桃太郎伝説

1989年10月2日~1991年4月1日にかけてテレビ東京系列で放送された、ナック制作最後のテレビアニメシリーズ。
原作はゲームメーカーのハドソンが家庭用ゲーム機のファミコンやPCエンジン用に開発・発売し、人気を博していた同名の和風コンピュータRPGである。
原作者はさくまあきら氏、キャラクター原案は土井考幸氏。両名共当時の週刊少年ジャンプを購読していた人ならばご存じであろう。

ゲームはタイトル通り有名な昔話「桃太郎」をベースにした冒険物語である。「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」等、
当時のRPGで定番だった西洋ファンタジー風世界ではなく日本の昔話を題材とした点が斬新であり、親しみやすさを与えていた。
主人公はもちろん桃太郎で、目的は鬼ヶ島の鬼退治。お供の3匹は勿論、続編では浦島太郎や金太郎なども仲間として登場する。
現在ではよくある、様々な昔話の世界観をミックス・パロディした手法が使われている。

尚、ここから派生したボードゲーム「桃太郎電鉄」は、RPGの「伝説」シリーズが途絶えた後も定期的に新作が発売され、国民的人気を博したが、
さくま氏とハドソンを吸収し版権を引き継いだコナミデジタルエンタテインメントとの確執等、諸々の事情により、2012年2月1日に配信された
携帯アプリ「桃太郎電鉄TOKAI」を最後に一旦シリーズを終了したが、2016年12月22日に4年振りの新作であるニンテンドー3DS用ソフト
「桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!!」が任天堂から発売された。

アニメ版の第一作目は「桃太郎伝説 PEACHBOY LEGEND」というタイトルで開始された。
人気ゲームが原作でまともなスポンサーが付いていた為か、この時期のナック作品としては珍しく(?)、1話30分番組として1年間放送された。
この作品の終了後には宇宙を舞台にした続編の「PEACH COMMAND 新桃太郎伝説」が半年間放送された。

作画レベルはナック作品の中では高く、目立つ作画崩壊は殆ど無いが、その一方で玩具の販促目的や当時の男児向けアニメの流行を追った
「戦闘時に桃太郎や鬼たちが○○変化と称してプロテクターを装着、変身してSDガンダムもどきロボットの様な姿になる」という
変身ヒーロー物の要素が加えられている点については賛否両論である。
因みに原作では桃太郎達は終始生身で鬼達と戦っており、昔話の世界をブチ壊すようなSF的変身はしない。

当時の「ゲームとアニメは別物」の例に漏れず、ゲームの忠実なアニメ化というよりは、あくまでゲームからキャラクターや設定を借りた作品であり、
「新桃太郎伝説」が日本の昔話から離れた宇宙物になったのはその極端な表れと言えるだろう。
ただし原作の持つギャグテイストから、「この様な改変もアリか」と思わせてしまうのもこの作品の魅力の一つである。

基本的には様々な作品のパロディや時事ネタを混ぜ合わせながら、毎回斬新なトンでも展開が繰り広げられるテンポの良い痛快ヒーローギャグアニメである。
桃太郎の性格もかなり楽天的で、仲間を「金ちゃん」「浦ちゃん」と呼ぶ等けっこう軽い。
しかし、ギャグばかりではなく、シリアスな展開もあり、敵である鬼側にスポットを当てた話も多く描かれている。
鬼側が主役なエピソードもあれば、鬼側と桃太郎側の共同戦線を楽しく描いたエピソードもある。
更に、鬼側と桃太郎側(人間側)という敵対した立場による、お互いの自問自答や葛藤を描いた感動的かつ悲劇的なエピソードもあり、
単純な勧善微悪のヒーローアニメにはしていない中立的視点によるドラマとしても、とても優れた内容となっている。

一見するとナックアニメらしくなさそうな作品ではあるが、作中でボルガ博士死のテーマと似たBGMが使われていたり、
第1話では、顔と声が山城新伍ジュラルに似た悪火鬼村中の家に火を放っていたり、第5話では鳥葬シーンがあったり、
第11話では飛行鬼グロイザーXに似た変形をしたりと、今までのナック作品をリスペクトしているような演出も垣間見れる。

この作品での社名テロップはOPでは「KnacK」、EDでは「ナック映画」と表記されている。後者の表記はレアなのではないだろうか。
最終更新:2017年07月19日 10:25