令嬢剣士はただ歩く。
闇の中の森をふらふらと、毒霧から逃れる為に。
歩いている最中に流れた放送すら聞き逃し、彼女はただ憎悪を滾らせる。
闇の中の森をふらふらと、毒霧から逃れる為に。
歩いている最中に流れた放送すら聞き逃し、彼女はただ憎悪を滾らせる。
そうやってしばらく歩くと、令嬢剣士は毒霧から離れたところまでたどり着く。
すると、彼女の前にゴブリンの群れがまたも現れた。
すると、彼女の前にゴブリンの群れがまたも現れた。
ゴブリンを見た令嬢剣士の行動は早い。
すぐさま手に持っているトランスチームガンを構え、自らのダメージになど構うことなく躊躇なく戦いの意志を示す。
すぐさま手に持っているトランスチームガンを構え、自らのダメージになど構うことなく躊躇なく戦いの意志を示す。
「蒸血……!!」
――MIST MATCH
――BAT……B・BAT FIRE
そしてそのままナイトローグに変身。
令嬢剣士はすぐさまゴブリンの群れに襲い掛かる。
令嬢剣士はすぐさまゴブリンの群れに襲い掛かる。
「死いいいいいねえええええええ!!」
ナイトローグに変身すると現れるスチームブレードを、彼女は躊躇なく振るい続ける。
それだけでゴブリンは死ぬ。
本来なら、ゴブリンごときに使う武器ではないのだ。
このまま、この殺し合いに来てから何度かやったように、ゴブリンを殺せると、令嬢剣士は確信する。
しかし、予想外の出来事は往々にして起こるものだ。
彼女が、ゴブリン退治の依頼に失敗し、何もかもを失うとは思わなかったかのように。
それだけでゴブリンは死ぬ。
本来なら、ゴブリンごときに使う武器ではないのだ。
このまま、この殺し合いに来てから何度かやったように、ゴブリンを殺せると、令嬢剣士は確信する。
しかし、予想外の出来事は往々にして起こるものだ。
彼女が、ゴブリン退治の依頼に失敗し、何もかもを失うとは思わなかったかのように。
ヒュン
前触れもなく唐突に、何かの風切り音が聞こえたので、令嬢剣士はゴブリンに注意を向けつつ音のした方向を見る。
すると、視線の先には夜には不釣り合いな、緑色が空を覆っていた。
すると、視線の先には夜には不釣り合いな、緑色が空を覆っていた。
「な、なんですのあれは!?」
令嬢剣士は一瞬思考が止まりそうになるものの、よく見るとそれはキャベツだった。
正面にはクリクリと可愛らしい黒色の瞳と口、そして天辺の葉を羽みたいにはためかせて飛ぶキャベツ。
この殺し合いの参加者の中で、元々知っているのはたった三人だけの、とある世界のキャベツである。
正面にはクリクリと可愛らしい黒色の瞳と口、そして天辺の葉を羽みたいにはためかせて飛ぶキャベツ。
この殺し合いの参加者の中で、元々知っているのはたった三人だけの、とある世界のキャベツである。
彼女がこの事実を正しく理解すると同時に、キャベツはゴブリンのうち一匹の顔に激突した。
すると、ゴブリンの顔はキャベツの体当たりの勢いで破裂し、あたりに脳漿をまき散らす。
すると、ゴブリンの顔はキャベツの体当たりの勢いで破裂し、あたりに脳漿をまき散らす。
このキャベツは、体当たりで鎧くらいなら壊せるほどの破壊力を持つ。
それが何の防御もされていない柔な生物の頭に当たれば、破裂も当然である。
それが何の防御もされていない柔な生物の頭に当たれば、破裂も当然である。
この光景に慌てたのはゴブリン達だ。
こいつらは、こんな間抜けな死に様はごめんだ、とばかりに一目散に逃げだそうとする。
当然、令嬢剣士は逃がすつもりもないので、追い掛けようとした。
こいつらは、こんな間抜けな死に様はごめんだ、とばかりに一目散に逃げだそうとする。
当然、令嬢剣士は逃がすつもりもないので、追い掛けようとした。
キャベツの群れは、そんな意志もないはずなのに、残りのゴブリンを容赦なく蹂躙した。
後に残るのは体の一部が破裂した小鬼の死体のみ。
後に残るのは体の一部が破裂した小鬼の死体のみ。
一方、令嬢剣士もまたキャベツから逃げ出そうとしていた。
しかし、毒で弱った体ではキャベツを避けきれず、幾度も体当たりを喰らってしまう。
無論、ナイトローグはそこらの鎧を破壊する程度の力では壊れない。
だが、何発も喰らえば変身者のダメージも決して安くはない。
結果的に彼女は、変身が解除され、全裸のままうつ伏せで気絶し、キャベツの群れはどこかへ去っていった。
しかし、毒で弱った体ではキャベツを避けきれず、幾度も体当たりを喰らってしまう。
無論、ナイトローグはそこらの鎧を破壊する程度の力では壊れない。
だが、何発も喰らえば変身者のダメージも決して安くはない。
結果的に彼女は、変身が解除され、全裸のままうつ伏せで気絶し、キャベツの群れはどこかへ去っていった。
ボロボロのカーテンすら覆われることなく、令嬢剣士は白い肌を惜しげもなく曝け出してしまうも、キャベツを凌いだことだけを考えれば成功。
しかし、この後のことを振り返れば、間違いなく致命的失敗(ファンブル)だった。
