悲鳴嶼が放送を聞いたのは、山を登り始めたときだった。
「なんと奇怪な……。どれほどの力があれば、このようなことが……」
虚空に大きく映し出されるボンドルドの顔に、悲鳴嶼は驚嘆の声を漏らす。
たとえ盲目でなかったとしても、悲鳴嶼がいた日本ではこのような光景を見ることはできなかったであろう。
悲鳴嶼は、改めて自分たちが立ち向かおうとする相手の強大さを思い知らされる。
彼の心情をよそに、放送ではボンドルドに代わって現れた空助という男が死者の発表を始めた。
たとえ盲目でなかったとしても、悲鳴嶼がいた日本ではこのような光景を見ることはできなかったであろう。
悲鳴嶼は、改めて自分たちが立ち向かおうとする相手の強大さを思い知らされる。
彼の心情をよそに、放送ではボンドルドに代わって現れた空助という男が死者の発表を始めた。
『坂田銀時…その身体の名は両津勘吉』
「!!」
「!!」
悲鳴嶼の心が、激しく揺れる。
名前の読み上げと共に映し出されたのは、まさしく今自分の意識が宿っている体。
侍・坂田銀時。
体を返すべき相手は、出会うこともかなわずこの地で命を落としてしまった。
名前の読み上げと共に映し出されたのは、まさしく今自分の意識が宿っている体。
侍・坂田銀時。
体を返すべき相手は、出会うこともかなわずこの地で命を落としてしまった。
(おそらくは殺し合いに乗った者と勇敢に戦い、力尽きたのであろう……。
どうか安らかに……)
どうか安らかに……)
悲鳴嶼は涙を流しながら念仏を唱え、銀時の成仏を祈る。
だが、衝撃はまだ終わらない。
だが、衝撃はまだ終わらない。
『童磨…その身体の名は擬態型』
「上弦の弐だと!」
「上弦の弐だと!」
空中に映し出された男の目には、十二鬼月の一員であることを示す漢字が刻まれていた。
名前がわからぬまま討ち取られた、上弦の弐。
それがまさかこの殺し合いに参加していて、しかもすでに死んでいるなど、悲鳴嶼にとってはあまりに予想外だった。
名前がわからぬまま討ち取られた、上弦の弐。
それがまさかこの殺し合いに参加していて、しかもすでに死んでいるなど、悲鳴嶼にとってはあまりに予想外だった。
(上弦の弐といえば、カナエを殺した鬼……。
この報せを聞いたしのぶの心が、乱れていなければいいのだが……。
くっ、こんな時に側にいてやれぬとは! 別行動をとったのは失敗だったか!)
この報せを聞いたしのぶの心が、乱れていなければいいのだが……。
くっ、こんな時に側にいてやれぬとは! 別行動をとったのは失敗だったか!)
おのれの決断を悔やむ悲鳴嶼。そこに、最後の衝撃が襲いかかる。
『煉獄杏寿郎…その身体の名は相楽左之助』
「なんと……。また逝ってしまったか、杏寿郎……」
「なんと……。また逝ってしまったか、杏寿郎……」
誰よりも熱く生き抜いた炎柱、煉獄杏寿郎。
かつてと同じように、またしても彼は悲鳴嶼よりも早くその命を燃やし尽くしてしまった。
かつてと同じように、またしても彼は悲鳴嶼よりも早くその命を燃やし尽くしてしまった。
(今さら疑う余地もない……。鬼殺隊としての使命を全うして死んだのだろう。
だがかなうならば……もう一度おまえと言葉を交わしたかった……)
だがかなうならば……もう一度おまえと言葉を交わしたかった……)
悲鳴嶼の目から、再び涙があふれ出た。
◆ ◆ ◆
(さて、情報を整理せねばな)
放送終了後、心を落ち着かせた悲鳴嶼は改めて与えられた情報を確認する。
お館様と無惨は、共に健在。
ゆえに、自分の方針に大きな変更はない。
禁止エリアに関しては、自分の近くには設定されなかったため現時点では問題なし。
街に向かったしのぶたちにも、特に影響はないだろう。
最後に、精神と肉体の組み合わせが記された名簿。
これがあれば助かるのは間違いないが、入手条件が他者の殺害となれば積極的に求めていくわけにもいかない。
何かの偶然で手に入れば御の字、くらいに考えておくべきだろう。
お館様と無惨は、共に健在。
ゆえに、自分の方針に大きな変更はない。
禁止エリアに関しては、自分の近くには設定されなかったため現時点では問題なし。
街に向かったしのぶたちにも、特に影響はないだろう。
最後に、精神と肉体の組み合わせが記された名簿。
これがあれば助かるのは間違いないが、入手条件が他者の殺害となれば積極的に求めていくわけにもいかない。
