そもそも彼女が魔術の道に手を染めたのは、天野誠司のような人智を超えた目的がある訳でも、リュート・ジュリウスのようなギリギリの戦いを愉しむ訳でもなく、純粋な学術的な観点からであったのだが、気がつけば最早、後戻りはできない所まで来てしまっていたのである。
リュートがアリスに師事したのは、90年代半ばであるから、その時点で既に彼女は一流どころの魔術師として認識されていたのであろう。
リュートの体に、古の神「迦具土」を宿させたのも彼女自身の手による処置であり、彼女にとっては自身の20代のすべてを代償として作り上げた結果ともいえる。
大変な愛煙家であり、コートのポケットには常に未開封の煙草を持ち歩いているが、愛弟子を自称するリュートはあまりいい顔をせず、事あるごとに健康を気遣っている……いい弟子を持ったな、アリス。