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BATTLE ROYALE 命尽き果てるまで戦い続ける者たち

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シャルティア・ブラッドフォールンとの邂逅と激突を終えて。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、荒い息を吐きながら膝を付いていた。
その身の夢幻召喚は、乃亜の制限によって既に解除されている。
故に今の彼女は、バーサーカーのいで立ちではなく、本来の魔法少女の姿だった。
戦闘を終えて、アドレナリンが退いた身体の、節々が痛む。
散々大火球を浴び続けた体は痛みこそないモノの、体には不快な火照りが熱病の様に纏わりつく。
とは言え、稀代の吸血姫(ドラキュリーナ)、シャルティアを敵に回してこれだけで済んでいる、というのは正しく奇跡的な戦果だ。
尤もそれは当の本人、イリヤにとって何の価値も無い戦功であったが。
地を駆ける彼女の胸にあるのは、早く合流しなければという焦りだった。


(まずは雪華綺晶ちゃんを拾って……のび太さん達と早く合流しないと)


かなりの手ごたえを感じる一撃を下したが、あれでシャルティアが諦めるとは思えない。
そして更に悪い事に、自分が吹き飛ばした方角は、のび太達が逃げた方向と一致している。
そんな中、のび太達と鉢合わせしてしまえば導かれる結果は一つきり。
鎧袖一触、戦いにすらならない蹂躙だ。
そうなる前に、まずは身を潜め、回復を図る必要がある。
闘いの中で負ったダメージは、その身に宿したギリシャ神話最強と名高い英雄の自己治癒力によって回復している。
だが、元々折れた肋骨が肺に突き刺さった、致命的な状態から無理やり夢幻召喚で復帰したような物だ。
幸いにも体の修復は引き継いだ状態で転身は解除されたとは言え。
消耗が無い訳がない。事実イリヤの顔色はお世辞にも芳しい物ではなかった。
だが、それでものび太達と合流するまでは休むわけにはいかない。
彼等を守れるのは、自分だけなのだから。
……夢幻召喚が解除されてしまった今、それが可能かは怪しいが。


『イリヤ様……』


右手に握るサファイアが、身を案じる様に名を呼ぶ。
だが、それ以上は何も言わなかった。
彼女もイリヤが急ぐ理由はこれ以上なく分かっているからだ。


「大丈夫!私、まだまだいけるから、サファイア!!」


身を案じている様子のサファイアに、イリヤは精一杯の笑みを向ける。
サファイアが何を言いたいのかはイリヤも理解していはいる。
しかし、その意図を汲んでいればのび太達が窮地に立たされる恐れがある。
それ故に、今は無理を通すべき時間だった。
そんな彼女が、運命を分ける再会を果たすのは、この直ぐ後の事だった。





ルビーが攻撃を受ける前に物理保護を全開にしてくれていたお陰で。
丁度、彼女が今いる民家に飛び込んでくる少し前に目覚める事ができた。
そして、今。
鼓動が、五月蠅い程早鐘を撃つ。
二つの瞳から、熱い物が流れる。
もう、半ば会えないと思っていた。
身体を包む熱などどうでもいい。彼女との再会の時には、何も感じない。
私は、万巻の想いを籠めて、その名前を呼んだ。


「イリヤ……!」


私がそう呼ぶと。
彼女もまた、一瞬の硬直のあとに。
両目に涙をためて。弾ける様な笑顔で。


「美遊……!美遊なんだね……!?美遊……!!」


その言葉に、ゆっくりと頷く。
もう、彼女も私も止まらなかった。
夢中でお互いに駆け出して、廊下越しに数メートルあった距離を一瞬で0とする。
私達は、夢中で抱き合った。
お互いの存在が蕩け合って、一つになる様に。
もうお互いの事を離さないと、誓いあうように。
私の掛け替えのない、たった一人の親友。
この世で二人、世界を天秤にかけられる大切なひと。


「会いたかった……」


エインズワースに人形にされたイリヤの肉体を見た時の絶望は、言葉で言い尽くせない。
でも、今こうして再会が叶った。私の親友はまた、奇跡を起こして見せた。
再会が叶った今、頭の中に浮かぶのはそれだけだった。
エインズワースの事も、殺し合いの事も、その瞬間だけは忘れて居られた。
そう、その瞬間までは。




───人、ごろ、しなんて、やめろよ………。



あ、と。
直後に気づいてしまう。



(そうだ、私……私は………)



イリヤと会うために、人を殺してしまったんだ。
イリヤを元の身体に戻すために。イリヤに、ただもう一度会いたくて。
でも、そのイリヤは今目の前にいて。
それの意味する所は、つまり。
あの、鰻重が好きな男の子は。私、は………



───私は、死ななくてもいい人を。
───殺す必要のない人を殺してしまった。ということ?



一瞬だった。
一瞬で、イリヤを抱きしめる自分の手が、真っ赤に染まった気がした。
それに気づいた時、私は自分がとても穢れた者に思えてならなくなった。
反射的に、イリヤをどんと押して、距離を取る。
そうしないと、イリヤまで赤く染まってしまう気がしたから。
私は愚かだった。何もかも。
そんな事をすれば、イリヤがどう思うかは分かっていた筈なのに。


「美遊……どうしたの……?」


心配する感情を顔中に張り付けて、イリヤは私に尋ねてくる。
彼女の言葉に私は応えられなくて。押し黙ってしまって。
その時、やっと会えたはずの親友が、とても遠く感じられた。
地平線の彼方や深い海の底に行ってしまったような、そんな錯覚を覚えた。


『あ、あのー!!イリヤさん!!そんな事よりも大変なんですよ!!
多分、イリヤさんのお友達が───』


見かねた共犯者が。
ルビーが、訝しむイリヤとサファイアから私を庇うように大声を上げる。
そして、イリヤが決して無視できない話を、強引に話題を逸らすように語り始める。
ルビーもまた、あの鰻重の少年を殺した事を受け止めかねているのかもしれない。
その事を示すように、ルビーはいつにも増して饒舌だった。


「のび太さん達が、リップ君と…クロに!?」
『はいー…どう見ても穏便な空気ではなかったデスネー。
クロさんの事ですから、何か経緯やお考えがあってそうなったとルビーちゃんも思うのですが……』


話ながら、ルビーは此方にちらちらと顔(と言っても、何処までが顔に当たるのかは分からないが)を向けてくる。
苦しい誤魔化しだった。
イリヤの表情を見れば、私達の様子に違和感を抱いているのは簡単に分かった。
もし指摘されれば、どんどんボロが出てくるだろう。
……私達がやったことが露見すれば、イリヤは何と思うだろうか。
いや、本当は確認するまでもなく分かる。
彼女はきっと自分のせいで、死ななくていい人が死んだと考えるだろう。
その時のイリヤの心境を想像するだけで、言葉が出ない。
親友に言うべきことも言えずに。
私はただ捲し立てるように、ルビーがクロ達がいるであろう場所や状況の説明をしているのをただ隣で立ち尽くして聞いていた。


「………分かった、私ちょっと行ってくる」


話を一通り聞いて、彼女が真っ先に口に出したのは、誰かを助けるという意志だった。
この殺し合いで初めて出会った人たちなのに。それでも助ける、守って見せる。
私の親友(イリヤ)は、この殺し合いに巻き込まれても、何一つ変わっていなかった。
対する私は、もう取り返しのつかない事をしてしまっていて。
その事を考えるだけで、何だか泣きたくなった。
でも、今は泣いている場合じゃない。それだけは確かな事だった。



「……私も行く」


私は、ありったけの贖罪と、決意を籠めて、彼女にそう告げた。
例えあの眼鏡の少年と天使の少女を助けても、鰻重の子が帰って来る事はない。
それは分かっているけど。イリヤが行くというなら、私もいかないという選択肢は無かった。


「……うん。クロがグレて人を傷つけようとしているなら……
姉としてとっちめてやらないと!美遊もお願い、力を貸して!」


クロも、私も、この殺し合いで変わってしまっている。
同じなのは、イリヤだけだ。
でも、クロはきっと、まだ戻れる。きっと引き返せる。私と違って。
だから、あの子の事は止めてあげたかった。
私の様に、彼女の隣にいる資格を失う前に。


『分かりました!今は契約を移す時間も惜しいです!早速向かいましょう!』
『……姉さん?』


ルビーの不可解な提案に、サファイアが訝し気な声を漏らす。
私の共犯者である彼女は、イリヤと再契約しなおす事で万が一にも今、
私達がやってしまったことが彼女に露見するのを避けようとしたんだと思う。
そうなれば、クロを止めるどころでは無くなるかもしれないから。
普段を思えばそれは余りにも不自然な提案だったけど。
イリヤ達にも時間は無いのは事実で。


「いいよ。ルビーがそう言うなら、私は信じる。今すぐ行こう。
雪華綺晶ちゃんも、協力してくれる?」
「……はい!マスターが行くのであれば、私も行きます」


イリヤは、ルビーの提案を飲んだ。
そして、雪華綺晶という、私を助けてくれた人形…この地でできた様子の仲間と視線を交わして。
二人の間には既に、確かに信頼が築かれている様だった。
そして、雪華綺晶の意志を確かめてから、親友は再び私に視線を向けて。



「───行こう、美遊!!」



力強く、私にそう言った。



「……うん、一緒に」



どこまでも真っすぐな、イリヤの紅い瞳。
燃える焔の様な、煌めくルビーの様な、何時も私に勇気をくれた瞳。
今の私はその瞳を、見れなかった。






中々計算通りにはいかない物だ。
その事を、リップ=トリスタンは痛感していた。
本当ならば、とっくに片が付いていた筈だった。
古代兵器(アーティファクト)と見られる翼を持っているとは言え、手負いの少女。
それと、如何にも愚図そうで、実際自分の攻撃を避けられなかった眼鏡の少年。
否定者狩りの組織、UNDERの一員としてそれなり以上に経験を積んできた自分なら、簡単に下せる筈の相手だった。
だが、今なお二人の獲物は命を繋いでいる。
その訳は、二つあった。



――――超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!