何かの偶然で手に入れば御の字、くらいに考えておくべきだろう。
(こんなところか……。
とりあえず、現状では方針を変える必要はない。
改めて、竈門家を目指すとしよう)
とりあえず、現状では方針を変える必要はない。
改めて、竈門家を目指すとしよう)
地図を片手に、悲鳴嶼は改めて山を登り始めた。
◆ ◆ ◆
それから、しばらく後。
悲鳴嶼は、山の中の一軒家へとたどり着いた。
悲鳴嶼は、山の中の一軒家へとたどり着いた。
(ふむ……。おそらくはここで間違いあるまい)
年季の入った民家の外観を、悲鳴嶼はまじまじと見つめる。
(彼らはこの家で、家族と仲睦まじく暮らしていたのであろう……。
だがその幸せを、鬼によって理不尽に奪われ……。
改めて思い返しても、なんと残酷な話か……)
だがその幸せを、鬼によって理不尽に奪われ……。
改めて思い返しても、なんと残酷な話か……)
炭治郎たちの過酷な人生に思いを馳せ、悲鳴嶼はまたしても滂沱する。
その時、家の中から彼に声がかけられた。
その時、家の中から彼に声がかけられた。
「おい。なんで家の前で泣いてるんだ、おまえは」
その言葉と共に姿を見せたのは、いぶかしげな表情を浮かべた美少女だった。
◆ ◆ ◆
時は、放送時点まで遡る。
脹相が放送を聞いたのは、竈門家までもう少しという地点でのことだった。
告げられる死者の中に、脹相の心を動かすような人物はいない。
彼にとって有益な情報といえるのは、両面宿儺がまだ生存しているとわかったことくらいだ。
脹相が放送を聞いたのは、竈門家までもう少しという地点でのことだった。
告げられる死者の中に、脹相の心を動かすような人物はいない。
彼にとって有益な情報といえるのは、両面宿儺がまだ生存しているとわかったことくらいだ。
(やはり、やつは力を保ったままということか?
いや、まだ殺し合いは序盤だ。
この6時間、俺と同じように誰とも会わなかったとしたら、たとえ無力な子供になっていたとしても生き残ることはできる。
判断するには、まだ情報が足りん)
いや、まだ殺し合いは序盤だ。
この6時間、俺と同じように誰とも会わなかったとしたら、たとえ無力な子供になっていたとしても生き残ることはできる。
判断するには、まだ情報が足りん)
両面宿儺については引き続き保留とし、脹相は思考を切り替える。
彼が放送の中で気になった点といえば、他には新たな名簿の存在がある。
当初はそこまで考えが回らなかったが、弟である虎杖の肉体が誰かに与えられている可能性もある。
もしそうであるならば、せめて体だけでも持ち帰ってやりたい。
新たな名簿があれば、弟の肉体の有無が確認できる。
だがそれを手に入れるには、他の参加者を殺害しなければならない。
殺し合いに乗っているのであればまったく問題ないが、脹相は殺し合いに反抗する立場だ。
そして、協力者を求める立場でもある。
名簿のためだけに殺人を行って協力できそうな参加者からの信頼を失うのは、リスクが大きすぎる。
彼が放送の中で気になった点といえば、他には新たな名簿の存在がある。
当初はそこまで考えが回らなかったが、弟である虎杖の肉体が誰かに与えられている可能性もある。
もしそうであるならば、せめて体だけでも持ち帰ってやりたい。
新たな名簿があれば、弟の肉体の有無が確認できる。
だがそれを手に入れるには、他の参加者を殺害しなければならない。
殺し合いに乗っているのであればまったく問題ないが、脹相は殺し合いに反抗する立場だ。
そして、協力者を求める立場でもある。
名簿のためだけに殺人を行って協力できそうな参加者からの信頼を失うのは、リスクが大きすぎる。
(これに関しては、諦めた方が良さそうだな。
しかしそうなると、どこに向かうべきか……)
しかしそうなると、どこに向かうべきか……)
これからのことを考え、脹相は頭を悩ませる。
今の彼には、行き先を決める指針がない。
東は殺し合いに乗った強力な参加者がいる可能性が高いので向かいたくないが、
他の方向に行ったところで強敵に遭遇する可能性は存在する。
新たに地図に浮かび上がった施設の中に、脹相に縁のある施設があるわけでもない。
よって、「とりあえずここに行ってみるか」という動機付けもない。
今の彼には、行き先を決める指針がない。
