幸福な結末に、醜悪な蛇足を付け足されたら、如何しますか?
「願いを叶えてやるから殺し合え……。随分と、虚仮にしてくれる」
殺人に禁忌は無いとはいえ、命じられて殺しをする経験は初めてだ。
ましてや『首輪』などを付けてくれるとは、あの忌まわしく悍ましい日々を嫌でも思い出させる境遇に、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは、恥辱と、それを遥かに超える巨大な怒りに身を震わせた。
ましてや『首輪』などを付けてくれるとは、あの忌まわしく悍ましい日々を嫌でも思い出させる境遇に、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは、恥辱と、それを遥かに超える巨大な怒りに身を震わせた。
「私の願いはとうに叶った…。それを無かった事にして、『願いを叶えてやるから殺し合え!?』巫山戯るな!」
リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの願いは、確かにあの時叶った。
生涯唯一愛し愛された男に抱かれて、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは死んだのだ。死んだはずなのだ。
それが今、こうして、生きて、此処にいるのは、あの乃亜とかいう子供が、何かしらやった結果だろう。
巫山戯ている。心底からそう思うと共に、乃亜の持つ計り知れない力も察して、リーゼロッテは、『バビロンの魔女』は恐怖にしてもいる。
生涯唯一愛し愛された男に抱かれて、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは死んだのだ。死んだはずなのだ。
それが今、こうして、生きて、此処にいるのは、あの乃亜とかいう子供が、何かしらやった結果だろう。
巫山戯ている。心底からそう思うと共に、乃亜の持つ計り知れない力も察して、リーゼロッテは、『バビロンの魔女』は恐怖にしてもいる。
「虚無の魔石は…『あの』時と同じ。これが私への枷という訳か」
リーゼロッテに尽きせぬ魔力と不死をもたらした虚無の魔石。リーゼロッテが死んだ時に砕かれた其れを、不完全な形であるとはいえ再現し、リーゼロッテを再び現世(うつしよ)に立たせている。
リーゼロッテにしても、こんな芸当は不可能だ。並ぶ者なき魔女である為に、乃亜の持つ計り知れない力を悟り、リーゼロッテは恐怖する。
だが、今リーゼロッテを動かすものは恐怖などでは無い。恐怖を塗り潰す憤怒だ。
ヴェラードの与えた死を覆した────ヴェラードがリーゼロッテに示した愛を汚し、嘲弄し、踏み躙った乃亜に対する憤怒だ。
リーゼロッテにしても、こんな芸当は不可能だ。並ぶ者なき魔女である為に、乃亜の持つ計り知れない力を悟り、リーゼロッテは恐怖する。
だが、今リーゼロッテを動かすものは恐怖などでは無い。恐怖を塗り潰す憤怒だ。
ヴェラードの与えた死を覆した────ヴェラードがリーゼロッテに示した愛を汚し、嘲弄し、踏み躙った乃亜に対する憤怒だ。
「この程度で、この私を縛れると思うな。必ずこの報いは受けさせる」
誓う事は『報復』己を虚仮にした事と、ヴェラードの愛を踏み躙った乃亜に対して、必ず報いをくれてやる。
そう誓って、リーゼロッテは歩き出した。
そう誓って、リーゼロッテは歩き出した。
「何で明石がこんな目に遭わなきゃいけないにゃ」
嘗ては広壮な洋館だった事が窺い知れる、今では荒れ果てた廃墟内で頭を抱えて蹲る、緑色の髪の少女が一人。頭の猫耳が矢鱈と目を引く少女だ。
「明石は工作艦にゃ。殺し合いなんてできないにゃ。ぬいぬいを呼ぶべきにゃ」
頭の猫耳から解る様に、この少女は人間では無い。
『かの大戦』の記憶を有し、人類を海から駆逐した脅威、セイレーンより海を奪還するべく作られた、軍艦の名と力を有するKAN–SENである。
この緑髪の猫耳少女は、工作艦『明石』の記憶と名を有する重桜所属のKAN–SENだ。
『かの大戦』の記憶を有し、人類を海から駆逐した脅威、セイレーンより海を奪還するべく作られた、軍艦の名と力を有するKAN–SENである。