しかし、この後のことを振り返れば、間違いなく致命的失敗(ファンブル)だった。
◆
いったいどれほどの時間が経ったのだろうか。
令嬢剣士が目を覚ますと、彼女の眼前には気絶する前と変わらず、体の一部が破裂したゴブリン達の死体がそこにはあった。
令嬢剣士が目を覚ますと、彼女の眼前には気絶する前と変わらず、体の一部が破裂したゴブリン達の死体がそこにはあった。
「どうやら、助かったようですわね……」
キャベツの群れをやり過ごした令嬢剣士は、立ち上がるべく地面に手を付き、そのまま押して体を起こそうとする。
そして上半身が地面から離れた瞬間――
そして上半身が地面から離れた瞬間――
「どーん!!」
どこか場違いな軽い掛け声が聞こえたと思ったら、肉を貫く音と同時に、自分の腹部にひんやりとした冷たさと強烈な異物感を感じた。
彼女が腹部を見ると、
彼女が腹部を見ると、
「あ、あぁ……」
剣が腹部から生えていた。
否、正確には背中から腹まで剣が貫かれていた。
否、正確には背中から腹まで剣が貫かれていた。
令嬢剣士が現実を認識したと同時に、体を貫いていた剣が引き抜かれ、傷口からとめどなく血があふれ出す。
彼女は咄嗟に近くにあったボロボロのカーテンで腹部を抑えるが、血が止まることはない。
それでも彼女は振り返り、自身を刺した下手人の姿を見る。
彼女は咄嗟に近くにあったボロボロのカーテンで腹部を抑えるが、血が止まることはない。
それでも彼女は振り返り、自身を刺した下手人の姿を見る。
下手人は、令嬢剣士が見たことない服装を身に纏う、ピンク髪の美少女だ。
ただし、頭に生えている紅の角が、少女が人間ではないことを教えてくれる。
ただし、頭に生えている紅の角が、少女が人間ではないことを教えてくれる。
それもそのはず、彼女の名前はパワー。
悪魔が人間の死体に憑依した、魔人と呼ばれる存在である。
悪魔が人間の死体に憑依した、魔人と呼ばれる存在である。
しかしそんなことは令嬢剣士には関係ない。
彼女は精一杯の意地で立ち上がり、せめて一矢報いようと言葉を紡ぐ。
再びナイトローグに変身しようとも、この体力では戦えないと判断した彼女は違う方法を選んだのだ。
彼女は精一杯の意地で立ち上がり、せめて一矢報いようと言葉を紡ぐ。
再びナイトローグに変身しようとも、この体力では戦えないと判断した彼女は違う方法を選んだのだ。
雷 電
「はぁはぁ……《トニトルス……」
「はぁはぁ……《トニトルス……」
令嬢剣士が紡ぐもの。それは呪文。
眼前の敵を屠るべく、世の理を塗り替える真言で稲妻を放とうと、必死に唱える。
だが――
眼前の敵を屠るべく、世の理を塗り替える真言で稲妻を放とうと、必死に唱える。
だが――
「うるさいのじゃ!!」
パワーの一閃が令嬢剣士を袈裟切りにし、彼女の血しぶきが下手人を赤く染める。
毒で弱り、体を貫かれた彼女に、勝ち目など最初からなかったのだ。
一方、パワーはなぜか怒りを滲ませながら叫ぶ。
毒で弱り、体を貫かれた彼女に、勝ち目など最初からなかったのだ。
一方、パワーはなぜか怒りを滲ませながら叫ぶ。
「ええい! 外なのに裸で寝るような変態が、ワシの手を無駄に煩わせるとは……!」
理不尽にもほどがある物言い。
だが令嬢剣士にはもう言い返すほどの体力は残されていない。
代わりに口から出たのは、たったこれだけ。
だが令嬢剣士にはもう言い返すほどの体力は残されていない。
代わりに口から出たのは、たったこれだけ。
「……しにたく、ない……」
それは、修羅に堕ちた令嬢剣士の嘘偽りない願い。
だけどその声は余りにもか細い。
だけどその声は余りにもか細い。
少女の懇願は、誰の耳にも聞こえない。
【令嬢剣士@ゴブリンスレイヤー 死亡】
【残り99名】
【残り99名】
◆
そしてパワーは令嬢剣士が持っていたものを奪い、新たな獲物を求め、再び進み始める。
「あれ? ワシ、どっちから来たのじゃ?」
代わり映えしない森の景色のせいで、若干方向感覚を失いながら。
【H-4 森/黎明】
【パワー@チェンソーマン】
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている
[装備]:血の剣@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている
[装備]:血の剣@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!
※H-4 森のどこかに令嬢剣士@ゴブリンスレイヤー の遺体、彼女のデイパック(基本支給品、ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版))が放置されています。
056:生命 | 投下順 | 058消えない 消えない 炎の影 |
039:栄光なき剣士たち | 令嬢剣士 | GAME OVER |
044:この両手に魔剣を! | パワー | 092人生ドラマチックにはいかない |