コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

この儚くも美しい絶望の世界で(後編)

最終更新:

compels

- view
だれでも歓迎! 編集
「っ……ッ、え、っ……!!?」

その瞬間、さくらの体は打ち上げられる。
それはランスだった。
取っ手に何かを溜めるような近代的な機能を施し、担い手の腕とチューブで繋がっている。
紺色の刀身の先に細長い注射器のような先端が、獲物の血を吸い上げる牙のように煌びやく。

「さくら──────ッ」

漸く見えた日の光は、夜の主たる吸血鬼(アンデッド)に遮られる。

「ご苦労でありんした! あとは、全部私の総取りでありんすねぇ!!」

口の端を三日月のように歪めて、シャルティアは高笑いと共に戦場へと乱入する。
戦闘開始の直前、ガッシュ達の交戦を嗅ぎ付けてシャルティアは息を潜め潜伏していた。
厄介なフリーレンはいないが、その術を模倣する魔術師が一人。
そして苦汁を味合わされたもう片方の一人、ガッシュ。
奴等の戦闘にいたずらに介入するのは、ナンセンスだ、これまでの敗走から学習し気を狙い、見つけた隙に容赦なく飛び込む。

(ここの連中を落としドミノにすれば、あの孫悟空もシュライバーも殺せる武器を手に入れられるかもしれない!!)

勝ち誇った笑みで、獲物の数を計算する。

「シャルティア、お主はまだ殺し合いに乗っておるのか!!」
「当然でありんしょう。また、最初と同じやり取りをする気かえ」
「協力はできぬのか!? お主も見下している人間に、命令されるがまま優勝するのは嫌であろう」
「先に主らを全員皆殺しにしてから、考えても遅くはないでありんしょう」

話が通じない。
フリーレンに次は自分が説得すると話したが、まるで会話が成り立たない。
ガッシュは背後の一姫を一瞥。一姫との視線がこのまま戦うしかないと訴える。
自分よりも賢い頭脳を持つ一姫がああ言う以上、何かの勝算があるに違いない。
それを信じ、ガッシュが一気に駆ける。

「間に合うでありんすか!」

地べたを転がるさくらに対して、スイカ割のようにスポイトランスを頭上に振り落とす。
こうすれば、ガッシュの行先は簡単に限定できる。
そう、さくらを庇う為にガッシュは飛び出すのだ。

「ヌぅぅ!!!」

スポイトランスとマントがかち合う。
鉄と布とは思えない頑強な衝撃音が轟き、両者の体を振動させる。
数撃の殴打をシャルティアは片手のランスで軽々弾き、ランスの殴撃をしなやかな動きでマントがいなす。

「ガキがッ!!」

スポイトランスを手にして、なおもこちらに喰らい付く強靭な力。
武器としているマントが高位のアイテムであるとはいえ、やはり純粋な膂力はこの小僧も侮れるものではなく、そのマントを操る魔力操作の精度も高い。

「テオザケル!」

向かい来る電撃の到来前に、術者たる一姫を見る。
術の詠唱前、ガッシュのマントがさくらと魔本を絡め取り、一姫の脇へと移動させていた。
魔本を手にした一姫は、再びガッシュの力となるべく詠唱を唱える。
しかし、澄ました顔をしているが呪文一つ唱えただけで、息を上げて額には汗がびっしりと浮かんでいた。
流れた血で、赤い水たまりを足元に作っており、人間の体力ではそろそろ限界を迎える頃合。

「ぐぅッ、がああああああああ!!!」

電撃に焼かれながら、シャルティアは状況を分析していく。

一姫の容態から、そう何発も魔法は打てない筈だ。
勝てる。確実に。

「…………ッ……う、「樹」……!」

さくらがロッドで突いたカードから木々が芽生える。

(面倒な死にぞこないがッ!!)

さくらはスポイトランスの薙ぎ払いを受けた時、「闘」のカードを発動し咄嗟にガムテの化勁を再現した。
重傷ではあるが、即死はしない程度にダメージを殺した。
立ち上がれはしないが、杖でカードを突く程度ならば行える。

「うっとうしい! ベタベタと!!」

古い建造物に巻き付くツタのように、その成長を早送りし一秒も置かずに人一人を覆い包みだけの木の鞭がシャルティアの体を這っていく。


「────ッ……!!」


絡みつくツタを引き千切り、シャルティアはさくらへ殺意を向ける。
純度の高い殺意はシュライバーに引けを取らず、怖気がさくらを委縮させるが、震えた手はカードと杖を離さない。

「ヌゥぉぉぉぉ!!!」

自身に巻き付いたツタに気を取られた隙に、ガッシュが淀みのない動きで吶喊する。
面を狙ったスポイトランスを横へ飛び退いて避け、腕を振り被ったシャルティアへ前進した。
引き寄せたスポイトランスの薙ぎ払いをマントが相殺。
鍔迫り合いの末に、シャルティアの膂力が勝りガッシュをボールのように打ち飛ばす。
だがガッシュは全身に掛かる圧に耐えながら、後方へ退かせられる引力に抗い、さらにバネのように飛びあがる。

術のサポートは多く望めない。

一姫の状態からそれをガッシュは理解していた。
少ない呪文で、最大効率のダメージを叩き出す。
そのために、シャルティアに接近し攻撃を掻い潜り防御の隙を見つけ出さなくてはならない。
一姫の頭脳ならば、戦況を読んで答えを見つけ出せる。

「ふ……り……ッ、ふ…「凍」(フリーズ)!!」

シャルティアに冷気が吹きかけられ、全身が凍結される。
あのさくらという魔法詠唱者の魔法らしい。
先の樹の精霊といい、攻撃性は高くない。力づくで破れる程度の拘束しかしてこない。
これも、脱出するのは容易い。
氷の中で身動き取れない筈のシャルティアは冷静にそう考える。

《フォース・エクスプロージョン/力場爆裂》

裏付けるように衝撃波が氷を内側から砕き、瞬時にシャルティアを包む氷と冷気を燃焼する。

(あの女、全ての魔法を私に通してくる……)

シャルティアの魔法耐性は相手の能力とレベルに左右されるにも関わらず、さくらはここまで全ての魔法を、シャルティアに通してきている。
高レベルの魔法使いだ。
なにせ、冷気耐性を持つシャルティアに、乃亜によるハンデの弱体化込みとはいえ、凍結を成功させているのだから。

(イリヤとかいう小娘とは別系統の魔法詠唱者か……面倒ね)

似たような魔法少女連中のどちらも、タイマンならば潰すのにそう困りはしないが、他者と連携されれば厄介過ぎる。
腹正しい事に、この手の輩と縁が続くのもシャルティアの勘に触った。

「ザクルゼム」

そして僅かな停滞、凍結から離脱するまでの隙に、ガッシュから放たれた光球が直撃する。
全身を痺れさせる電撃を覚悟するが、その痛みがない。
代わりにあるのは、シャルティアから発せられる謎の輝き。

(バフかデバフ系の魔法……!?)

