「無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」
重機関銃の掃射に等しいラッシュ、威力は間違いなく銃弾以上。
ザ・ワールドが拳を連打し、殺到した弾幕は線香花火を思わせる輝きと共に霧散。
左手からは火球を、右手からはコルト・パイソンの銃弾を撃ち続けるも命中せず。
胴体や頭部へ当たる前に拳が全て払い落としてしまうのだ。
装填された銃弾は残り一発。
予備の神経断裂弾を込める余裕がこの状況である筈が無い。
ホルスターに銃を戻し、心臓を狙って突き出された刃を回避する。
ザ・ワールドが拳を連打し、殺到した弾幕は線香花火を思わせる輝きと共に霧散。
左手からは火球を、右手からはコルト・パイソンの銃弾を撃ち続けるも命中せず。
胴体や頭部へ当たる前に拳が全て払い落としてしまうのだ。
装填された銃弾は残り一発。
予備の神経断裂弾を込める余裕がこの状況である筈が無い。
ホルスターに銃を戻し、心臓を狙って突き出された刃を回避する。
「豆鉄砲に、チンケなマッチの炎。ここまで惨めでは泣けてくるな」
「他人から貰った玩具ではしゃいでるお前に言われたかねぇよ!」
「他人から貰った玩具ではしゃいでるお前に言われたかねぇよ!」
背負っていた歩兵銃を構え、銃床で顔面を狙うも腕で防御。
蒼い炎が刻まれた腕の装甲は硬く、却って杉元の方が痺れた。
このまま叩きつけたとしても歩兵銃が壊れるのが先だろう。
歩兵銃のベルトを肩に掛け両手を自由に、霊力で炎を付与。
顔面狙いで拳を放てば、エターナルローブで防がれる。
蒼い炎が刻まれた腕の装甲は硬く、却って杉元の方が痺れた。
このまま叩きつけたとしても歩兵銃が壊れるのが先だろう。
歩兵銃のベルトを肩に掛け両手を自由に、霊力で炎を付与。
顔面狙いで拳を放てば、エターナルローブで防がれる。
「めんどくせぇもん着やがって…!」
この奇妙な黒い布はどんな仕掛けか、炎を放っても燃えやしない。
破壊は難しいと判断、跳躍しエターナルの頭上を取る。
頭部を焼き潰さんと火球を連射、上空へ扇ぐようにしてローブが振るわれ炎は掻き消された。
破壊は難しいと判断、跳躍しエターナルの頭上を取る。
頭部を焼き潰さんと火球を連射、上空へ扇ぐようにしてローブが振るわれ炎は掻き消された。
「!?やっべぇ…!」
「すっトロいわ!」
「すっトロいわ!」
ローブで視界が隠されるのも束の間。
黒一面がどかされた直後目にしたのはファイティングポーズを取る拳闘士。
ザ・ワールドが放つラッシュをモロに食らってしまえば、またしても骨折する羽目になる。
いや、今のザ・ワールドは最初に杉元と戦った時よりもエターナルのエネルギーで強化されているのだ。
骨折『程度』では済まない傷を刻み付けられるだろう。
黒一面がどかされた直後目にしたのはファイティングポーズを取る拳闘士。
ザ・ワールドが放つラッシュをモロに食らってしまえば、またしても骨折する羽目になる。
いや、今のザ・ワールドは最初に杉元と戦った時よりもエターナルのエネルギーで強化されているのだ。
骨折『程度』では済まない傷を刻み付けられるだろう。
「クッ…ソッタレ!」
空中というフィールドに逃げ場はない、普通の人間ならばそう。
運が良いのか杉元の肉体は普通の範疇には入らない。
そこそこ慣れた飛行能力で空中を水平に移動、ザ・ワールドのラッシュをギリギリの所で避けられた。
だが地上から距離を取っても跳んで追い付かれるのは、最初の戦闘で痛い思いと共に把握済み。
地面を降り立ち炎の弾幕を張る杉元、その全てを拳と刃で防ぎながらエターナルが迫り来る。
運が良いのか杉元の肉体は普通の範疇には入らない。
そこそこ慣れた飛行能力で空中を水平に移動、ザ・ワールドのラッシュをギリギリの所で避けられた。
だが地上から距離を取っても跳んで追い付かれるのは、最初の戦闘で痛い思いと共に把握済み。
地面を降り立ち炎の弾幕を張る杉元、その全てを拳と刃で防ぎながらエターナルが迫り来る。
「ピカアアアアアア!」
「GUUUUUUUUU!?」
「GUUUUUUUUU!?」
刃が到達するかというタイミングで、エターナルは動きを止める。
強制的に止められたと言った方が正しい。
天高くより降り注いだ雷が頭頂部から足先まで流れ込み痺れさせた。
DIOという邪悪の蛮行を天は見過ごさず、この場面で罰を与えたのか。
否、エターナルへ神罰に等しい雷光を落としたのは黄色い獣。
でんきタイプのポケモン、ピカチュウの肉体を得た善逸だ。
強制的に止められたと言った方が正しい。
天高くより降り注いだ雷が頭頂部から足先まで流れ込み痺れさせた。
DIOという邪悪の蛮行を天は見過ごさず、この場面で罰を与えたのか。
否、エターナルへ神罰に等しい雷光を落としたのは黄色い獣。
でんきタイプのポケモン、ピカチュウの肉体を得た善逸だ。
「ピカ!?ピッピカチュウ!?(当たった!?めっちゃ綺麗に直撃しちゃったよ!?)」
「うおおおお!やるじゃねぇかお前!」
「うおおおお!やるじゃねぇかお前!」
見事な命中っぷりに謎のテンションで二人ははしゃぎ出す。
でんきタイプのポケモンが使えるわざの一つにかみなりがある。
このわざは火力こそ高いが命中率に不安が大きい。
かみなりは天候によって命中率が左右され、日差しが強ければ半分以下の確率でしか当たらない。
反面、雨天時には必中のわざとなるのだ。
