森の中でザクザクと、土を掘る音が響く。
怪物、ペニーワイズに殺された西片の遺体を埋める為、ドラえもんは一人、彼を埋めるための穴を掘る。
手にあるのは一メートルほどのスコップ。
この殺し合いのどの参加者とも違う世界のものだが、五人ほど縁のある参加者がいる世界のものだ。
しかし、そんなことはドラえもんには関係ない。
彼はただ、穴を掘るだけ。
怪物、ペニーワイズに殺された西片の遺体を埋める為、ドラえもんは一人、彼を埋めるための穴を掘る。
手にあるのは一メートルほどのスコップ。
この殺し合いのどの参加者とも違う世界のものだが、五人ほど縁のある参加者がいる世界のものだ。
しかし、そんなことはドラえもんには関係ない。
彼はただ、穴を掘るだけ。
そして西片を入れるに十分な大きさの穴ができ、ドラえもんは彼を入れて土をかぶせる。
その作業が終わるころには黎明は終わり、時間は早朝へと進んでいた。
その作業が終わるころには黎明は終わり、時間は早朝へと進んでいた。
「終わったかしら?」
ドラえもんが西片に土をかぶせ、地面に埋め終えると同時に、折り畳み傘を差しているレミリアが声をかけてくる。
森の中とはいえ、そろそろ日が差し始めてもおかしくない時間帯。
吸血鬼である彼女にとっては、決して無視できない要素だ。故に彼女は折り畳み傘を取り出していたのだ。
森の中とはいえ、そろそろ日が差し始めてもおかしくない時間帯。
吸血鬼である彼女にとっては、決して無視できない要素だ。故に彼女は折り畳み傘を取り出していたのだ。
それはそれとして、ドラえもんがレミリアの方を見ると、なぜか彼女は酷く不可解そうな表情を浮かべていた。
「……レミリアさん?」
「ちょっと地図を見せなさい」
「ちょっと地図を見せなさい」
疑問を呈すドラえもんに対し、問答無用で要求するレミリア。
彼が渋々言葉に従い地図を取り出し広げ、彼女がそれを一瞥すると、「やっぱり」と納得した声を出した。
彼が渋々言葉に従い地図を取り出し広げ、彼女がそれを一瞥すると、「やっぱり」と納得した声を出した。
「どうかしたの?」
「聞きなさいドラえもん。私達、転移しているわ」
「えっ!?」
「聞きなさいドラえもん。私達、転移しているわ」
「えっ!?」
あまりにも突然すぎる宣言に、大声で驚いてしまうドラえもん。
それを静かにさせてから、レミリアは地図のE-8辺りを指差す。
それを静かにさせてから、レミリアは地図のE-8辺りを指差す。
「最初に私達が出会ったのがこの辺りでしょ?」
「う、うん」
「だけどさっき、あなたが穴を掘っている間に、あいつがいないか調べるために周りを見てきたのよ。
まあいたのはゴブリンくらいだったけど」
「う、うん」
「だけどさっき、あなたが穴を掘っている間に、あいつがいないか調べるために周りを見てきたのよ。
まあいたのはゴブリンくらいだったけど」
実のところ、レミリアは先の言動に含めた分だけでなく、今見えているものが現実かどうかを確かめるために周りを見ていた。
懸念自体はひとまず晴れたと思いたいが、確実だと言い切れる自信はまだない。
ともかく彼女はここで言葉を区切ると、今度はD-7にあるシフティ・シャフトを指差した。
懸念自体はひとまず晴れたと思いたいが、確実だと言い切れる自信はまだない。
ともかく彼女はここで言葉を区切ると、今度はD-7にあるシフティ・シャフトを指差した。
「これが少し行ったところにあったわ」
「な、何で……?」
「さぁ?」
「な、何で……?」
「さぁ?」
ドラえもんの問いに対し、無造作に返答するレミリア。
事実、彼女もペニーワイズの能力なのか、奴に支給された物の力なのか判断できないので、こういう言動しかできないのだ。
それをドラえもんもちゃんと理解していた。
なので、代わりに尋ねるのは違うこと。
事実、彼女もペニーワイズの能力なのか、奴に支給された物の力なのか判断できないので、こういう言動しかできないのだ。
それをドラえもんもちゃんと理解していた。
なので、代わりに尋ねるのは違うこと。
「レミリアさんはその、あの怪物をどう思う?」
「そうねぇ……」
「そうねぇ……」