一つは単純、天使の少女──ニンフが、リップの想定を超えて難敵だった事だ。
治療行為の一切を禁じる否定者であるリップも、肉体はあくまで人間だ。
対するニンフはシナプスのエンジェロイド。
翼を持つ者達にとっての兵器である。
戦闘機能こそ最小限であるものの、レーダーや演算機能は人とは比べ物にならない。
加えてニンフはリップが足の武器で取り込んだ空気を、圧縮した刃として使う事をイリヤの口から聞かされている。
そのため基本的に線の軌道で飛来する走刃脚(ブレードランナー)の軌道を予測し、回避する事は彼女にとって難しい話では無かったのだ。


(あの女の口から出る攻撃…多分音波砲(ショックキャノン)の類だろうが、厄介だな)


武装の視点で見てもエンジェロイドにとって最小限の音波兵器でさえ、ただの人間には致命打に成り得る。
更に、実体を持たない音波兵器である事も彼女にとっては追い風に働いていた。
アーカードの銃撃の様に、ひらりマントを翳せばやり過ごせるとは限らないからだ。
攻撃、防御共に、ニンフはリップと相性のいい相手だったのは間違いない。
だがそれでも、クロが加われば容易に勝てる算段であった。
しかし───


「あぁ、もう。邪魔しないで貰えるかしら!!」
「あら、つれない事をいわないでお姉さん。折角服薬(おめかし)したんだもの。
少しくらいダンスに付きあってくれてもいいでしょう?」


クロも加勢に加わろうとしたところで、グレーテルと名乗る、頭のおかしい銀髪の娘が首を突っ込んできた。
対主催として、眼鏡のガキと天使の少女の救援に来た訳では無いのだろう。
庇うそぶりも一切ないし、クロが纏わりつかれているのも単純に遊び相手としてクロエが少女のお眼鏡に叶ったからに過ぎない。
だが、ただの考えなしの子供(ガキ)ではない。
明らかに、殺しに慣れている。見た目は子供でも立ち回りは血に飢えた獣のそれだ。
身体能力も、天使の少女を超えて人間離れしており、クロエと剣閃を交わしている。
リップ達にとって、まったく予期せぬお邪魔虫であった。
その結果、リップはこうして単独で天使を相手取っている。


「私達もツイてないけど、アンタたちも相当運がないみたいね」


そう言って天使の少女は煽るように笑う。
誘っているのだろう。
飛び込めば、即座にカウンターを叩き込んでくる。リップはそれを感じ取っていた。
アーカード戦で使用したひらりマントも、無形の音波攻撃相手ではカバーしきれるか微妙な所だ。
音波攻撃に合わせて散弾銃の様に飛んでくる羽の攻撃も厄介だ。
こちらはひらりマントで問題なく弾けるとは言え、狙いが正確無比。
精密な弾道予測、音波攻撃による範囲攻撃と、硬質化した翼のショットガンの撃ち分けは、リップにとって確かな脅威だった。


(俺の攻撃の軌道は看破されてる。音の大砲を考えれば、下手に懐に入れば相打ちになる。
クロの援護もまだ暫くは無理。となると、後は───)


冷静に、否定者狩りとしての経験を総動員して、戦術を練り上げる。
近接戦はお互いに不得手、遠距離戦は弾道予測が正確無比な分ニンフの方が有利。
となれば、リップが勝利するにはその予測を超える攻撃を仕掛けるしかない。


「───決めに行くか」


走刃脚(ブレードランナー)に圧縮していた空気を放出。
空気抵抗によりかかる体の負荷がギリギリのレベルまで、移動速度を跳ね上げる。
常人であれば視認不可能な領域の高速駆動だ。
地を蹴り、壁を蹴り、宙を蹴って、彼は縦横無尽に駆け回る。



「──無駄よ。それもイリヤから聞いてるわ。私のレーダーはアンタを完全に補足してる!」




レーダーか。
否定能力なのか、古代兵器なのか、それとも全く違った別種の異能なのか。
それは分からないが、天使のこれまでの立ち回りにも合点がいった。
敵手の索敵能力は群を抜いている。きっとどれだけ攪乱しようと意味をなさないだろう。
彼女の対応できないレベルで接近戦が可能であれば真正面から叩き潰せるのだろうが、リップにはそれは無理だ。
だが、それでも───行く。ニンフの前方、側面、後方を韋駄天の如く疾走する。


「何のつもり……蠅みたいにブンブンブンブン!!」


ニンフの周囲を駆け、補足から逃れようとしているのなら全くの徒労である。
人間であれば兎も角、エンジェロイドであれば補足できない速度では全くないからだ。
電子戦に長けたニンフのレーダーの処理性能から逃れようと思えば、最低でも音の壁を超える必要が出てくる。
この地に来てから戦った魔女や吸血鬼ならば可能かもしれないが、少なくとも目の前のリップは肉体的には地蟲(ダウナー)の範疇だ。
今ですら、体の負荷は相当なものだろう。


(何を考えてる……自分の身を削って、やる事が意味のない攪乱?)


ニンフの電子戦能力は強力で、精密だ。
だが、彼女は兵器であって戦士ではない。
駆け引きや読み合いには不慣れだった。
兎に角今はリップがのび太に狙いを定めぬ様に、彼が人質に取られたりしない様に、マスティマの羽を散発的に撃って牽制する。
効果はあった、彼は時折のび太の方に意識を割いていたが、途中から諦めたようにニンフに意識を集中させている様子だった。
これで一先ずのび太は安全、そう考えた丁度その時だった。


キィイイイイイイイ


風斬り音が、周囲に響く。
来る、とニンフは思った。
だが、問題はない。既にあの義足から放たれる空気の刃の軌道は演算済みだ。
後はそのデータから安全地帯を予測し、その場所に身を伏せるか、パラダイスソングで迎撃してしまえば良い。
リップの狙いは未だ分からないものの、切り抜ける自信はあった。


───走刃脚(ブレードランナー)!!


リップの義足から、高密度の空気の刃が十を超える物量で以て放たれる。
空間を裂き、猛スピードで迫るその刃はエンジェロイドの機体であっても切り裂くだろう。
だが、問題はない。数は多いが軌道はこれまで通り、単調で、直線的なものだ。
前方に駆けながら翼を畳み、身をかがめる。
演算結果ではこれで問題なく回避できるとの事だった。そして、その予測は正しかった。
不治の呪いを強制する攻撃はニンフには掠りもしない。好機だった。


(しめた!後は奴が立て直す前に超々超音波振動子(パラダイス=ソング)で──!)


取り合えず威力を落として、リップを気絶させ、拘束する。
不治の解除方法は、その後吐かせればいい。
もしなければ、のび太達は反対するだろうが、ニンフは殺害も辞さないつもりだった。
だが、先ずはリップを沈黙させるのが最優先。
その決定の元、パラダイスソングの発射準備に移行した瞬間だった。


「───かかったな」


リップが、勝利を確信した笑みを浮かべたのは。
ぞく、とニンフの背筋に嫌な予感が駆ける。
予感が現実のものになったのは、直後の事だった。


────月時雨。


回避したはずのリップの斬撃が、全て踵を返したようにニンフの方向へ向かってくる。
そしてその軌道は、これまでリップが放ってきた物とは違う出鱈目な物だった。
それ故に、既存の弾道計算ではよけ切れない。
明後日の方向に跳んでいくものもあったが、数にして五発の斬撃がニンフに殺到する。


(───ラトラに比べれば精度は格段に落ちるが…それでも上手く行ったな)


相棒であるラトラの否定能力に比べれば格段に精度は落ちるモノの。
それでも概ね狙い通りの攻撃となった。
ニンフの後方に配置したひらりマントに視線を向けながら、リップは確信した。
作戦は単純だ、走刃脚の刃をひらりマントで反射する事によってラトラの否定能力との合わせ技である月時雨を再現する。
これまで以上の物量。そこにリップの意志は介在しない。
これまでの弾道予測では対応不可能な跳弾する刃こそ、彼が考えたニンフのレーダーの掻い潜り方だった。
そして、リップの立てた攻略法は、ニンフにとってこれ以上ない程的を射ていた。



「く──!!超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!」


回避は出来ない。それを一瞬で脳内のCPUが弾き出す。
その結果を受けた0.1秒後、ニンフは咄嗟にパラダイスソングを放ち、刃を迎撃した。
不治の能力を知っている今の彼女にはこれしかなかった。
例え追撃が直後に飛んでくるとしても、今の彼女にできる最大限の抵抗だった。
当然ながら、それで追撃の手を緩める不治(アンリペア)ではないが。


───走刃脚!!