直接ダメージを与えるものではなく、またシャルティアに状態異常が起きていない。
逆に不気味に感じ、シャルティアの思考は高速で回転する。

(私の体に異常はない……恐らくバフ)

自身の状態と、一姫の残るスタミナを鑑みて、少ない手数で勝つために強化魔法の類と考えるのが妥当。
そしてそれは発動が面倒な事に、一発を対象に当て、もう一発の攻撃魔法を再度直撃させなければいけない。
なんて手間のかかるクソ魔法か、シャルティアは一瞬笑いを堪えきれなくなったが、すぐさまその油断を払拭する。

(奴の魔法は避けないと)

以前の戦闘でガッシュの火力に追い込まれたのは事実であり、このバフ魔法の強化率によっては、シャルティアの魔法耐性をオーバーしてあり余る火力の一撃で抹殺されかねない。

「テオザケル」

来た。
この島の初戦で経験した電撃の魔法。
精々が第五位階魔法で、担い手のガッシュの力を上乗せして六位に届くかといったところ。
だが、バフ(ザクルゼム)の強化幅が不明な以上、確実に避けるべき一撃。

《ウォール・オブ・ストーン/石壁》

石壁を形成し自身の前方に展開、テオザケルを押しとどめる障壁とする。

「ッ………う……「樹」………!!」

だが、シャルティアを守るように聳え立った土壁は瞬時にして朽ち果て、砂塵へと変容する。
土壁に這って、絡みつくツタが一瞬にして養分を吸い取ったのか、緑の芽を咲かせていた。
崩れ去った土壁を穿って、テオザケルがシャルティアに到来する。

「馬鹿な─────ッッ、ぐがああああああああああああああああああああああああ!!!?」

五行思想。
火・水・木・金・土の五種類の元素で万物を説明するもので、それぞれに影響を与え合い循環するという考えだ。
月の審判以前、クロウカードの最後の一枚として立ちはだかった「土」(アーシー)のカードを封印する際、さくらは「樹」と「土」の相性に気付き、「土」の封印に成功した。
それは五行思想の関係性にも当てはまる。
同じように土の壁も、「樹」によって力を弱めてテオザケルへと繋げた。
シャルティアからすれば、唐突に自身の魔法を打ち消されたようにも見えるだろう。

「ヌゥッ!? シャルティアは?」

電撃が終息し、視界がクリアになった時、既にその場からシャルティアは消えていた。
意識を取り戻したガッシュが周囲を見渡すが、シャルティアらしき影はなく、魔力も感知できない。

「はァ……はァ、逃げたようね」

膝を折り、一姫は一旦の危機が取り除けたことに溜息を吐く。
だが、同時に彼女は見ていた。
電撃に呑まれる寸前、シャルティアが黒のドレスから真紅の鎧を纏ったのを。

「まだ……シャルティアは、生きているわ……。
 あの鎧……、こちらを欺くための切札だったのでしょうね……自分の防御を上げて、ダメージを軽減したんだと思う」

フリーレンに撃退された経験から、初手で全力を出すのではなく戦力を誤認させる見積もりだったのだろう。
一姫が聞く限り、生身でテオザケルを受けて戦闘を続行できる頑強な肉体だという。
こちらの想定を上回る防御力を咄嗟の場面で切って、フリーレンやガッシュの意表を突くつもりだった恐れがある。
脳筋といわれる類のタイプだが知恵が回らない訳ではない。
厄介な相手だった。

「ガッシュ……行きましょう。
 シャルティアが戻っても面倒だし、さくらとヤミの容態も良くないでしょう」

ヤミは言わずもがな、さくらは完全に意識を失い、顔面は蒼白になっている。
そういう一姫も胸から流れる夥しい血の量が彼女の命を削っていたのは明白だった。
このまま、シャルティアと戦闘を続行すれば勝ち目は薄い。

「コナンには悪いけど……後回しよ。
私も少し、回復タイムが欲しい、さくら達の治療もしないと」

心の力を回復させなければ、ガッシュも力を存分に振るえない。
向こうには日番谷冬獅郎も付いてピカチュウもいる。
無理を押して、追跡を強行してガッシュという戦力を失うのは避けたかった。

「ウヌ! 早くここから離れようぞ。
 シャルティアが引き返してからでは遅いのだ」

またガッシュもシャルティアの実力を身に染みて理解している。
何とか今回も撃退できたか、このまま再戦にもつれ込めば勝ち目はない。



雹のように、自然現象の範疇にある天候の中では決してありえない、砲弾のように氷が降り注いだ。



それらは全て氷柱であり、先端が鋭利で人を殺めることに特化した明確な殺意を乗せている。
ガッシュがマントを展開していなければ、全員が串刺しになっていた。

「お主はッ……!?」

シャルティアに近しく、ガッシュとも似た魔力の持ち主。
人ではない者であり、単純な格であればシャルティア以上の魔物。

魔神王は機械のように、魔界の言語とも人の言語でもない未知の詠唱を行う。
紡がれた口の動きから、周囲に光の矢が展開されていく。
考えうる最悪の想定である三連戦目が幕を開けたのだ。

「らし……ッ…る、ど……!!」

前面に展開された雷を纏う巨大盾が地中から生成され、魔法の矢が防がれ跳ね返される。
反射された矢を避ける素振りもなく、魔神王の全身を穿ち、感電し肉体を損傷しながら、魔神王は表情を変えない。
既にそこが知れたと言わんばかりで、巨大な氷塊を生み出し盾に打ち付ける。
次の瞬間、盾は粉々に砕かれた。

「ヌゥあああああああッ!!!」

マントで一姫とさくらとヤミを抱えて、ガッシュがラシルドの影から瞬時に離脱する。
今の詠唱が恐らく、一姫の限界。

「が……しゅ、ひとり、で……」

一姫も最早、天才の頭脳を以てしても打つ手がなく。
ただ一人、まだ動けるガッシュに撤退を指示する。それも足手纏いを全員切り捨ててでも生き延びろと。

「なにを、言っておる!?」

「…………わたし、たちを…かかえ、ていても……」

ガッシュが足手纏いを抱えて、術のサポートもなしに立ち向かえる相手ではなく。
逃げ切れる存在でもない。
ガッシュの力は対主催に必要だ。最悪、一姫達が全滅しようともガッシュだけは逃がさなくてはいけない。

「そんなこと、できるわけがないであろう!!」

だが、ガッシュにはそれはできない。非情にはなりきれない。
絶対に相容れぬ悪であればまだしも、仲間をこの場で捨てて自分一人が助かる道を選べない。

魔神王もそれを知っていた。

放たれる光の矢と氷の槍。
マントで抱えたとはいえ、ガッシュは自身を含め四人分の面積を、掠ることなく避けなければならず。
その俊敏さも格段に低下している。

「ッ、ヌ……ゥッ!!」

守るべき仲間を庇い、肩を矢が抉り、頬を氷が掠め。
避け続けてはいるが着弾箇所は増えていく。
また魔神王もガッシュの動きのパターンを徐々に見切り、先の分かった詰将棋に王手を掛けるように、ガッシュの逃げ場を塞いでいく。
赤く、ガッシュの肌を血が染め上げた。

「……つか、うわ……ガッシュ!!」

示し合わせていたように、ガッシュのマントが後方へ展開する。
抱えていた一姫達を、下ろしマントが遠ざかる。
ガッシュは完全に身軽になり、一姫達はアスファルトの上に転がされていた。
見捨てて、一人で逃げるつもりか?
リーゼロッテとシャルティアの戦闘から、ガッシュというデーモンが単独では魔法を使えないのは明白。
このまま魔神王と矛を交えるとは思えず、また逃げるような気概のない弱者でもないはずだ。
感情のない機械のような表情が僅かに、怪訝さを浮き出して歪む。

「さ……い、ふぉじお……ッ!!」

一姫の頭上に現れた西洋剣の姿を認めた時、魔神王の疑問が解消された。
ヤミとさくらを重ねるように並べ、また自身もその先頭に立ち、剣を三人纏めて貫通させる。
一見自殺行為のように見える光景だが、魔神王にはそれが回復魔法であると瞬時に判断した。