でんきタイプのポケモンが使えるわざの一つにかみなりがある。
このわざは火力こそ高いが命中率に不安が大きい。
かみなりは天候によって命中率が左右され、日差しが強ければ半分以下の確率でしか当たらない。
反面、雨天時には必中のわざとなるのだ。
「やってくれたな…家畜にも劣る害獣風情が……」
「ピカピ~!!(ひえええ!めちゃくちゃ怒ってるよアイツ!)」
「ピカピ~!!(ひえええ!めちゃくちゃ怒ってるよアイツ!)」
エターナルに変身し、エターナルローブの恩恵で大ダメージは回避できた。
しかしPK学園から逃げた時と言い、悉く自分へ電気を浴びせるなど万死に値する。
殺気立つエターナルから善逸を庇うように前へ出て、杉元は挑発的に笑う。
しかしPK学園から逃げた時と言い、悉く自分へ電気を浴びせるなど万死に値する。
殺気立つエターナルから善逸を庇うように前へ出て、杉元は挑発的に笑う。
「余裕が崩れてんぞ?もっと笑ってみせろよ」
「ほざくな、火遊びしか出来んモンキーめ」
「ほざくな、火遊びしか出来んモンキーめ」
○
「ホアチョオオオオオオオッ!!!」
「鬱陶しいカスめぇぇ……!!」
「鬱陶しいカスめぇぇ……!!」
ブレイズとキュアジェラート、仮面ライダーとプリキュア。
超人的な能力を有する二人によって繰り広げられる、壮絶な殴り合い。
彼らの勢いたるや近接パワータイプのスタンドにだって引けは取らない。
超人的な能力を有する二人によって繰り広げられる、壮絶な殴り合い。
彼らの勢いたるや近接パワータイプのスタンドにだって引けは取らない。
「しぶとい小娘が!」
「お前だってガキじゃねーかヨ!こちとら橋本○奈アル!事務所が黙ってねぇぞゴラァ!」
「意味が分からんわ!!」
「お前だってガキじゃねーかヨ!こちとら橋本○奈アル!事務所が黙ってねぇぞゴラァ!」
「意味が分からんわ!!」
積層装甲に覆われた拳と、氷のブロックを纏わせた拳。
強度も威力もほぼ互角だが、押されているのはヴァニラの方だ。
強力なスタンド使いではあれど、肉弾戦ならば神楽に軍配が上がる。
ブレイズ本来の戦闘スタイルである剣術よりも、殴る蹴るの方が神楽には動き易い。
変身で身体能力を強化させたのもあって、元の肉体と謙遜無い戦闘能力を発揮していた。
強度も威力もほぼ互角だが、押されているのはヴァニラの方だ。
強力なスタンド使いではあれど、肉弾戦ならば神楽に軍配が上がる。
ブレイズ本来の戦闘スタイルである剣術よりも、殴る蹴るの方が神楽には動き易い。
変身で身体能力を強化させたのもあって、元の肉体と謙遜無い戦闘能力を発揮していた。
――岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極
ヴァニラをより劣勢へと追い込むのが飛来する刀だ。
投擲された刀を避けようにもブレイズの猛攻が許さない。
よって多少のダメージには目を瞑り、横へと大きく跳ぶ。
案の定数発の拳が叩き込まれたが、戦闘続行に支障は無い。
デイパックより回転式機関砲(ガトリング)を取り出し、今しがた横槍を入れた男へ照準を合わせる。
投擲された刀を避けようにもブレイズの猛攻が許さない。
よって多少のダメージには目を瞑り、横へと大きく跳ぶ。
案の定数発の拳が叩き込まれたが、戦闘続行に支障は無い。
デイパックより回転式機関砲(ガトリング)を取り出し、今しがた横槍を入れた男へ照準を合わせる。
「ボロクズにしてくれる!」
「むっ!?」
「むっ!?」
レバーを勢い回し、冷えていた銃身が途端に熱を帯びた。
発射された無数の銃弾を前に、只の人間がやれる事と言ったら諦めて死を受け入れるのみ。
だが銃口を向けられたのは鬼殺隊最強の岩柱。
たとえ元の肉体ではなく、本来の日輪刀が手元に無くても培った戦闘技術までは失われていない。
全身の筋肉が唸りを上げて盛り上がる。
世界は違えど数多の敵を斬り倒した剣鬼の力を今こそ発揮する時。
発射された無数の銃弾を前に、只の人間がやれる事と言ったら諦めて死を受け入れるのみ。
だが銃口を向けられたのは鬼殺隊最強の岩柱。
たとえ元の肉体ではなく、本来の日輪刀が手元に無くても培った戦闘技術までは失われていない。
全身の筋肉が唸りを上げて盛り上がる。
世界は違えど数多の敵を斬り倒した剣鬼の力を今こそ発揮する時。
地面を踏みしめ跳躍、踏み込みの力強さに地面へ亀裂が走った。
――岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部
「なんだとォ!?」
空中から刀を勢い良く振り下ろす。
言ってしまえばそれだけの単純な攻撃、しかし破壊力と勢いは岩の呼吸のなかでも随一。
照準を上空へ向けようとした時には既に、刀は真下へ振り下ろされている。
長い銃身が真っ二つに両断され、地面に転がる音が雨に消えていく。
額と鼻先から僅かに出血するヴァニラ、もう少しリーチが長ければ顔面も断たれていた。
言ってしまえばそれだけの単純な攻撃、しかし破壊力と勢いは岩の呼吸のなかでも随一。
照準を上空へ向けようとした時には既に、刀は真下へ振り下ろされている。
長い銃身が真っ二つに両断され、地面に転がる音が雨に消えていく。
額と鼻先から僅かに出血するヴァニラ、もう少しリーチが長ければ顔面も断たれていた。
武器の損失を嘆く程思い入れは無い。
クリームエネルギーで氷のブロックを射出し牽制。
鎖を振り回し砕き落とした悲鳴嶼ばかりに構ってはいられない。