当初の予定よりも大幅に手こずらされたが、これにて詰みだ。
音波砲は、顔で照準を付ける以上、即座に連射はできない。
後方の刃を迎撃した今、ニンフに僅かにタイムラグが生まれる。
その一瞬のタイムラグが勝負の分かれ目だ。
再び走刃脚に、空気の刃を籠め、一瞬で撃発可能な状態へ移行する。


「───じゃあな」


短い死刑宣告と共に。
断罪の刃を振り下ろそうとする。
が、その刹那。タン、と乾いた音が響き渡った。


「な───」


リップの、眼帯に包まれていないほうの目が見開かれる。
左肩に走る灼熱。鮮血。弾痕。
馬鹿な、と思わずにはいられなかった。
イリヤの時とは違う。奴は確かに不治(オレ)の攻撃を受けていた。
という事は、まさか。
自分を破った不死の否定者と、その仲間たちの顔を想起しながら、リップは音のなった方向へ振り返る。


「はぁ……はぁ……!」


そこには、不治で癒えない傷をつけたはずの、眼鏡の少年が立っていた。
両手で拳銃を構え、今にも気絶しそうな顔で。
それでも二本の足でしっかりと大地を踏みしめ、そして叫ぶように彼は言った。


「ニ…ニンフに手を出すな!!」
「のび太……!」


眼鏡の少年──のび太が発したその言葉は。
まさに、西部劇のヒーローさながらの啖呵だった。
泣きそうな表情で言っていなければ、もっと様になっただろう。


「ちっ──!!」


舌打ちをしながら、リップはのび太を殺すべく疾走する。
ともすれば彼の中でののび太の危険度は、この時に限ればニンフを超えていたかもしれない。
不治の能力。一切の治療行為の禁止。
これにはリップの殺害によって不治を解除しようという行為も含まれる。
しかし、この制約は絶対ではない。抜け穴が存在する。
そもそも治療を考えていなければ、治療以外の目的であれば。
不治の攻撃を受け、能力の説明を受けた後でも、攻撃が可能なのだ。
例えば、不治の治療よりも、仲間を守る、という目的の元攻撃を行った不死の否定者が、リップを打ち破った様に。
だがこれは知っていたとしても早々行える行為ではない。
思考の比率がリップの無力化ないし殺害による不治の解除よりも、それ以外の目的が心の底から上回っていなければならないのだから。
ただ仲間を守る。相当に強く、純度の高い思いで目の前の敵手は攻撃を行ったのだろう。


「っ!?くそ、待て───!!」


背後で、ニンフの制止する声が響く。
遠距離攻撃しか攻撃手段のない彼女ではのび太の殺害は妨害できない。
もし妨害しようと音波砲を撃てば、巻き込んでしまう可能性が高いからだ。
意識を天使の方に7、眼鏡の少年の方に3の割合で割り振り、走刃脚を撃つ準備を整える。
のび太とリップの視線が交わる。
本当に、さっき正確無比な銃撃を撃ったガンマンとは思えない顔だった。
滴り落ちる鮮血と、リップの纏う冷淡な殺意に引き金を引く躊躇が生まれてしまっていた。
不動(アンムーブ)と同じ、能力があっても、使うモノの意志が弱ければ宝の持ち腐れ。
敵手は仲間を守るためなら引き金を引けても、敵を殺すために引き金を引けなかった。
躊躇はほんの僅かな時間だったが、その僅かな一瞬が、命取りだ。


「死ね───」


子供を殺すのは決して気分の良い殺しではないが。
願いを叶えるまで、救えたはずだった恋人を救うまで、不治の否定者は凶行に及ぶ。
一瞬一瞥したニンフがマスティマを振り上げるモノの、既に間に合わない。
空気の刃を放ち、その反動でマスティマの羽から逃れる。
即死はさせない。もう月時雨はニンフには通用しないだろう。
そのため、即死しない程度に深手を負わせて、ニンフを討つための削りとする。
絵図は完成していた。
描いた絵図に従い──断罪の刃を振り下ろす。



「ド、ドラえもん───!」


幾つもの冒険を繰り広げてきたのび太も、肉体的には運動音痴な小学五年生でしかなく。
リップの攻撃を逃れる術も当然ない。
さっき使える様になった魔法も、今は用をなさないだろう。
故に、未来からやってきた親友の名を呼ぶことしかできず。
彼の力ではどうしようもない詰み(チェック)を迎えていた。



─────させない!!!



走刃脚の刃がのび太を切り裂くコンマ数秒前の事だった。
のび太の目の前に迫っていた刃が、桃色の光線にぶつかり、四散する。


「……………ったく、次から次へと」


忌々し気に、リップは悪罵を漏らす。
視線の先に立つのは、この殺し合いで最初に出会った二人。
それに加えて、イリヤと同じマジカルな装飾の、ピンク色の服を着た黒髪の少女。
彼女達の姿を認めて、厄介なことになった、と。心中で吐き捨てる。



「………イリヤ、美遊」



声が漏れたのは、彼だけでは無かった。
乱入者を検めるために、後方で切り結んでいたグレーテルとクロエ、双方が硬直する。
その姿を確認してから、クロエは苦々し気に、乱入者の少女達の名前を呼んだ。
そして、その声に導かれるように、乱入者の少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは向き直る。
そして、正にやんちゃをし過ぎた妹にお灸を据える様な厳然とした態度で。
彼女は、声を上げた。



「………何やってるのよ、クロ………!!!」






心が、ざわつく。



「アンタと話す事なんて、何もないわ。イリヤ!!」


何故だか、自分がとんでもなく馬鹿な事をしている気になる。
感情のままに投影した剣を、イリヤに叩き付ける。
イリヤはそれをステッキで受け止めた。
ルビーじゃないのね。その時私はそんな感想を抱いた。


「何言ってるの!ちゃんと……ワケを説明して!」


違和感。
このイリヤは何かが違う。
本当に、美遊や、私との出会いを深く考えずに否定したイリヤなのか。
私の知っているイリヤは甘ったれで、追い詰められるとまず考えるのは逃げる事で。
魔術のまの字も知らないでのうのうと普通の日常を謳歌するただの子供。
その筈、だった。


「だから、何もないわ。イリヤは二人もいらない。貴方はそう言った。
そんな私達にこの場は丁度いいじゃない。決着をつけましょう。イリヤ」
「……!?何の話をしてるの?それじゃ、まるで………」


困惑しながらも、私を真っすぐ見つめてくるイリヤの紅い目。
私の知ってるこの子は、こんなに強い眼差しをしてたかしら。
それを考えると、どうしようもなく心が泡立つ。
自分がどうしようもなく、独り相撲をしている気分になる。
投影した莫邪を握る手が、緩みそうになる。
私が私の人生を手にするには、優勝する以外の道は無いはずなのに。


「───何をごちゃごちゃ喋ってる!!」


怒号と共に、リップ君が私に向けて斬撃を放ってくる。
慌ててイリヤとほとんど同時に、飛びのいて躱す。
何をするのと一言文句を言ってやろうかと思って、直ぐに止めた。



「あら、残念。二人纏めて送ってあげられそうだったのに」


さっきまで私と戦っていた銀髪の子が、刃に変えた手を戻しながら言った。
イリヤと私が言い合っている間に、私たち二人の命を虎視眈々を狙っていたのだ。
リップ君の援護がなければ、不覚を取っていたかもしれない。
そう考えている間に、義足の高速移動でリップ君が私の隣に降り立ってくる。


「退くぞ。流石に今は分が悪い」


彼の言う通りだった。
さっきまで相手していた二人に、銀髪の子、そして美遊とイリヤに、何か白い人形の女の子まで連れていた。
人数では銀髪の娘を抜いても二倍。
それでも、素のイリヤと美遊ならやってやれない事は無かったかもしれないけど──


──夢幻召喚(インストール)!


「……ま、そー来るわよねぇ」


視線の先には、ローブを纏った美遊の姿があった。
まずキャスターのクラスカード。神代の魔術師メディアの力をその身に宿したと見て間違いないだろう。
リップ君の言う通り、こうなると流石に分が悪い。
敗けるとは思わないが、勝つまでに此方も相当な消耗を強いられるのは間違いない。
退く、というリップ君の判断に異論は無かった。


「…問題は逃げられれば、だけど」


イリヤも、美遊も、逃がしてくれる気は毛頭ないみたいなのは、一目見ただけで分かった。
特に夢幻召喚まで使って私を捕えようとしてる美遊は、気合十分といった所でしょうね。
そう思って、美遊に意識を集中する。


(………?)