ドラえもんの今一つ要領を得ない問いに、レミリアは顎に右手をやりながら考える。
自分に屈辱感を味合わせた、いつか殺す敵。
彼女の言わせれば、ペニーワイズに思うことなどこれくらいだ。
しかし、ドラえもんが問いたいのはそういうことではなく、おそらく本質について。
彼も彼なりにヤツを倒そうとしている、とレミリアは解釈した。
しかし、ドラえもんが問いたいのはそういうことではなく、おそらく本質について。
彼も彼なりにヤツを倒そうとしている、とレミリアは解釈した。
「怪物。
恐怖を呼び起こし、恐怖を糧にし命を喰らう、あらゆるものの敵よ」
恐怖を呼び起こし、恐怖を糧にし命を喰らう、あらゆるものの敵よ」
ヤツの在り方は正しく怪物で、きっと対象を選ぶことはない。
だから自分達に襲い掛かり、西片を食べたのだろう。
だから自分達に襲い掛かり、西片を食べたのだろう。
別に、レミリアは人を喰うなと言うつもりはない。
彼女が人の血を吸いつくして殺さないのは、単に少食だからだ。
そうでなければ、妹に人間を加工したケーキを食事として提供したりはしない。
彼女が人の血を吸いつくして殺さないのは、単に少食だからだ。
そうでなければ、妹に人間を加工したケーキを食事として提供したりはしない。
だからレミリアがペニーワイズを殺しにかかる理由は、結局のところただの私怨。
人間やドラえもんみたいな存在にとっては、怪物を倒す英雄譚だが、彼女にとっては同類同士の食い合いでしかない。
人間やドラえもんみたいな存在にとっては、怪物を倒す英雄譚だが、彼女にとっては同類同士の食い合いでしかない。
もっとも、そんな内心をレミリアはおくびにも出さない。
だから、ドラえもんが悩んでいるのはペニーワイズについてだ。
だから、ドラえもんが悩んでいるのはペニーワイズについてだ。
「恐怖を呼び起こす……」
「だから対処としては、恐怖を持たないもの、例えばゴーレムとかが相対するのが一番効率的でしょうね。
あるいは――」
「だから対処としては、恐怖を持たないもの、例えばゴーレムとかが相対するのが一番効率的でしょうね。
あるいは――」
ここでレミリアは一旦言葉を止めたかと思うと、どこか自嘲的な笑みを浮かべてから続けてこう言った。
「勇気で恐怖を克服しなさい。。
おとぎ話の勇者の様に、立ち向かって戦いなさい。それが怪物を倒す王道よ」
「勇気……!」
おとぎ話の勇者の様に、立ち向かって戦いなさい。それが怪物を倒す王道よ」
「勇気……!」
レミリアの言葉でドラえもんは思い出す。
太古の恐竜時代にいた違法ハンター。
遠い宇宙の彼方でコーヤコーヤ星を狙ったガルタイト鉱業。
アフリカ中央部のヘビー・スモーカーズ・フォレストに存在する犬の王国を牛耳っていたダブランダー大臣。
かつてバミューダトライアングルに存在した、海底国家アトランティスに残された自動報復システムポセイドン。
平行世界の地球を狙った魔界の大魔王デマオン。
小人達の惑星、ピリカ星を支配した独裁者ギルモア。
そして、鉄人兵団。
他にも様々な、かつて自分達が戦った敵を。
太古の恐竜時代にいた違法ハンター。
遠い宇宙の彼方でコーヤコーヤ星を狙ったガルタイト鉱業。
アフリカ中央部のヘビー・スモーカーズ・フォレストに存在する犬の王国を牛耳っていたダブランダー大臣。
かつてバミューダトライアングルに存在した、海底国家アトランティスに残された自動報復システムポセイドン。
平行世界の地球を狙った魔界の大魔王デマオン。
小人達の惑星、ピリカ星を支配した独裁者ギルモア。
そして、鉄人兵団。
他にも様々な、かつて自分達が戦った敵を。
そうだ、いつもそうだった。
ただの小学生四人とドラえもんが、そんな敵と戦い打ち勝ってきた理由。
ドラえもんこそ未来世界の超技術で生み出され、彼の手元には同じく超技術のひみつ道具があった。
だがそれだけでは倒せない敵もいた。ならばどうやって倒してきたか。
ただの小学生四人とドラえもんが、そんな敵と戦い打ち勝ってきた理由。
ドラえもんこそ未来世界の超技術で生み出され、彼の手元には同じく超技術のひみつ道具があった。