蒼い影がロケットもかくやという勢いで頭から突っ込んで来る。
クリームエネルギーで氷のブロックを射出し牽制。
鎖を振り回し砕き落とした悲鳴嶼ばかりに構ってはいられない。
蒼い影がロケットもかくやという勢いで頭から突っ込んで来る。
「ぐっ…!」
両手を氷のブロックで覆い防御の態勢に入った。
突き飛ばされ掛けるも鼻息荒く気合で耐え、ブレイズの腹部を蹴り上げる。
敵も両腕で防ぎ、顔を上げると至近距離で睨み合う。
突き飛ばされ掛けるも鼻息荒く気合で耐え、ブレイズの腹部を蹴り上げる。
敵も両腕で防ぎ、顔を上げると至近距離で睨み合う。
○
甜花にとって戦兎は敵でしかなかった。
自分とDIOの愛を引き裂き、DIOを倒そうとする許し難い男。
もしDIOから戦兎を殺すよう命じられたら喜んでその通りにしただろうし、最初の定時放送前の戦いでは気を失った戦兎を殺そうとしたのは事実。
再び会う事があったとしても、戦兎へ向ける感情は敵意のみ。
今更殺すのに躊躇を抱きはしない。
むしろ今度こそDIOとの愛を邪魔する存在を消し去り、何の心配も無くDIOと一緒にいられる幸福へ身を委ねただろう。
自分とDIOの愛を引き裂き、DIOを倒そうとする許し難い男。
もしDIOから戦兎を殺すよう命じられたら喜んでその通りにしただろうし、最初の定時放送前の戦いでは気を失った戦兎を殺そうとしたのは事実。
再び会う事があったとしても、戦兎へ向ける感情は敵意のみ。
今更殺すのに躊躇を抱きはしない。
むしろ今度こそDIOとの愛を邪魔する存在を消し去り、何の心配も無くDIOと一緒にいられる幸福へ身を委ねただろう。
「戦兎さん……」
その筈だったのに、何故こんなにも怯えているのだろうか。
声が震え、足も震え、視界がぐらつき酷く気持ちが悪い。
どうしてこんな風になってしまったのか、甜花自身にも不思議で仕方なかった。
戦兎と再会した、だから何だというのだ。
殺すべき男が目の前に現れた、ならば攻撃すれば良い。
ただそれだけの話だろうに、自分は一体全体何をここまで動揺しているのか。
声が震え、足も震え、視界がぐらつき酷く気持ちが悪い。
どうしてこんな風になってしまったのか、甜花自身にも不思議で仕方なかった。
戦兎と再会した、だから何だというのだ。
殺すべき男が目の前に現れた、ならば攻撃すれば良い。
ただそれだけの話だろうに、自分は一体全体何をここまで動揺しているのか。
戦兎からはまだ何もされていない。
目の前に立って、一言名前を呼んだだけ。
その結果、自分は戦兎の顔をまともに見れないような後ろめたさと、今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られた。
理由は分からない、いや分かりたくない。
分かってしまえば自分の中で何かが壊れてしまいそうだから。
自分が目を逸らし続けてきた何かに向き合わねばならず、それがどうしようもなく恐いから。
目の前に立って、一言名前を呼んだだけ。
その結果、自分は戦兎の顔をまともに見れないような後ろめたさと、今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られた。
理由は分からない、いや分かりたくない。
分かってしまえば自分の中で何かが壊れてしまいそうだから。
自分が目を逸らし続けてきた何かに向き合わねばならず、それがどうしようもなく恐いから。
(あ、そ、そうだ……!)
だから自分を誤魔化す為の理由を作る。
きっと自分一人で戦兎と戦わねばならない事に緊張しているだけだと。
DIOやヴァニラは他の者に対処しており、戦兎とは甜花が単独で相手取らねばならない。
ゲームでも良くある展開だ。
パーティーメンバーの支援を受けられず、主人公単独でボスキャラとバトルする。
それで武者震いをしてしまったのだと、自分に対して言い訳を重ねた。
きっと自分一人で戦兎と戦わねばならない事に緊張しているだけだと。
DIOやヴァニラは他の者に対処しており、戦兎とは甜花が単独で相手取らねばならない。
ゲームでも良くある展開だ。
パーティーメンバーの支援を受けられず、主人公単独でボスキャラとバトルする。
それで武者震いをしてしまったのだと、自分に対して言い訳を重ねた。
「甜花」
「……っ!」
「……っ!」
苦しい誤魔化しはもう一度名前を呼ばれ呆気なく崩れ去る。
白い仮面の下で彼が今どんな顔をしているのか。
どんな目で自分を見つめているのか。
想像するだけで頭の中がぐちゃぐちゃになり、涙すら零れそうになった。
白い仮面の下で彼が今どんな顔をしているのか。
どんな目で自分を見つめているのか。
想像するだけで頭の中がぐちゃぐちゃになり、涙すら零れそうになった。
「こ、来ないで……!」
故に、無理やりにでも戦兎への敵意を振り絞る。
ソニックアローの照準は真っ直ぐ戦兎に向けられており、後は弦を引き放つだけだ。
有無を言わせずさっさと矢を射って仕留める。
合理的な思考ならその結論を出すのは一瞬。
だが甜花は、矢を射る前に言葉が先に飛び出した。
ソニックアローの照準は真っ直ぐ戦兎に向けられており、後は弦を引き放つだけだ。
有無を言わせずさっさと矢を射って仕留める。
合理的な思考ならその結論を出すのは一瞬。
だが甜花は、矢を射る前に言葉が先に飛び出した。
「DIOさんを傷付けるなら…せ、戦兎さんでも、こ――」
その先の言葉が出て来ない。