そうして美遊を見て、また言いようのない違和感に襲われる。
ローブ越しに見る美遊の瞳。
イリヤからは並び立っているから見えないその瞳に、何時もの光は無かった。
まるで壊れかけのロボットが、無理やり動いている様な、そんな風に映った。


「……ま、それは私も人の事は言えないか。……ねぇ、美遊?」


フッと皮肉気に笑って。私は美遊に語り掛ける。


「………私、は。イリヤを守る。それだけ」


そう。
やっぱり貴方も、何か抱えてるのね。
今の私と美遊は敵同士。貴方が何を抱えてるのかは聞いてあげられない。
でも、それでも。
この殺し合いでも変わらず、貴方がイリヤの隣にいてくれるのは…少し嬉しいと思った。


「絶対、ぜーったい!とっ捕まえて何考えてるか吐いてもらうんだから!」
「そこの眼帯もよ、捕まえてのび太にかけた不治、解除させてやる!」


……全く、無粋な外野が多いわね。
そう思いながら美遊から視線を移すと、イリヤと翼の生えたニンフと言う子が私を睨んでいた。
ゲームが始まって数時間も経ってないのに、よくぞろぞろと集まったものだわ。
乃亜に、首輪を何時吹っ飛ばされてもおかしくないのに。
それでもアンタ達はそんな事考えず、無邪気に脱出しようとしてるんでしょうね。
……本当、見てると剣を握る手が緩みそうになる。



「───だから。握れなくなる前に始めないとね」



そう言って、私は手の中に最強と信じる剣を出現させる。
剣の名は約束された勝利の剣(エクスカリバー)。
魔力の消費は大きいけれど、出し惜しみできる状況でもない。
初手でこの剣を起爆し、リップ君の不治と義足で突破する。
可能かどうかで言えば、十分可能な作戦だろう。
リップ君とアイコンタクトを取り、右手に握る聖剣を見せて、計画を察してもらう。


「分かった、3つ数えたら撃て」


彼が小さく囁いたその言葉に、コクリと頷いて。
それが聞こえていたのかは定かではないが、イリヤ達も構えを取る。
お互いがお互いに集中する。
他の物はすべて背景になって、音が消えて。
世界の焦点が、お互いに集まる。
その時だった。




「───おやおや」



粘着質な声で、意地の悪さと、此方を見下しているのが伝わってくる声だった。
同時に、背中に氷水を流し込まれた様な、危機感が体の奥からこみ上げて来る。
この声には、私も聞き覚えがあった。直接言葉を交わしたわけではないけど。
ごくりと喉を鳴らして、声の方を見る。するとそこには、予想した通りの怪物がいた。
突撃槍を片手に握った、黒いドレスを纏った女。


「完璧なる戦士<<パーフェクトウォリアー>>は解けてしまった様でありんすねぇ──」


現れた女は、嗜虐心を隠そうともせず。
イリヤに、そう言って笑いかけた。
場に暴風が吹き荒れたのは、その直後のこと。






シャルティアが支給品の闇の賜物によって、再び戦闘可能な状況になるまでそう時間はかからなかった。
少なくとも、あの白髪の小娘はともかく、先に逃げた二人にならば問題にならない。
本調子には程遠いが、そう確信できる程には潰された肺や背骨などの傷の修復は完了していた。
アンデッドにして吸血鬼であるシャルティアにとって、闇の賜物はとてもよく馴染んだ。
自前のリジェネ魔法と合わせて、欠損していた右腕が、大部分が修復した事からもそれは伺えた。
更にMPの方もある程度回復したため、即時戦闘すら可能、シャルティアはそう判断した。
しかしシャルティアは回復後も、暫く息を潜め機を計る事とした。


(丁度いい足止め役もいた様でありんすからねぇ……)


イリヤが決死の覚悟で逃がした二人は、別の二人…乃亜の言葉ではマーダーと言ったか。
マーダーと見られる二人組に襲撃されていた。
何方もそれなりに腕が立つ様子だったので、このままいけば二人が勝つだろう。
それがシャルティアの立てた目算だった。銀髪の少女が乱入してもそれは変わらなかった。
介入するか漁夫の利を狙うか考えていた所で、状況の風向きが変わる。
あの忌々しい白髪の小娘──イリヤと呼ばれていたか、それが現れたからだ。
傍らに見覚えのある白い人形と、同じ魔法詠唱者(マジックキャスター)と見られる黒髪の小娘を引き連れて。
シャルティアは、この時彼女の姿に着目した。
イリヤの姿は先ほどの戦士然とした姿とは違うもので。
最初に現れた魔法詠唱者のいで立ちだった。
どうやら、完璧なる戦士は解除されたらしい。
加えて、彼女が再びそれを使う素振りを見せなかった。
推察するに、自分の幾つかのスキルや魔法の様に、連発できない様に制限されているのだろう。
であれば、最早シャルティアを止められる戦士は存在しない。


「美遊、気を付け───!」


仲間に警戒を促すイリヤの叫びをかき消すように、シャルティアは疾走を開始。
目標(ターゲット)はイリヤ──ではなく、その傍らの美遊と言うらしい小娘。
夢幻召喚と言うスキルで彼女の魔法詠唱者としての格が跳ね上がっているのをシャルティアは確認していたからだ。
魔力量だけで言えば自分を超え、主であるアインズ・ウール・ゴウンに匹敵する魔力量。
無視できる存在では無かった。


「ま、さっきまでの小娘と比べれば───どうという事はありんせん」


そんな無視できない敵手に向けて、シャルティアは余裕を示す冷酷な笑みを浮かべる。
目の前の相手は見た所魔法詠唱者。まず間違いなく放つ魔法の位階は第十位階。
弱い魔法詠唱者ならば第十位階の魔法でも無効化できるシャルティアだが、目の前の相手はそんな領域では断じてない。
恐らくだが有効打を飛び越えて、シャルティアをしてまともに受ければ致命となる魔法を有しているだろう。



───《マキシマイズマジック/魔法最強化》



槍を構え、美遊に突撃しながら自身の魔法の効果を最も上げるバフをかけた。
そのまま瞬きの様な僅かな時間で、顔立ちがはっきりと分かる程の距離まで接近する。
ここで美遊は反射的に後方に魔法陣を展開、迎撃態勢を取った。
流石に早い。殆ど無詠唱で迎撃態勢を整えたのは純粋に驚嘆に値する。
だが、それでもシャルティアの酷薄な笑みは崩れない。



───《ヴァーミリオンノヴァ/朱の新星》




美遊が、迎撃の魔術を放とうとした、まさにその瞬間だった。
シャルティアは空中に一瞬で停止し、五指を広げる。
槍での突撃はフェイク。
フェイントの様に停止したシャルティアは滑らかに炎系の対個人攻撃魔法としては最高位の魔法の詠唱を行う。
ただしその目標は美遊ではない。


「───!?私……ッッ!!」
「イリヤ……ッッ!!」


目標は、美遊の傍らで身構えるイリヤに対してだった。
完璧なる戦士が解除された今、彼女がこの魔法を受ければ消し炭になってしまう。
そう確信させる紅蓮の業火が、イリヤへ蛇の様に迫る。
当然、美遊がそれを許す筈もない、発生した魔法陣を轟火球に向けて指向。
コンマ数秒で魔力が充填された魔法陣から放たれるのは、正しく砲撃であった。
発射速度、精密性、破壊力。そのどれもが現代の魔術を凌駕している。
二つの世界体系の違う魔導は数秒もせず接触し───激突、融解、閃光。
数秒ほどの僅かな間であるが、まるで真昼になった様に周囲が明るく照らされる。
さながら夜明け前の太陽の如き風景だった。


(……っ!?何処に……イリヤ……!!)


勝利したのは、美遊の放った砲撃。
着弾と共に熱線の軌道を変え、明後日の方角へと霧散させた。
しかし美遊の顔にあるのは勝利の高揚ではなく、焦燥だけだ。
周囲に閃光が迸った瞬間、シャルティアの姿を見失った。


「美遊!!」


魔力探知を全力で起動しながら、シャルティアの姿を探す。
その最中、シャルティアよりも早く、イリヤの姿を認めることができた。
ここで敵手を見つけるよりも、彼女の傍に戻り追撃を警戒する方向に意識を切り替える。
魔力探知と並行しつつ、高速飛行魔術でイリヤの傍へと飛ぶ。
流星の様に夜空を切り裂き彼女の元へと馳せ参じる。



「マスター!危ない!!」



イリヤの元へとたどり着くまであと2秒程の所で。
地上から悲鳴に似た声が上がった。
それと共に、美遊もまた気づく。
イリヤのすぐ背後に、月明かりに照らされ刺す影を。
獲物を一突きにせんと構える、シャルティア・ブラッドフォールンの姿を。
そして、直感的に理解する。



───間に合わない。



2秒。それは美遊にとって絶望的な数値だった。
シャルティアは今、イリヤの背にぴったりと張り付いている。
生半可な攻撃では彼女を退ける事は出来ない。
かといって彼女を退けられる程の魔力砲を放てばイリヤごと吹き飛ばしてしまう。
故に、彼女の取り得る行動は、たった一つしかなかった。


「イリヤ」


短く名前を呼んで。
儚げに笑い。最後に自分の顔を見る親友の紅い瞳を、目に焼き付ける。
自分と、親友(イリヤ)両方とも拾う事はできない二者択一だ。
その時点で、彼女が何方を取るのかは自明の理だった。



どんッ



高速飛行魔術を全開で使用。
再会した時の様に、親友の身体を突き飛ばす。
スローモーションになった世界で、蒼い死の穂先がイリヤの脇をすり抜けるのが見えた。
そして、その直後に。自分の左胸───心臓が貫かれるのを感じた。
白兵戦を不得手とする、キャスタークラス。回避ができない事は分かっていた。
然し彼女に、それ以外の選択肢などある筈も、無かった。



「美……遊……?」
『美遊様!』
「美遊さん!!」




自分の返り血を浴びて。
紅く染まった親友と二本の魔術礼装が、呆然と自分の名を呼ぶのが聞こえた。
夢幻召喚は愚か転身すら解除されて、落下しそうになる体がイリヤの手によって支えられる。


「美遊、美遊……いや……いや……!!…何で、何でこんな……」


二つの瞳に涙を一杯にためて。
現実が受け入れられないかのように、少女は首を横に振るう。
そんな親友のために、美遊は自分が助からない事を承知の上で、最後の力を振り絞る。
気にしなくていい。
自分の運命はきっとあなたの為に見知らぬ誰かを犠牲にした時に決まっていた。
これはきっと、当然の報い。
数々の言葉が、喉元までもたげるが、必死に押しとどめる。
それらはきっとイリヤにとっての呪いになる。
彼女に自分のせいで、誰かが死んだと思ってほしくはないから。
けれど、けれどせめて。