「ほう」

剣が貫通した三人の失われかけた生命が再び蘇り、傷が治癒されていく。
高度な魔法だ。魔神王は、見たままにその力を賞賛し評価する。
銀髪の女の開発したものではなく、乃亜が支給品として調整した物らしいが、本来の主の素質の高さが伺える。

(これ……何人も纏めて、回復出来るけれど……)

フリーレン達との作戦会議で、恐らく戦闘の多さが予想されるガッシュ達がもっていた方が良いと支給された一姫が所有していた代物だ。
乃亜の制限により回復範囲は狭まり、死者の蘇生はもちろんのこと致命傷も回復できないが、それ以外なら複数人を同時に回復する優れた術だ。
ただし、デメリットは回復までに時間がかかり、使用者及び対象者は身動きが取れなくなる。
真の使用者であるティオに比べれば、まさに牛歩の遅さ。
本来は戦闘時に使える代物ではなく、盤面を仕切り直した戦闘の合間に使うべきなのだが、ガッシュが仲間を見捨てられないのなら、この場で使い、戦線復帰せざるを得ない。

(頼むわよ……ガッシュ!)

「ヌゥゥゥオオオオオ!!!」

ガッシュの咆哮が轟き、魔神王へと肉薄する。
氷と光の槍と矢の雨をマントを鎧に正面から突き抜ける。
ガッシュのすべきことは、魔神王への時間稼ぎ、一姫達が回復し再復帰するまでの囮とも言える。
魔神王もそれを理解している。戦術ともいえない、最早ごり押しだ。

「バオウ・クロウ・ディスグルグ!!」

バオウの片腕のみが召喚され、ガッシュの背後で聳え立つ。
ガッシュの持つ術の中で、数少ない気絶しない術。
この島でガッシュが単独で問題なく運用できる力。
ガッシュの動きに従い、降り下ろされた腕は連動し龍爪が魔神王へ見舞われる。
バオウの全長が数十メートルはあり、片腕といえど十メートル以上はある巨腕。
その爪も中世のランスのように太く鋭利で、人一人引き裂くのに過剰すぎる威力を秘めていた。

魔神王の手に冷気が集結し、大気の水分を冷やす。
目に見えない水は具現化し冷やされ、棍棒のように太く太刀よりも長い、大剣を形作る。

「ヌゥッ!!!」

バオウの爪と氷の魔剣がかち合い、せめぎ合う。
ディオガ級の術すら引き裂くバオウの爪が、氷に罅を入れるがその進行が留められ、罅が再度氷結され補修される。
魔神王は片手のまま、バオウの腕へにじり寄り、本体のガッシュ諸共後方へ押し退けられる。

「ヌ、ッ、ぐ……!!」

鍔迫り合いの二者を、魔神王の履く瘴気が包み込む。
肌を焼き鉄を腐らせる毒の息吹が、ガッシュを襲う。
マントで顔を覆い、螺旋させ豪風を巻き起こし毒を払う。
魔物故に、効き目は人間ほどではないが、着実にガッシュは消耗していく。

「う、ぐあああああああ!!!」

力の拮抗が崩れ、バオウの腕ごとガッシュが吹き飛ばされる。
追い打ちのように降り注ぐ氷と光の雨の中に、ガッシュはマントを翻し防壁を展開。
弾き切れなかった攻撃が体を刻み、ガッシュの赤い傷を増やしていく。
回復している一姫達を守るために、ガッシュは全ての攻撃を防ぐ必要がある。
避けることが許されない。

それが何時まで持つか。

艶めかしい色気を醸し出す微笑を浮かべて、魔神王はその背後に光の矢を無数に展開する。
声もなく、全ての矢が同時に射出され、ガッシュを背後の一姫達を串刺しにせんと空を奔る。

「ラシルド!」

意識が飛び、同時にガッシュの前面に雷の盾が現出する。
しかし、それは既に見飽きたもの。
一度、魔神王が破った防御魔法だ。しかも、一姫の唱えた者よりガッシュ単独で生成した楯は強度が劣化している。
攻撃魔法を数発当てれば、あえなく砕け散る事だろう。

結末の分かり切った、一方的な蹂躙。
それに喜びも空しさもなく。ただ、プログラムされたシステムのように魔法を放つ。

「な……ッ」

砕け散ったラシルドの破片を見て、驚いていたのはガッシュだった。
自らの盾に絶対の自信があったのではなく、砕けるとガッシュ自身も自覚していたからこそ。
最悪、自分の身を盾にして一姫達を庇うつもりだった。
それが、攻撃が一つも掠りもしない事態に驚き、また目の前に立つ少女の背を見て瞠目する。

「ヤミ、お主……!?」

ヤミはワームホールを展開して、全ての魔法を次元の裂け目に吸収する。
皮肉にもリーゼロッテによって目覚めさせられたダークネスの力が、今度がガッシュ達の命を救ったのだ。

「その傷、お主は戦ってはならぬ!!」

ダークネスへ戻った事で、黒い布を雑に秘所へ垂らして、肌色が目立つ露出過多な服装へと逆戻り。
ガッシュからすれば、ブリでも取りに泳ぎに行く寸前のような格好に思えたが、欲深い男から見れば眉唾物の外見だ。
背中もぱっくりと外気に触れさせていて、魅惑的な背のウェーブが長い金髪の下からでも分かる。
だが、そこに赤く濁って穿たれた跡が痛ましく残されていた。
サイフォジオの使用で、ヤミも多少は傷が癒えたのだろう。
だが、まだ残されたダメージは深刻だ。傷口から血が流れ、ヤミの体力を刻一刻と奪い去っている最中だ。

「…………あなたには、さくら達をお願いしたい」

「だがッ……お主を死なせるわけには…………さくらにも言われたではないか!!」

ヤミは自分を犠牲にしてガッシュ達を逃がそうとしている。
まだ、己を許せず死に場所を求めている。

「…………死ぬ気は、ありません」
「しかし……」
「生き延びる方法を見付けたから、あなたに頼んでいます」

逃げろとは言わず、さくら達を託す。
それは自分の背に掛かった命と、自分自身の生存を確信した言い方だった。

「お主……」
「あの盾とあなたのマントで……余波に巻き込まれないように」

魔神王もまた、あの悪魔のような外見の少女が秘めた策を持つことに訝しんだ。
はったりの類でもなければ、自己犠牲で他者を生かす悲痛の覚悟でもない。
この戦いに勝つつもりでいる。

魔神王の慧眼をして、多少はサイフォジオで回復したとはいえ、ヤミは立っているのもやっとの容態だ。
先のワームホールの生成が限度のはず。
また、あの少女の悪魔のような形態も強制的に引き出された代物、果たしてどこまで使いこなせるか。

(トランスはあと……一回、出せるかどうか)

ピリッと、ヤミの方から弾けるような音が鳴る。
消失したダークネスをイレギュラーな手段で表に引き出された。
いつ失われてもおかしくはない力であり、ヤミにとっても信頼に値する力ではない。
また、残されたエネルギーもワームホールでほぼ使い果たした。

(所詮、私は兵器……だったのかもしれませんね)

脳裏をよぎるのは黒衣の殺し屋の姿。
ヤミの知る中で、最強と呼ぶものが存在するのなら、この男の他にはありえない。
イメージしろ。
あの男の力を、大戦の中で殺し合った死闘のヴィジョンを。
生半可なトランス能力では、あの怪物には通じない。

(あなたがどうして、私を生かしたのか……結局分からないままでしたが)