喉に蓋をされたように続きが押し留められ、代わりにヒューヒューという音だけが空しく這い出る。
どうして言えない、殺すとその短い言葉を口にするだけだ。
だというのに、自分の中で何かがたった三文字の言葉を言わせまいと抑えている。
それだけは言うな、言ってはならないんだと、内側から声がするようにも感じられた。
声の主は自分自身のようにも聞こえて、或いは自分の良く知る『あの娘』の声にも――
喉に蓋をされたように続きが押し留められ、代わりにヒューヒューという音だけが空しく這い出る。
どうして言えない、殺すとその短い言葉を口にするだけだ。
だというのに、自分の中で何かがたった三文字の言葉を言わせまいと抑えている。
それだけは言うな、言ってはならないんだと、内側から声がするようにも感じられた。
声の主は自分自身のようにも聞こえて、或いは自分の良く知る『あの娘』の声にも――
「……や、やっつける、んだから……!」
代わりの言葉を口にした。
気付かない振りをして、気付いてはならないと逃げを選んで。
フッと、微かな笑い声を戦兎が発した。
甜花の顔が赤く染まる。
馬鹿にしているのか、今の自分が惨めだから、だからそうやって笑うのか。
至極当然の怒りと、戦兎に嘲笑されたかもしれないという悲しみ。
後者の感情からは目を背けて、精一杯の声を張り上げる。
気付かない振りをして、気付いてはならないと逃げを選んで。
フッと、微かな笑い声を戦兎が発した。
甜花の顔が赤く染まる。
馬鹿にしているのか、今の自分が惨めだから、だからそうやって笑うのか。
至極当然の怒りと、戦兎に嘲笑されたかもしれないという悲しみ。
後者の感情からは目を背けて、精一杯の声を張り上げる。
「わ、笑わないで……!て、甜花は、ほ、本当に……」
「ああいや、別に馬鹿にしたとかじゃない。ただ、何か嬉しくなってな」
「ああいや、別に馬鹿にしたとかじゃない。ただ、何か嬉しくなってな」
怒りは困惑へと早変わり。
今のどこに喜ぶ内容が含まれていたのか。
疑問を早急に解決させたのは、続けて放たれた戦兎の言葉。
今のどこに喜ぶ内容が含まれていたのか。
疑問を早急に解決させたのは、続けて放たれた戦兎の言葉。
「わざわざやっつけるなんて言い直してまで、殺すって言いたくなかったんだろ?」
「~~~っ!!」
「~~~っ!!」
嫌な所を突かれた。
目を逸らしたソレに無理やり向き合わされ、甜花の中で何かが崩れ始める。
もうダメだ、これ以上戦兎の言葉を聞いてはいられない。
聞いてしまえば、自分は本当に砕け散ってしまう。
今も己を苛む恐怖と抵抗感に蓋をして、ソニックアローの矢を放つ。
攻撃すれば、一撃でも命中させればきっと冷静さを取り戻せる筈だと。
根拠のない考えに逃げて、矢を放ち続けた。
目を逸らしたソレに無理やり向き合わされ、甜花の中で何かが崩れ始める。
もうダメだ、これ以上戦兎の言葉を聞いてはいられない。
聞いてしまえば、自分は本当に砕け散ってしまう。
今も己を苛む恐怖と抵抗感に蓋をして、ソニックアローの矢を放つ。
攻撃すれば、一撃でも命中させればきっと冷静さを取り戻せる筈だと。
根拠のない考えに逃げて、矢を放ち続けた。
「……」
しかし当たらない。
片腕を軽く振るっただけで、矢は羽虫のように叩き落とされる。
通常形態のビルドを超える耐久力と動体視力。
加えてどれだけ自分を誤魔化そうとも、隠し切れない動揺を乗せた矢で貫ける程ビルドジーニアスは甘くない。
片腕を軽く振るっただけで、矢は羽虫のように叩き落とされる。
通常形態のビルドを超える耐久力と動体視力。
加えてどれだけ自分を誤魔化そうとも、隠し切れない動揺を乗せた矢で貫ける程ビルドジーニアスは甘くない。
「こ、この…当たって…当たってよぉ……!」
何度放っても全て叩き落とされ、苛立ちを叫んでも意味は無い。
数十発目の矢を射ろうと弦を引いた時、ソニックアローが弾かれ手元から地面に落ちた。
赤い弓を撃ち落としたのは、戦兎の右手に握られたライドブッカー。
恐るべき早撃ちと正確な狙い。
タカフルボトルの力で射撃能力を高めたが故の結果。
数十発目の矢を射ろうと弦を引いた時、ソニックアローが弾かれ手元から地面に落ちた。
赤い弓を撃ち落としたのは、戦兎の右手に握られたライドブッカー。
恐るべき早撃ちと正確な狙い。
タカフルボトルの力で射撃能力を高めたが故の結果。
「え、あ…」
武器が手元から失われたと理解するまでに約数秒。
それだけあれば戦兎が決着を着けるには十分過ぎる。
ビルドジーニアスが翳した片手から強烈な光が放射され、甜花の視界を眩ませた。
斬月に変身して尚も思わず目を閉じてしまう輝きは、ライトフルボトルの力。
それだけあれば戦兎が決着を着けるには十分過ぎる。
ビルドジーニアスが翳した片手から強烈な光が放射され、甜花の視界を眩ませた。
斬月に変身して尚も思わず目を閉じてしまう輝きは、ライトフルボトルの力。
「きゃっ……!」
再び元の光景を視界に納める前に、甜花へナニカが絡み付く。
目の調子が元に戻り甜花が見たのは、吸盤の付いた触腕。
オクトパスフルボトルの力を使い甜花を拘束し、一気に自分の方へと引き寄せる。
抜け出そうと藻掻くも無意味だ。
目の調子が元に戻り甜花が見たのは、吸盤の付いた触腕。
オクトパスフルボトルの力を使い甜花を拘束し、一気に自分の方へと引き寄せる。
抜け出そうと藻掻くも無意味だ。
「は、離して……!こ、このエッチ……!」