この緑髪の猫耳少女は、工作艦『明石』の記憶と名を有する重桜所属のKAN–SENだ。
「大体、戦わせようとしているなら、明石の艤装を用意するべきにゃ。これじゃ明石、戦えないにゃ」
そして明石には戦う力が無い。工作艦という艦種のために、砲も魚雷も航空機も持たない明石は、精々が対空砲での射撃が出来る程度。それにしたって艤装が無ければ行えない。
「どうすれば良いにゃ…指揮官…助けて欲しいにゃ……」
蹲って延々愚痴っていると、不意に廃墟の扉が開く音が聞こえ、明石は飛び上がった。
「だだだだ……誰かきたにゃ!!」
竦み上がって怯える明石の潜む部屋へと、足音が一定の間隔で近づいて来る。
誰かが居るともしれないのに、全く足音を隠そうともしない、力強い、堂々とした響きは、足音の主が余程の自信家であるか、余程のアホである事を示していた。
ゆっくりと、確実に近づいてくる足音に怯え切った明石は、何も出来ずに震えるだけ。
やがて、足音は明石の居る部屋の前で停止し、直後、徐々に扉が開き出す。
誰かが居るともしれないのに、全く足音を隠そうともしない、力強い、堂々とした響きは、足音の主が余程の自信家であるか、余程のアホである事を示していた。
ゆっくりと、確実に近づいてくる足音に怯え切った明石は、何も出来ずに震えるだけ。
やがて、足音は明石の居る部屋の前で停止し、直後、徐々に扉が開き出す。
「ひいいいいいいい!!明石死んじゃうにゃあああああ」
ゆっくりと開いたドアの向こう側から、部屋に入って来たのは、漆黒ののドレスを身につけたプラチナブロンドの少女だった。
「ややややめてにゃ!!明石まだ死にたくにゃいにゃ!!!」
戦闘能力皆無の明石は必死こいて命乞いをした。明石はまだ死にたく無いのだから当然だ。
銀髪の少女が、僅かに眉を顰めた事に対し、機嫌を損ねたのかと思って、必死に言葉を紡ぎ出す。
銀髪の少女が、僅かに眉を顰めた事に対し、機嫌を損ねたのかと思って、必死に言葉を紡ぎ出す。
「母港でみんなが明石の修理を待ってるにゃ!新装備の開発だってしないといけないし、指揮官もスケベな新衣装を待ってるにゃ!!!」
最後のは余計だよクソ猫。
「明石が此処で死んだらみんな困るにゃ!!見逃して欲しいにゃ!!」
地面にへたり込んだまま、口角泡を飛ばして命乞いをする明石を、銀髪の少女は無感情に見下ろしていたが、明石の命乞いが一段落すると、煩わしげに口を開いた。
「安心しろ。私はこの様な下劣な催しに乗るつもりはない」
「ホ、…本当かにゃ」
「お前を謀ってどうする。殺す事など容易いというのに。第一…何故私が奴の思い通りに動いてやらなければならないのだ」
「じゃ、じゃあ、脱出の為に協力してくれるにゃ?」
「何故私がお前を助けてやらなければならない?お前が私に有益ならば、兎も角」
「そ、それなら明石、道具さえあれば首輪を外せるかもしれないにゃ!」
明石はリーゼロッテの表情が僅かに動いたのを見逃さず、日頃の商売で鍛えた弁舌で、必死こいて自身の売り込みを開始した。
「あ、明石は母港で科学部の皆と一緒に新兵器の開発とオフニャの開発をやってるにゃ!艤装の修理だってお手の物にゃ!!他の世界から来た子だって明石が艤装を用意したにゃ!明石ならこの首輪を解析して、外す事だって出来る筈…にゃ」
「科学部?」
冷然と明石の話を聞いていたリーゼロッテが、反応を示す。リーゼロッテは明石の事を外見から判断して、ライカンスロープか人に変じる能力を持つ妖獣の類と認識している。
そんな存在が『科学』などと口にすれば、訝しむのは当然だ。
そんな存在が『科学』などと口にすれば、訝しむのは当然だ。
「他の世界?」
そしてもう一つ。『他の世界』。
並行世界の存在を識るリーゼロッテではあるが、どうにも明石の言い分では、そんなものでは無いらしい。
並行世界の存在を識るリーゼロッテではあるが、どうにも明石の言い分では、そんなものでは無いらしい。
「どういう事かしら」
リーゼロッテの興味を惹く事に成功した明石は、一生懸命に語り出した。自身の日頃の活動を、異なる世界からの来訪者達のことを、KAN–SENとセイレーンの事を。
一通り明石が語り終えると、リーゼロッテは形の良い顎に、白磁の様に白い繊指を当てて考える。