ヤミの戦闘スタイルは近接の斬撃が主であり、ダークネスを使用した際もワームホールを介して斬撃を遠距離へ飛ばす事はあるが、自ら武器を振るう事を好む。
だが、この瞬間に限り、ヤミは刃の生成ではなく、銃という自身のスタイルを完全に捨てた武器を選んだ。
左右に流れた金髪が折り重なって、黒の装飾銃を作り上げる。
賢者の石を所持していた時、等価交換の法則に習い物質を理解分解再構築する感覚を覚えていた。
ダークネスの状態で高まったトランス能力で、あの時の感覚を再現し、確たる物質としてこの世界に固定する。
生半可なショックでは、決してこの形状が崩れないように。

(私が出せる全て……この一撃に)

その銃の名はハーディス。
宇宙最強の殺し屋クロの愛銃にして、その射撃能力に唯一堪えうるオリハルコンの黒銃。
制限され、消耗し、残された全てを賭したとしてオリジナルにどこまで近づけた、ヤミ本人すら分からなかった。
だが、ただの一度でいい。一度だけ使えるのであれば。

(もしも……生きて帰れたのなら、もう一度あなたの顔を見に行くのも悪くはないかもしれませんね)

形成したハーディスを手に取り、両手で射撃の構えを取る。
バチバチと静電気が放電したような感覚、変身(トランス)生体兵器に共通する弱点。
強力な電撃は一時的に変身能力を麻痺させる。
だがヤミは、弱点である電撃を自ら放出していた。

(借りますよ……あなたの力を)

ヤミを構成するナノマシンが発する異常、細胞が放電していることに気付いたのはサイフォジオで体力を僅かに回復させた直後だった。

──ザケルガ!!
──エクセレス・ザケルガ!!

ガッシュから砲撃された電撃による影響か、あるいはダークネス状態で直撃したせいによる異変か。
または、この殺し合いに於ける異常事態と精神的なトラウマによるバグか。
それはヤミには判別が付かず、解明することはできない。
だが、変身生体兵器でありながら、ヤミは一時的なナノマシンの活性化により、自らの体に電撃を帯電することが可能となっていたことだけは確かだった。

全く、何処までも兵器染みた体をしているものだと、ヤミは自嘲する。
だがそれならば、最後まで有効活用してみせよう。
どうせこの身は、それだけに特化した肉体。

放電した電気は黒の装飾銃へと集結────。

充電完了。

標準に狂いはなく。
標的(ターゲット)は目の前に。


この不吉を届ける。


ハーディス最高出力────電磁銃(レールガン)。



────避けられない。

魔神王をして、そう評価する弾速は光速にも迫る。
速さだけならば、絶望王をも上回る。
ならば、防ぐか? それも否だ。あれの貫通力は侮れない。
魔神王の総力を結集したとて、この身に届かせるだろう。
そして器たるリィーナ姫の体をも破壊し尽くす。
乃亜のハンデに甘んじている現状では、器の破壊は魔神王の死へと直結しかねない。


受けてたとう。


王たる矜持を示すかの如く、魔神王は不動にして尊大に掌を翳す。



「■■■■■■」



その言語は人が解析し得ない異界の詠唱。
されど、その意味は推し量ることが叶う。
人を憎み、自らを束縛する愚者を滅するために、憎悪を以て唱えられたその魔法が、とある世界で、もっとも多くの人を殺した魔法であることは。

リーゼロッテが不完全ながらラーニングしたゾルトラークを、魔神王もまた目撃していた。

最上位の鏡像魔神(ドッペルゲンガー)故か、制限されなければ対象を観察し対象の容姿記憶技術のコピーをも可能とする性質が働いたのだろう。
なにより、ゾルトラークとは本来魔族が開発した呪いである。
人類の脳の構造に適さないその術式は、あらゆる他者へと成り代わる鏡像魔神にとっては数ある模倣対象の一つでしかない。
その精度はリーゼロッテ以上にしてフリーレンにすら匹敵し得る。
そして、魔神を率いる異形の神格としての魔力を潤沢に練ったその魔法は、純粋な破壊力ならば遥かに凌駕した。


流れ出す光の濁流は漆黒。
金色に輝く電磁弾と対になる暗黒の魔法が拮抗する。
双方ともに、貫通に特化した必殺の光線。

宇宙の科学技術を結集した兵器と、魔道の粋を結集した異能。
交わらない二つの力が交錯し、瞬時に凄まじい熱量を放出する。
アスファルトが溶け、周辺の建物からガラス片が砕け、透明な刃の雨となって降り注ぐ。

拮抗は寸時で幕を下ろし、戦いは刹那に決した。

(そう……か、…………)

ヤミを黒線の光が穿つ。
吐血し、自らの命の終焉を実感した。
勝算はあった。やれる限りの策を考え、全てを賭した一撃をあれにぶつけた。

(…………届き、ましたか……)

同じく、ヤミのように胸に風穴を空けた魔神王の姿を認め、ヤミは膝を折る。

互いの確殺の一閃は相殺し合い、破壊規模を最小に抑えて互いの胸を穿ち合った。

魔神王は何の感傷もなく、自らの負傷箇所を見つめた。
完全に砕けた心臓、それに苦痛も悲嘆もないが、活動限界に限りなく近づいた事を示していた。
倒れ行くヤミに感慨を感じさせない無表情のまま、胸から流れる血を手ですくい振り撒く。
毒性の劇物は、残された生者を蝕まんとする。

「ザケル」

稲妻が拡散し、毒血を蒸発させた。
ガッシュとその横に、銀髪の少女が赤の魔本を片手に立っている。
全ての回復が完了したと見える。
ヤミと呼ばれた少女の時間稼ぎは成功したらしい。
傷はおろか、魔力に近しいあの電撃の源となった力まで補填するとは、やはり高度な魔法であると魔神王は認識した。

背に両翼を広げ、魔神王は飛び立つ。

心臓の欠損を抱えながら、あの魔神の子供と一戦交えるのは負担が大きい。
業腹なハンデだった。この肉体の損傷を養生する日がこようとは。

だが、くつくつと笑う。

収穫は得た。心臓を一つくれた甲斐があった。
ヤミに対してはなったあの魔法……やはり人間ではなく、魔神の性質に適している。
性能は試した。欠点も、改善点も理解した。
また、これは人を殺すだけに留まらない。魔女の模倣元となったであろう魔法使いが想定した設計思想は、異なる対象を仮想敵としている。
大元の術式は美しくすらあるほどに洗練されているが、これはさらにそこへ手を加えた代物だ。
恐らく、魔神のような異形を殺すために、研磨された術式。
人も異形も問わず、より殺戮に特化した魔法。
この魔法は使える。拡張性も高い。より、殺傷力を高めることも可能だ。
次会えば、鬼舞辻無惨にでも試してみるのもいいだろう。