「人聞きの悪いこと言うなっての!けどまぁ、アイドルに向けてする事じゃねぇよな」
「そ、そうだよ……!だから、」
「人聞きの悪いこと言うなっての!けどまぁ、アイドルに向けてする事じゃねぇよな」
「そ、そうだよ……!だから、」
だから離してと、言葉が続きはしない。
触腕を伸ばしたのとは反対の掌が、甜花へと翳された。
触腕を伸ばしたのとは反対の掌が、甜花へと翳された。
「ひっ、な、なにを…」
「だからもう、戻って来い甜花。お前の本当の笑顔は誰かを傷付けるんじゃなく、応援してくれる人を喜ばせて浮かべるものだろ」
「だからもう、戻って来い甜花。お前の本当の笑顔は誰かを傷付けるんじゃなく、応援してくれる人を喜ばせて浮かべるものだろ」
掌から粒子が放出し甜花を包み込む。
現在のビルドジーニアスはビルドドライバーとジーニアスボトルを用いない、ディケイドの能力で変身したに過ぎない。
だが60本のフルボトルの効果を引き出せたように、ビルドジーニアスが持つ他の固有能力も使える可能性へ賭けた。
ネビュラガスの悪影響で人格が変貌した多治見首相を正気に戻した時のように。
キルバスの持つブラッド族の猛毒を解毒した時のように。
甜花を蝕み、彼女の心を歪ませた元凶を取り除く。
現在のビルドジーニアスはビルドドライバーとジーニアスボトルを用いない、ディケイドの能力で変身したに過ぎない。
だが60本のフルボトルの効果を引き出せたように、ビルドジーニアスが持つ他の固有能力も使える可能性へ賭けた。
ネビュラガスの悪影響で人格が変貌した多治見首相を正気に戻した時のように。
キルバスの持つブラッド族の猛毒を解毒した時のように。
甜花を蝕み、彼女の心を歪ませた元凶を取り除く。
「あ…あ…ああああああ……」
甜花の中で、音を立てて崩れていく。
DIOへの愛が、植え付けられた偽りの熱を帯びた感情が。
真実の心を捕えていた檻が粉々に砕け散る。
DIOへの愛が、植え付けられた偽りの熱を帯びた感情が。
真実の心を捕えていた檻が粉々に砕け散る。
閉じ込めていた全てが破壊され、残ったのは膝を抱えて泣いている女の子一人だけだった。
○○○
目に映る全てが記憶にあるまま。
壁の色も、並べられたゲームソフトも、ふかふかのベッドに寝転がったデビ太郎も。
一つ残らず記憶している光景と同じ。
見慣れた日常の一部分、自分の部屋のベッドの上にいた。
壁の色も、並べられたゲームソフトも、ふかふかのベッドに寝転がったデビ太郎も。
一つ残らず記憶している光景と同じ。
見慣れた日常の一部分、自分の部屋のベッドの上にいた。
横になって、デビ太郎を間に挟んで自分を見つめる少女。
自分と同じ顔の女の子だって、覚えているままだ。
風邪を引いた彼女が治ったと思えば、今度は自分の方が風邪を引いてしまった。
情けないやら何やらで落ち込む自分のベッドに潜り込み、一緒に寝てくれた時の光景。
小さい頃も同じことをした思い出、流星群を見に行くまでに治って欲しい。
そんな事を眠くなるまで話し続けた、何て事は無いけれど自分にとっては大切な思い出の一ページ。
自分と同じ顔の女の子だって、覚えているままだ。
風邪を引いた彼女が治ったと思えば、今度は自分の方が風邪を引いてしまった。
情けないやら何やらで落ち込む自分のベッドに潜り込み、一緒に寝てくれた時の光景。
小さい頃も同じことをした思い出、流星群を見に行くまでに治って欲しい。
そんな事を眠くなるまで話し続けた、何て事は無いけれど自分にとっては大切な思い出の一ページ。
だけど妹が自分へ向けたのは、あの時とは違う顔。
寂しそうな、苦しそうな笑みで彼女は言う。
寂しそうな、苦しそうな笑みで彼女は言う。
『甜花ちゃんは…これで良いの?』
何がとか、どういう意味とか聞き返しはしない。
どれを指して問い掛けているのか、自分でも分かる。
分かるからこそ、妹の顔をまともに見れなかった。
どれを指して問い掛けているのか、自分でも分かる。
分かるからこそ、妹の顔をまともに見れなかった。
『……』
『甜花ちゃん』
『甜花ちゃん』
ビクリと肩が震える。
怒鳴られたとかじゃあない、いつもと同じ優しい声で名前を呼ばれた。
それなのに自分は俯き布団を見るばかりで、彼女の方を全然見れない。
カチコチと時計の音がやけに大きく聞こえる中、妹は何も言わずに自分の答えを待っている。
黙ってやり過ごす気にもなれなくて、でも言葉一つを返すのにも物凄く勇気が必要で。
怒鳴られたとかじゃあない、いつもと同じ優しい声で名前を呼ばれた。
それなのに自分は俯き布団を見るばかりで、彼女の方を全然見れない。
カチコチと時計の音がやけに大きく聞こえる中、妹は何も言わずに自分の答えを待っている。
黙ってやり過ごす気にもなれなくて、でも言葉一つを返すのにも物凄く勇気が必要で。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
もしかすると1分すら経っていないのかもしれない。
ボソボソと、普段の自分よりもずっと小さく呟いた。
もしかすると1分すら経っていないのかもしれない。
ボソボソと、普段の自分よりもずっと小さく呟いた。
『良く…ない……』
何も良い訳が無い。
沢山間違えて、傷付けてしまったのが良いだなんて口が裂けても言えない。
蚊が鳴くよりもずっと小さい声だけど、彼女はちゃんと聞いてくれた。
姉の言葉はしっかり届き、顔を綻ばせる。