だがそれだけでは倒せない敵もいた。ならばどうやって倒してきたか。
知恵と勇気、そして友情だ。
時にバラバラになり、ひみつ道具を失うことがあっても、彼らは決して諦めなかった。
それだけではどうにもならず、運や外的要因に頼ることもあったが、人事を尽くして天命を待つ。
最初から運頼みならば、ハッピーエンドはありえない。
時にバラバラになり、ひみつ道具を失うことがあっても、彼らは決して諦めなかった。
それだけではどうにもならず、運や外的要因に頼ることもあったが、人事を尽くして天命を待つ。
最初から運頼みならば、ハッピーエンドはありえない。
ならば、今度もそうしよう。
見知った仲は普段より少なく、おまけに近くに居る訳でもなければ、確実に会える保証もない。
おまけに倒したい怪物、ペニーワイズの正体は未だ分からず、勝つ方法も想像できない。
更に言うなら、ペニーワイズへの恐怖をぬぐえたわけでもない。
だとしても――
見知った仲は普段より少なく、おまけに近くに居る訳でもなければ、確実に会える保証もない。
おまけに倒したい怪物、ペニーワイズの正体は未だ分からず、勝つ方法も想像できない。
更に言うなら、ペニーワイズへの恐怖をぬぐえたわけでもない。
だとしても――
「やろう! 仲間を集めて、あの怪物をやっつけるんだ!!」
ドラえもんは決意した。
声は未だ震え、恐怖していることは傍目に見ても明らか。
それでも、彼は戦うことを選んだのだ。
声は未だ震え、恐怖していることは傍目に見ても明らか。
それでも、彼は戦うことを選んだのだ。
そんな彼を、レミリアは見つめながら考える。
(そう、それでいい。
だけどあなたは、それをどこまで貫ける?)
だけどあなたは、それをどこまで貫ける?)
レミリアにとってもドラえもんの決意は好都合だが、同時にある懸念があった。
それは彼女と違い、彼は友人が二人この殺し合いに参加しているという点だ。
そして、殺し合いである以上、今現在危機に陥っている、あるいは既に殺されている可能性も当然存在する。
それは彼女と違い、彼は友人が二人この殺し合いに参加しているという点だ。
そして、殺し合いである以上、今現在危機に陥っている、あるいは既に殺されている可能性も当然存在する。
(それでも戦うと言うのであればいいわ。
だけどもし、心が折れて立ち上がれなくなるのなら、あなたを置いていくことになるでしょうね)
だけどもし、心が折れて立ち上がれなくなるのなら、あなたを置いていくことになるでしょうね)
奮起するドラえもんとは対照的に、レミリアは冷ややかな考えを頭の中に置く。
そして彼女の懸念は正しい。ドラえもんの友人、野比のび太は黎明の段階で既に殺されている。
それを彼らが知るまでの時間は、もう二時間も残っていないのだ。
そして彼女の懸念は正しい。ドラえもんの友人、野比のび太は黎明の段階で既に殺されている。
それを彼らが知るまでの時間は、もう二時間も残っていないのだ。
(まあ、それはその時になってみなければ分からないか)
そうしてドラえもんが決意を固めた後、二人は西片の墓を作った。
とはいってもそれは簡素とすらいえない代物。
彼に支給されていたギターを、彼が埋まっている地面の近くに突き刺して墓代わりにし、同じく支給されていた、彼が恋焦がれる少女のハンカチを供える。
二人がその気になればもう少しちゃんとしたものも用意できるが、今の彼らは時間が惜しかった。
とはいってもそれは簡素とすらいえない代物。
彼に支給されていたギターを、彼が埋まっている地面の近くに突き刺して墓代わりにし、同じく支給されていた、彼が恋焦がれる少女のハンカチを供える。
二人がその気になればもう少しちゃんとしたものも用意できるが、今の彼らは時間が惜しかった。
(しかしまあ……)
そしてドラえもんが西片のデイバッグ、レミリアは血塗れになった目隠しを回収してから二人が森林を無言で進む中、彼女はふと思う。
怪物に襲われた人間の墓を作った。
強力な怪物と相対するために、同行者を奮起させた。
そして今、仲間を求めて出発した。
強力な怪物と相対するために、同行者を奮起させた。