人の手により、一般攻撃魔法と称され手垢のついた殺人魔法は、再び人類の脅威の手の中に舞い戻った。


【一日目/夕方/G-6】

【魔神王@ロードス島伝説】
[状態]:心臓欠損(回復中)ダメージ(大)、疲労(大)、魔力消費(極大)、無惨(俊國)の姿
[装備]:魔神顕現デモンズエキス(3/5)@アカメが斬る!
[道具]:賢者の石@ハリーポッターシリーズ(半分消費)
[思考・状況]基本方針:乃亜込みで皆殺し
1:絶望王は理解不能、次に出会う事があれば必ず殺す。
2:魂砕き(ソウルクラッシュ)を手に入れたい
3:変身できる姿を増やす
4:覗き見をしていた者を殺すまでは、本来の姿では行動しない。
5:本来の姿は出来うる限り秘匿する。
6:藤木は見付け次第食らう。
7:真なる地縛神を手にする。報酬システムを使い乃亜に打診する価値はある。
8:より強い力を手にする。これではまだ足りぬ。
[備考]
※自身の再生能力が落ちている事と、魔力消費が激しくなっている事に気付きました。
※中島弘の脳を食べた事により、中島弘の記憶と知識と技能を獲得。中島弘の姿になっている時に、中島弘の技能を使用できる様になりました。
※中島の記憶により永沢君男及び城ヶ崎姫子の姿を把握しました。城ヶ崎姫子に関しては名前を知りません。
※鬼舞辻無惨の脳を食べた事により、鬼舞辻無惨の記憶を獲得。無惨の不死身の秘密と、課せられた制限について把握しました。
※鬼舞辻無惨の姿に変身することや、鬼舞辻無惨の技能を使う為には、頭蓋骨に収まっている脳を食べる必要が有ります。
※右天の脳を食べた事により、右天の記憶を獲得しました。バミューダアスポートは脳が半分しか無かった為に使用できません。
※野原しんのすけの脳を食べた事により、野原しんのすけの記憶と知識と技能を獲得。野原しんのすけの姿になっている時に、野原しんのすけの技能を使用できるようになりました。
※野原しんのすけの記憶により、フランドール・スカーレット及び佐藤マサオの存在を認識しました
※変身能力は脳を食べた者にしか変身できません。記憶解析能力は完全に使用不能です。
※幻術は一分間しか効果を発揮せず。単に幻像を見せるだけにとどまります。
※ゾルトラークを習得しました。




(…………うまくは、いきませんね)

生きようと思った。抗える限り抗い、そして命運が尽きたのだった。
ヤミを見下ろす一姫の目は憐憫に満ちている。もう、ここに傷を回復させる手段はないということだ。

「ごめんなさい」

サイフォジオは再使用にインターバルが挟まり、また致命傷は治せない。
ヤミの胴体の半分以上が消し飛んでいた。
これは、一姫の目から見ても救う手立てがない。
流れていく血を眺めながら、一姫は天才の頭脳を以てしてその死を結論付ける。

「それに、さくらはまだ目覚めないの」

一姫と違い、シャルティアの攻撃をもろに受けた影響は大きく、まだサイフォジオの治癒を終えても深い眠りについている。
ガッシュの魔力感知による見立てでは、リーゼロッテとシャルティアの二連戦で魔力を大きく消耗しているらしく、その回復を睡眠で補っているようだ。
実際に激しく揺さぶっても目覚める気配がなく、また「時」のカードからガッシュは魔力を感じないとも言う。
やはり、このカードにも制限が施されている。
それは、サイフォジオのインターバルを踏み倒し、駄目元でもヤミを助けられるか試す事すらできない。

「さくらッ!! さくら、起きるのだ!!!」

それでもガッシュはさくらを揺さぶり、大きな声を上げて呼び掛ける。
まだ、さくらの力を借りれば可能性はあるかもしれない。
ガッシュや一姫の知らない力がヤミを救えるかもしれないと信じていた。

「……必要、ありません」

「何を言うッ!? お主を……さくらはずっと心配しておったのだぞ。
 お主が死ねば、さくらは悲しむではないか……お主は死んではならぬ!!」

いつぶりだろうか。
こんなことを言われるなんて、それが懐かしく思える。
そうだ。懐かしく感じるほどに、あの温かな世界に自分は慣れていた。
美柑といて安らげるあの時間に。

(そうか……さくらは、美柑に……)

きっと、あの時悪夢が終わった瞬間に、さくらが眩しく見えたのは、地球の災難町に来てからまだ日が浅かった頃、美柑と過ごした時間と同じだったから。
簡単にヤミの作った壁を飛び越えてしまう力強さは、さくらと似ていた。

(まだ……ですね)

死は決定付けられているが、その猶予をどう使うかはヤミ自身次第だ。
気に入らなかった。
もしも、さくらのような、美柑のような温かな人の笑顔が曇るようなことがあるのなら。
もう二度と、自分のような取り返しの付かない者を出したくはない。
それを見て嘲笑う乃亜に、こんな死の間際だというのに、怒りのようなものまで湧き上がる。

「…………暗記は、得意ですか」

「大得意」

ヤミの髪が伸びていく。すでに死力を果たして朽ちるのを待つだけの体に喝を入れて、それが一姫の銀髪と絡み合う。
ガッシュが訝しみ、叫ぼうとしたのを一姫は制した。
これが攻撃の類でないことを察したのだ。

ネットの世界は電脳という異空間は、もっとも原始的な思考をすれば0と1の世界。
電気信号の組み合わせによって構築されている。
今、ヤミの体はナノマシンの異常により放電している。すなわち、それらを制御することでヤミの意志によって電脳世界にも干渉が可能になるはずだ。
もっとも確実に乃亜によって妨害され、首輪を起爆させられる。
だが、どうせ消えゆく命ならば……惜しくない。試す価値はある。

(上手く行くかは分かりませんが……)

トランス能力で、ネットワークへと接続。さらに一姫の脳へ情報を残すべく、こちらも同期する。
ヤミの残された力でどこまでやれるか分からないが、せめてこの首輪に繋がる情報を、一姫に残してから逝きたい。
ハードルは高く、凄まじい計算能力を求められる。果たしてヤミの力で、何処まで望めるか……。

(────ッ、大したものですね……風見一姫)

だが、嬉しい誤算だった。
残る課題は一つ、ずば抜けた演算処理能力だったが。
目の前には、かつてタナトスシステムの根幹である脳であった天才・風見一姫の頭脳がある。
髪を通し、一姫と接続したことで、一時的に処理能力が向上したのだ。

逆探知されないよう、全てのサーチをヤミから先へは遡れないようにプロテクトを二重にも三十にも張る。
これで、一姫がハッキングに関わっているとは探知されない。

(これならば、あるいは……)

一度、何者かに侵入された形跡があった。
好都合だった。同じ経路を使って、さらに別種の撹乱と陽動で時間を稼ぐ。
乃亜側から妨害のセキュリティシステムが起動するが、一姫の卓越した演算処理のスピードに置いて行かれる。
行ける。
痕跡を辿れば、図書館のニンフという先客が残したデータを発見、これも一姫の脳へインストールする。

『禁則事項に接触しました。繰り返します。禁則事項に接触しました』

まだだ。首輪だけでは足りない。
乃亜の潜伏場所を……討つべき、大敵の根城を探し当てなければ。

「お主……」

静観していたガッシュもようやく事態を理解する。
ヤミの首輪から流れた警告が、それが海馬乃亜にとっての不利益であり、ヤミの言う嫌がらせの意味が。


「待つのだ……お主は……」


止めようとする。
このまま続けさせれば、ヤミの死が確定してしまう。

一姫は言っていた。間違いと思うのならば、それを正せと。
ガッシュは……ヤミも救い、他の者も救える筈だと信じている。

きっとこの子供は止めるかもしれない。
どちらか片方ではなく、両方を救うという選択肢を選ぶかもしれない。
それは美点であり強みであり、だが時として決定的な過ちにもなる。
だから、この少年にはどういえばいいのだろうか。