東は殺し合いに乗った強力な参加者がいる可能性が高いので向かいたくないが、
他の方向に行ったところで強敵に遭遇する可能性は存在する。
新たに地図に浮かび上がった施設の中に、脹相に縁のある施設があるわけでもない。
よって、「とりあえずここに行ってみるか」という動機付けもない。
(直感で決めるのもありだろうが……。
ここはじっくり考えるか。
それなら、屋内の方がいいだろうな)
ここはじっくり考えるか。
それなら、屋内の方がいいだろうな)
そう判断し、脹相は再び竈門家へ足を踏み入れる。
悲鳴嶼がやってきたのは、その少し後だった。
悲鳴嶼がやってきたのは、その少し後だった。
◆ ◆ ◆
そして、現在。
「これは先客に気づかず、失礼を。私は鬼殺隊の悲鳴嶼行冥という者。
どうやらこの家は仲間の一人が住んでいたものらしく、調べに来た次第」
どうやらこの家は仲間の一人が住んでいたものらしく、調べに来た次第」
姿を見せた脹相に対し、悲鳴嶼は丁寧に自己紹介を行う。
「鬼殺隊に縁のある者ならこの竈門という名前に気づき、ここを目指すのではないかと考えたのだが……。
そちらに、何か心当たりはないだろうか」
「いや、悪いがおまえの言う単語に、ピンと来るものはない。
俺はたまたまこの家を見つけて、拠点にしていただけだ」
そちらに、何か心当たりはないだろうか」
「いや、悪いがおまえの言う単語に、ピンと来るものはない。
俺はたまたまこの家を見つけて、拠点にしていただけだ」
悲鳴嶼の問いに、脹相は淡々と返す。
だがその心中では、ざわつきが生まれていた。
だがその心中では、ざわつきが生まれていた。
(キサツタイ……。おそらく、鬼を殺す隊と書くのだろうな……。
こいつ、呪術師側の人間か?)
こいつ、呪術師側の人間か?)
鬼殺隊の名に脹相は聞き覚えはないが、鬼は呪霊と置き換えることもできる。
すなわち悲鳴嶼と名乗ったこの男は、呪霊を狩る立場の人間である可能性が出てくる。
となれば立場上、脹相とは相容れないということも考えられる。
すなわち悲鳴嶼と名乗ったこの男は、呪霊を狩る立場の人間である可能性が出てくる。
となれば立場上、脹相とは相容れないということも考えられる。
(見たところ、殺し合いには乗っていないようだ。
それに、たたずまいに隙がない。おそらくは、そうとうに場数を踏んでいる。
できれば味方につけておきたいが……。上手く交渉できるか?)
それに、たたずまいに隙がない。おそらくは、そうとうに場数を踏んでいる。
できれば味方につけておきたいが……。上手く交渉できるか?)
脹相は、味方を作るために考えを巡らせる。
一方の悲鳴嶼も、ある点で脹相に対して疑念を抱いていた。
それは、脹相の体にわずかながら血が付着していることだ。
むろん、血がついているからといって殺し合いに乗っていると判断するのは短絡的すぎる。
襲撃を受け、それを返り討ちにした際に付着した可能性もあるのだから。
だが、眼前の少女が流血するような事態に遭遇しているのは事実。
その詳細を突き止めないことには、信用することはできない。
一方の悲鳴嶼も、ある点で脹相に対して疑念を抱いていた。
それは、脹相の体にわずかながら血が付着していることだ。
むろん、血がついているからといって殺し合いに乗っていると判断するのは短絡的すぎる。
襲撃を受け、それを返り討ちにした際に付着した可能性もあるのだから。
だが、眼前の少女が流血するような事態に遭遇しているのは事実。
その詳細を突き止めないことには、信用することはできない。
お互いが相手を信じられぬ中、交渉が始まろうとしていた。
【C-3 山・竈門家/朝】
【脹相@呪術廻戦】
[身体]:ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ
[状態]:健康
[装備]:竈門炭治郎の斧@鬼滅の刃、三十年式歩兵銃(装弾数5発)@ゴールデンカムイ
[道具]:基本支給品、デビ太郎のぬいぐるみクッション@アイドルマスターシャイニーカラーズ、アタッシュショットガン@仮面ライダーゼロワン、零余子の首輪
[思考・状況]基本方針:どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!主催者許さん!!!ぶっつぶす!!!