そして今、仲間を求めて出発した。
(吸血鬼のやることじゃないわね。どちらかというと、人間の領分でしょうに)
あまりにも妖怪(じぶん)らしくない振る舞いに、レミリアは思わず自身に対して戸惑ってしまうのだった。
【D-7 森林/早朝】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:悲しみ、ミルドラースに対する怒り、ペニーワイズへの恐怖、奮起
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、スコップ@幼女戦記、西片のデイバッグ(基本支給品のみ)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアと行動する。
2:あの怪物(ペニーワイズ)をやっつけるため、仲間を探す
3:のび太くん大丈夫かな...
[状態]:悲しみ、ミルドラースに対する怒り、ペニーワイズへの恐怖、奮起
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、スコップ@幼女戦記、西片のデイバッグ(基本支給品のみ)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアと行動する。
2:あの怪物(ペニーワイズ)をやっつけるため、仲間を探す
3:のび太くん大丈夫かな...
※四次元ポケットは回収されました。
※レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました。
※レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました。
【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:苛立ち、屈辱感、自分に対して戸惑い(小)
[装備]:シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー、折り畳み傘@現実
[道具]:基本支給品、目隠し(血塗れ)@水曜日のダウンタウン
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:ドラえもんと行動する
2:のび太という少年を探す
3:あの怪物(ペニーワイズ)はいつか殺す。
4:怪物を殺す為に策を練り、仲間を集める。……まるで人間みたいね
[状態]:苛立ち、屈辱感、自分に対して戸惑い(小)
[装備]:シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー、折り畳み傘@現実
[道具]:基本支給品、目隠し(血塗れ)@水曜日のダウンタウン
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:ドラえもんと行動する
2:のび太という少年を探す
3:あの怪物(ペニーワイズ)はいつか殺す。
4:怪物を殺す為に策を練り、仲間を集める。……まるで人間みたいね
※紅魔郷終了後からの参戦です。(EXではないためフランが地下から解放されていません)
※むったん@けいおん! は西片の墓の代わり、高木さんのハンカチ@からかい上手の高木さん は供え物としてD-7 森林に置かれています。
【スコップ@幼女戦記】
ドラえもんに支給。
塹壕戦において穴を掘ったり敵兵を殺したりと大活躍した、帝国製の道具兼武器。
ぶっちゃけ、ただのスコップである。
これにて、参加者と支給品を合わせると異世界かるてっとコンプリート。
ドラえもんに支給。
塹壕戦において穴を掘ったり敵兵を殺したりと大活躍した、帝国製の道具兼武器。
ぶっちゃけ、ただのスコップである。
これにて、参加者と支給品を合わせると異世界かるてっとコンプリート。
079:コスモダンサー(前編) | 投下順 | 081:黒く黒く |
040:それが見えなくても、終わり | ドラえもん | 105バッドレディスクランブル |
レミリア・スカーレット |