「さくらには……あなたから、お礼を」


「…………ッ、!!」


何かを言おうとしたガッシュが閉口する。

ヤミは最期に笑ったのだ。
諦めるように、自分を嘲るような嘲笑ではなく。
心の底から穏やかで、友達や……好きな人に向けるような慈しさで。

────きっと、また笑えるように

人々を傷付けて、友を死なせ、絶望の淵に叩き込まれ。
死を待つだけだった兵器は、最期にもう一度だけ、ただの恋をして友達もいる普通の女の子のように。
美柑やララ、そしてリトに向けたような笑みで。


『禁則事項に接触しました。残り五秒で首輪を爆────』


【金色の闇@TOLOVEる ダークネス 死亡】
【魔神王 100ドミノ取得】

けたたましく鳴り響く首輪の警告音が消失する。
何故なら、そこにもう刈り取るべき命は何も残されてはいなかったから。

「………………礼を言うわ。ヤミ」

天才の頭脳に残されたヤミの置き土産は、想像以上の代物だった。
ヤミが息絶える寸前、その頭脳にインストールした情報は二つ。

一つ、これは偶然だったがニンフという参加者がハッキングして残したデータを発見。
乃亜側からの探知と削除は困難だが、カオスを除く参加者側からは受信しやすいような細工をニンフは施していた。
図書館にインストールされたデータとその内部にある首輪の解析内容と、そしてそれを受け取った者の痕跡から、参加者の特定までヤミは行った。

(ネモ……フランというのを信じれば孫悟空と一緒にいたらしいけど、KCで日番谷君が沙都子から聞いたことは本当のようね)

ネモという参加者がニンフのデータを受け取ったと特定できたのは大きい。
沙都子の言っていたカルデアで首輪の解析をしている対主催、その情報の信ぴょう性は上がる。
そして、沙都子は対主催をそこへ到達させる気は微塵もないだろうということも、その策を継ぎ、今はメリュジーヌが立ちふさがっていることも想像がつく。

(今頃、ネモは首輪の信号を阻害するプログラムを作っている、ということかしら)

先にこれを手に入れ、解析を始めているのなら既にプログラムの作成に入っているはず。

(解析の進行度を知りたいわね。向こうが、信頼に値するかも)

何かの手段で連絡を取りたいところだ。

(そして、乃亜……あなたは、私の思っていた以上に子供ね)

データを入手した事で、一姫には一つ確信を得た事がある。
乃亜は殺し合いの完遂に拘っている。拘り過ぎている。
ニンフにデータが流出させられた時点で、一姫が乃亜の立場ならば参加者全員の首輪を爆破していた。
何故なら本来、ニンフがハッキングに成功した時点で、この殺し合いは破綻していからだ。
しかし、乃亜はそれを頑なに認めない。認められない。
これはそれだけの劇物だ。それなのに乃亜は放置している。
ニンフに後れを取ったという事実から目を背け続けている。

(自ら語った公平性に、乃亜自身も縛られている)

何があろうとも、バトルロワイアルを完遂しきる事こそが、乃亜のプライドを傷付けず妥協のない完全勝利。
乃亜はそれ以外を認められない。
しかし、それは子供の理屈だ。世の中には完全というものが存在しないことは、大人になれば嫌でも分かる。故に妥協をするし、時として諦め引き下がる。
いくら優秀で賢いとはいえ、世間を知らず、ましてや電脳世界に閉じ込められ続けた乃亜がそのような折り合いを付けられる筈がない。
しかも、子供がみな持つ根拠のない万能感に浸っているのも、乃亜をより子供たらしめていた。

(だから……怖いのはむしろ首輪を外した後ね……。
 この負けず嫌いは、追い込まれれば何が何でも、どんな手段を使おうとも勝とうとする執念にもなり得る)

この公平さへの拘りは、乃亜が正々堂々とした勝負を好むのではなく。
何でも自分の思い通りにしなければ、気が済まない幼稚さの裏返しでもある。
子供だらけの殺し合いの主には相応しい、誰よりも幼稚で我儘な子供だった。

(往生際は死ぬほど悪い……いえ、モクバが言うには一度死んだようだから、ゾンビみたいなものだったわね)

眠るように穏やかな顔で息絶えたヤミに、一姫は一瞥をくれる。

(……それでも、勝たせて貰うわ。こちらも少なくない代償を支払ったんだもの)

空を見上げる。

二つ目の情報。
それは箱庭の主、狭き世界の幼い神が君臨する場所。

まさに、あの天空に乃亜はいる。

シナプス。

迷彩に阻まれ肉眼では視認不可能だが、天空に広がる大陸が存在しているという。
ヤミが残したデータで分かった、重要な情報の一つだった。
首輪を外しても、居場所が分からなければ乃亜を倒す事はできない。
その居所が判明したのは、大きな進展だった。

「一姫……この者は……」

ガッシュは、あの最期を見てその手を止めてしまった。
理屈の上では、ヤミを救う手段はなく、消える定めだった命を活用して、一姫に有意義な置き土産を残した事になる。
だが、と思ってしまう。
それ以外に、ヤミも死なせずに……皆を救う方法があったのではないか。
ファウードの時のように、世界とリィエンの両方を救ったように。
しかし、今回は時間がなかった。
だからやはり、どうにもならなかった。
恐らく、ガッシュはそのまま止めなかっただろう。
最早手段は一つしかなく、苦渋の決断を迫られた。

それを察して、ヤミは最期にガッシュに微笑んだのではないか。
ガッシュを慮り、あの笑顔は────。

「心の底から笑えたのよ。あの娘は」
「……」
「最後に、笑えたのは……そうさせたのは、さくらよ。
 そして……ヤミが私に力を貸してくれたのは、あなたがそうさせたの」

看取ったのが一姫一人であれば、ヤミは何もせずそのまま死を受け入れていただろう。
一姫にも情はあるが、ヤミにそこまで肩入れする気にはなれない。
心神喪失(ダークネス)状態による同情の余地もあるとはいえ、本音を言えば厄介な地雷を抱えたという思いもあった。
L5を発症した悟飯に恨まれているうえに、余計なトラブルを各地で起こし、諍いの種になる彼女を傍に置くのは余計なリスクである。
そこに至るまでの顛末も、残念だが致し方ないものだろうとも思っていた。
必要に駆られての殺人も肯定はありえないが、まだ理解はする。
乃亜に強要された以上、それも褒められたものではないが必要な手段ではある。
しかし、強姦紛いの暴行は女の身としては、一姫にとっても悪感情を抱かせるには十分だった。
ヤミの雪華綺晶殺害の経緯を正確には知らないが、ろくなことはしていなかったようだ。
この様子では雛見沢症候群がなくとも、結局悟飯とは敵対し殺害されていたかもしれないし、それで悟飯にのみ非があるというのは酷だ。
だから、哀れには思い埋葬程度ならしても、それ以上深入りする気は毛頭なかった。
何処までも他人として、必要以上に責めもしないが、不必要に情けを掛けることもない。
そして、一姫は首輪の情報など何も手に出来ず、舞台上の役者にすらなれないまま時を無駄にしただろう。

だが、さくらがヤミのために戦ったから、最後は偽りのない笑顔を見せた。
打算のない優しさが、もう一度彼女に力を与えたのだ。
ガッシュがさくらの意志を汲み、最後までその生存を諦めず、ヤミを照らすような希望であり続けたからこそ、僅かな可能性に懸けてくれた。