これまでの悲し気な笑みから、ようやっと安堵したように。
沢山間違えて、傷付けてしまったのが良いだなんて口が裂けても言えない。
蚊が鳴くよりもずっと小さい声だけど、彼女はちゃんと聞いてくれた。
姉の言葉はしっかり届き、顔を綻ばせる。
これまでの悲し気な笑みから、ようやっと安堵したように。
『でも……無理……』
それでも、今の自分に彼女から笑みを向けられるのは苦しかった。
この期に及んで逃げようとする自分が情けないとは分かっていても、顔を上げれない。
自分の間違いと向き合うのが恐くて仕方ない。
全部を見ない・聞こえない振りしようと、布団の中に隠れようとする。
この期に及んで逃げようとする自分が情けないとは分かっていても、顔を上げれない。
自分の間違いと向き合うのが恐くて仕方ない。
全部を見ない・聞こえない振りしようと、布団の中に隠れようとする。
『大丈夫だよ』
なのに妹が掛ける言葉はどこまでも優しくて。
『だって甜花ちゃんは、優しくて、可愛くて、かっこよくて』
弱い自分も情けない自分も全部包み込んでくれて。
『甘奈がだーいすきな、自慢のお姉ちゃんなんだから!』
涙が出るくらいに暖かかった。
◆
ガシャリと音を立てて戦極ドライバーが外れる。
装甲もライドウェアも消失し、力無く崩れ落ちた甜花を戦兎は抱き起こした。
装甲もライドウェアも消失し、力無く崩れ落ちた甜花を戦兎は抱き起こした。
「甜花!」
名前を呼ぶと虚ろな瞳と目が合う。
まさか失敗してしまったのかと、嫌な予感で胸が苦しくなる。
尤もそんな悪い考えは現実のものにはならなかった。
徐々に甜花の目は生気を取り戻し、ビルドの仮面をハッキリ瞳に映す。
まさか失敗してしまったのかと、嫌な予感で胸が苦しくなる。
尤もそんな悪い考えは現実のものにはならなかった。
徐々に甜花の目は生気を取り戻し、ビルドの仮面をハッキリ瞳に映す。
「戦兎さん……」
か細い声で自分の名を呼ぶ少女は、DIOへの愛を口にしていた時とは違うと分かる。
ビルドジーニアスの浄化能力はちゃんと効果があった。
今度こそ甜花の心を取り戻せたのだと実感し、安堵の息が深く漏れる。
が、安心は長く続かない。
戦兎が見つめるすぐ近くで甜花がポロポロと泣き出したからだ。
ビルドジーニアスの浄化能力はちゃんと効果があった。
今度こそ甜花の心を取り戻せたのだと実感し、安堵の息が深く漏れる。
が、安心は長く続かない。
戦兎が見つめるすぐ近くで甜花がポロポロと泣き出したからだ。
「うっ…ぐすっ……うぅ……」
「ちょ、おい、どうした甜花?もしかしてどっか怪我でも……」
「ちょ、おい、どうした甜花?もしかしてどっか怪我でも……」
オロオロし出す戦兎に、泣きながら首を横に振る。
「だって…せ、戦兎さん、て、甜花の、こと…守ってくれて…ずっと、助けようとして、くれて…っ」
怪我など、戦兎から付けられた傷など一つも無い。
仮面ライダーとして戦い慣れている戦兎なら、甜花を一方的に叩きのめすのは容易かっただろう。
それに成人男性と女子高生なら、変身しなくたって力で敵わない。
だけど戦兎はただの一度も甜花を攻撃しなかった。
武器を手放させ捕まえはしたけど、直接斬ったり撃ったり、殴ったりは絶対にしなかったのだ。
自分は戦兎を何度も斬り、殺そうとまでしたのに。
仮面ライダーとして戦い慣れている戦兎なら、甜花を一方的に叩きのめすのは容易かっただろう。
それに成人男性と女子高生なら、変身しなくたって力で敵わない。
だけど戦兎はただの一度も甜花を攻撃しなかった。
武器を手放させ捕まえはしたけど、直接斬ったり撃ったり、殴ったりは絶対にしなかったのだ。
自分は戦兎を何度も斬り、殺そうとまでしたのに。
「なのに…!たくさん、傷つけて…酷いことも、いっぱい、言って…!」
守ってくれると約束した。
戦兎は約束を破らず、自分を守る為に戦ってくれた。
DIOに操られてからも見捨てようとはせず、助けに来てくれた。
こんなにも優しい人なのに、自分は何て事をしてしまったんだろう。
彼を裏切り、傷付け、優しさを踏み躙って何がしたかったんだろう。
罪悪感と、自分への怒りで心がはち切れそうだ。
戦兎は約束を破らず、自分を守る為に戦ってくれた。
DIOに操られてからも見捨てようとはせず、助けに来てくれた。
こんなにも優しい人なのに、自分は何て事をしてしまったんだろう。
彼を裏切り、傷付け、優しさを踏み躙って何がしたかったんだろう。
罪悪感と、自分への怒りで心がはち切れそうだ。
「ごめん、なさい…ごめんなさい……戦兎さん…ごめんなさい…!ごめんなsわぶっ!?」
くしゃくしゃにした顔へ柔らかい物を押し付けられる。
涙ながらの懺悔も強制的にストップし、素っ頓狂な声を出してしまう。
いきなりの事で目を白黒させるも、自分の顔へ押し付けられたソレと目が合った。
見覚えがある、小さい頃からずっと知っている。
どうしてここにあるのかという疑問を思うより先に、名前が口を突いて出た。
涙ながらの懺悔も強制的にストップし、素っ頓狂な声を出してしまう。
いきなりの事で目を白黒させるも、自分の顔へ押し付けられたソレと目が合った。
見覚えがある、小さい頃からずっと知っている。
どうしてここにあるのかという疑問を思うより先に、名前が口を突いて出た。
「デビ太郎……?」
紫色の可愛らしい悪魔は、変わらぬ笑みで甜花を見つめている。
ぽかんと口を開け呆けていると、優しい声が掛けられた。
