きみへの想い 忘れないように
胸深く 刻み込むから
☆
ふらふら、ふらふら。
その足取りは重く、そしてあてもしれず。
紫と白を基調とした貴族のような衣装に身を包み、少女のような顔立ちと獣の耳が特徴的な少年・シチーリヤは生気を失った目で彷徨っていた。
「......」
殺し合い。
その異様なはずの光景も単語もいまの彼にはなにも響かない。
兼ねてより戦乱うずまく時代と環境に生まれ育ったから、というだけではない。
その異様なはずの光景も単語もいまの彼にはなにも響かない。
兼ねてより戦乱うずまく時代と環境に生まれ育ったから、というだけではない。
(ライコウ、様)
彼は、この殺し合いに巻き込まれる直前、慕い尽くしてきた漢を失った。
ライコウ。大国・ヤマトを支えていた八人の将軍・八柱将が一人。
シチーリヤはライコウに仕え、彼の望む通りに動き、任を果たし、しかし敗北した。
そしてライコウはヤマトの未来のため、死力を尽くし、散っていった。
ライコウ。大国・ヤマトを支えていた八人の将軍・八柱将が一人。
シチーリヤはライコウに仕え、彼の望む通りに動き、任を果たし、しかし敗北した。
そしてライコウはヤマトの未来のため、死力を尽くし、散っていった。
ガクリ、と遂に膝が崩れ落ち、そのまま立ち上がりもせず天を仰ぐ。
「...ライコウ、様」
名前を口にする度に、胸が痛み目尻に熱いものが溢れてくる。
シチーリヤにとってライコウという存在は果てしなく大きなものだった。
だからその喪失を嘆き、苦しみ、悲しむのは決して間違ってはいない―――本来の主従ならば。
シチーリヤにとってライコウという存在は果てしなく大きなものだった。
だからその喪失を嘆き、苦しみ、悲しむのは決して間違ってはいない―――本来の主従ならば。
「私には、悲しむ権利なんてありはしない...」
シチーリヤは、もとは別の男の手の者だった。
彼の命に従いライコウのもとに潜入し情報を提供していた、所謂スパイだ。
そのはずだったのだが、ライコウという漢の大義と信念に触れていく中で、シチーリヤの偽りの忠誠はいつしか本物に変化していった。
しかしそれでもとの主と縁を切れたかといえばそうではない。
彼の心情はどうであれ、形だけ見ればシチーリヤはライコウの真の忠臣ではない。
忠義を謳いながら立場を平然と変える蝙蝠だ。
そのような者に、主を想い悲しむ権利などあってはならない。
彼の命に従いライコウのもとに潜入し情報を提供していた、所謂スパイだ。
そのはずだったのだが、ライコウという漢の大義と信念に触れていく中で、シチーリヤの偽りの忠誠はいつしか本物に変化していった。
しかしそれでもとの主と縁を切れたかといえばそうではない。
彼の心情はどうであれ、形だけ見ればシチーリヤはライコウの真の忠臣ではない。
忠義を謳いながら立場を平然と変える蝙蝠だ。
そのような者に、主を想い悲しむ権利などあってはならない。
けれど、この痛みを糧に前に進むことすらできないいまの彼は、ただの生きる屍。
ライコウが遺してくれた名前を一筋の拠り所としているだけのガラクタ。
だから彼の目はもうなにも色彩を写さないし、心にはなにも響かない。
たとえこの数秒後に死ぬとしても、所詮自分はそんなものだろうと諦め受け入れるだろう。
ライコウが遺してくれた名前を一筋の拠り所としているだけのガラクタ。
だから彼の目はもうなにも色彩を写さないし、心にはなにも響かない。
たとえこの数秒後に死ぬとしても、所詮自分はそんなものだろうと諦め受け入れるだろう。
(そうだ、苦しいだけなら...)
与えられた支給品から刀を取り出し、首元に宛がう。
彼にはもう生きる意味などありはしない。
元の主の命に従うという惰性で続けてきた余生も、こうも異常な事態においては成否どころかもはや続けることすらできない。
だったら楽になってしまおう。
彼にはもう生きる意味などありはしない。
元の主の命に従うという惰性で続けてきた余生も、こうも異常な事態においては成否どころかもはや続けることすらできない。
だったら楽になってしまおう。
「ライコウ様...私はもう疲れました」
もしも常世(コトゥアハムル)であの御方と出会えたら、と想いが過りかけ、しかしすぐに振り払う。
思いあがるな、自分のような裏切り者があの御方と同じ場所へいけるものか。
そうだ。
自分のような者には、こんな末路が相応しい。
シチーリヤはそのまま息を吐くかのように刀を押し込み———
思いあがるな、自分のような裏切り者があの御方と同じ場所へいけるものか。
そうだ。
自分のような者には、こんな末路が相応しい。
シチーリヤはそのまま息を吐くかのように刀を押し込み———
———本当にそれでいいのか?
ドクン、と鼓動が高鳴り脳内に声が響く。
「...!?」
シチーリヤの警戒心が引き上げられ、声の主を探そうとキョロキョロと周囲を見渡す。
———貴様がここで無意味に果てるのを、主は望んでいるのか?
声の主は見当たらない。
ならば一層警戒心を高めなければいけないこの状況に、しかしシチーリヤの意識は声に吸い寄せられるように集中する。
ならば一層警戒心を高めなければいけないこの状況に、しかしシチーリヤの意識は声に吸い寄せられるように集中する。
———もう一度考えろ。あの主催の小僧はなんと言っていた?