「少なくとも、ガッシュはそう信じてあげて」

もう確認することもできないけれど、きっとそうであって欲しいと。
理詰めで物事を推し量る一姫にしては珍しく、祈るように言った。



【一日目/夕方/G-5 小学校】

※主催本部はシナプス@そらのおとしものです


【ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!!】
[状態]疲労(大)、全身にダメージ(中)、シュライバーへの怒り(大)
[装備]赤の魔本
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2、首輪×2(ヘンゼルとルーデウス)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:戦えぬ者達を守る。
2:シャルティアとゼオン、シュライバーは必ず止める。
3:絶望王(ブラック)とメリュジーヌと沙都子も強く警戒。
4:エリスという者を見付け、必ず守る。
[備考]
※クリア・ノートとの最終決戦直前より参戦です。
※魔本がなくとも呪文を唱えられますが、パートナーとなる人間が唱えた方が威力は向上します。
※魔本を燃やしても魔界へ強制送還はできません。
※藤木マーダーであることを知っています



【風見一姫@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)ダメージ(中)
[装備]:首輪探知機@現実、サイフォジオ@金色のガッシュ!!(二日目黎明まで使用不可)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、首輪(サトシと梨花)×2、
ドレインシールド@遊戯王DM(夜中まで使用不可)、青眼の白龍(午前より24時間使用不可)
[思考・状況]基本方針:殺し合いから抜け出し、一姫の時代の雄二の元へ帰る。
0:コナン、フリーレン達と合流したい。
1:首輪のサンプルの確保もする。解析に使えそうな物も探す。
2:過去の雄二と天音の事が気掛かりだけど……。
3:ネモとコンタクトを取ってみたいけれど……。
[備考]
※参戦時期は楽園、終了後です。
※梨花視点でのひぐらし卒までの世界観を把握しました。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。
※絶対違うなと思いつつも沙都子が、皆殺し編のカケラから呼ばれている可能性も考慮はしています。
※藤木マーダーであることを知っています
※ニンフの解析データを記憶しました。


【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:気絶、ダメージ(中)、疲労(大)、魔力消費(大)、我愛羅に対する恐怖と困惑(大)、ヘンゼルとルーデウスの死へのショック(極大)、シュライバーへの恐怖(極大)
[装備]:封印されたカードのバトルコスチューム、星の杖&さくらカード×20枚(「風」「翔」「跳」「剣」「盾」「樹」「闘」「力」「幻」「夢」「時」「闇」「凍」は確定)@カードキャプターさくら、斬月@BLEACH(破面編以前の始解を常時維持)
[道具]:基本支給品一式、ランダム品1~3(さくらカードなし)、さくらの私服
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない
0:……。
1:紗寿叶さんにはもう一度、魔法少女を好きになって欲しい。その時にちゃんと仲良しになりたい。
2:ロキシーって人、たしか……。
3:ルーデウスさん……
4:藤木さんの、さっきの目………
[備考]
※さくらカード編終了後からの参戦です。
※フリーレン達から斬月を譲渡されています。
※藤木マーダーであることを知っています。

【「時」@カードキャプターさくら】
時を止め、また時間を操作することも可能。
ただし時間停止は、参加者には反映されない。
支給品や制限のインターバル短縮も可能。
時間停止の再使用はインターバル6時間。
支給品や制限のインターバル短縮の再使用も6時間。

【サイフォジオ@金色のガッシュ!!】
致命傷でなければ、一定の傷と体力、心の力や魔力なども回復する。
一度の使用で12時間使用不可。



「クソッ!!!」

未だ痺れの抜けない体で、シャルティアはスポイトランスを叩きつける。
電柱がポッキーのように圧し折れて、地響きのような音を立てて倒れた。
そんな行為を何度か繰り返し、苛立ちを鎮めようとするが、その度に体の痺れであのガッシュへの憎悪が復活して、また破壊行為をしてしまう。

対策は立てた。

真紅の全身鎧を手に入れたとて、フリーレンの魔法ならば貫通する可能性は高い。
また、ガッシュのジケルドという魔法、磁力を誘発する力はむしろ鎧を着ていない方が良い。
一旦、素のままで挑み、大技にのみ鎧で防ぎながら、こちらを倒したかもしれないと油断するガッシュ達を仕留める。
フリーレンのやっていた力を誤認させるのと同じような戦術を考えて、シャルティアにしては珍しく知恵を絞ったというのに。
結果は惨敗、バフ魔法で威力を増した電撃が直撃し、遠くまで吹き飛ばされてしまった。
しかも、少なくないダメージ付きで。

「随分、お怒りのようね」

ぶんっと、シャルティアは口よりも先に腕を回して、踵を返しながらスポイトランスで背後の女を薙ぎ払う。
めきめきと、肉が弾けて血が吹き出し、骨が粉砕されるなじみ深い音が耳朶を打つ。

「チッ……」

しかし、馴染み深いのはそこまでだ。
スポイトランスを片手で受け止めた銀髪の少女は、肩ごと右半身がぐちゃぐちゃに潰された無惨な状態で微笑んでいる。
シャルティアもこれが死ぬ間際に狂った人間の笑みでないことを知っている。

「虫けらの癖にしぶといでありんすね」

高い再生力を持っているようだ。
ガッシュ達との交戦で、バオウに食われたとばかり思っていたが、それで生きていたのだろう。
シャルティアは忌々しく舌打ちをした。

「…………どうして、体内のそれを使わないの?」
「は?」
「あなたが取り込んだものよ……まさか、自覚がなかったのかしら」

『間抜けなベイから聖遺物を盗み出しただけじゃなくて…よりによって盗人の女如きが』

そういえばと思う。あの狂乱の白騎士も何やら妙な事を言っていた。
ベイという人物から、シャルティアが何か盗んだと言いたげに。
全く心当たりがなかったが、果たして何のことだ?

「闇の賜物……?」

あの時点の所持品を振り返っても、スポイトランスは絶対に違う。
カレイドステッキもイリヤかあの美遊という少女のものであり、またベイという人物の物とは思えない。
しかも、体内にあると限定されれば……以前取り込んだ闇の賜物しか心当たりがない。

「それの使い方、私ならレクチャーできるかも」
「……どういうつもりでありんしょうか?」
「一人で戦うのにも骨が折れたわ。だから、あなたが強くなってくれれば、少しは楽になれるでしょ」

リーゼロッテの虚無の魔石との接続遮断は想定より深刻だ。
絶望王、ガッシュ、さくらと連戦相手が悪いのも事実だが、このまま単独で戦い抜くのは厳しい。

「どうかしら? 仲良くしたいと思っているのだけれど」

シャルティアが取り込んだ聖遺物、その設計思想は不明だが、人を魔人へと作り変える術法であることは看破した。
そして、闇の賜物はシャルティアにラブコールを送っていることも、当人は気付いていない。
シュライバーは闇の賜物をヴィルヘルムから盗んだと叫んだが、厳密にはヴィルヘルムの手に渡る前の時間軸から乃亜が用意したもの。
そのために、闇の賜物は本物の吸血鬼であるシャルティアに対し、本来の運命の相手であるヴィルヘルムほどではないが、破格の相性を誇っていた。
この島に呼ばれた吸血鬼であれば、アーカードならば、その自らの在り方ゆえに聖遺物を唾棄し、決して交わらわず。
フランドール・スカーレットは、血を吸う行為の拙さから直に吸った経験がなく、吸血鬼として異質故にやはり交わらない。
ハンディ・ハンディは論外。

正当かつ、上位の吸血鬼であるシャルティアに靡くのは、無理からぬ事。
ただ、シャルティアはそれを生かせる知識が不足していた。
ユグドラシルと異界の魔法の性質の違いのために、そのラブコールを無視し続けていた。
それを自覚させ、覚醒を促せれば……孫親子にも匹敵する力を顕わす可能性だってある。
無論、リスクは高いが、放っておけば死ぬかもしれない悟飯とは別に、孫悟空は優先して落とすに越したことはない。