ぽかんと口を開け呆けていると、優しい声が掛けられた。
「そんな顔してるとせっかくの綺麗な顔が台無しだぞ?」
「あ……」
「あ……」
その言葉は覚えている。
忘れる筈が無い。
いきなり殺し合いに巻き込まれ、体が甘奈になっていて、途方に暮れていた自分が彼と最初に会った時の言葉。
初対面の自分を本気で心配し、力になると約束してくれた戦兎が言ったこと。
忘れる筈が無い。
いきなり殺し合いに巻き込まれ、体が甘奈になっていて、途方に暮れていた自分が彼と最初に会った時の言葉。
初対面の自分を本気で心配し、力になると約束してくれた戦兎が言ったこと。
顔を上げるとあったのは白い仮面で素顔は見えない。
でも甜花には分かった。
きっと彼はあの時と同じ表情をしているんだろう。
くしゃっとした、甜花が戦兎を信じてみようと思った切っ掛けになった笑顔。
でも甜花には分かった。
きっと彼はあの時と同じ表情をしているんだろう。
くしゃっとした、甜花が戦兎を信じてみようと思った切っ掛けになった笑顔。
「甜花、DIOにお前を洗脳されたのを防げなかった俺が言っても説得力は無いかもしれないけど、もう一度約束させてくれ。甜花も、甘奈も、殺し合いに巻き込まれた人達を必ず守る。だって俺は」
「正義のヒーロー、仮面ライダービルド…だから、だよね……?」
「正義のヒーロー、仮面ライダービルド…だから、だよね……?」
泣き腫らした顔でイタズラっぽく笑うと、ちょっとだけ驚いた雰囲気になった。
でもすぐに肯定されて、嬉しそうな笑い声が聞こえる。
それが甜花にもとっても嬉しくて、今度は別の理由で涙が出そうだった。
でもすぐに肯定されて、嬉しそうな笑い声が聞こえる。
それが甜花にもとっても嬉しくて、今度は別の理由で涙が出そうだった。
「…さて、と。甜花、悪いがもうちょっとだけ待っててくれ」
ひとしきり笑い合うと戦兎は真剣さを取り戻し立ち上がる。
甜花の救出には成功したが、戦い自体はまだ継続中。
今この瞬間にも杉元達はDIOと戦闘の真っ最中だ。
自分も急ぎ加勢に向かわねばならない。
戦いが終わるまで甜花には隠れてもらった方が良いだろう。
甜花の救出には成功したが、戦い自体はまだ継続中。
今この瞬間にも杉元達はDIOと戦闘の真っ最中だ。
自分も急ぎ加勢に向かわねばならない。
戦いが終わるまで甜花には隠れてもらった方が良いだろう。
「ま、待って…!」
戦兎が何を言う気なのか察し、彼の言葉を押しとどめる。
心配してくれる気持ちは嬉しい。
洗脳されていた自分をまたこうして気遣ってくれて、胸が暖かくなるのも本当。
だけどもう、守られるだけの自分ではいられなかった。
心配してくれる気持ちは嬉しい。
洗脳されていた自分をまたこうして気遣ってくれて、胸が暖かくなるのも本当。
だけどもう、守られるだけの自分ではいられなかった。
「て、甜花も…一緒に戦う……!」
「…いや、それは」
「…いや、それは」
仮面ライダーの変身道具があり、実際に何度か変身している。
だからといって戦いへ駆り出すのには抵抗があるし、そもそも変身する必要が無いよう守ると決めた相手だ。
決意に水を差すと自覚しつつ、甜花の言葉を否定しようとする。
だからといって戦いへ駆り出すのには抵抗があるし、そもそも変身する必要が無いよう守ると決めた相手だ。
決意に水を差すと自覚しつつ、甜花の言葉を否定しようとする。
「戦兎さんが、甜花のことを守ってくれたみたいに…甜花も、戦兎さんの、ち、力になりたいの…!甜花だって、戦兎さんには…い、生きて欲しいから…戦兎さんの、くしゃって笑った顔…これからも見たい、から…!」
たどたどしく、それでも思いのままをストレートにぶつけられた。
言おうとしていた否定の言葉も、口の中で煙のように消えてしまう。
これには参った。
甜花を戦場に引きずり出すのには反対だったのに、こうも真摯な想いを向けられてはその意思にブレが生じるじゃあないか。
こういう時、自分の知る連中ならば何と言うのだろう。
言おうとしていた否定の言葉も、口の中で煙のように消えてしまう。
これには参った。
甜花を戦場に引きずり出すのには反対だったのに、こうも真摯な想いを向けられてはその意思にブレが生じるじゃあないか。
こういう時、自分の知る連中ならば何と言うのだろう。
『うっし、んじゃ一緒にあのDIOとかいう野郎をぶん殴りに行くか!』
『ガキの癖に一丁前に根性見せやがって…あっ!違うよみーたん!俺はみーたん一筋だからね!』
『フッ…答えはもう出ている(右に同じと書かれたTシャツを見せる』
『ガキの癖に一丁前に根性見せやがって…あっ!違うよみーたん!俺はみーたん一筋だからね!』
『フッ…答えはもう出ている(右に同じと書かれたTシャツを見せる』
筋肉馬鹿と、ドルオタと、Tシャツ芸ヒゲの三人が口々に頭の中で好き勝手に言う。
こんな時にまで騒がしく馬鹿な連中に、ついつい笑みが零れるもそこに嘲りの色は無い。
硬い決意で真っ直ぐに見つめる甜花へ、力強く頷き返した。
硬い決意で真っ直ぐに見つめる甜花へ、力強く頷き返した。
○
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
「クソッ!!」
「クソッ!!」
炎の弾幕を力づくで突破したザ・ワールドのラッシュへ悪態を吐くのはこれで何度目だろうか。
一々数えていられる余裕も持てず、地面を転がり距離を取る。