(この猫は科学的なアプローチで首輪を外せる。私は魔道の面からアプローチ出来るが科学の面はからっきし……それに)
明石と出逢った時に幻燈結界(ファンタズマゴリア)を使用(つか)ってみたが、効果云々の前に発動すらしなかった。更に明石の話を聞きながら魔力を練ってみたところ、尋常では無く魔力の量と質が落ちていることが理解(わか)った。
(これが私に施された制限…私を蘇生させ、虚無の魔石を復元し、その魔力に枷を施す……。この分だと不死にも何らかの限界が……。恐ろしい奴だけれど、だからどうした)
明石の話から察するに、並行世界という域すら超えた異世界が存在し、世界間を往来又は異なる世界の人間を召喚できる存在が居るらしい。
リーゼロッテの力を遥かに超えた能力を、あのカイバノアと名乗った子供は有しているらしいが、それでも尚リーゼロッテの戦意は揺らが無い。
リーゼロッテの力を遥かに超えた能力を、あのカイバノアと名乗った子供は有しているらしいが、それでも尚リーゼロッテの戦意は揺らが無い。
(例え私より強大な力を有していようと、私がお前のお前の思い通りに動くと思うな)
「私とお前、本来は全く関わる筈が無い異なる世界の存在という事か」
「そうにゃ、歴史も技術も、生態すら異なるけれども、確かに生きている人達がいるにゃ」
「そして世界の垣根を超えて呼び集める事ができるものも居る。この事態はそいつらの仕業?」
「セイレーンは一切が不明にゃ。何考えてるかなんて分からないにゃ。TYPEこの事態に関わっていてもおかしくにゃいにゃ」
(この件にはセイレーンとやらが関わっている可能性が有る。首輪以外にも此奴は今後何かと有用になる可能性が高い…と)
海馬乃亜の目論見を挫くと決めていても、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの『バビロンの魔女』と謳われた悪性が変わった訳では無い。
自らにとって有益ならば生かして使うし、そうで無いならば殺すだけだ。
自らにとって有益ならば生かして使うし、そうで無いならば殺すだけだ。
「どうやら使えそうね。私についてきなさい」
こうして稀代の魔女と科学部所属の工作艦は共に行く事となったのだった。
【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:健康 不機嫌
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:乃亜の目論見を挫く
1:取り敢えず首輪を外したい
2:
[備考]
自身の魔力が大幅に落ちている事と、幻燈結界(ファンタズマゴリア)が使用不能になっている事に気づきました。
不死にも何らかの制限があると推測しています。
[状態]:健康 不機嫌
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:乃亜の目論見を挫く
1:取り敢えず首輪を外したい
2:
[備考]
自身の魔力が大幅に落ちている事と、幻燈結界(ファンタズマゴリア)が使用不能になっている事に気づきました。
不死にも何らかの制限があると推測しています。
【明石@アズールレーン】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:生還
1:リーゼロッテについて行く
[備考]
ネプテューヌ、うたわれるもの、キズナアイ、ホロライブ、DOAXVV、アイドルマスター、ライザのアトリエの世界と人物についての知識をある程度有しています。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:生還
1:リーゼロッテについて行く
[備考]
ネプテューヌ、うたわれるもの、キズナアイ、ホロライブ、DOAXVV、アイドルマスター、ライザのアトリエの世界と人物についての知識をある程度有しています。
SSSS.GRIDMAN 及びSSSS.DYNAZENONの世界と人物は、コラボイベント『弧光は交わる世界にて』に関わっていないので知りません。関わったKAN–SENから話を聞いたくらいです。