「イリヤは、生き……」


身勝手な私とは違う、この殺し合いでも変わる事が無かった、たった一人の親友だけは。
生きて欲しかった。生き残って欲しかった。
そして、ささやかで、暖かで、幸せな日々に戻って欲しかった。
それが、神稚児の少女が抱いた、最後の祈り。





「敗者が浸ってるんじゃありんせん」




生きて。そんな、最後の祈りが最後まで紡がれることは無かった。
抱きかかえるイリヤごと、シャルティアのスポイトランスによって薙ぎ払われていたから。
イリヤが反応する暇もなく、発射された砲弾の様に二人の身体が撃墜される。



「マスター!!」



雪華綺晶が逼迫した声で叫ぶ。
限りなく彼女にとって最悪に近い状況下で、イリヤはこの時幸運だったと言えるだろう。
最も助けやすい、雪華綺晶のいる方角へと吹き飛ばされたのだから。
彼女のドールは瞬時に白い茨を形づくり、イリヤと美遊の身体を受け止めようとする。
だが、少女とは言え人二人分の質量が砲弾もかくやの速度で飛んできたのだ。
絶大な力をほかったアストラル体であった頃と比べれば、ローゼンメイデン一体分の出力となった雪華綺晶が瞬時に出せる量の茨では、僅かに力不足だった。



(ぐ…ダメ、抑えきれな……)



受け止めた瞬間、ブチブチと茨が瞬時に切断されていく。受け止める事は叶わない。
必死の剣幕で追加の茨を伸ばすが、それでも間に合わないと雪華綺晶は判断した。
一瞬の判断のあと、後方の民家、その外壁に茨を出現させる。
雪華綺晶に目掛けて二人が飛んできたのは、殆ど同時だった。


「………ッッッ!!!」


イリヤ達ごと、雪華綺晶の身体が吹き飛ばされる。
二人と一体の身体がそのまま後方の民家の外壁に叩き付けられる、タッチの差で茨の生成が完了する。
三人の身体はそのまま茨が二段クッションとなり、受け止められた。


「う……」


しかし、雪華綺晶にとってもそこが限界だった。
外傷こそないモノの、衝撃を完全に殺し切れた訳ではなく。
まして瞬間的に出せる全力の出力で薔薇乙女の力を行使したのだ。
負担がない筈がない。彼女もシャルティアの一撃を受けて意識を飛ばしたイリヤと同じく、その場にへたり込んでしまった。



「……ふん、死ぬんじゃありんせんよ。そのためにその人形の方に飛ばしたんだから。
目が覚めた時、並べたぬしの仲間の首を見て、精々いい顔をして貰わないと」




始終を見て、シャルティアは多少溜飲が下がったと言わんばかりに鼻を鳴らした。
だが、まだまだ。お楽しみはこれからだ。まだ足りない。
我が忠誠の証に汚い手で触れただけでなく、このシャルティア・ブラッドフォールンに屈辱を与えた小娘の仲間を皆殺しにし、その首を並べてやる。
それでこそ、つい先程小娘に不覚を取った恥辱は漱がれる。
そう思いながら、目下敵の最大戦力の喪失を確信したシャルティアはスポイトランスを一旦仕舞った。
何故か?簡単だ。片腕では折角捕らえた脇に挟んだ戦利品を逃がすかもしれないからである。


「ぬしも、そう思いんしょう?」
『は、離して下さい!離せー!!』
「ダァメ☆意志のあるアイテムは珍しいでありんすし、
アインズ様への献上品としてぬしは持って帰るでありんす。丁度持ち主も死んじゃったしねぇ?」


シャルティアは嘲る様にそう告げると、桃色のステッキ、マジカルルビーを有無を言わさずデイパックの中に放り込む。
彼女は既に、これを使ってイリヤ達が変身しているのを看破していた。
中々に洗練されたマジックアイテムの様であるし、持って帰れば至高の主がお喜びになるかもしれない。
そんな考えを巡らせながら──自身の傍らに浮かぶ朱の球を操る。


「妾に一矢報いれる者もいなくなった以上──ここから先は蹂躙でありんすね。
その前に、栄養補給に洒落込むでありんす」


その朱の球は、美遊・エーデルフェルトの血液で作った、鮮血の貯蔵庫であった。
うっかり浴びて血の狂乱が発動しない様に、貫いていた時に収集していたのである。
それをまるでストローですする様に吸い寄せて、シャルティアは口へと運んだ。
口に含んだ瞬間、彼女の両眼が見開かれる。


「はぁああああああ……!何でありんすこれ!超美味しい!!」


一瞬で分かる。今しがた殺した少女の血はただの人間の血液とは思えない程良質であった。
これだけ質が良ければ、喪った片腕の分の血を取り戻し、必ずや再生までの助けとなる。
──そう思うと同時に、シャルティアの身体に異変が生じる。
ごぽごぽと、今迄中々再生しなかった片腕が音を立てて再生していくではないか。
そうして、彼女の喪った筈の片腕は、此処数時間が嘘だったかのように元の美しい形を取り戻していた。
まるで腕を取り戻したいと願った彼女の願いを叶えたかのように。



「ククク…アハハハハハハ───」



笑いが止まらなかった。
仲間か何なのか知らないが、あのイリヤと一緒に来た小娘はイリヤを助けるどころか自分に色々プレゼントをしてしまった。
これが愉快でなくて何なのか。
こうでなくては、と思う。これまでの機運は自分に相応しい物ではなかった。
踏んだり蹴ったりと言っていいめぐり合わせだったが、ここに来てようやく流れが来たらしい。
この幸運であれば、奪われた真紅の全身鎧もそう時間を掛けずに見つける事ができるかもしれない。
高揚に胸を躍らせつつ、ひょいと飛翔し高度を上げる。



――――超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!



寸分の狂いなく狙いをつけられた音波砲を苦も無く回避して見せる。
余裕と侮蔑を籠めた眼差しで、シャルティアは地上の天使を見下ろす。
彼女の音波攻撃は直線的に過ぎる。既に見切った攻撃であった。
故に、此処から先は闘争ではなく、ただの作業。



「さて……残った塵を掃除するでありんすかぇ」



何処までも冷酷に。怪物として。
シャルティア・ブラッドフォールンは掃討を意味する言葉を述べて。
取り戻した片腕を使い、デイパックに仕舞った突撃槍をぬらりと引き抜いた。






逃げるように、全速力で走る。
僕が、それを見つけたのは本当に偶然だった。
リーゼロッテとの戦いのあと、美柑さんはますます僕に怯えてしまった様だった。
無理もない、と思う。美柑さんは戦った事なんて無い人で。
お母さんやブルマさんみたいに、気の強い人ではないから。
自分が戻してしまう姿を見られたのも、彼女にとっては物凄くショックだった様で。
ケルベロスさんも、困惑を通り越して僕たちに呆れている節すらあった。


「直ぐに戻ります。直ぐに……」


走りながら良い訳の様に、そう口ずさんだ。
結局、美柑さんが落ち着くまでまた適当な家にお邪魔して。
お父さんを探すのは遅々として進まなかった。
怯えた彼女もどう扱っていいか分からず、取り合えず外の見張りをすると買って出たのが、少し前の話。
その矢先の事だ。此処からすぐ近くのエリアで、火の手が上がっているのが見えたのは。
断続的に上がっているその炎を見て、意識を全力まで集中する。
気で参加者の居場所を辿るのはこの会場では上手く行かない。
舞空術で空から探すのもそうだ。だから、美柑さんと家の中にいたら気が付かなかっただろう。



───な、何を言うとるんや!悟飯がおらんかったら、美柑の奴は……!



誰かが戦っている。殺し合いをしているなら止めに行かなければいけない。
僕は、美柑さんとケルベロスさんにそう言った。
当然、ケルベロスさんは止めた。
僕がいなくなったら、美柑さんを守る人がいなくなる。
当たり前の話だった。僕は、何も言い返せなかった。
ケルベロスさんは、「そりゃ殺し合いを止めるのは大事やけどな」だとか「でも美柑を見てみぃ。とても置いておける状態やないやろ」だとか言っていた。
ケルベロスさんの言う事は正しかった。僕は、怒られて項垂れるばかりで。
きりきりきり、と。頭の奥が痛む様な疼くような、そんな感覚がした。



───いいよ。悟飯君。私の事はいいから、行ってきて。



そんな僕に助け舟を出したのが美柑さんだった。
彼女はやつれた顔で、それでも無理やり笑顔を作って、僕にそう言った。
「私は悟飯君が帰ってくるまで此処に隠れている」
「ケロちゃんがいるから大丈夫」
そんな事を、彼女は言っていた。
ケルベロスさんは反論していたけど、最終的に、僕達二人に押し切られる形となった。
思えば、僕と美柑さんの意見が初めて一致した瞬間だったかもしれない。
だから僕はこうやって、美柑さんを置いて戦いの現場へと走っている。



「大丈夫です……み、みんな助けて……必ず、も、戻ります、から………」



本当に?
頭の中で声が響く。
本当に戦っている誰かを助けるために僕は今走っているの?
美柑さんと向き合うのが怖くて、美柑さんも僕が怖くて。
二人の意見が一致したのも、単にそういう都合が重なっただけなんじゃないの?
きりきりきり。きりきりきり。頭の奥が、鈍く痛む。


「今は、戦う事に集中しなくちゃ……戦わなきゃ……」



本 当 に ?
口に出す言葉は、やっぱり言い訳の様で。
本当は、戦いたいだけなんじゃないのか。
美柑さんを守るだとか、ユーリン君が死んだのは僕のせいだとか。
そんな事を考えたくなくて、ただ暴れたいだけなんじゃないのか。
僕の声で尋ねてくる声は、頭の前に、ずっと響いていて。