1:殺し合いには乗らない。
2:「出来る限り」殺しは控える。
3:悲鳴嶼と交渉し、味方につける
4:ユニットを捜索する。
5:両面宿儺を警戒。今は遭遇したくない
6:もし虎杖の肉体が参加させられているなら、持ち帰りたい
7:お前が関わっているのか?加茂憲倫…!!
8:どう動くにせよ協力者は必要になるだろう。
[備考]
※渋谷事変終了後以降からの参戦です。詳しい時系列は後続の人にお任せします。
※ユニット装着時の飛行は一定時間のみ可能です。
※虎杖悠仁は主催陣営に殺されたと考えています。
※竈門炭治郎の斧に遠坂凛(身体)の血が付着しています。
※服や体にも少量ですが血が飛び散っています。
[身体]:ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ
[状態]:健康
[装備]:竈門炭治郎の斧@鬼滅の刃、三十年式歩兵銃(装弾数5発)@ゴールデンカムイ
[道具]:基本支給品、デビ太郎のぬいぐるみクッション@アイドルマスターシャイニーカラーズ、アタッシュショットガン@仮面ライダーゼロワン、零余子の首輪
[思考・状況]基本方針:どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!主催者許さん!!!ぶっつぶす!!!
1:殺し合いには乗らない。
2:「出来る限り」殺しは控える。
3:悲鳴嶼と交渉し、味方につける
4:ユニットを捜索する。
5:両面宿儺を警戒。今は遭遇したくない
6:もし虎杖の肉体が参加させられているなら、持ち帰りたい
7:お前が関わっているのか?加茂憲倫…!!
8:どう動くにせよ協力者は必要になるだろう。
[備考]
※渋谷事変終了後以降からの参戦です。詳しい時系列は後続の人にお任せします。
※ユニット装着時の飛行は一定時間のみ可能です。
※虎杖悠仁は主催陣営に殺されたと考えています。
※竈門炭治郎の斧に遠坂凛(身体)の血が付着しています。
※服や体にも少量ですが血が飛び散っています。
【悲鳴嶼行冥@鬼滅の刃】
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:海楼石の鎖@ONE PIECE、バリーの肉切り包丁@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、病院で集めた薬や包帯や消毒液
[思考・状況]
基本方針:主催者の打倒
1:脹相と話し、信用できそうと判断したら協力関係を築く
2:探索を終えたら病院へ戻り、しのぶ達と合流
3:無惨を要警戒。倒したいが、まず誰の体に入っているかを確かめる
4:デビハムの話には半信半疑。桐生戦兎と大崎甜花に会い、真相を確かめたい
[備考]
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:海楼石の鎖@ONE PIECE、バリーの肉切り包丁@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、病院で集めた薬や包帯や消毒液
[思考・状況]
基本方針:主催者の打倒
1:脹相と話し、信用できそうと判断したら協力関係を築く
2:探索を終えたら病院へ戻り、しのぶ達と合流
3:無惨を要警戒。倒したいが、まず誰の体に入っているかを確かめる
4:デビハムの話には半信半疑。桐生戦兎と大崎甜花に会い、真相を確かめたい
[備考]
- 参戦時期は死亡後。
- 海楼石の鎖に肉切り包丁を巻き付けています。
75:姉畑はソレを我慢できない | 投下順に読む | 77:Ψ難再び!柊ナナの憂鬱(前編) |
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45:兄と姉の探し物 | 脹相 | 93:人の過ちにはいつまでもとやかく言うもんじゃない |
59:不安の種 | 悲鳴嶼行冥 |