『最後の一人になるまで、殺し合って貰いたい。いわゆるバトルロワイアルさ。勿論ただでとは言わない、優勝者にはどんな願いも叶えてみせる』
言った。確かにあの乃亜という少年はどんな願いをも叶えるといい、実際に死者を蘇らせてみせた。
「私が、勝ち残ればライコウ様を...?」
———そうだ。お前が勝ち残れば全てが思うがままだ。主が惜しくはないのか?貴様の忠誠心はその程度なのか!?
ポツリと呟いた言葉に、声は呼応するかのように囃し立てる。
「ちが、う。わたしは、私のあの方と共に歩みたかったという想いに、偽りなど...!」
そう。ライコウの進む道を歩みたいという気持ちは本物だ。
だから、仮面を持ち出したあの時、ライコウが止めねば間違いなく自分は仮面を使い、そしてその身を彼の代わりに崩し道を切り開いていただろう。
だから、仮面を持ち出したあの時、ライコウが止めねば間違いなく自分は仮面を使い、そしてその身を彼の代わりに崩し道を切り開いていただろう。
———ならばおれを使え!冥府の神・アヌビス神を暗示するスタンドであるこのおれを!!
「———ッ!!」
シチーリヤはここにきてようやく理解した。
先ほどから響いているこの声は、目の前の刀剣を通じて伝えられていることに。
先ほどから響いているこの声は、目の前の刀剣を通じて伝えられていることに。
「わたしは...」
この刀剣を手にし、優勝する。それは即ち、他に巻き込まれたかもしれない無辜の民をも手にかけることだ。
ライコウはその屍の上に蘇生させられて喜んでくれるだろうか?
否。喜ぶはずもない。
彼は確かに手段を択ばぬ非情さを持ち合わせている。
だが、それは己の勝利の為というよりは民たちの未来のためのもの。
民たちに試練を与えることはあれど、決して犠牲を良しとはせず、そして己が散っても国の未来に日が差すならばと満足して散った。
そんな彼を蘇らせること自体が彼への侮辱となるだろう。
ライコウはその屍の上に蘇生させられて喜んでくれるだろうか?
否。喜ぶはずもない。
彼は確かに手段を択ばぬ非情さを持ち合わせている。
だが、それは己の勝利の為というよりは民たちの未来のためのもの。
民たちに試練を与えることはあれど、決して犠牲を良しとはせず、そして己が散っても国の未来に日が差すならばと満足して散った。
そんな彼を蘇らせること自体が彼への侮辱となるだろう。
(私は...!)
嗚呼、それでも。
それでも諦めることができない。
ライコウは決してあそこで散っていい漢ではなかった。
彼の進む道の果てに寄り添いたい。その想いが止められない。
それでも諦めることができない。
ライコウは決してあそこで散っていい漢ではなかった。
彼の進む道の果てに寄り添いたい。その想いが止められない。
数秒か、あるいは数分か。
静寂の空気の中、やがて彼は目を瞑り立ち上がった。
静寂の空気の中、やがて彼は目を瞑り立ち上がった。
「ライコウ様...どうか、不甲斐なく弱い私をお許しください」
開けられた両目は、先ほどまでの生気籠らぬ屍の目ではなくなっていた。
かつてライコウの右腕として働いていた時の輝きには非ず。
黒く、歪んだ光の揺らめく亡者の如き目であった。
かつてライコウの右腕として働いていた時の輝きには非ず。
黒く、歪んだ光の揺らめく亡者の如き目であった。
「私は取り戻す...あの御方の歩むべき道を...!」
☆
いや~ッ、危なかったぜぇ。
まさか開始早々自殺しようとする馬鹿に当たるとは、ビックリさせんなよなあ。
まああいつが漏らしてた言葉を適当に摘まみ、それっぽく受け答えしたら正解だったみたいだから問題はなかったがよ。
まさか開始早々自殺しようとする馬鹿に当たるとは、ビックリさせんなよなあ。
まああいつが漏らしてた言葉を適当に摘まみ、それっぽく受け答えしたら正解だったみたいだから問題はなかったがよ。
しかし妙な制限を付けられてやがる。
いまのおれに出来るのは持っている奴に語り掛けることを除けば、斬るものを選ぶことと、攻撃を覚え強くなっていくこと。この二つだ。
いつもみたいに乗っとって使う場合は宿主との合意があってからとは、面倒この上ない。
今まで見たいに洗脳憑依が出来る訳じゃねえから、あとはコイツに俺の命運は握られてるってワケだ。
いまのおれに出来るのは持っている奴に語り掛けることを除けば、斬るものを選ぶことと、攻撃を覚え強くなっていくこと。この二つだ。
いつもみたいに乗っとって使う場合は宿主との合意があってからとは、面倒この上ない。
今まで見たいに洗脳憑依が出来る訳じゃねえから、あとはコイツに俺の命運は握られてるってワケだ。
だがこの程度ではおれの忠誠は折れんぞ。
DIO様、どうか見ていてください!
このアヌビス神、必ずや貴方のもとへと再び馳せ参じてみせます!!
このアヌビス神、必ずや貴方のもとへと再び馳せ参じてみせます!!
【シチーリヤ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]精神的疲労(大)
[装備]アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:優勝しライコウを生き返らせる。
[備考]
※参戦時期はライコウ死亡後
[状態]精神的疲労(大)
[装備]アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:優勝しライコウを生き返らせる。
[備考]
※参戦時期はライコウ死亡後
【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(シチーリヤの支給品)】
[状態]万全(強さはチャカが手にしたときの状態)
[思考・状況]
基本方針:シチーリヤに優勝してもらい、自分もDIOのもとへと帰る。
[備考]
※参戦時期は不明
※能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要。
支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されてしまう。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能。
[状態]万全(強さはチャカが手にしたときの状態)
[思考・状況]
基本方針:シチーリヤに優勝してもらい、自分もDIOのもとへと帰る。
[備考]
※参戦時期は不明
※能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要。
支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されてしまう。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能。