「お父さん……何処にいるんですか」



そんな声を、振り払うように走る。走る。走る。
きりきりきり。きりきりきり。きりきりきり。
───強い気を感じる。きっともうすぐ、戦いになるだろう。







「本当に、あの糞エルフに比べれば他愛もないでありんすねぇ」



それは一言で言って蹂躙だった。
シャルティアにとって既に奥の手が無い事が割れているニンフは、全く問題にならない程度の障害でしかなかった。
何しろニンフの得意とする音波砲も、人間のリップと違い彼女であれば対処する方法は幾らでもある。
イカロスやアストレアの様に戦闘機能を搭載していないエンジェロイドでは、
ナザリックNPCのハイエンド足る彼女を止めるのは、余りにも荷が勝ち過ぎていた。
退屈そうに呟きながら、ぎり、とシャルティアはその手に力を籠める。
彼女に首元を握られ、甚振る様にゆっくりと力を籠められているニンフは、整った顔立ちを苦痛に染めた。


「残念でありんす。ぬし、推察するにオートマトンのようでありんすし…
出会い方が違えば連れて帰り、アインズ様にナザリック入りを提案してあげても良かったでありんすがねぇ。ナザリックは異形種は広く受け入れているでありんすから」


あ、でもどの道生きて帰れるのはたった一人でありんしたか。
シャルティアはそんな事を宣い、ニンフの首を絞めあげながらケラケラと笑った。


「とは言え、海馬乃亜との交渉次第では死者蘇生も可能でありんしょう。
どうでありんす?土下座して私の靴でも舐めれば、これまでの事はお互い水に流して助命に動いてやるけど?」


何処までも小馬鹿にした言い方だった。
シャルティアも、ニンフが乗って来るだろうとは毛頭思っていない。
無論の事、乗ってきたら儲けものではあるが。やはりそれはありえないだろう。
首を絞めあげてなおニンフの視線は、シャルティアを睨み殺さんとする様に鋭い物だったから。
首を絞められているため掠れた声で、絞り出すようにニンフは返答を行う。


「願い…下げよ……アンタ、みたい…な……ビチグソ、と、なんて……
それに……私のマスターは、もう、一人だけ、なの……」


首を締めあげられる痛苦の中でなお、拒絶の言葉を述べるニンフは笑っていた。
白い犬歯を覗かせて、例え死んでもこの意志は折れぬと言わんばかりに。


「そう、ならば仕方ない。ここで死ね」


折角の慈悲を袖にするとは、オートマトンの中でもポンのコツな個体だったらしい。
先ほどまでの笑顔から興味の失せた無表情へと切り替わり、シャルティアはその手のスポイトランスを握り締める。
このまま握りつぶすのもいいが、最初にこのスポイトランスを奪った者をこの手で誅してこそ汚名は雪がれるだろう。
そのままニンフを放り投げて串刺しにしようとして──シャルティアのスポイトランスを握る手が、銃弾に撃ち抜かれた。


「……何でありんす?」


やはり、自分に科されている制限の中でも物理耐性が最も大きく影響を受けているらしい。
その手に刻まれた弾痕を冷めた目で見つめながら、シャルティアはその事を再確認した。
一瞬で血は止まり、早戻しの様に弾痕は消え失せ、元の青白く美しい掌に戻しながら、下手人を射すくめる。


「や……止めろ!それ以上やるなら、つ、次は頭を……」


銃撃の犯人は、シャルティアが最も眼中になかった少年だった。
これまで彼女が背景として扱っていたただの人間が、正確無比な銃撃を放ってきた。
無論の事、脅威にはなりえないが、僅かばかりの興味がわく。


「そうでありんすぇ。撃ってみればもしかしたら助かるかもね?」


ニコニコと。
張り付けたような、のび太からは酷く不気味に見える笑みで。
シャルティアは銃を向けられているのも気にせず、のび太に歩み寄る。
その足取りはゆっくりとだが、迷いのないモノで。
まるでのび太に撃てと誘っている様だった。


「う、動くなったら!動かないと本当に撃つぞ!!」
「当てるなら頭にしなさいね?でないと私は死にんせんからぇ」


そのままてくてくとまるで愛らしい少女の様に歩いてくる。
銃口を向けられているのに、さっきリップと言う男の子だって少しは怯んだのに。
喉がからからに乾く。膝も笑いっぱなしでちびりそうだ。
引き金が重い。ニンフを助けた時は、普通に引く事ができたのに。



「さぁ───頑張れ?頑張れ?」


バクンバクンと、心臓が五月蠅い。
もう、銃の前まで女の子が来ている。
おでこをくっつけて、にっこりと笑いかけてきている。
笑いかけられた瞬間、胸が緊張不安や以外で高鳴って、顔が熱くなる。
急に頭がボーッとしてきて。考えが纏まらなくなる。
ニンフを助けないと。そのためにこの女の子を撃たないといけなくて。
でも、あぁ、この子、すっごく可愛いな……
そう思っていたら、女の子がゆっくりと唇を動かした。


こ・れ・わ・た・し・て・く・れ・る・?


銃を指さして、怪物は少年にそう命じ、ニィ……と口元を醜悪に歪ませた。
少年は恐怖と陶酔が入り混じった表情で、銃を手放してしまった。



「くくく……ふっ、アハハハハハハハハハ!!
全く、無様でありんすねぇ────」



嘲笑うシャルティアの行った事は簡単だ。
彼女の持つ魅了の魔眼をのび太に使用した。
やはりのこの魔眼も大幅な制限を受けているらしく、フリーレンやガッシュ、
イリヤなどには通用しなかった。だが、ただの人間であるのび太は違った。
簡単な命令であれば、こうして屈服させることが可能である、と確認が取れた。
その手の銃をぐしゃりと握りつぶし、シャルティアは再びニンフの方へと向き直る。
眼鏡の小僧はもう眼中になかった。事実、魔眼の効果が薄れるまで何もできはしない。


「…さて、あのイリヤとかいう小娘が起きるまでに、ぬしらの首を並べておかないとね?」


スポイトランスをニンフに振り上げながら、シャルティアは周囲に聞こえる声で告げる。
イリヤ達一向にではない。
その場にほとんど無傷でいるグレーテル、リップ、クロエの三名に対しての言葉だった。
邪魔するならご自由に。ただし死ぬ覚悟で来いよ?と言わんばかりの示威行為だ。
既にシャルティアにとってイリヤ達は敵ではなく、誅殺を成し遂げた後の事を考えての示威行為であった。
彼女はリップ達が殺し合いに乗っているのなら、取り込み吸収してしまおうと考えていたのである。


(あのクソ耳長の様に油断ならない相手はいる様でありんすからねぇ……)


自分を出し抜き、手痛い一撃を加えてくる参加者はこの会場に存在している。
そんな手合いを確実に粉砕できるように、シャルティアは手足となる配下を欲していた。
あのエルフとの再戦を見据えると、ガッシュと名乗った金髪の小僧を少しの間抑えておける者がいれば九割方勝利できるだろう。
自前でもエインヘリヤルという自分の分身を創り出す切り札はあるものの、
相手に魔法、スキルの一切を禁じる手段がある以上他の参加者を使った方がより確実な筈。
もしナザリック大墳墓のNPCが自分以外にいればこんな事をする手間は省けるのだが…


「逃げられるなら、逃げてもいいでありんすよ?その代わり、私の標的は逃げた者に切り替わるけど」


三人の子供に対して、視線で邪魔をするなと制した後、今度は遠回しな脅迫をシャルティアは行う。
眼帯の人間、魔法剣士の類と見られる子供、己の身体を剣に帰る子供。
この内虚空から剣を創り出す少女はシャルティアのお眼鏡に叶うレベルの実力が伺えた。
残り二人は可能であれば取り込んで、使えない者ようなら切り捨てて行けばよい。
その考えの元、逃がさない様にだけ釘を刺して──死刑執行に戻る。


「さて、あの小娘が最後だと、やはりぬしになるのかしらね」


嗜虐心を露わにした表情で、シャルティアはニンフを見下ろす。
その次は白い人形、最後に眼鏡の小僧。
並べられた首を見て自分に屈辱を味合わせた小娘はどんな風に啼いてくれるだろうか。
絶望?憎悪?慙愧?後悔?いずれにせよ、自分の溜飲を下げる事ができるだろう。
泣き叫ぶイリヤの姿を想像して、上機嫌で突撃槍を振り被る。
後はそれを振り下ろせば、如何なエンジェロイドとて機能停止は免れない。


「………地獄に堕ちろ」



ニンフにできる事は最早シャルティアを睨みつけ、呪詛の言葉を吐くだけだった。
彼女の自己進化プログラム、PANDORAは制限により発動できない。
槍が、振り下ろされる。
故に彼女に打つ手はなく、断頭の切っ先を、目を見開いて受け入れる他はなかった。
無慈悲な切っ先は、天使の少女の頭を弾け飛ばさんと夜の闇を引き裂いて進んだ。



