『復活』(ふっかつ、原題:Воскресение / Voskresenie、英:Resurrection)は、ロシアの文豪レフ・トルストイ(Leo Tolstoy、1828–1910)が晩年に執筆した三大長編小説の最後を飾る作品で、1899年に完成・出版された。
概要
トルストイの宗教的・社会批判的思想が最も強く表れた後期の代表作であり、印税は弾圧されたドゥホボール教徒のカナダ移住資金に充てられた。邦題の「復活」は、主人公の精神的覚醒とカチューシャの更生を指すが、原題はキリスト教の「復活」をも暗示し、単なる個人再生ではなく、人間性・社会の再生を問う深い問いを孕んでいる。
あらすじ
物語は1890年代のロシアを舞台に、貴族のネフリュードフ公爵が陪審員として出廷した殺人裁判で、かつて自分が妊娠させたあげく捨てた下女カチューシャ・マスロワと再会するところから始まる。彼女はネフリュードフの子を産んだ後、娼婦に身を落とし、無実の毒殺罪で有罪判決を受け、シベリア流刑が決まる。裁判の誤審と腐敗した司法制度に衝撃を受けたネフリュードフは、自身の過去の罪を痛感し、カチューシャを救うために奔走する。貴族社会の虚飾、官僚の堕落、教会の欺瞞、監獄の残虐さ、農民の貧困を克明に描きながら、ネフリュードフは土地私有の否定、非暴力、隣人愛に基づくキリスト教的倫理に目覚めていく。カチューシャも獄中で出会った革命家シモンソンとの交流を通じて自立し、最終的にネフリュードフの求婚を拒否して新たな道を選ぶ。結末は救済的でありながら、トルストイらしい諦観と希望の混在したものだ。この小説の力は、トルストイが単なる恋愛譚や贖罪物語に留めず、帝政ロシアの全社会構造を告発する点にある。ネフリュードフの「復活」は個人的なものではなく、社会的不正への目覚めと行動を通じての人間的再生を意味し、トルストイの晩年思想(非暴力主義、無政府キリスト教)が凝縮されている。