杉元の全身には無数の傷が刻まれており、戦いの激しさを如実に表していた。
一々数えていられる余裕も持てず、地面を転がり距離を取る。
杉元の全身には無数の傷が刻まれており、戦いの激しさを如実に表していた。
「おい、まだ生きてるか?」
「ぴ、ピガ~…(な、何とか…)」
「ぴ、ピガ~…(な、何とか…)」
自分の足元から聞こえた声には疲労が色濃く浮かんでいる。
でんこうせっかで翻弄し、時には電撃を放とうとするもその前に攻撃され、辛うじて避け続けた。
それも何時まで続けられるやら、疲れは容赦なく善逸の動きを鈍らせている。
元の肉体かせめて人間の体ならまだしも、この体では全集中の呼吸も使えない。
ないものねだりをしたって意味は無いと分かっていても、愚痴の一つや二つは零したかった。
でんこうせっかで翻弄し、時には電撃を放とうとするもその前に攻撃され、辛うじて避け続けた。
それも何時まで続けられるやら、疲れは容赦なく善逸の動きを鈍らせている。
元の肉体かせめて人間の体ならまだしも、この体では全集中の呼吸も使えない。
ないものねだりをしたって意味は無いと分かっていても、愚痴の一つや二つは零したかった。
休憩時間はもう終わりだ。
接近してくるエターナルとザ・ワールドを迎え撃つべく、炎と電気を迸らせる。
接近してくるエターナルとザ・ワールドを迎え撃つべく、炎と電気を迸らせる。
「っ!?チィッ!」
だがその必要も無くなった。
突如殺到するエネルギー弾と矢を斬り落とし、叩き落とす。
杉元達への攻撃が止まり、妨害した者へと怒りの籠ったレンズを向ける。
突如殺到するエネルギー弾と矢を斬り落とし、叩き落とす。
杉元達への攻撃が止まり、妨害した者へと怒りの籠ったレンズを向ける。
白と白。
ビルドジーニアスと斬月・ジンバーメロンアームズ。
睨み付けるエターナルの眼光にも怯まず。堂々と参戦を果たした。
ビルドジーニアスと斬月・ジンバーメロンアームズ。
睨み付けるエターナルの眼光にも怯まず。堂々と参戦を果たした。
「悪い、待たせちまったな。こっからは俺達も戦う」
「桐生…ってことは上手くいったんだな?」
「桐生…ってことは上手くいったんだな?」
頷く戦兎に杉元も顔を綻ばせる。
望まない形でDIOに従わされていた少女が正気を取り戻したなら、歓迎すべき事だ。
望まない形でDIOに従わされていた少女が正気を取り戻したなら、歓迎すべき事だ。
「…フン、そうか」
興味無さ気に鼻を鳴らすDIOからは、甜花を取り返された悔しさなどは全く感じられない。
所詮は支給品の効果で支配下に置いただけの小娘、惜しくも何とも無かった。
所詮は支給品の効果で支配下に置いただけの小娘、惜しくも何とも無かった。
「残念だよ甜花、もう少し賢い判断をしてくれると期待したのだが」
とはいえそれはそれとして、二言三言は口にしておくらしい。
上辺だけの失望をぶつけられ縮こまりそうになるも、甜花は負けて堪るかと自分を奮い立たせる。
操られてではない、自分の意思で戦うと決めたなら何時までも怯えていられない。
上辺だけの失望をぶつけられ縮こまりそうになるも、甜花は負けて堪るかと自分を奮い立たせる。
操られてではない、自分の意思で戦うと決めたなら何時までも怯えていられない。
「て、甜花はもう、間違えたりしない……!戦兎さん達と一緒に戦うって、決めたの……!」
「そういう事だ。DIO、お前の言うことなんざ俺達には響かねぇんだよ」
「そういう事だ。DIO、お前の言うことなんざ俺達には響かねぇんだよ」
甜花に続き、戦兎も啖呵を切る。
彼の言葉は甜花に戦う為の勇気を与えてくれた。
もう二度と甜花をDIOの好きになどさせてやるものか。
決意新たに対峙するビルドジーニアスへ、エターナルが向ける視線はどこまでも冷たい。
彼の言葉は甜花に戦う為の勇気を与えてくれた。
もう二度と甜花をDIOの好きになどさせてやるものか。
決意新たに対峙するビルドジーニアスへ、エターナルが向ける視線はどこまでも冷たい。
「全く…実に下らん。何故ちっぽけな人間の考える事は似たり寄ったりなんだ?」
小娘一人奪い返した程度で、もう勝った気になっているのか。
お仲間同士で協力し合えば勝てると、本気で信じているのか。
下らない、余りにも下らな過ぎる。
お仲間同士で協力し合えば勝てると、本気で信じているのか。
下らない、余りにも下らな過ぎる。
「良いだろう。貴様らの思い上がりもここまでだ」
このDIOから勝利を奪い取れるなどと言う儚い幻想。
そんなものを何時までも抱いている馬鹿どもへ、いい加減に引導を渡してやらねば。
自分達が誰を敵に回してしまったのか、どれだけ愚かしい真似に出たのかを。
世の道理をまるで知らない無知蒙昧な馬鹿どもを躾てやるのも、支配者の役目。
エターナルエッジを手の中で一回転させ、人間どもへと斬り掛かった。
そんなものを何時までも抱いている馬鹿どもへ、いい加減に引導を渡してやらねば。
自分達が誰を敵に回してしまったのか、どれだけ愚かしい真似に出たのかを。
世の道理をまるで知らない無知蒙昧な馬鹿どもを躾てやるのも、支配者の役目。
エターナルエッジを手の中で一回転させ、人間どもへと斬り掛かった。
邪悪を前にして戦兎は不敵に笑う。
そっちがその気なら、こっちだって容赦はしない。
戦う覚悟なら、とっくの昔に完了済みだ。
そっちがその気なら、こっちだって容赦はしない。
戦う覚悟なら、とっくの昔に完了済みだ。
「さぁ、実験を始めようか」