「死ねぇ───!!!」


唸りを上げて迫る切っ先。
ニンフは動けず。イリヤ達対主催は既に壊滅状態。
その瞬間までは、シャルティアの暴虐を止められる者はその場に存在しなった。


「な、に……?」


バシュゥッ!!という音が、シャルティアの耳朶を打つ。
側面から強い衝撃が走り、彼女の手からスポイトランスを叩き落した。
ゴトン、と言うスポイトランスが足元に落下した重苦しい音が響く。
それをBGMに、お楽しみの邪魔をした無粋な闖入者の方へ、視線を動かす。
彼女の視線の先に立っていたのは、右手をシャルティアへと向けた、黒髪の少年だった。
彼は戦意に満ちた笑みでシャルティアに笑いかけ、宣戦を布告する。



───それ以上やるなら、僕が相手をしてやる。と。








「ぬし、名前は?」
「悟飯、……孫、悟飯だ」
「そう。私は、シャルティア・ブラッドフォールン
残酷で冷酷で非道で――そいで可憐な化物でありんす」



シャルティアは馬鹿ではない。
余裕を示すように笑みを浮かべつつ、現れた少年に誰何の声を掛けて。
名乗りを聞きながら、その裏で考えたのは残るMPが如何ほどかという事だった。
鮮血の貯蔵庫でストックした魔力は右手の修復に使用してしまっている。
スキルの使用可能回数ももうあまり残ってはおらず、残るMPも半分を切っている。
その上で戦うには、目の前の悟飯と言う少年は些か不安を感じる。それ程の相手だった。
無論の事、敗北するとは毛頭思っていないが。それでも目の前の少年は異質に感じられた。
人の姿をしていながら、巨大な大猿とでも相対しているような錯覚を覚えたのだ。



「……いいでしょう。退くでありんす」



少年の出現を受けて、シャルティアが選んだのは彼女にしては珍しい、交戦を避けるという選択だった。
真紅の鮮血鎧の奪還も済ましておらず、残存魔力も半分以下ともなれば。
敗けはせずとも、最初のエルフ戦の様に手痛い反撃を受ける恐れがある。
折角スポイトランスと右手を取り戻し、本調子に近いコンディションになったのだ。
溜飲も大分下がった事だし、欲をかいて万が一があればアルベドやデミウルゴス達、そして敬愛するアインズ様からの無能の誹りは免れない。
引き際を弁える必要がある。


(そう…まだ無理を押して戦う時ではありんせん。向こうもそう思っているハズ───)


この場を一瞥しただけで、重軽傷者が多い事は一目瞭然。
加えて自分が少年の力量を見抜いたように、自分の力量も彼に伝わっているだろう。
救助を優先するなら、ここで交戦するのを避けるのは自明の理。
故に、シャルティアはこの提案が失敗するとはほとんど考えていなかった。
少年の地面が、まるで爆発したように弾けて。
弾丸の様に、その相貌に獰猛な敵意を籠めて悟飯が迫ってくるまでは。



「───は?」



とぼけた声が漏れる。
それと殆ど同時だった。
シャルティアの右頬に、凄まじい熱と衝撃が叩き込まれたのは。



「だあああああああああッ!!!!!」



地面とほぼ平行に吹き飛ばされ。
自信が殴られたのだとシャルティアが認識するまで二秒の時を有した。
油断ならぬ相手であるとは認識していた。
しかし、その認識でも見積もりが甘かった、そう言わざるを得ない相手だったのだ。
砲弾の吹き飛ばされるシャルティアを裂帛の叫びを上げながら、悟飯が追従する。


「喰らえッ!!」


掌に気を集め、圧縮したエネルギーを撃ち放つ。
その威力、一瞥するだけで不味い、とシャルティアの第六感が全力で訴えた。



───<<不浄衝撃盾>>!!



殴り飛ばされながらもスキルを発動し、漆黒の力場が致死の光線からシャルティアの身を守護する。
白と黒の力場の激突の瞬間、夜の闇を切り裂き、数秒の間再び周囲が白く染まった。
近くにいた未だ気絶したままのイリヤと雪華綺晶の身体が二メートル程吹き飛ばされる。
だが、それでも悟飯はそんな周囲の被害には目もくれなかった。


(お前達の様な奴がいるから……!ユーリン君たちは…美柑さんは……!)


倒す。
そうだ、僕の力は、お前たちの様な奴らを否定する為にあるんだ!
怒りと、使命感、そして胸の奥から湧き上がる衝動に突き動かされる様に。
宇宙にその名を馳せた戦闘民族の末裔少年は、眼前の敵手を沈黙させにかかる。
頭蓋を叩き潰すつもりで、本気の追撃を、シャルティアに見舞う。




「───調子に乗るなよ、糞餓鬼が!」



轟!と接触の衝撃で突風が吹き、地面にクレーターが出来上がる。
悟飯の一撃は、シャルティアのスポイトランスで受け止められていた。
槍の向こう側で、彼女の真紅の瞳に顔面を殴り飛ばされた怒りの炎が灯る。


「折角こっちが慈悲で退いてやろうとしたのに──そんなに死にたいなら望み通り殺してやるッ!!」


憤怒の唸りを上げて、シャルティアはスポイトランスを振るう。
殴る、突く、薙ぐ、穿つ───。
人の形をした小さな嵐の様な激しさで、シャルティアは怒涛の攻めを見せる。
そのどれもが、悟飯にとってもまともに受ければ致死と成り得る一撃の数々だった。
だが、そんな攻勢の中で、シャルティアは内心衝撃を禁じ得ない。



(───この小僧、無手で私と渡り合うだと!)



白兵戦を繰り広げるシャルティアの脳裏を過る、三人の階層守護者。
序列三位の階層守護者と執事長、アルベド、コキュートス、セバスの三人だ。
この三人は、戦闘の一分野においてはシャルティアを凌ぐだけの実力がある。
アルベドは防御力、コキュートスは武器を用いた戦技、セバスは格闘戦。
目の前の孫悟飯に最も近しいのは、格闘戦を得手とする執事長のセバスだろう。
だが、竜人であるセバスと違い、人間種と見られる悟飯が素手で自分のスポイトランスと鎬を削る光景は、話だけであれば失笑を零すであろう不条理だった。



「小娘の振るっていた石くれと言い、どこまでペペロンチーノ様を愚弄する!」



神器級アイテムであり、シャルティアの誇りであるスポイトランスに打ち据えられておいて、素肌の筈の悟飯の手は傷一つつかない。
その事実は酷くシャルティアのプライドをかき乱し、心が泡立つ。
無理もない、孫悟飯の纏う“気”は展開しているだけで彼の肉体をこの会場のどんな防具よりも強靭な鋼へと変えるのだ。


(………間違いなく、Lv100のプレイヤーかNPC。
基本の戦闘スタイルは肉弾戦。さっきの光弾の様に遠距離攻撃のスキルも持っている…
油断はならないが、戦闘スタイルを見るに搦め手の心配はない、
スポイトランスで体力を回復している以上、持久戦では私に負けはありんせん)



早々に認める他ない。
この孫悟飯と言う少年は、レベル100プレイヤーに匹敵する戦闘能力だ。
だが、衝撃と苛立ちが渦巻く心中とは裏腹に、シャルティアの脳内は冷静だった。
いかなレベル100プレイヤーとて、神器級アイテムであるスポイトランスの効果を容易に無効化できるものではない。
その証拠に、一振りするごとに今もシャルティアの体力は回復し続けている。
アンデッドであるシャルティアに疲労の概念はないため、このまま攻め手を緩めなければ遠からず自分に軍配が上がる。
そして、敵に痛打を負わせた所で、最大までバフを掛けた魔法で消し飛ばす。
故に此処は焦らず、冷静に削っていく。それが彼女のこの場における戦闘方針だった。
堅実で慎重。初戦の敗走を活かした決断だと評する事ができるだろう。
──相手が、孫悟飯でなければ。


「───シッ!!」


突撃槍と拳の交錯が数百を超えた頃。
始めてランスを上段から撃ちおろす形で攻撃する事に成功する。好機だった。
イリヤであれば、このまま押し切る事も可能だっただろう。
だが、押し切れない。それどころか僅かにだが、圧倒的不利な体勢から押し返されている。
槍の向こう側から、腕を盾の様に構え、笑う孫悟飯の顔が見えた。
不味い、と瞬間的に悪寒が駆け巡る。その予感は、正鵠を射ていた。


「だあああああああッ!!」


猿声の様な咆哮と共に、悟飯の全身から凄まじい圧力の力場が噴き出す。
まるで火山の噴火だった。だが、それだけならば十分耐える事ができただろう。
気の圧力にコンマ数秒遅れて、悟飯の拳が撃ちあがって来ていなければ。
爆発音が響く。
ミサイルの発射の様に下段から打ち上げられた拳は、スポイトランスの側面を捕えていた。
気の圧力で緩んでいた手から、スポイトランスが打ち上げられ、くるくると宙を舞う。


「───しまっ」


しまったと思った。
スポイトランスを取りこぼした事ではない。
打ち上げられたスポイトランスを、目で追ってしまった事だ。
その一瞬、スポイトランスに気を取られた一瞬は。
シャルティアにとって致命的だった。
次瞬、べきごき、と何かが砕ける音を聞いた。



「だりゃりゃあァああぁあああああああああッッ!!!」


殴る。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るッ!
超サイヤ人としての力は出せない物の。
宇宙の帝王すら殴り飛ばした膂力で以て、シャルティアの全身を打ち据える。
拳の弾幕、突きのラッシュ。
一秒ごとに肉がひしゃげ、骨が砕ける音が周囲に波の様に広がる。
悟飯にとっても、シャルティアが決して手を抜ける領域の相手ではない事を認めていたが故の猛攻であった。


「ぶ、ぐ、ェェああああああ……ッ!」


シャルティア・ブラッドフォールンにとって、これまで殆ど無い経験だった。
近接戦闘において、ここまで自身が滅多打ちと言えるまで攻撃を受けた事は。
至高の主、アインズ・ウール・ゴウンに敗れた時すら、徒手空拳ではなかったのだから。
敵の纏うオーラの様な物に触れるたび、自分の身体が削り取られていく。
単なる物理攻撃ではない。それだけならば、アンデッドである自分がここまでダメージを負うことは無いはずなのだ。


(セバスの…気功に近い力、かっ!)


拳の津波を受けながらも、シャルティアは悟飯の力を冷静に分析していた。
だが、余りの密度の攻撃に反撃は叶わない。
苦し紛れに振るった腕は空を掻き、カウンターを鼻っ柱に見舞われた。
ぼきん、鼻っ柱がへし折れる音が、耳朶に響く。



(ぐ───ペペロンチーノ様より下賜された、防具さえあれば)



防具さえ装備していれば。
耳長や、イリヤ達との連戦でスキルや魔力を消耗していなければ。
ここまでの不覚を取る事など、ありえなかったのに!
思い通りにならぬ現実を前に、汲んでも汲みつくせぬ怒りが湧き上がってくる。
そんな怒りの形相を浮かべるシャルティアに対しても、悟飯は一歩も臆しない。
猛獣の如き様相で、拳を振り上げ、反撃を叩き潰し、臓腑に膝蹴りを叩き込む。


「がふ……っ!!」


口から鮮血を零し、蹴り飛ばされ、シャルティアの身体が虚空を踊る。
人間であればとうに死んでいるであろう激痛の最中で、彼女は、笑みを作った。
さっきまではお互いの吐息が掛かる距離でのショートレンジ。
スキルも魔法も使う暇がなかったが、今は違う。
肉体の修復は後回し。どうせヴァンパイアは致命傷でなければ死なない。
鬼女の形相で、反撃の一手を放つ。



───清浄投擲槍!!



MPの消費と共に必中効果が付与された光槍がシャルティアの手に形成される。
悟飯の背丈を超える光槍の大きさは、彼女が悟飯に抱いた殺意と危機感の巨大さの証明に他ならない。
全力で、この人間を終わらせる。その意志と、それが叶うだけの力を有した一手。
しかし孫悟飯もまた、シャルティアが接近戦で分が悪いとなれば遠距離攻撃で仕留めようとしてくるのは予想していた。
恐らくシャルティアは、今後絶対に自分に近寄らせようとしないだろう。
だからこそ、遠距離戦でも勝利する。彼女がこれならば有利に立てる。
そう思った土俵で、捻じ伏せる。選ぶ一手は、速射性に優れた彼のもう一人の師の技──


───魔閃光!!


閃光と、衝撃が大気を駆け抜ける。
閃光は視界を奪い、金属音にも似た轟音が全員の聴覚を僅かな間狂わせる。
そんな中でも、悟飯はシャルティアを見失うことは無かった。
彼女の邪悪な気は既に把握している、見逃す筈もない。
シャルティアもまた、清浄投擲槍が破られる事を予期していたのか、中空で悟飯を見下ろす視線に侮りは一切なく。



───《マキシマイズマジック/魔法最強化》
───《マキシマイズマジック/魔法最強化》
───《マキシマイズマジック/魔法最強化》



魔力を高めるバフの重ね掛け。
ここまで来れば認める他ない。目の前の小僧は危険だ。生かしては置けない。
故に付近一帯ごと、全てを焼き払う。
制限下においても、それだけの力を自分は有しているのだから。




「消し飛べ……っ!!」



ありったけの殺意を籠めて。
イリヤ達に放っていた物と同じ、しかし全く違う規模の、その魔法を紡ぐ。



───《ヴァーミリオンノヴァ/朱の新星》!!



太陽の失墜。
凄まじい規模の業火が、地表の全てを焼き尽くさんと降り注ぐ。
たった一人を除いて誰も、その場を動く事ができなかった。その威容に、圧倒された。
何人かは離脱する方法はあったにせよ、そんな冷静な判断が零れ落ちる程、差し迫った終焉の具現。
そう、動けたのは、たった一人。


「かめはめ……」


それは、孫悟飯をおいて他にいない。
何故なら彼には、覚えがあったから。
大火力を有する敵が、追い詰められた時にどんな手段を選ぶかを。
迫りくる太陽を見つめて、低い声で短い詠唱を完遂する。



「波────ッッッ!!!」



一条の蒼の波濤が、紅蓮の太陽を迎撃する。
二つの莫大なエネルギーは、拮抗していた。
悟飯がもし、超サイヤ人になれていたならばここまで拮抗することは無かっただろう。
制限下では望めぬ話で、威力に制限を受けているのはシャルティアもまた同じ。
互いに本調子ではないからこそ、こうして覇を競う余地が生まれたのだ。



「ぎぎぎぎぎ……!」



歯を、食いしばる。
まだだ、まだこの程度ではいけない。
超サイヤ人になれぬと言っても、負けるわけにはいかない。
自分が負ければ、周囲にいる人々全てが焼き尽くされる。絶対に、負けられない。
自分は既に知っている。この時大事なのは、気を爆発させること。父はそう言っていた。
制限が及ばぬほどの一瞬。その一瞬で、全てを決める。
腹の奥に力を籠め、全霊で叫ぶ───!



「フルパワーだ!!!」



その叫びを号砲として。
シャルティアの魔法を受け止めていた光条が、爆発的な大きさに変貌する。
大地を飲み込もうとしていた終末の星を、蒼き力の奔流が完全に飲み込んだ。



「───な」



正に、悪夢の様な光景だった。
魔力のバフを重ね掛けした自身の魔法が、真っ向から押し返されている。
思考が飛び、一瞬であるがシャルティアは完全に無防備となる。
だが、世界はそんな彼女の状態に寸借しない。
莫大な二つの力が、彼女を飲み込もうと迫り、そして───



世界が白く染まった。








大敗を喫した。
本当に、危ない所だった。
制限によって身体能力やスキル、魔法に様々な枷が嵌められていると言っても。
ナザリック最強のNPC、シャルティア・ブラッドフォールンが死の覚悟をした。
吹き飛ばされる瞬間、上位転移の魔法が間に合っていなければ確実に消し飛んでいた。
間に合っているからこそ、彼女はこうして五体満足で此処にいるのだが。
吹き飛ばされる直前に行っていた眷属招来により、何とか回収できたスポイトランスだけが戦果だった。


「このバトル・ロワイアル……」


しかし、全身に負ったダメージは大きい。
特殊技能(スキル)は完全に底をつき、休息と栄養補給を取らなければもう使えない。
MPも、制限により魔力の消費が増大しており既に二割を切っている。
真紅の全身鎧を奪還する目途も立っていない。
イリヤ達を圧倒していた時とは、急転直下で状況は悪化したと言える。


「一筋縄ではいかない様でありんすね……」


エルフや、イリヤを相手に不覚を取った時とは違う。
この二人は武装さえ奪還し、万全の状況で戦えばそう怖い相手ではない。
だが、孫悟飯は違う。
制限によって手札の数に大幅に制限を掛けられているシャルティアにとって、
白兵戦でシャルティアに匹敵し、ともすれば凌ぐ実力を有する悟飯の存在は青天の霹靂と言えた。
認識を改めねばならないだろう。力押しでは、このバトルロワイアルは勝ちぬけない。


(至高の御方より賜った鎧を奪還するのは、より急務……
……それに、使える相手とは同盟を組むことも考えなければいけない、か)


元より、真紅の全身鎧を奪還するのは決定事項ではあったが。
孫悟飯の様なLv100の強者を相手にするのは絶対に必須と言えた。
それに加え、同盟者も必要だ。孫悟飯があのエルフやイリヤと徒党を組む可能性は高い。
そうなれば孤軍で勝てる可能性は格段に下落する。
故に、自分に匹敵するマーダーの協力者は必須であると言えた。
できることなら此処にいるのであればナザリックの階層守護者が望ましいが……
そこまで考えて、シャルティアは自身でも意外なほど思考が冷静な事に気づく。


「ハァ……怒りも余り募りすぎると逆に冷静になるという事でありんすか」


短く嘆息して、その手のスポイトランスを無造作に振るう。
ドッ、と。街路樹が吹き飛び、近場に会った民家に叩き込まれていった。
全身にダメージを負っているが、行動には問題ない。
それだけを認識して、再び歩みを再会する。
一先ずは名簿の開示を待ち、知り合いがいるかの確認を行う必要がある。


(待っているでありんす、耳長、イリヤ、そして孫悟飯。
ナザリック最強の階層守護者の名に賭け、絶対にこの借りは返す…!)


至高の御方が自分に下賜した、ナザリック最強の階層守護者の矜持に賭けて。
自身に敗走と言う屈辱を与えた少年少女を必ず殺すことを、シャルティアは誓った。



【一日目/早朝/D-8】

【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(極大)、全身にダメージ(大)、スキル使用不能、MP消費(大)
[装備]:スポイトランス@オーバーロード 闇の賜物@Dies Irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2、カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]基本方針:優勝する
1:真紅の全身鎧を見つけ出し奪還する。
2:黒髪のガキ(悟飯)はブチ殺す。ただし、装備の整っていない今は控える。
3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。
4:武装を取り戻し次第、エルフ、イリヤ、悟飯に借りを返す。
[備考]
※アインズ戦直後からの参戦です。
※魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
※その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
※スキルの使用可能回数の上限に達しました、通常時に戻るまで12時間程時間が必要です。


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