を与えるものであった。演説の結びでは、誰かが絶妙の機会を捉えて「不正を糺すこと!」と叫び(仕込みの可能性あり)、暴徒の獣欲は最終的に歴史上の「偉大なこと」へと転化された。
これは、民衆の獣欲を、単なる食糧強奪という行動から逸らし、「大義」を与えるものであった。演説の結びでは、誰かが絶妙の機会を捉えて「不正を糺すこと!」と叫び(仕込みの可能性あり)、暴徒の獣欲は最終的に歴史上の「偉大なこと」へと転化された。
文体と祖型
この演説は、レスパンの演説集に収録され、広く国民に知られている。
その文体や構造は、グロワス13世がガイユール館の前で民衆に対して行った「弾劾演説」に酷似している。演説は、民衆の怒りの矛先をガイユール公領から外敵(アングラン)に逸らす機能も持っていた「弾劾演説」と同様に、民衆の怒りを食糧略奪という獣欲の行動から逸らす役割を果たした。
その文体や構造は、グロワス13世がガイユール館の前で民衆に対して行った「弾劾演説」に酷似している。演説は、民衆の怒りの矛先をガイユール公領から外敵(アングラン)に逸らす機能も持っていた「弾劾演説」と同様に、民衆の怒りを食糧略奪という獣欲の行動から逸らす役割を果たした。
歴史的意義
会堂広場の演説は、民衆の獣欲を「不正を糺すこと」という正義の行為へと転化させ、暴動に「大義」を与えた。
この演説により、サンテネリ共和国(第1共和国)の設立に向けた勢いが加速し、建国における重要な節目となった。レスパンが国民に与えたこの言葉は、サンテネリ国民が小等学校の国語の授業で必ず習う、共和国建国の神話の一部となっている。
この演説により、サンテネリ共和国(第1共和国)の設立に向けた勢いが加速し、建国における重要な節目となった。レスパンが国民に与えたこの言葉は、サンテネリ国民が小等学校の国語の授業で必ず習う、共和国建国の神話の一部となっている。
演説全文
諸君は盗人であろうか? 諸君は強盗か? 諸君は殺人鬼か? 皆がそうだと言うのならば私は従おう。しかし賢明なるシュトロワ市民諸君! 諸君がそのような悪鬼の輩であろうはずがない。中央大陸にその名を知られた”世界の中心”に住まう諸君! あなたがたが求めるものは何だ? あなた方の手が握りしめる粗末な木の棒きれは、卑劣な盗みの道具となるか? あるいは——あるいは人の光輝を示す偉大な聖杖となるか。シュトロワ市民諸君、私に教えてくれ! あなた方は何を求める?
(不正(アンジュ)を糺すこと!)