カオスファンタズマ Re:慟哭篇 プロローグ ログ①



― エントランス「円環の間」 ―




メディ(NPC)「……はい、お待たせしました。これで体力は全回復されましたよ。 」

フレイミス「……今回ばかりはマジで死にかけた。改めて生きてるって実感がするよ。ありがとう。 」

メディ(NPC)「ゲームとはいえ、長時間のプレイはお体に障りますよ。それに、毎度忠告しておりますが本当に無茶ばかりされると取り返しのつかないことになります。お気をつけてくださいませ。 」

フレイミス「…ああ……(バツが悪そうに後頭部を掻きむしりながら頭を下げ、メディカルステーションを後にする)………(シフトチェンジの拡張だけじゃ限界を感じる。正直…まだプランンダラへの対抗手段も定まっていない。無茶はしたくねえが、そうでもしないと抵抗するのに精一杯だ。どうすれば……)(悶々と悩みながら俯き気味に歩きだす) 」


ド ン ッ ―――――(そんな時、フレイミスが誰かと肩をぶつけてしまう)


フレイミス「っと……すまねえ……(肩をぶつけた相手に申し訳なく謝罪すると共に、恐る恐るその顔を見上げる) 」

×××「――――――――――(フレイミスと視線を交わすのは、彼よりも背丈の高い青年と思わしき男性。黒縁の眼鏡に、拘束具のような装飾が施された黒いロングコートを着用した、色白の男。レンズの内側には鋭く洗練されたような慧眼が静かに光っていた)…………ああ、構わない。(全く気にしていないと、済ました表情をひとつ残してそのまま少年を横切ろうとする―――) 」

フレイミス「……(ダメだ…もやもやしていると何も見えなくなる……いるはずのねェ『ゲール』のおっちゃんの幻覚まで見てしまった……一旦ソーダでも飲んで―――――)――――― ん゛ ? ? ? (ふと、振り返る。ちょうどすれ違った人物の背中を、二度、三度と見る。少年にとっては見覚えがあるのだろうか、今まで見せたことのない意外な驚きっぷりを見せた) 」

フレイミス「―――――― 『 ゲール 』の…おっちゃん……? (横切った眼鏡の青年を、真偽を確かめるような不安げな声音で呼び止めた) 」

×××「――――――――(少年の覚束ない声音に、男は歩みを止めた)…………(そして静かに振り返る。相対する者の神経を凍てつかせるような慧眼が、少年を確かに捉えた)…………妙だな… 『 その名 』で呼ぶのは、記憶の中では「ただ一人」だけだ。 」

フレイミス「…お……俺だよ…っ……!ゲールのおっちゃん!ほら、俺…!「フレイミス」だよ…っ!!(自分の顎元を人差し指で指し示しながらずずいっと歩み寄る) 」

×××「……『フレイミス』……?(男は、怪訝そうに首を傾げる。本当に身に覚えがないのか、数秒間見つめ合っていても表情が晴れる兆しは見受けられない)………少年、恐らくだが人違いだ。多分、その『ゲール』という人物も偶然として私の『愛称』と同じなのかもしれない。この世には、自分に似た人間が複数人存在するように…名もまた然り。どうやら私の見当違いだったようだ。(再び踵を返そうとするが―――) 」

フレイミス「なっ……そんなことねえって!!(踵を返した男の前へ遮るように回り込む) 水臭ェことすんなよ…!まさか『ゲール』のおっちゃんまで"この時代"に来ていたなんてよ……!って…なんだぁ~…?俺と再会できたことがうれしくて、照れてんのか?(このこの~、と悪戯少年らしく肘で小突いて茶化す) 」

×××「………少年、あまり大人を揶揄うものじゃないな。少なくとも私はその辺の大人よりは大人げない節があるのは自覚しているつもりだ。ここで見ず知らずの少年を蹴り飛ばしてしまう程には、な。 」

フレイミス「ちょま…冗談キツいって……!誰が俺の『シフトギア』を作ってくれたんだよ~…!ほらっ、これ!アンタの"最高傑作"だって…言ってくれたじゃんかよ…!(そう言いながら自分の義手を見せつけるように突き出す) 」

×××「なに……――――――― ! (突き出された義手に渋々視線を落とすが、ここで、男の目つきが変わった。静かにその鋼鉄の腕を持ち上げ、表面に刻まれた識別番号を捉えたのだ)―――――……「GR:26134」…… それに、この独特の数字フォント…… 少年、この義手を何処で? 」

フレイミス「どこって……いやだから、『こいつ』はおっちゃんが俺の為に造ってくれたんじゃ―――― 」

×××「…………(男は閉口する。その識別番号に視線を落としたまま。これには心当たりがあるのか、もう片方の手の指先で、刷り込まれた番号の表面を静かに摩った)…………『GR:』…そして、このフォント… これは間違いなく、私の『発明』の証そのものだ。この世に数え切れぬほどのものを生み出してきたが、私はそのすべてを完全に記憶している。だが…この番号……現在開発している「GR:10140」から"かなり先"だ。それ以上の番号を私は構築しない。……これは、本当に『私』が少年に与えたものなのか? 」

フレイミス「………そうだよ…まだ信じちゃくれねえのかよ……?俺は、"15年後の未来"で、『ゲール』のおっちゃんに「こいつ」を作ってもらったんだ。本当だ…!(訴えかけるような本機の眼差しで、背丈のある男へ詰め寄る) 」

×××「…………(俄かには信じがたいと眉を顰めるが、ここで、信憑性を突き止めるべくある疑問を思い浮かべる―――)―――――― 少年、本名は? 」

フレイミス「……――――――― 『 フレイミス・ティルク・カオス 』だ  」

×××「―――――― ! (合点がいった――― 納得したかのように目を閉ざしながら顎を突き出すように頭(こうべ)を反り上げ、小さな溜息をついた)…………………なるほど、"そういうこと"か。 」

フレイミス「な、なんだよ……まだ、信じちゃくれねえってのかよ…… 」

×××「いや……そうだな…。信じるという言うにはまだ判断材料は乏しいが、少なくとも「私」と「少年」には繋がりがあるということは理解した。フッ……そうか…… その反応から伺うに、どうやら少年の言う"未来"とやらにいる『私』は、今と相違ない姿なのだな。 」

フレイミス「あ…ああ……そうだぜ… 俺の知ってる『ゲール』のおっちゃんは、おっちゃんっつっても若すぎる見た目してんだ。実年齢は聞いた事ねえが…ずっと外見は変わらないままだって…… 」

×××「だとしたらそれは私が既に完成させた人工臓器が、少年の生きる時代まで機能し続けているということなのだろう。そうか……15年後も私は存在し続けているのか……未来の可能性は千差万別。特異点による幾重の分岐を辿ることで並行世界に存在し得るあらゆる可能性を秘めた私の結末は計り知れんが、10年以上と生き永らえた個体はその後も研究を続けていたところを鑑みるに、まだプロジェクトの完遂には至れていないと判断するか否か―――― 」

フレイミス「?????????? 」

×××「………ああ、すまない。私としたことが、またいつもの独り言が。そうか…『 フレイミス 』…というのだな。少年…いや、君は私のことを知っているようだが、悔しいことに私にとって「君」は"未知"の存在だ。この時代から遷移して生まれ出ずる胎児が成長した果てが「君」となるのか。あるいは別の人格を持つのか。またあるいは生まれることがない運命を辿るか…いずれにせよ、私の知らないものが、私の前に現れた。これには俄然として興味を示さずにはいられない。 」

×××「 私にとっては"はじめまして"だ。故に自己紹介をしておこう。  」



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××× → ゲルニカ「    ゲール・P・パブロ―――― またの名を、『 ゲルニカ 』だ     」




― エントランス「円環の間」・休憩エリア ―


ゲルニカ「………ふむ、なるほど…そういう仕組みか……(フレイミスの義手に内蔵されたUSBポートに自前のラップトップを接続し、その内部構造をデジタル化されたデータを吟味するように閲覧していた)……フッ…これは確かに「私」らしい造り方をしていると言えば頷ける箇所は多々ある。数十年先の未来ともなれば私自身も科学技術も大幅な進歩を遂げている。現状の私ですらこの短時間で完全把握とまではいかないのがなんとも悔しいところだな。(だが、まんざらでもなさそうに小さな笑みを含みながら紙コップコーヒーを口に含む) 」

フレイミス「な、なんかわかったのかよ…?(義手の片腕をテーブルの上に乗せて硬直していたが、緊張をほぐす為に瓶ソーダに手を伸ばす) 」

ゲルニカ「“シフトチェンジ”機能を搭載した『シフトギア』… 戦況に応じて全身を多種多彩な武装に瞬間変形させる戦闘特化型パワードスーツ、か。唯一の欠点はシフトチェンジの重複による負荷といったところか。最初に変形した武装を第1ギアと呼称した時、別部位となる第2ギアの変形を行えば第1ギアの高速演算処理との兼ね合いによって、両ギア共に処理速度が低速。ギアを重ねれば重ねる程、インターバルが生じるのもやむを得ないか。 」

フレイミス「ああ…それはゲールのおっちゃ…あいや、未来のおっちゃんから忠告されてんだ。他の違ェ"型"と併用すれば時期にガタが来るって。肝には銘じてるつもりだ。実際…ゲームでもギアの重複はこの前の60層ボス戦で使ったのが初めてだ。だけど…これから先のことを考えれば、ギアを重ねる無茶をしねえと対抗が難しいんだ… 」

ゲルニカ「……なるほど。力を得るために我が身を犠牲にするか、我が身を案じて最低限の力で突破口を開くか…か。実に、褊狭な思考だ。まだまだ子どもだな。 」

フレイミス「わ、悪かったな…!でもどうしようもねえのは事実なんだよ… 」

ゲルニカ「………少年、君は―――――「 力 」とはどう考える? 」

フレイミス「……は……? 」

ゲルニカ「人間…否、この世に生を受けたすべての生命が持つ「 力 」とは、物体の状態を変える相互作用にある。一方的に働くものではなく、ある2つの物体の間に働くということだ。 」

ゲルニカ「ある物理学者が供述した万有引力の法則は聞いたことあるか?小学校でも習うはずだ。「リンゴが、星の引力に引っ張られて落ちた」なんて聞いて事があるだろう。しかしこの表現は適切ではない。これでは星がリンゴに対して一方的に力を与え、リンゴだけを動かしているように捉われてしまう。 」

ゲルニカ「正確には、「星とリンゴの間にお互いを引っ張り合う力」が発生し、その力によって、星とリンゴが動いた結果なのだ。これが、「力」は相互作用にあるということだ。これは重力の話に留ま粗ず、現代物理学で解明されているすべての力に共通することだ。全ての力はプラス電荷とマイナス電荷、N極とS極、男と女、のように、ある物体と物体の間で発生するものであり、そして、必ず両方に影響を与えるような仕組みで働く。つまり、力とは、本質的に、相互作用によって生まれるものなのだ。この世界に、「一方的に相手に働きかける力」というものは、存在しない。 」

フレイミス「………????? 」

ゲルニカ「……科学的根拠の解明は苦手か?ならば、もう少し端的に解説しよう。「破壊力」や「瞬発力」といったように、「力」のつく熟語があるだろう?これらは能動的作用を表現するように見えるが、実際は違う。自身の力で物を破壊できなければ「破壊力」は皆無であり、何かに向かって自ら動かなければ「瞬発力」は発生しない。即ち、「力」とは、齎す側のみで発生するものではない。加えるものと、加えられるもの…双方が「力」に対するアクションが発生してはじめて「力」というものが生まれるロジックだ。 」

ゲルニカ「少年。君は、本来持ち得る「力」を一方的に引き出そうと躍起になっている。「力」に渇望するものは、どうすれば強くなれるか?と思考を巡らせる。しかし、そもそものスタートラインを吐き違えばいつまでも望んだ強さには到達できまい。「力」に手を伸ばすあまり前のめりになれば必ず転倒するように、欲すれば欲する程遠ざかっていくだけだ。 」

フレイミス「……じゃあ…どうすればいいんだよ…… 」

ゲルニカ「わからないか?「押してもだめなら引いてみろ」と言うことだ。結論から言う。そのシフトギアにはまだ「大いなる機能」が備わっている。君自身にまだ見ぬ潜在能力が眠っているようにな。だが先程の解析を見れば、その「機能」が使われた痕跡は一度たりともないことが確認できた。 」

フレイミス「なっ…なんだよそれ…!?「そんなもん」があるっておっちゃんから聞いてないぞ…!? 」

ゲルニカ「だろうな。「私」ならまず最初から「すべて」を伝えることはしない。それは現在(いま)も未来の「私」も金輪際変わりはしない拘りだ。……何故だと疑問しているな。 」

フレイミス「………… 」

ゲルニカ「私はな…今まで邂逅を経てきた来た者たちに「力」とは何かを問いかけてきた。誰も彼もが、己が言葉でその意味を応えてきた。先程私が口にしたのはあくまで物理学的視点での話であり、本当の意味で「力」を完璧に理解している者はこの世に存在しない。故に、「力」とは何か…この命題に正解は無い。「力」を持つ者の数だけ、「力」が存在する。 」

ゲルニカ「 そして、各々の「力」に対する答えを対価に、私は彼・彼女たちに武装と、それを操る為の小さな智慧を貸した。『形なき魂魄の炎の宿刀』… 『神を否定する雷(いかずち)の剣』… 『発条仕掛けの無限発火義手』… 『拡張変形可能武装』… 『始祖霊長の懐中時計』… 『人格を宿す剣』… 『時間を欺く拳銃』… 『幻影を断つ剣』… 『春夏秋冬を彩る刀』… 『己を偽る仮面』… 『全てを零(む)に帰す輪廻』… 『彗星の魔法杖』… 『理想を形にする黄金槍』… 」

ゲルニカ「これらの「力」を得た者たちは、今もどこかで己が命題と向き合い続けている。今でもその答えを探し続けている。私もその一人だ。「力」を得ようとする意思は傲慢でも罪悪でも羞恥でもない。生きるための理想や信義を貫くに不可欠なものだ。少年、君も、君自身の中でその命題と向き合え。 」

ゲルニカ「 "無い"ものは無い。"有る"のだ、はじめから。「力」は、誰の中にも必ず眠っている。「それ」を引き出せるのは、他でもない自分自身だけである。 」

フレイミス「………わかんねえよ…おっちゃんの言うこと…… 」

ゲルニカ「少年が故だ。是非もない。だが言っただろう、私は大人げない大人だ。その「力」の引き出し方を教える慈悲は与えない。『彼ら』のように、自分の中で「力」への答えを得た者にしか私は「力」を与えない。それは、現在(いま)と未来の「私」の…少年に対する唯一の助言だ。あとはその小さな頭で考えろ。思考しないものは弱者だ。(義手からケーブルを抜いてラップトップを畳む) 」

フレイミス「…………(難しい表情を浮かべながら項垂れる) 」

ゲルニカ「……しかし、面白いものだ。成人も迎えていないその若さで、全身の肉体の8割に人体改造が施されているなど。「未来」で何があったかは知らんが、それはお前の"意思"で得た「力」であることは大方察することは出来る。それほどまでに強さに固執するならな。だが、そもそもの話だ。その「未来」で「私」に会ったのだろう?そしてその「力」を得たのだろう?………何故、「私」が"そうした"のか……君は覚えているか? 」

フレイミス「――――――――― !  」







「 行って、フレイミス もう…ダメみたいだ… 」

「 うるせえ……っ…お前を置いていけるかよ… この足が使い物にならなくなっても、お前を引きずっていくぞ……! 」

「 嬉しいな…君が、「親友」でよかった 」

「 …"これから"も、だろ…?だから…しっかり立ってくれよ……なあ… 」

「 ――――――― 『 レノ 』 」






「 これより…この混沌とした世界を"黄金"に染める…!時期にこの星は理想郷《エルドラード》となるのだ…! 」

「 させるかよ… 「親友」(ダチ)の命を奪った テメェだけはぜってー許さねえ… 」

「 哀れだな…小僧。そんな五体不満足の体では私を殴るどころか近寄ることもできんぞ?そこで這い蹲り、世界が黄金に染まる光景を見届けるがいい!フゥハァハハハハ…!! 」






「 ………少年、「力」が、欲しいか? 」

「 ………………グッ…… 」

「 ならばこの私に示してみろ 何の為に強さを求めるのか 」

「 ……俺は……俺は……―――――― 」







「 『シフトギア』―――― それが君の「答え」だ 」

「 俺の…身体が…… 」

「 後悔はしないと言ったな。だから恨むなよ。人の子…いや、神の子であることを捨てて、君は「力」を得たのだからな 」

「 ああ…いいんだ…これで。これさえあれば…奴をぶっ飛ばすことができる……! 」

「 待て、使い方も分からないうちに早まるな。そうだな…マニュアルはないが、使い方は自分の体で覚えるのが手っ取り早いだろう 」

「 シフトギアの最大加速は、光の速度を越える。最大出力で亜空間を越える速度に達したその速さがあれば、その体一つで時間を跳躍することができる。遥か先の未来、或いは過去にさえ行ける 」

「 ほ、本当なのか……!? 」

「 まずは「過去」に迎え。歴戦の偉人、強者(つわもの)たちから「力」を学ぶといい。ただし、会いたがっている『父親』本人とだけは接触するな。未来の息子が目の前に現れれば、タイムパラドックスが生じ…今の君自身の存在が消滅する危険性がある。 」

「……わかった… 」

「君が「過去」に遡っている間、現在の時間の進行は劇的に遅延する。体感的に過去で数年間を過ごそうが、「ここ」へ戻って来る頃には今から数時間程度の話だ 」

「少年…君はまだ、本当の意味で「答え」を得たわけではない。与えた「力」はそれを得るため猶予に過ぎない。その小さな頭で先人たちの教えを理解し、世界を知り、改めて「力」とは何か…その真理に辿り着け 」

「………ありがとう…『ゲール』のおっちゃん… 俺、行ってくるよ―――――― 」






「 "過去"を変えてきたそうだな…… 『 フレイミス・ティルク・カオス 』  だが、そんな希望は認めない 」

「 俺は…その"過去"に救われた…!今度は…ここで俺の意思を示す…ッ!! 」

「 今度こそ…お前をぶっ飛ばして……この世界を救う  『 親父 』が託してくれた、俺たちの世界を―――― 」






フレイミス「――――――………俺は……(生涯としてはあまりにも短い、しかしてその若さで経験した過酷な経験はあまりにも途方だった。家族に先立たれ、親友も失い、頼れるものはなく、それでもここまで生きてきたそんな自分が求めていた「強さ」とは何か。呆然としながらも、喉に詰まりかけた言語化できない「答え」に苦悶の色をにじませる) 」

ゲルニカ「……未来の「私」が君に見出した「力」。それは今も色褪せることなく残っているはずだ。思い出せ。そして、引き戻せ。「力」を得ることの意味に気づいたのなら、その「力」は君のものとして覚醒(めざ)めるだろう。(席を立ち、まだ微かに白い湯気が残る紙コップとラップトップを手に立ち去っていった) 」





フレイミス「……! ………… (呼び止めようとする素振りを見せかけるが、「答え」が曖昧なままではゲルニカを振り向かせることも叶わない。そう思い込み、残されたテーブルにひとり項垂れてしまう)………俺は……俺の強さを示したかった…未来(せかい)を守るために…… だけど……それが、俺が本当に目指していた「力」…なのか……? 」

エリノラ「……?あっ、お~~~い!フレイミスー♪(ゲルニカが立ち去って数分後、休憩エリアのテーブル席で項垂れているフレイミスの背中を見かけ駆け寄ってくる)……?大丈夫…?ゲームとはいえ…さっきの戦闘の後遺症が残っている……?メディちゃんには回復してもらわなかった…? 」

フレイミス「……ああ、エリノラか…。いや、平気だ。身体の問題じゃねえ。ちょっと、な…… 」

エリノラ「……?悩み事なら、エリノラちゃんが何でも聞いてあげるよ♪こう見えてプレイヤーのカウンセリングも、私の仕事だからね!(そういうとフレイミスの向かい席に座り込み、両肘を立てて大げさに首を左右に揺らす) 」

フレイミス「…………なあ、エリノラには…時々自分が解らなくなることって、あるか…? 」

エリノラ「…自分が……?……………!(その問いかけを受けた時、何かが脳裏の奥底で小さく弾けたような気がした) 」

フレイミス「俺は……俺自身の「強さ」を示すために、この時代へ来た。この時代の愉快な住民たちと競い合い、強ぇ先人たちから「強さ」を知り、自分が示すべき「強さ」を高めようとしていた。俺の「世界」を、守るために。……だが…そもそも俺は、どうしてそう意気込むようになってしまったのか… 」

フレイミス「俺の『親父』はな、すっげー偉大な人なんだ。この世界を誰よりも愛していて、大切なその世界にふりかかる危機を何度も救ってくれたって。俺は…『親父』に会ったことはない。俺が生まれた時には、もうすでにこの世には存在しなかったんだ。それでも俺は、そんな『親父』のことをすっげー尊敬している。いつかは『親父』みたいな強さを手に入れたいとも思うようになった。 」

フレイミス「…だけど…会ったことがねえから、『親父』が生きていた時の姿を知らねえ。世界を守るためと一口に言っても、そこには何かもっと大事な理由があったはずなんだ。それが『親父』の強さであることも。……俺は知らねえ。表面的な「強さ」だけを追い求め続けていた。だから俺は今でも…『親父』みたいに強くなれねェ。どれだけ我武者羅に努力しても、到底届きそうにない。 」

フレイミス「じゃあ……俺は、一体何のために「強く」あろうとしているんだ…?世界を守るための「力」って…?考えれば考える程、わからなくなってくるんだ。いや……本当は、"あった"んだ。俺なりの理由が… 多分、忘れてしまったのかもしれねェ。自分で自分を疑うことで、大事なもんさえも見失っていく… 俺は……「俺」が、わからなくなりそうだ…… 」

エリノラ「………フレイミス……(いつも自分を快活よく励ましてくれた少年が初めてみせた苦悩に、少女の瞳が揺らぐ) ………素敵なお父さんがいたんだね。でも、フレイミスは……『フレイミス』だと、私は思うな。 」

フレイミス「……?(エリノラと見つめ合うように顔を上げる) 」

エリノラ「私もね…時々…… ううん…意識していないだけで、本当はもっとあるかもしれないけれど…「私って、なんなんだろう?」って首を傾げることはあるんだ。幻影の巨塔を案内するナビゲータとして、プレイヤーのみんなを導いて、困っていたら手を差し伸べて、負けた時は励まして、勝った時は一緒に喜んで… それが、私。でも、これはただの仕事じゃないの。何か…もっと「大切な意味」があったはずなんだ。今はただゲームとして楽しんでいるけれど、"みんなを導く"ことだけが、果たして本当の自分なのかな?って… 」

エリノラ「きっと…私も、フレイミスも… 目指していたはずの「自分」に、疑問を抱いているのかもしれないね。「本当の自分はこんなはずじゃない」…って。だけどその答えは今もよく分からないままで、ただ現状に流されるままに、「いつかきっとわかる」と楽観的に信じている。そうでもしないと、延々と「自分」に苦しめられ続けるもんね。……でも、そんな苦悩する姿も、「自分」なんだと私は思うな。笑うのも悩むのも…いつだって自分自身だからね。 」

エリノラ「 だから、思うんだ… 「答え」なんてものはすぐに出てこないし、出てこなくてもいいや、って。なんとなくでも、「自分ってこんな感じなんだろうな」とイメージができるようになれば…それはもう自分のことを十分に理解できていると思う。自分の足元には影が広がっているみたいにさ… 「幻」にだって「影」はついているんだもの。曖昧で不鮮明で…みんな、そんな"幻影《 じぶん 》"と向き合いながら生きているんだよ。 」

フレイミス「……自分と…向き合いながら……(思えば、そういう発想には至らなかった。反省とはまた異なる意味合いの、自分が「自分」であるかどうかの問いかけを――――) 」

エリノラ「自分のことなんて、自分でさえも分からない。だから、私たちは誰かと一緒にいることで…そんな「自分」の意味を探そうとしているんだよ。私がみんなを導くのも、きっとそういうことなんだろうなと思ってる。だから…自分がやっていることを…今はただ信じている。その意味が解る時が来るって… 自分が何者で、何のために生きているのかって。 」

エリノラ「………あはは……ごめんね… 少し、抽象的な事しか言葉にできなかったや。フレイミスは真剣に悩んでいるのに、もう少し寄り添得られることを言えたら―――― 」

フレイミス「いや……ありがとう。(吹っ切れる、とまではいかないが、浮かない表情に微かな笑みが灯った)……エリノラ、お前はいつも優しいことを言ってくれる。おかけで…自分がどうするべきなのか、少しだけ分かったような気がする。 焦っていたんだろうな、きっと。踏みとどまらせてくれたのは…間違いなくエリノラのおかげだ。本当に、ありがとう。 」

エリノラ「……!えへへ……優しい…か…。面と向かって言われたのは、初めてかも…?フレイミスこそ、いつも私やみんなに優しくしてくれているもんね。いつも守ってくれて、ありがとう。お互い…100層に到達するまでに、本当の「自分」がわかるといいね…♪ 」

フレイミス「ああ、そうだな……――――― ! (ふっ、と柔らかな笑みを向かい合いながら零す。ふと、そんな光景に既視感があった。父親のいない自分にこうして寄り添ってくれた『親友』との楽しい会話を。肩を並べて、共に語り合った未来予想図を。楽しかった思い出を。)………(今はもう過去の話。それでも、現在(いま)でもまだ、その感性は失っていない。まだ、自分が「自分」でいられる何かがある。そのきっかけを、目の前にいる少女が教えてくれた。少しだけ、視界が拓けたような気がした――――) 」

フレイミス「………っし!こうなりゃあとことん突き進むしかねえ。やっぱり俺にはそのやり方しかねえし、そっちの方が良い。そろそろ行くか…次の攻略戦へ……! 」

エリノラ「その意気だよフレイミス♪ あっ……でも待って!今思い出したんだけど…大事な話があって呼びに来たんだった!実はこの後、『運営』から大事な報告があって…プレイヤー全員をエントランスへ集合させてほしいって… 」

フレイミス「おっ、そろそゲーム再開のアナウンスか?ならちょうどいいじゃねえか。 」

エリノラ「それも、そうなんだけど…… 」

フレイミス「……? 」



― エントランス「円環の間」・ロビー ―


ガヤガヤ…―――――(正午5分前。エントランスロビーには多くのプレイヤーが、頭上に浮かぶ映像クリスタルのモニターを前に『運営』からの重大告知を待機していた―――――)




徒町小鈴「正午と同時に『運営』様から重大告知があるとのことですが…一体、なんなんでしょう…!?徒町、すごっこくきになります!! 」

夕霧綴理「次のイベント、流しそうめん早食い大会になるって話だよ。流しそうめん同好会からのリーク情報。 」

村野さやか「絶対ないですから!流しそうめん同好会の陰謀論に振り回されないでください…! 」

デイダラ「なんでもいいが…とにかく早く攻略戦を再開しやがれってんだ…!今、オイラのアートはインスピレーションが絶賛爆発中だ…!早く試したくてうずうずしてんだよこっちは…! 」


ピ―――――ガガッ―――ザッ――――――   ピ  ィ  ヨ  ォ  ン  ッ  (映像クリスタルのモニターに突如として走った砂嵐のノイズ。しかしそれはすぐに晴れ、鮮明化された大画面に、ある一人の人物が写し出された。そこに佇む人物は――――――)


セレディ「 「カオスファンタズマ」のゲームに参加しているプレイヤー諸君。はじめまして。この度、「オムニバス」の新たなゲームマスターに就任した『 セレディ・クライスラー 』だ。よろしく♪  」


――――あどけない中性的な顔立ちをした、男とも女ともわからない若い人物であった。蒼いおかっぱの髪形に、独特な赤い瞳を持ちながら、子どものような無邪気さと大人のような泰然とした佇まいを兼ね備えた、異色の人物。幻影の巨塔、ひいては世界中で観戦しているオーディエンスにも、新たなゲームマスターの素顔が大々的に公表された。


ネモ「えっ……?!うそ…子どもじゃん…!?ボクより年下っぽくない…!? 」

メトロ「た、確かに…!これは…驚きですね……! 」

浮世英寿「あれが……今度の『ゲームマスター』か……(ギロリ、月村サトシに次ぐ第3のGMの公表に目を細める) 」

ニル「わわっ……想像していたイメージと…全然違いました……(脳内で更にいかめしい顔つきをした男性をイメージしていたがそれがぼわわんっと消滅する) 」

ミツキ「……なーんか…あざとくなーい…?ミツキとしてはちょっと気に入らないというか…まあ誰であっても先輩以外は興味ないんですけどー… 」

エリノラ「えっ……?うそ、あんな感じなの次のゲームマスター…!?私にも情報が回ってこなかったからびっくりなんだけど…… 」

フレイミス「……俺と同い年か…あるいは……っところだな…(俄かには信じがたいような神妙な顔つきで映像に映る人物を見上げていた) 」

優木せつ菜「ええっ!?すごい…!まさか新しいゲームマスターの発表だったなんて…!そういえば、あの逃走中が終わってから、月村さんも見なくなりましたね……? 」

メノア「……あの若そうな見た目で運営の上位職に就任なんてねぇ~…さぞ、天才なんでしょうね~…(嫌味っぽく呟く) 」

セレディ「さて…既にご存知のことかと思われますが、現在、件の『プランダラ』を含め…このゲームにイレギュラーな存在が多数出没しているという報告をたくさんいただいております。我々『運営』側でもすでに確認はとれており、現在進行形で調査を行っています。現状としては、外部からの不正アクセスに対する強固なプロテクトを構築するのに時間を有しているところです。プレイヤーの皆様、並びにオーディエンスの皆様におかれましても、大変ご迷惑をおかけしております。今回は、私からの挨拶で告知を終了いたします。それでは皆様、対策手段が完成するまで、今しばらくお待ちくださいませ。(頭を下げたところで、映像は途絶えた―――) 」

村野さやか「……終わっちゃいましたね… それにしても、運営様もいろいろ大変そうですね… 新しいゲームマスターの型も、この難題にどう取り組んでくれることか… 」

ムスカ「(ゲームの再開まで) 3 分 間 待 っ て や る !  」

メノア「3日ぐらい待てや(ムスカの後頭部を黄金槍で殴りつける) 」

夕霧綴理「大丈夫、心配しなくても必ずやってくれると信じてるよ。流しそうめん早食い大会。 」

村野さやか「それは絶対ないですからね!!! 」

ラタリア「う~ん……ん~~~~……(頭を前後左右に捻り回りしている) 」

アサギ「はえー…メンテだいぶかかりそうっすねこれー。しゃーなし。まああんまり先先行き過ぎても先輩たちを置いて行っちゃうことになりますから、この辺でクールダウンと行きますかね~………って、博士…?さっきから何してんすか?なんか気になり事? 」

ロジェスティラ「 8 ᓀ‸ᓂ))三((ᓀ‸ᓂ 8(ラタリアの頭上でマラカスを振っている) 」

ラタリア「ん~~~~~……う~~~~~ん………いや、なんか……さっきの若い子……な~~~~~んか…どっかで見た気がするんらよねぇ~~~~~………どこでらったかな~~~………ん~~~~………??? 」

アサギ「あぇ?もしかして知り合いっすか?まああの人も博士も見た目は子ども、頭脳は大人って感じですもんね~。 」

草加雅人「いよいよ運営も本格的に対策に乗り出してきたか。少々遅い気もするが…しかたがない。(フン、と鼻を鳴らし踵を返していく) 」

ロイエ(NPC)「………(騒然としながらも各々に散っていくプレイヤー・オーディエンスを他所目に、バーカウンターの内側でただ黙々とグラスを拭き上げていた) 」

ネモ「どうなっちゃうんだろう……ねえ、マスターは何か聞いてないの? 」

ロイエ(NPC)「…………… 」

ネモ「………マスター……? 」

ロイエ(NPC)「……ああ、失礼いたしました。少し、茫然としておりました。そうですね…我々「NPC」は、あくまでエントランスでの業務に関係する事柄以外は、運営様より共有事項はございません。情報漏洩の防止も兼ねております故。 」

ネモ「そう…なんだ…… 」

権田原進「運営が代わっとてもララァがわしの母であることは変わらんけぇの 」

新井さん「安心してください、俺がファンタズマの治安を守りますよ 」

アライさん「アライさんが全てを救うのだ! 」

フェネック「寝言は寝て言え(すごいねぇアライさぁん) 」

ジャクリーヌ尾崎「とりあえず……色々と状況が変わって、普通にこれただのゲームじゃなくなってることはわかりましたわ…!! 」

ポケサーファイター・カズマくん「何?なんだと?どういうことだ?何が言いてぇ?うるせぇ!!(インフォメーションに台パンする) 」

森ノ宮「とっくに普通のゲームじゃねえしついに運営も隠さなくなってきやがったし……お前は何で堂々と耳丸出しにしてんだ!バシィ(笠間の頭を後ろから叩き)今でこそゲームだからで言い訳通せはするだろうが、ここまできな臭いとなるとな……そうだ、お前"もう一段階"は使うなよ、分かってるよな… 」

笠間「痛ったぁ!?いやいやなんかスケール上がったんだから私もギア上げないと付いていけないっすよ!本当に!!!ったぁ……いやまあ、これ以上はやらないっすって、本当……でも、この先オーディエンスも……みたいな匂わせされてるんすよね……それが不安で… 」

ウェルド「まあ、落ち着いてください二人とも………確かに異様な状況になりつつあります、が……だからこそ少し落ち着いて、攻略を進めましょう。危険な要素が多いからこそ、です 」


疑心暗鬼に包まれる中、プレイヤーたちは次なる攻略に向けて粛々と準備をはじめる。
その翌日――――


フレイミス「………(昨日のゲルニカ、エリノラとの会話を脳裏に過らせながら誰もいないエントランスの廊下を歩いていた)………(ふと視線を落とすは自分の義手。脳神経とリンクし指先まで自由自在に動かせるものの、これが自分の望んだ「力」なのかと冷静に思い詰める。そんな時―――――) 」

セレディ「――――― やあ♪(俯きかけたまま廊下を歩くフレイミス。その脇にある窓辺の台に、ここにいるはずのない人物が居座っていた――――) 君は、『フレイミス・ティルク』だね。 (まるでフレイミスがここを通ることを予測し待っていたかのような口ぶりで対面を果たす) 」




フレイミス「……!あんたは…昨日の……(ゲームマスターがエントランスの、それも人気のないこんな廊下にいることに意外し、驚いたように歩みを止めた) 」

セレディ「君に会いたかったんだ。少し、話がしたくてね。 」

フレイミス「…俺に……?(なぜ自分なのか?と疑問符を浮かべるように首を傾げる) 」



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セレディ「少し君のことを調べさせてもらったんだ。そしたら、興味深いことが幾つかわかってね…こうして直接会って話がしたかったんだ。……フレイミス・ティルク… 君は……―――――『 ヴィナミス・ティルク 』の実の息子なんだってね? 」

フレイミス「―――――― ! ? (年の差もない若い人物から零れたその名前に酷く驚愕を覚える)……『親父』のこと…知ってんのか……? 」

セレディ「ええ。『彼』とは"昔"、共に理想を語り合った仲です。この混沌とした世界の在り方を、これからどう進むべきか、そのために何をすべきか…様々な議論を交わしたものだ…。(懐かしむように瞳を閉ざす)……しかし、『彼』はもう"いない"。嘆かわしいことだが、時の遷移とはそういうものです。私は、『彼』が成し得なかった理想を叶える為に、今…この舞台に降り立ったのです。しかし…まさかご子息がいたとは私も驚いた。確かに…『彼』に、よく似ている。(フレイミスの若々しい表情を舐めるように見つめて、何処か愉快気にほくそ笑む) 」

フレイミス「……親父の…理想……?アンタ…親父というどいう関係なんだ……?どうしたアンタみたいな人が、ここの『運営』と繋がってんだ……? 」

セレディ「私のことはいい。それよりも…私はそんな『君』に興味があるのだから。(ずいっ、と一歩詰め寄る)……フレイミス・ティルク、君はもっと自分の「力」を活かすべきです。気づいているのでしょう?自分に目覚めた、"奇妙な力"の一端を… 」

フレイミス「……!(自分に目覚めた"奇妙な力"…それに思い当たる節はある。この幻影の巨塔で何度も体験した、全ての事象がスローモーションに見えるような不可思議な感覚を―――)………何を、言ってんだ……?(だが、自分にはそれがどういうものか理解はできない。疑問に、疑問が重なる…) 」

セレディ「それがどんなに素晴らしい「力」なのか、君は未だに分かっていないようですね。君の「力」は、人類の未来を劇的に変える可能性が秘められています。そしてその「力」を使うことは、覚醒した者の宿命です。 」

フレイミス「……アンタ……何を知っているんだ……?(ジワリと、嫌な汗が頬を伝う) 」

セレディ「結論を伝えましょう。私のもとに来なさい、フレイミス・ティルク。ゲームマスターである私の権限をもって、君を『運営側』のテストプレイヤーに任命してあげましょう。そうすれば、その「力」の引き出し方を懇切丁寧に教えてあげます。加えて、他のプレイヤーにはない特殊な権限も付与してあげよう。私の導きによれば…君はすぐにでも「第100層」へと到達できるでしょう。悪い話ではないはずです。いかがですか?私は…君を盛大に迎え入れたい。正しい未来を目指す「同志」として。(誘うかのような掌をフレイミスへ差し出した) 」

フレイミス「…………… 」

セレディ「亡き『御父上』の悲願を果たす為でもあります。『彼』の遺志を継げるのは…その血縁を担う、君だけなのだから。さあ……(「この手を取りなさい」と更に手を伸ばそうとする) 」

フレイミス「――――――――   断 る   」

セレディ「…………(拒否の断定を言い放つ少年を前に、閉口する) 」

フレイミス「俺はあくまで「プレイヤー」として、自分の足でこの巨塔を登ると決めたんだ。余計なお世話だ。俺はまだ、お前たち『運営』がエリノラにしたことを許したわけじゃねェ。お前たちの指図は受けねえが、エリノラの言葉だけを信じる。それに……アンタと『親父』の関係もわからないのに、アンタのことを信じられるかよ。 」

セレディ「………… そう…残念です。(落胆したように肩を竦めるが、その表情は至って素直。少年の意思を尊重するとその場で踵を返し、彼に背を向けた)………もうすぐ、"すべてが変わります"。新しい「世界」に生まれ変わるんです。 」

セレディ「 私たち、『 ワールドセイバー 』の手によって――――――― (横目で背後のフレイミスに一瞥を与え、何処か愉快気に口角を吊り上げて立ち去るのだった――――) 」

フレイミス「………(立ち去っていくセレディを静かに睥睨していたが、そこに遺されたのは様々な疑問だった。自分に目覚めた不思議な「力」… 亡き『父親』の理想… これから起こりうる出来事… 多くの疑念が錯綜する中、少年はそれらの謎を無理矢理振り払うかのように首を強く振るい、セレディとは正反対の道へと進み始めた―――) 」


そして、二日後が経った。この日、『運営』より、攻略戦の再開が告知された。
案内人のエリノラの導きの元、プレイヤーたちはこの日の為に磨きをかけた装備や作戦を駆使し、より高難易度の攻略戦に臨もうとしていた。
その戦いに熱狂するオーディエンス。世界中が、幻影の巨塔を注目している。
ゲームはまだまだ盛り上がる。これからが楽しくなるのだ。
誰もがそう思っていた―――――





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最終更新:2025年03月31日 20:16