(……確かにこの女、MPの残量が僅か……微妙に回復し続けているけど、一人で戦うのが厳しいというのも本当みたいね)

シャルティアも戦力もさることながら、自らの知識に当て嵌めづらい力には気付いている。
例えば、イリヤが突如としてシャルティアと白兵戦を可能としたあの力を、完璧なる戦士の類と推察したが、もっとかけ離れた近しい何かだろう。
力の差があれば、小細工を捻り潰し蹂躙すればよいが、この島でのシャルティアは決して一方的な殺戮者ではない。
シャルティアに足りない知識をリーゼロッテを利用し補い……人間なのは気に入らないが、沙都子よりは強さという点では認められまだマシなのもある、あとで切り捨てるのも悪くない。

(だけど……この女……)

『────お主! 何故、人間の世界を滅ぼそうとするのだ!!』

魔法で気配を消して、様子を伺った時にシャルティアはガッシュとリーゼロッテの口論を聞いていた。
そう、その目的が人類鏖殺であることを。

(アインズ様の目的は……世界征服、世界の滅亡ではない)

シャルティアとて、世界征服と世界滅亡の違いは分かる。
まだアインズの目的が分からなかった愚か者など、シャルティアを含めナザリックには誰一人としていない。
アインズに献上すべき世界の消失、そんなことはナザリックの総力を結集させて食い止めねば。
だからこそ、支配すべき人間を一人残らず滅ぼすような真似を見過ごしてよいのか、シャルティアは悩んだ。
人間などどうでもいいが、国を一つ二つ滅ぼすのとは訳が違う。支配と鏖殺は全く別だ。
今ある体制を壊し新秩序を作るという意味ではなく、文字通り全てを無に還すつもりだろう。
家畜が滅んで喜ぶ畜産家が何処にいようか、それはどの世界でも変わらない道理。
また、主であるアインズの思惑にも反してしまうからだ。
戦闘の区切りがつくまで敢えて出張らなかったのも、コナン達を追撃しなかったのも、この場だけはガッシュと共闘してリーゼロッテを倒すべきか判断に困ったから。

(万が一……私が倒れ、この女が優勝すれば…………)

アインズの目的の妨げになる。シャルティアの汚名返上など後回しにしても、それだけは防がなければならない。
世界は……偉大なる死の王、アインズ・ウール・ゴウンのもの。
それ以外の何人たりとも、ましてや終わらせるなど。

(やはり、ここで……)

スポイトランスを握る手に力が入る。
闇の賜物に対する知識は欲しいが、眷属にしてから入手すればよい。
しかし、殺せるだろうか。
以前ならば迷いもしない自分自身の問いかけに、シャルティアは確たる解答を出せない。
ここで戦闘を挑めば、下手に逃げられそのまま行方知れずになり、この手で始末する好機を逃すかもしれない。
メリュジーヌと二人掛りだったというのに、ディオという取るに足りないジュースすら逃がした、苦い経験がシャルティアを慎重に突き動かす。
しかも、この相手はディオなど比較にもならない。いくら消耗しているとてだ。
逃がすより、今は自分の近くに置いて隙を伺うのも最良か?

(メリュジーヌと合流して……いえ、あれはこの女を優先して殺す理由がない。
 優勝以外見えてなさそうだし、孫悟空を殺すのに嬉々として仲間にするか……)

沙都子を見捨てたのは早計だったか?
最後はカオスとメリュジーヌが味方に付くのを想定すれば、今のうちに死なせておいた方が良かったかもしれないが、仮に沙都子が優勝してもナザリックに害はないはずだ。
本当に考えたくもないが、仮にシャルティアが死に、沙都子とカオスとメリュジーヌが残って、リーゼロッテと対決する展開になり、それで沙都子側が勝ってくれるのなら、まだそちらの方がマシである。
沙都子の願いは、恐らくアインズの世界征服に支障を及ぼすものではない。
シャルティア個人を度外視すれば、最も最悪のケースは避けられる。
比べてリーゼロッテは……自分の世界を滅ぼすだけで、満足するだろうか?
別世界の存在を知った時、要らぬ使命感でアインズが征服すべき世界まで滅ぼすのでは。
それをもっとも間近にいて、食い止められたかもしれないシャルティアは、そうなれば────。

人間に何の慈愛もないが、シャルティアは怪物であると同時に、仕えるべき主の歯車である。
彼女には所属すべき社会が存在する。世界から疎外され逸れた、不適合者ではない。
世界という大きな対象に範囲を広めた場合、彼女はその世界の敵を討つべき守護者にもあり方を変える。
少なくともアインズという魔王か創造主たるペロロンチーノが、世界を滅ぼそうとしない限り。

血のような真紅の瞳を輝かせシャルティアは、リーゼロッテを見つめた。
そして……。




【一日目/夕方/G-3】

【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(極大)、虚無の石との接続不良(大よりの中 時間経過で回復)、再生能力低下、魔力出力減少、さくらに対する苛立ち
[装備]:モルガンの杖@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
0:シャルティアを共闘に誘ってみる。
1:野比のび太、フリーレンは必ず苦しめて殺す。
2:ヴェラード、私は……。
3:絶望王ではなく、私こそが世界に終止符を打つ。
4:虚無の石との接続を 回復させる。
[備考]
※参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
※不死性及び、能力に制限が掛かっています。
※幻燈結界の制限について。
 発動までに多量の魔力消費と長時間の溜めが必要、更に効果範囲も縮小されています(本人確認済み)。実質、連発不可。
 具体的には一度発動すると、12時間使用不可(フリーレン戦から数えて、夕方まで使用不可)
 発動後、一定時間の経過で強制解除されます(本人確認済)。
※虚無の石との接続が初期化されました。時間経過や支給品によって回復しますが無尽蔵の魔力の制限と、再生能力が下落しています。


【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(大)、ダメージ(大)、MP消費(中)
スキル使用不能、乃亜への不信感
[装備]:スポイトランス@オーバーロード、真紅の全身鎧@オーバーロード
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:優勝する
0:闇の賜物の力に関心はあるけど、リーゼロッテにどう返事をするか。
1:ドミノを獲得し、悟空やシュライバーを殺せる力を獲得する。
2:黒髪のガキ(悟飯)はブチ殺したい、が…自滅してくれるならそれはそれで愉快。
3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。
4:武装を取り戻したので、エルフ、イリヤ、悟飯、悟空、シュライバー、ドロテアに借りを返す。
5:メリュジーヌの容姿はかなりタイプ。沙都子はいけ好かないので正直殺したいが。
6:可能であれば眷属を作りたい。
7:ドミノを集める。放送後メリュジーヌと再合流。
8:アインズ様が支配すべき世界の滅亡は阻止したい。
[備考]
※アインズ戦直後からの参戦です。
※魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
※その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
※スキルの使用可能回数の上限に達しました、通常時に戻るまで12時間程時間が必要です。
※日番谷と情報交換しましたが、聞かされたのは交戦したシュライバーと美遊のことのみです。



139:終わりの始まり 投下順に読む 141:僕を連れて進め
時系列順に読む
137:殺人考察(前) ガッシュ・ベル 000:[[]]
風見一姫 000:[[]]
木之元桜 000:[[]]
金色の闇 GAME OVER
リーゼロッテ・ヴェルクマイスター 000:[[]]
128:迷子になった女の子 シャルティア・ブラッドフォールン 000:[[]]
138:ラフ・メイカー 魔神王 000:[[]]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー