『大尉の娘』(たいいのむすめ、原題:Капитанская дочка)は、ロシア文学の父アレクサンドル・プーシキン(Alexander Pushkin、1799–1837)が1836年に発表した歴史小説で、彼の散文の最高傑作。

概要
1773–1774年のプガチョフの乱(農民反乱)を背景に、恋愛と忠誠、慈悲と正義を描いたロマンティックな物語。プーシキンは史料を徹底的に調べ、簡潔で洗練された文体でロシアの国民的叙事詩を完成させた。語り手は老齢のピョートル・グリーニョフが回想録形式で綴る。若き士官グリーニョフは、オレンブルク近郊の要塞ベロゴルスクに赴任し、要塞司令官ミローノフ大尉の娘マーリヤ(マシャ)と恋に落ちる。プガチョフの反乱軍が要塞を襲い、グリーニョフの父の友人だったプガチョフ(自称皇帝ペトル3世)が登場。プガチョフはグリーニョフを助け、マシャを救うが、反乱は鎮圧され、グリーニョフは反逆罪で裁判にかけられる。マシャの嘆願により女帝エカチェリーナ2世が恩赦を与え、物語はハッピーエンドを迎える。プーシキンの筆致は古典的で、心理描写を抑えつつ、運命の皮肉と人間の慈悲(misericordia)を強調。プガチョフは野蛮だが義侠心があり、グリーニョフの「忠誠」と「愛」が試される。